1 CAP.C432 化工物性解析 第2回(下山) 「グループ寄与法による純物質の物性推算」 物質理工学院 応用化学系 下山 裕介 2016.10.5 前回の復習 ü 化学プロセス設計 相平衡・溶解度: ・ 相状態の把握 ・ 各相の組成 2 製品 粘度: 供給流量 反応 原料 A 前処理 熱伝導度: 温度設定 原料 B 分離・精製 拡散係数: ・ 反応速度解析 ・ 分離効率解析 副生成物 3 前回の復習 ü 化学工学物性を把握するためのアプローチ Ø 実験(測定)によるデータの蓄積 - 操作条件を変えた測定 - 物質の種類を変えた測定 理論モデルの構築 計算精度の確認・向上 Ø 理論解析モデルによる推算 - 広域な条件・物質種の影響 - 観測不可な情報を入手(分子レベルの情報) 前回の復習 Ø 平衡物性の理論解析法 ① 相平衡条件に基づく”理論的”手法 - 対応状態原理 ー 状態方程式 ー 活量係数モデル ② 経験的手法 - 有効な関数の適用 ー グループ寄与型予測法 4 5 前回の復習 Ø グループ寄与型予測法(グループ寄与法)とは? Butane CH2: 2個,CH3: 2個 化学官能基グループ 1-Propanol CH2: 2個,CH3: 1個 OH : 1個 化学官能基グループ 6 前回の復習 Jobackmethod;ThesisinChem.Eng.,MassachuseLsInsNtuteof Technology,Cambridge,Mass.,1982 [ 臨界温度 T c[ K ] = Tb 0.584 + 0.965∑ ΔTc − (∑ ΔTc ) 臨界圧力 pc [bar ] = (0.113 + 0.0032nA − ∑ Δpc ) nA : atom number in a molecule 3 −1 臨界体積 vc [cm mol ] = 17.5 + ∑ Δvc ] 2 −1 −2 前回の復習 7 Joback法によるグループパラメータ Jobackmethod;ThesisinChem.Eng.,MassachuseLsInsNtuteofTechnology,Cambridge,Mass.,1982 Group ΔTc Δpc Δvc -0.0012 0 0.0020 65 56 41 0.0067 0.0043 27 0.0082 0.0143 0.0011 0.0008 41 32 Nonringincrements -CH3 0.0141 >CH2 0.0189 >CH- 0.0164 >CH< Ringincrements =CH- =C< 前回の復習 8 Ø 臨界定数・偏心因子を用いた物性推算 ü 臨界温度・圧力 ü 偏心因子 状態方程式 RT a p= − v − b v (v + b ) a; f (Tc , pc , ϖ ) b; f (Tc , pc ) ü 圧力-温度-体積(密度)の関係 → 拡散係数・粘度等の推算 ü 高圧相平衡 → 相分離における平衡組成の把握 前回の復習 9 Ø 標準沸点を用いた物性推算 標準沸点 ü 臨界温度・圧力 ü 偏心因子 状態方程式 RT a p= − v − b v (v + b ) a; f (Tc , pc , ϖ ) b; f (Tc , pc ) ü 圧力-温度-体積(密度)の関係 → 拡散係数・粘度等の推算 ü 高圧相平衡 → 相分離における平衡組成の把握 10 前回の復習 Ø 凝固点(融点)を用いた物性推算 液相に対する固体物質の溶解度(固液平衡) y2 = 1 f 20 S γ 2∞ f 20 L ln f 20 S f 20 L ⎞ Δh2m ⎛⎜ T = − 1⎟ m ⎟ RT ⎜⎝ T2 ⎠ 温度一定 液相 T m = T f (freezing point ) Δh m : heat of fusion, T m : metling point, 2 : solute f 20 : fugacity of pure solute γ 2 : activity coefficient of pharmaceutical 固相 11 前回の復習 Ø 標準沸点における液体モル体積の推算 TynandCalusmethod;Processing,21,16 (1975). 