授業ガイダンス

生物資源利用学専攻 大学院講義
生物物理化学特論
授業日程(2015年度第3クオーター)
1. (10/6 火)物理量と単位・状態方程式
2. (10/13 火)混合物の熱力学的記述
3. (10/20 火)溶液の熱力学的記述
4. (10/27 火)束一性・混合物の相図
5. (11/10 火)化学平衡の原理
----------------6. (11/17 火)試験 試験問題・解答用紙をこの日に渡す
(社会人学生にはメールを送る).各自で解答用紙に記入して
11/20(金)pm6までに教員へ提出する(社会人学生はメールで).
7. (12/1 火)答案の返却と解答例の解説
【授業概要】
生物は様々な生体分子の絶え間ない合成と代謝により生命を維持している.生命を維持
する複雑な生体システムを科学的に理解するには,生命体に関わる熱力学(エネルギー)
的制御についての物理化学の知識が必要となる.
本特論では,学部レベルの物理化学の復習も交えながら,生化学反応に関わる化学熱力
学の理論的な取り扱いについて概説する.
【参考文献】
【授業にもってくるもの】
 アトキンス「物理化学の基礎」
(学部1年~2年で使用したもの)
 アトキンス「物理化学要論」第5版
(学部授業「生物物理化学」の教科書)
第1章 気体の性質
第5章 純物質の相平衡
第6章 混合物の性質
第7章 化学平衡の原理
付録1 物理量と単位(pp 531-532)
 Chang「生命科学系のための物理化学」
第5章 溶液
第6章 化学平衡




筆記用具とノート
関数電卓
演習問題プリント(配布します)
参考文献(←可能であれば)
【学習項目】5回分の内容
生化学(代謝)反応の熱力学的(理論的な取り扱い方)
 序論・気体の性質
(物理量と単位, 状態方程式)
 混合物の熱力学的な記述方法
(溶液濃度,部分モル量,化学ポテンシャル)
 溶液の熱力学的な記述方法
(ラウールの法則・ヘンリーの法則・実在溶液)
 束一的性質と混合物の相図
(沸点上昇,凝固点降下,浸透圧,2成分と3成分系の相図)
 化学平衡の原理
(反応ギブズエネルギー,平衡定数,ATPの加水分解)
本日の授業
1. 物理量を表す記号・単位を表す記号
(単位を含む計算式の取り扱い方)
2. 状態方程式と状態変化
純物質(一成分系)の相状態図
教科書
付録1(p 531~)
1章 気体の性質(状態方程式・実在気体)
1. 物理量を表す記号・単位を表す記号
物の性質を表わす量
物理量
(イタリック体の活字で表記)
立方体の質量 m = 5.25 kg
立方体の一辺の長さ l = 2 m
立方体の体積 V = l 3 = (2 m)3 = 23 m3 = 8 m3
単位を表わす記号
物理量
質量
長さ
時間
電流
温度
物質量
記号
m
l
t
I
T
n
SI 国際単位系(基本単位)
単位
kg
m
s
A
K
mol
単位の読み方
キログラム
メートル
秒
アンペア
ケルビン
モル
10x を表わす記号
読み方
SI 接頭語
p
n

m
c
d
h
k
M
10-12
10-9
10-6
10-3
10-2
10-1
102
103
106
ピコ
ナノ
マイクロ
ミリ
センチ
デシ
ヘクト
キロ
メガ
奥行 l1  4.0 dm
高さ l2  25 cm
横幅 l3  750 mm
直方体の体積 V  l1  l2  l3
 4.0 dm  25 cm  750 mm  4.0  25  750 10-1 m 10-2 m 10-3 m
 75000 101 23  m 3  75000 10 6 m 3  7.5 10  2 m 3
 7.5 10
2
10 dm 
3
 7.5 10  2 103 dm 3
 7.5 10 dm 3  75 L
重要:1 dm3 = 1 L
組立て単位
基本単位の組み合
わせ(乗除)で定義
された単位
基本単位の組み合わせ
で定義される重要な量
(例) ○力
○圧力
○仕事(エネルギー)
○(密度)
記号
単位
読み方
基本単位との
関係
力
質量 x 加速度
F
N
ニュートン
N (= kg m s-2)
圧力
力÷面積
P, p
Pa
パスカル
N m-2
仕事
(エネルギー)
力 x 長さ
w (E)
J
ジュール
Nm
(密度)
質量÷体積
d
kg m-3
ー
kg m-3
単位を含めた数値計算の例
水 500 cm3 の温度を20℃から25℃まで上げるには10.4
kJのエネルギーが必要である.これは10 kg の質量のおも
りをどれくらいの高さから落下させた時のエネルギーに相
当するか計算せよ(重力加速度 g = 9.81 m s-2 とする).
質量 m
mgh  E
10.4 kJ
10.4 103 N m
E


h
-2
10 103 g  9.81 m s-2
mg 10 kg  9.81 m s
高さ
h
重力加速度 g
10.4 N
10.4 kg m s-2 10.4 103 m



