Asia Weekly (10/1

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ASIA Indicators
定例経済指標レポート
中国製造業は政府・民間統計ともに 50 超え(Asia Weekly (10/1~10/7))
~政府統計と民間統計では内容がまったく異なる点には要注意~
発表日:2016 年 10 月 7 日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 西濵 徹(03-5221-4522)
○経済指標の振り返り
発表日
指標、イベントなど
結果
コンセンサス
前回
10/1(土) (韓国)9 月輸出(前年比)
▲5.9%
▲4.2%
+2.6%
9 月輸入(前年比)
▲2.3%
▲2.7%
+0.1%
50.4
50.5
50.4
+0.38%
+0.40%
+0.29%
+3.07%
+3.05%
+2.79%
10/4(火) (豪州)金融政策委員会(政策金利)
1.50%
1.50%
1.50%
(インド)金融政策委員会(レポ金利)
6.25%
6.50%
6.50%
4.00%
4.00%
4.00%
10/5(水) (韓国)9 月消費者物価(前年比)
+1.2%
+0.7%
+0.4%
(台湾)9 月消費者物価(前年比)
+0.33%
+0.40%
+0.57%
(豪州)8 月小売売上高(前月比/季調済)
+0.4%
+0.2%
+0.0%
(フィリピン)9 月消費者物価(前年比)
+2.3%
+2.1%
+1.8%
10/7(金) (マレーシア)8 月輸出(前年比)
+1.5%
▲2.3%
▲5.3%
8 月輸入(前年比)
+4.9%
+2.0%
▲4.8%
(中国)9 月製造業 PMI
10/3(月) (タイ)9 月消費者物価(前年比)
(インドネシア)9 月消費者物価(前年比)
(現金準備率)
(注)コンセンサスは Bloomberg 及び THOMSON REUTERS 調査。灰色で囲んでいる指標は本レポートで解説を行っています。
[中国]
~民間統計同様に製造業の堅調さが示されるも、その内容はまったく異なっていることに要注意~
1日に国家統計局と物流購買連合会が発表した9月の製造業PMI(購買担当者景況感)は 50.4 と前月
(50.4)から横這いとなり、2ヶ月連続で好不況の分かれ目となる 50 を上回っている。足下の生産動向を示
す「生産(52.8)
」は前月比+0.2pt と生産拡大の動きが続いているなか、先行きの生産に影響を与える「新
規受注(50.9)
」は同▲0.4pt 低下する一方、
「輸出向け新規受注(50.1)」は同+0.4pt 上昇してともに 50 を
上回っており、内外需の堅調さは先行きの生産を下支えすると期待される。なお、堅調な受注動向にも拘らず
「受注残(45.2)
」は前月比+0.2pt 上昇するも依然として 50 を大きく下回っているほか、
「雇用(48.6)」も
同+0.2pt 上昇しているものの 50 を下回っており、堅調な生産拡大にも拘らず雇用が拡大する可能性は小さ
いと見込まれる。また、
「完成品在庫(46.4)
」は前月比▲0.2pt 低下しており、生産拡大の一方で在庫調整が
進んでいないなど先行きに課題を残す内容となっている可能性も考えられる。規模別では「大企業(52.6)」
が前月比+0.8pt 上昇するなど国有企業を中心に好調さがうかがえる一方、
「中堅企業(48.2)
」は同▲0.7pt、
「中小企業(46.1)
」も同▲1.3pt とともに低下して 50 を下回っており、政府による景気対策の恩恵が裾野広
く及んでいない実態も垣間見られる。なお、先月末に英調査機関の Markit 社が発表した財新製造業PMIで
は中小企業を中心に内外需の堅調さが生産を下支えするなか、在庫調整が進んでいる様子が確認されたものの
(詳細は9月 30 日付レポート「中国製造業、中小の景況感は堅調に推移(Asia Weekly(9/26~9/30))
」をご
参照ください)
、国有企業については構造改革が道半ばの状況を脱していない様子が改めて確認された。
また、同日に国家統計局及び物流購買連合会が発表した9月の非製造業PMIは 53.7 となり、前月(53.5)
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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から+0.2pt 上昇して引き続き好不況の分かれ目となる 50 を上回る推移となった。先行きの動向に影響を与
える
「新規受注
(51.4)
」
は前月比+1.6pt 上昇して3ヶ月ぶりに 50 を上回る水準となる一方、
「新規輸出(48.3)」
は同▲0.5pt 低下しており、内需に底堅さがみられる一方で外需には不透明感が残る。なお、市場環境を示す
「業況動向(61.1)
」は前月比+1.7pt と大幅に上昇しており、依然として先行きに対する見通しは明るいと
判断することが出来る。ただし、
「雇用(49.7)」は前月比+0.6pt 上昇しているものの、依然として 50 を下
回る水準に留まっており、雇用の受け皿として期待される非製造業においても雇用拡大にはなかなか繋がって
いない実態がうかがえる。
図 1 CN 製造業 PMI の推移
(出所)国家統計局, Markit より第一生命経済研究所作成
[韓国]