1.048 Vb = 0.285Vc 3 in cm mol ü 実測データ ü グループ寄与法による推算 −1 温度一定 気相 液相 前回の復習 12 Ø 標準沸点における液体モル体積を用いた物性推算 無限希釈状態における溶質(A)の液体(B)中の拡散係数 Wilke–ChangequaNon;AIChEJ.,1,264(1955). 7.4 × 10−8 (φM B )1 / 2 T 2 −1 D AB = in cm s ~ 0.6 η BV A η B : viscosity of solution in cP ~ VA : molar volume of solute A at normal boliling point in cm3 mol -1 φ : 2.6 for water, 1.5 for methanol, 1.0 for unassociated solvents M B : molecular weight in g mol −1 13 前回の復習 本日のまとめ グループ寄与法による推算(実測データのない物質) Tb Tc , pc , Vc , ϖ ~ VA Tf 状態方程式 pVT関係 高圧相平衡 無限希釈状態 Wilke-Chang式 の拡散係数 液相への固体溶解度 (固液平衡) 「化工物性解析」(下山担当) 14 第1回 9/28「グループ寄与法による純物質の物性推算」 第2回 10/5「状態方程式」 第3回10/12「状態方程式・活量係数」 第4回10/19「活量係数式」 第5回 10/26「活量係数式・相平衡の計算」 第6回 11/2「相平衡の計算・高分子系の相平衡」 第7回11/9確認試験 状態方程式 15 物質の量 (n)と圧力 ( p )・体積 ( V )・温度 ( T )の関係式 p = p (T , V , n1, n2 , ⋅ ⋅⋅, ni , ⋅ ⋅⋅) ü 広い温度・圧力範囲における物性値の推算 ü 熱力学関係式へ,pVT 関係(状態方程式)を導入 ü 熱力学状態量 (エンタルピー,エントロピー,自由 エネルギー,化学ポテンシャル,フガシティー)を 表現できる. 相平衡・輸送物性(粘度・拡散係数) の予測・解析 16 状態方程式 熱力学状態量とpVT 関係 ∞⎡ ⎤ ⎛ ∂p ⎞ ⎥ dV + pV + niU io H = ⎢ p −T⎜ ⎟ ∂T ⎠V , n ⎥ ⎝ ⎢ i i ⎦ ⎣ V Gibbs自由エネルギー ∞ nRT ⎤ V ⎡ G = ⎢p − dV − RT ni ln ⎥ V ⎦ ni RT ⎣ i V ∑ ∫ + pV + フガシティー ∑ ∫ エンタルピー ∞⎡ ∑ ⎛ ∂p fi ⎢ RT ln = ⎜⎜ ⎢⎝ ∂ni xi p V⎣ pV Z= nRT ∫ i ni (U io − TSio ) ⎤ ⎞ RT ⎥ ⎟⎟ − dV − RT ln Z ⎠T ,V , n j≠i V ⎥⎦ 状態方程式 理想気体 (idealgas)の状態方程式 ü 分子間相互作用を無視 ü 分子サイズ(大きさ)を無視 1662年 Boyle(-MarrioL)の法則 pV = const. 1787年 Charles(-Gay-Lussac)の法則 V = const. T 17 18 状態方程式 理想気体 (idealgas)の状態方程式 pV = nRT R : 気体定数 , R = 8.314 J mol −1 K ü 常温・常圧付近では、理想気体と近似できる. ü 高温・低密度(低圧)でも、理想気体と近似できる. → 分子間距離が非常に長くなるため. → 分子間力が非常に小さくなるため. −1 状態方程式 19 実在気体(realgas)の状態方程式 ü 分子サイズ(大きさ)が無視できない. ü 分子間相互作用(分子間力)が存在する. 気体分子 V 体積 分子サイズ 分子間相互作用 20 状態方程式 分子間(相互作用)ポテンシャル φ (r ) σ 衝突 斥力 σ r 引力 −ε φ (r ) = 0; r = σ 状態方程式 21 vanderWaals式 (1910年,オランダ) RT a p= − v − b v2 分子サイズの補正 a ; energy parameter b ; size parameter v; molar volume 分子間相互作用の補正 臨界温度・臨界圧力 から求められる. CO2のpVT関係 臨界温度 液相モル 体積 気相モル 体積 22 状態方程式 23 臨界点では, ⎛ ∂p ⎞ ⎜ ⎟ = 0, ⎝ ∂v ⎠Tc ⎛ ∂2 p ⎞ ⎜ ⎟ =0 ⎜ ∂v 2 ⎟ ⎝ ⎠Tc 臨界点の条件を適用し,vanderWaals式のエネルギー・ サイズパラメータが求められる. 