 106 m
-2
-2
10 g  9.81s
10 g  9.81s
10  9.81
答え:106 m 落下させたおもりの運動エネル
ギー が 10.4 kJに相当する.
単位と助数詞
(数とは何か? 単位とは何か? )
小学校の算数の問題
「バナナが3本,みかんが8個ありました.あわせていくつ
になりますか?」
「あわせていくつ」とはどういう意味か?
a) 3本+8個=11本個??
b) 3 + 8 = 11 【正解】
本・個→助数詞
数の後につけて、ど
のような物の数量で
あるかを表す語要素
暗黙のうちに「数学的抽象化」をする訓練を受けている
「バナナ」と「みかん」は“違うもの”だと強く意識している子供は a) で考える
→ 「バナナ」と「みかん」の区別を無視(抽象化)して「数」同士だけを足し合わせる
 「個数」(助数詞)は「単位」では無い(計算式に入れない)…個,枚,本,台,人
 科学の問題では,同じ単位を持つもの同士だけが加算・減算ができる
10.58 m2 +225 cm2 = (10.58 +0.0225) m2
= 10.60 m2
10.58 m2 +225 kg
という計算はできない
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2. 状態方程式と状態変化
理想気体の状態方程式
pV  nRT
圧力・体積・温度の関係
一定温度(T)では V-p の関係
は双曲線で表される
実在気体・液体・超臨界流体に対する圧力・体積・
温度の関係は?
van der Waalsの状態方程式
2

an
 p  2   V  n  b   nRT


V


a 及び b:ファンデルワールスのパラメータ
温度(T)が低いと V-p の関係
を表すグラフに極大・極小が
表れる(次ページ参照)
気体-液体(固体)への相転移
に相当する
a 及び bの意味について
は教科書を参照
純物質(一成分)の気液平衡
例)二酸化炭素の相状態図 (T-p)
二酸化炭素の van der Waals 状態方程式
(臨界温度:304 K,三重点の温度:217 K)
一定温度で体積(V)を
変化させた際の圧力
(p)変化の様子
圧力 p (bar)
100
10
高温
気液転移
340 K
304 K
263 K
低温
1
195 K
固気転移
0.01
0.10
1.00
10.00
モル体積 Vm / L mol-1
ドライアイス(二酸化炭素の固体)
比重: 1.56 (モル体積 = 0.028 L/mol)
昇華温度: -79 ℃= 195 K(at 1気圧)
溶解潜熱: 45.56kcal/kg (190.75kJ/kg)(at 1気圧)
気化潜熱: 88.12kcal/kg (369.94kJ/kg)(at 1気圧)
昇華潜熱: 136.89kcal/kg (573.13kJ/kg)(at 1気圧)
超臨界状態の二酸化炭素(CO2)の利用例
 超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)
SFCはSupercritical Fluid Chromatographyの略.
多くの物質が一定の温度と圧力をかけた際に超臨界流体になる。超臨界流体は液体と気体の両性
質をもった状態であり、これを用いる事で高速・高分離・高感度のクロマト分析ができる。
一般的に用いられる超臨界流体は二酸化炭素(CO2)である。CO2は極性がヘキサンと同等程度で
ある為、 CO2 のSFCは順相クロマトグラフに相当する。
CO2を用いる理由:
 簡単に超臨界流体にすることが可能
 人体に極めて害が少ない
 廃棄が容易
 コストが安い
 常温・常圧に戻せば気散する
→ 容易に分取ができる
 超臨界流体抽出(SFE)
日本分光社製 Semi-prep SFC
SFEはSupercritical Fluid Extractionの略.
目的成分が含まれる対象物に抽出媒体の超臨界流体を加え、溶解度の差を利用して抽出操作を
行う手法. SFE は、天然物からの各種フレーバや薬効成分の抽出、ドコサヘキサエン酸(DHA)、
エイコサペンタエン酸(EPA)などの高度不飽和脂肪酸や脂肪酸エステルの抽出、 脂溶性ビタミン、
医薬品などの有効成分の抽出、脱カフェインや錠剤中の脱溶媒のような不用成分の除去、HPLC
やGC などの分析用試料の前処理に適用されている.