図 2 CN 非製造業 PMI の推移
(出所)国家統計局, Markit より第一生命経済研究所作成
~地震や異常気象などの影響でインフレ率は加速するも、基調としてはディスインフレの模様~
1日に発表された9月の輸出額は前年同月比▲5.9%となり、前月(同+2.6%)から2ヶ月ぶりに前年を下
回る伸びとなった。当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も2ヶ月ぶりに減少に転じている上、その
ペースは前月の拡大を上回るなど下押し圧力が掛かりやすい展開を抜け出していない。リコール問題をきっか
けに販売が休止されているスマートフォンの問題が影響している可能性があるほか、8月末に同国海運最大手
が会社更生手続を発表したことにより、世界中で同社の船舶の出入港が滞るなどの影響が出ており、このこと
も輸出入に悪影響を及ぼしている可能性も考えられる。また、隣国の北朝鮮情勢を巡って最大の輸出先である
中国との関係が悪化する懸念が高まっており、このことが輸出の足かせとなっている可能性も高まっている。
一方の輸入額は前年同月比▲2.3%となり、前月(同+0.7%)から2ヶ月ぶりに前年を下回る伸びとなった。
前月比についても、前月に大きく拡大した反動も重なり2ヶ月ぶりに減少に転じている。底入れが進んだ原油
相場の上昇に一服感が出ていることに加え、足下における輸出の弱さは原材料や部材など川上の製品に対する
需要の足かせになっていると見込まれる。結果、貿易収支は+71.04 億ドルと前月(+51.10 億ドル)から黒
字幅が拡大している。
5日に発表された9月の消費者物価は前年同月比+1.2%となり、前月(同+0.4%)から伸びが加速した。
前月比も+0.64%と前月(同▲0.14%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じており、同国観測史上最大の地震発生の
ほか、相次ぐ台風襲来などといった異常気象の影響で生鮮品を中心に食料品物価が大幅に上昇したことで物価
全体も大きく押し上げられた。なお、生鮮食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同月比+1.27%
と前月(同+1.13%)から加速しており、前月比も+0.07%と前月(同▲0.30%)から2ヶ月ぶりに上昇に転
じているものの、物価全体に比べると落ち着いた推移が続いている。地震などの影響により非耐久消費財を中
心に物価上昇圧力が高まる動きがみられる一方、景気の先行き不透明感を反映して消費財全般で物価上昇圧力
が後退しているほか、サービス物価も低迷しており、全般的にインフレ圧力が後退している様子がうかがえる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 3 KR 貿易動向の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[台湾]
図 4 KR インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
~生活必需品を中心に物価は上昇するも、全般的にはインフレ圧力が高まりにくい状況が続く~
5日に発表された9月の消費者物価は前年同月比+0.33%となり、前月(同+0.57%)から伸びが減速した。
ただし、前月比は+0.45%と前月(同▲0.03%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じており、相次ぐ台風の襲来とい
った異常気象の影響などに伴い生鮮品を中心に食料品価格が上昇しているほか、このところの原油相場の底入
れなどを反映してエネルギー価格も上昇に転じるなど、生活必需品を中心に物価上昇圧力が高まる動きがみら
れる。他方、生鮮食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同月比+0.95%と前月(同+0.77%)か
ら伸びが加速しており、前月比も+0.09%と前月(同▲0.17%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じているものの、
物価全体に比べて上昇ペースは緩やかなものに留まる。住宅関連を中心にわずかに物価が上昇する動きがみら
れる一方、景気の先行き不透明感を反映して衣料品をはじめとする日用品の物価は下落基調が続いているほか、
サービス物価も下げ止まらないなど、全般的に物価上昇圧力は後退している。なお、川上の物価に当たる卸売
物価は前年同月比▲3.95%と 25 ヶ月連続でマイナスとなり、前月(同▲4.02%)からマイナス幅は縮小して
いるものの、前月比は▲0.11%と4ヶ月で下落するなど物価上昇圧力が高まりにくい状況にある。
図 5 TW インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[インドネシア] ~エネルギー価格に上昇圧力も、食料品や消費財全般で物価は落ち着いた推移が続く~
3日に発表された9月の消費者物価は前年同月比+3.07%となり、前月(同+2.79%)から伸びが加速した。
前月比も+0.22%と前月(同▲0.02%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じており、年明け以降の原油相場の底打ち