27R 2Tc2 a= , 64 pc RTc b= 8 pc 状態方程式 24 演習2.1 VanderWaals式のエネルギー・サイズパラメータa, bと, 臨界温度・臨界圧力の関係式を導け. 27 R 2Tc2 a= , 64 pc RTc b= 8 pc 9 a = RTc vc , 8 vc b= 3 状態方程式 演習2.1(解答) 25 状態方程式 演習2.1(解答) 26 状態方程式 演習2.1(解答) 27 状態方程式 28 vanderWaals状態方程式 RT a p= − v − b v2 a, b;物質固有の臨界定数(温度・圧力・体積)より求める. モル体積(密度)の算出方法 ü 実際のプロセス運転では,温度・圧力を操作する 場合が多い. ü 温度・圧力 → 密度の解析が有用となる. 状態方程式 モル体積(密度)の算出方法 RT a p= − vV− b vV2 ü vの3次方程式である. ü 解析的にvを求めるのは困難. ü 目的とする温度・圧力を満たすモル体積を試行 錯誤法により求める. 29 30 状態方程式 モル体積(密度)の算出における試行錯誤法 1.05bの体積を初期値とし て試行錯誤 温度一定 飽和気相 圧力 飽和液相 理想気体の体積を初期値 として試行錯誤 飽和液相 飽和気相 モル体積 vanderWaals型式状態方程式 31 (a)Redlich-Kwong(RK)式 RT a p= − v − b T 1 / 2 v (v + b ) 分子間相互作用の補正 分子サイズの補正 2 2 R Tc a = 0.42747 RTc , b = 0.08664 pc pc エネルギー(引力)パラメータ サイズ(引力)パラメータ p; pressure, T ; temperature R; gas constant, v; molar volume vanderWaals型式状態方程式 32 引力項(パラメータ)補正の比較 ü vanderWaals式 ⎛1⎞ ⎛1⎞ ⎜ ⎟×⎜ ⎟× a ⎝v⎠ ⎝v⎠ − a v 2 壁近くの 容器内部の 数密度 数密度 圧力は,容器の壁にぶつかる分子の衝撃力であり,分子間に 引力があれば,その力は減少する. vanderWaals型式状態方程式 33 引力項(パラメータ)補正の比較 ü vanderWaals式 ⎛1⎞ ⎛1⎞ ⎜ ⎟×⎜ ⎟× a ⎝v⎠ ⎝v⎠ − a v 2 ü RK式 − a T 1 / 2 v (v + b ) 温度上昇による体積の膨張 数密度における分子サイズ(中心 分子)の影響 vanderWaals型式状態方程式 34 (b)Soave-Redlich-Kwong(SRK)式 RT a p= − v − b v (v + b ) R 2Tc2 a = 0.42747 α, pc エネルギーパラメータの 温度依存性を修正 ⎡ ⎧ ⎛T ⎞ ⎪ ⎜ ⎟ ⎢ α = 1 + m⎨1 − ⎜ ⎟ ⎢ Tc ⎠ ⎝ ⎪ ⎩ ⎣ 0.5 ⎫⎤ ⎪⎥ ⎬ ⎪⎭⎥⎦ m = 0.480 + 1.574ω − 0.176ω 2 偏心因子による物質定数 RTc → 純物質の飽和蒸気圧の b = 0.08664 pc 計算精度を向上させた. 2 vanderWaals型式状態方程式 35 (c)Peng–Robinson(PR)式 RT a p= − v − b v (v + b ) + b (v − b ) R 2Tc2 a = 0.45724 α, pc 引力項の数密度を補正 ⎡ ⎧ ⎛T ⎞ ⎪ ⎜ ⎟ ⎢ α = 1 + m⎨1 − ⎜ ⎟ ⎢ Tc ⎠ ⎝ ⎪ ⎩ ⎣ 0 .5 ⎫ ⎤ 2 ⎪⎥ ⎬ ⎪⎭⎥⎦ m = 0.37464 + 1.54226ω − 0.26992ω 2 偏心因子による物質定数 RTc → 純物質の飽和蒸気圧の b = 0.07780 pc 計算精度を向上させた. vanderWaals型式状態方程式 36 飽和蒸気圧の計算結果-水 PR式 SRK式 ビリアル(virial)型状態方程式 pvT(圧力-体積-温度)関係は,高圧・高密度になる につれて理想気体の法則から偏倚する. 圧縮因子 I) 理想気体 pv Z= RT pv Z= = 1 ( pv = RT ) RT 37 ビリアル(virial)型状態方程式 pvT(圧力-体積-温度)関係は,高圧・高密度になる につれて理想気体の法則から偏倚する. II) 実在気体 pv B C Z= =1+ + +! (Leiden型) RT v v2 pv Z= = 1 + Bʹp + C ʹp 2 + ! (Berlin型) RT B, Bʹ : 第2ビリアル定数 , C, Cʹ : 第3ビリアル定数 理想気体からの偏倚を表わす. 38 ビリアル(virial)型状態方程式 Leiden型ビリアル状態方程式 pv B C Z= =1+ + +! RT v v2 (Leiden型) ü 第2,3ビリアル係数は,温度の関数である. B (T), C (T) ü 純物質のpvTデータにより決定される. 39 Lieden型ビリアル状態方程式 第2ビリアル係数 第2ビリアル係数の温度依存性 0 ボイル (Boyle)温度 温度 40 Lieden型ビリアル状態方程式 41 第2ビリアル係数と分子間ポテンシャル関数 ∞ N A ⎡ ⎛ − φ (r ) ⎞ ⎤ 2 B(T ) = − exp⎜ ⎟ − 1⎥ 4πr dr ⎢ 2 ⎣ ⎝ kT ⎠ ⎦ 0 ∫ N A ; Avogadro数, k ; Boltzmann定数 φ (r ) ; 分子間ポテンシャル ü 第2ビリアル係数は理想気体からの偏倚を表わすパラメータ. ü 分子間相互作用(ポテンシャル関数)と関係がある. Lieden型ビリアル状態方程式 42 第2ビリアル係数と分子間ポテンシャル関数 ∞ B(T ) = − N A ⎡ ⎛ − φ (r ) ⎞ ⎤ 2 exp⎜ ⎟ − 1⎥ 4πr dr ⎢ 2 ⎣ ⎝ kT ⎠ ⎦ 0 ∫ φ (r ) = 0; r = σ σ −ε r ü 複雑なポテンシャル関数形では, 適用が困難である. Lieden型ビリアル状態方程式 43 第2ビリアル係数と井戸型ポテンシャル φ (r ) = ∞ : 0 < r <σ φ (r ) = −ε : σ < r < Rσ φ (r ) = 0 : Rσ < r σ r Rσ ∞ −ε N A ⎡ ⎛ − φ (r ) ⎞ ⎤ 2 B(T ) = − exp⎜ ⎟ − 1⎥ 4πr dr ⎢ 2 ⎣ ⎝ kT ⎠ ⎦ 0 ∫ Lieden型ビリアル状態方程式 演習2.2 井戸型ポテンシャル関数を用いて,Lieden型状態方程式 の第2ビリアル係数を求めよ. φ (r ) = ∞ : 0 < r <σ φ (r ) = −ε : σ < r < Rσ φ (r ) = 0 : Rσ < r ∞ N A ⎡ ⎛ − φ (r ) ⎞ ⎤ 2 B(T ) = − exp⎜ ⎟ − 1⎥ 4πr dr ⎢ 2 ⎣ ⎝ kT ⎠ ⎦ 0 ∫ 44 Lieden型ビリアル状態方程式 演習2.2(解答) 45 Lieden型ビリアル状態方程式 46 ü 分子間ポテンシャル関数とpvT関係 分子に関する情報 ε 分子間エネルギーパラメータ 分子サイズ σ 2 B ( T ) = πN Aσ 3 R 3 + eε / kT (1 − R 3 ) 第2ビリアル係数 3 [ ビリアル状態方程式によるpvT関係の算出 ] Lieden型ビリアル状態方程式 47 第2項まで近似したLieden型ビリアル状態方程式 pv B (T ) =1+ RT v B(T);分子間エネルギー ε,分子サイズ σより求める. モル体積(密度)の算出方法 ü 実際のプロセス運転では,温度・圧力を操作する 場合が多い. ü 温度・圧力 → 密度の解析が有用となる. Lieden型ビリアル状態方程式 48 演習2.3 0℃,25.5atmにおける二酸化炭素の密度 (gL-1)を以下の 状態方程式により求めよ.また,二酸化炭素の分子パラ メータは,ε / k = 119 K, R = 1.83, σ = 3.917 Åである. 気体定数 R = 0.08206 atm L mol-1 K-1 二酸化炭素のモル質量: 44.01 g mol-1 (2次方程式を解く際には, 大きい方の値を解とする) pv B (T ) =1+ RT v Lieden型ビリアル状態方程式 演習2.3(解答) 二酸化炭素の分子パラメータ ε / kT = 119 K, R = 1.83, σ = 3.917 Å 49
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