を反映してエネルギー価格が上昇基調を強めている一方、生鮮品を中心に食料品価格は下落基調が続いており、
生活必需品を巡る物価動向はまちまちの展開となっている。なお、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ
率は前年同月比+3.21%と前月(同+3.32%)から減速しており、前月比も+0.33%と前月(同+0.36%)か
らわずかに上昇圧力が後退している。国際金融市場が落ち着きを取り戻すなかで通貨ルピア相場も安定してお
り、輸入インフレ圧力が後退していることに加え、サービス物価も比較的安定した推移が続いている。こうし
たことから、足下のインフレ率は中銀が定めるインフレ目標の下限近傍で推移しており、先行きについてもし
ばらくは落ち着いた推移が続くものと予想される。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 6 ID インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[フィリピン]
~生活必需品を中心にインフレ圧力がくるぶり、コアインフレ率にも上昇圧力が掛かる~
5日に発表された9月の消費者物価は前年同月比+2.3%となり、前月(同+2.0%)から伸びが加速した。
前月比も+0.21%と前月(同+0.07%)から上昇ペースが加速しており、異常気象などの影響で生鮮食料品を
中心に食料品物価に上昇圧力が掛かったほか、このところの原油相場の底入れを反映してエネルギー価格の上
昇ペースも加速するなど、生活必需品を中心に物価上昇圧力が高まる動きがみられる。なお、食料品とエネル
ギーを除いたコアインフレ率は前年同月比+2.3%と前月(同+2.0%)から伸びが加速しており、前月比も+
0.14%と前月(同+0.07%)から上昇ペースが加速している。国際金融市場が落ち着きを取り戻すなかで通貨
ペソ相場は安定した推移をみせており、輸入インフレ圧力が後退したことで消費財全般に亘って物価上昇圧力
が高まりにくい状況にあるものの、エネルギー価格の上昇に伴う輸送コストの上昇が消費財物価の押し上げに
繋がっているほか、堅調な内需を反映して一部のサービス物価に上昇圧力がくすぶっている。
図 7 PH インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[タイ]
~原油相場の底入れを反映してエネルギー価格は上昇するも、全般的にインフレ圧力は後退模様~
3日に発表された9月の消費者物価は前年同月比+0.38%となり、前月(同+0.29%)から伸びが加速した。
前月比も+0.04%と前月(同▲0.04%)から3ヶ月ぶりに上昇に転じており、原油相場の底打ちを反映してエ
ネルギー価格が上昇に転じている一方、食料品価格については生鮮品を中心に落ち着いた推移が続いており、
生活必需品を巡る物価動向はまちまちの展開が続いている。一方、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ
率は前年同月比+0.75%と前月(同+0.79%)から伸びが鈍化しており、前月比も+0.02%と前月(同+0.07%)
から上昇ペースが鈍化するなど物価上昇圧力が後退している様子がうかがえる。景気の先行き不透明感を反映
して消費財全般で物価が落ち着いているほか、サービス物価も安定しており、物価上昇圧力が高まりにくい状
況にあると判断出来る。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 8 TH インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[マレーシア]
~輸出入ともに大幅な拡大と縮小を交互に繰り返す一進一退の展開が続いている模様~
7日に発表された8月の輸出額は前年同月比+1.5%となり、前月(同▲5.3%)から2ヶ月ぶりに前年を上
回る伸びに転じた。前月比は+9.0%と前月(同▲10.0%)に大きく減少した反動で2ヶ月ぶりに拡大に転じ
ているものの、大幅な減少と拡大を交互に繰り返す展開が続くなど一進一退の展開が続いている状況は変わり
がない。内訳をみると、原油や天然ガス、天然ゴムといった一次産品関連の輸出に下押し圧力が掛かっている
一方、電子部品や電気機器のほか、パーム油や木製品などの輸出の堅調さが輸出全体を押し上げている。中国
経済に底打ち感が出ていることを受けて中国向けが堅調なほか、インドやシンガポールなどのアジア新興国向
けに加え、米国やEUなどの先進国向けにも底堅い動きが確認された。一方の輸入額は前年同月比+4.9%と
なり、前月(同▲4.8%)から2ヶ月ぶりに前年を上回る伸びに転じている。前月比も+7.2%と前月(同▲9.2%)
に大きく減少した反動もあり2ヶ月ぶりに拡大に転じており、輸出同様に一進一退の展開が続いている。食料
品や家財関連を中心とする消費財の輸入が拡大したほか、輸出の底堅さを反映して原材料や素材関連の中間財
の輸入も底堅い一方、設備逃避意欲の乏しさを反映して資本財の輸入に下押し圧力が掛かっている。結果、貿
易収支は+85.07 億ドルと前月(+19.07 億ドル)から黒字幅が拡大している。
図 9 MY 貿易動向の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
以
上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。