Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
利回り狩りは一休み
2016年9月16日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・8月米小売売上高は前月比▲0.3%と市場予想(▲0.1%)を下回り、5ヶ月ぶりに減少。ガソリン(▲
0.8%)が2ヶ月連続で減少したほか、自動車(▲0.9%)が反動減。それらを除いたベースでも▲0.1%と
弱く、最重要項目のコア小売売上高も▲0.1%と2ヶ月連続のマイナスとなった。同項目の3ヶ月前比年率
は+3.4%へとモメンタムが鈍化。もっとも、8月の弱さは2Qに年率+6.9%と高い伸びを記録した反動
で説明が可能であり、消費の変調を示すものではない。9月FOMCに影響を与える結果ではない。
・9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は+12.8と市場予想(+1.0)を大幅に上回ったものの、ISM
換算では45.2とネガティブサプライズ。8月の46.8から一段と水準を切り下げ、約4年ぶりの低水準とな
った。同日発表された9月NY連銀製造業景況指数もISM換算では45.0と弱く、フィリー指数との平均
は45.1へと3.4pt悪化。この数字から推計した9月ISMは47.5と8月に6ヶ月ぶりに50を下回った後、9
月に一段と水準を切り下げることを示唆している(2000年以降のデータから回帰分析)。
(3ヶ月前比年率、%)
12
コア小売売上高
60
ISM指数・連銀サーベイ
ISM
10
55
8
6
50
4
45
2
フィリー・NY平均
0
40
-2
35
-4
10
11
12
13
14
15
07 08 09 10 11 12 13
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
14
15
16
・8月米鉱工業生産は前月比▲0.4%と市場予想(▲0.2%)を下回り、7月分も0.1%pt下方修正された。鉱
業が+1.0%と4ヶ月連続で伸びた反面、公益が▲1.4%と落ち込み、製造業も▲0.4%と弱かった。製造業
は自動車が+0.5%と順調に伸びた一方、その他の広範な項目が弱く、除く自動車ベースでは約2年ぶりの
低水準となった。
・8月英小売売上高(除くガソリン)は前月比▲0.3%と市場予想(▲0.7%)を上回ったうえ、7月分も+
2.1%へと0.6%pt上方修正された。衣料品・靴(▲3.3%)、家庭用品(▲5.3%)などで反動減が見られ
たものの、通信販売(+2.6%)、百貨店(+0.8%)が堅調に推移。消費者マインドの低下をよそに、小
売売上高の3ヶ月前比年率は+6.8%と強いモメンタムをキープしている。
・BOEはMPCで大方の予想どおり金融政策の現状維持を決定。政策金利は+0.25%で据え置かれ、資産
購入に関しても変更はなかった。現時点ではBREXITの影響が思いのほか小さく、ハードデータを見る限り、
英国経済の軌道が大幅に下方シフトしている様子はない。議事要旨では年内の追加利下げが示唆され、市
場参加者の予想も現時点では11月がコンセンサスとなっているが、英国経済に急減速のシグナルが出なけ
れば、利下げ予想は次第に後ろ倒しされそうだ。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
10
(%)
米製造業生産・PMI
70
(前年比、%)
8
65
6
英
小売売上高
20
10
小売売上高
5
PMI(右)
0
60
4
0
55
2
-10
-2
45
製造業生産
-5
消費者信頼感(右)
0
50
-30
-4
40
-40
10
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 生産は3ヶ月前比年率
-20
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反発。直近2営業日の下落からの反発が意識されるなか、米指標予想比下振れを受けて9
月FOMCの利上げ観測が後退。USD安・原油高も追い風となり、主要銘柄に買いが入った。WTI原油は
43.91㌦(+0.33㌦)で引け。
・前日のG10通貨はUSDが弱めの動き。一方、AUD、NZDの強さが目立ち、それにJPYが続いた。もっとも、
FOMCと日銀会合を控えた様子見姿勢から主要通貨の変動は限定的でUSD/JPYは102近傍での推移となった。
EUR/USDは1.12半ばで膠着。豪雇用統計はやや軟調な結果となったがAUDの売りは限定的だった。
・前日の米10年金利は1.691%(▲0.7bp)で引け。他方、欧州債市場は周縁国を中心に軟調な展開。ドイツ
(0.032%、+1.1bp)、イタリア(1.333%、+3.9bp)、ポルトガル(3.424%、+15.7bp)が何れも金利
上昇となり、ここもとのグローバルなベア・スティープ化が継続。他方、5・10・15年債入札を通過したス
ペイン(1.072%、+0.0bp)は相対的に堅調で横ばい。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはややワイドニ
ング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、米株高に追随して小高く寄り付いた後、USD/JPY上昇に歩調を合わせ上昇幅拡大(10:30)。
・昨日発表された8月豪雇用統計は雇用者数が▲0.39万人と市場予想(+1.50万人)に反して減少。もっと
も、減少の大半を説明しているのは非常勤雇用者(▲1.54万人)で、より重要な正規雇用者(+1.15万人)
は増加しており、ヘッドラインとは裏腹に内容は悪くない。失業率も5.6%へと0.1%pt低下した。今回の
結果は金融政策にニュートラルと判断される。
5
(前年比、%)
豪 雇用統計
(%)
(%)
4
4
雇用者数
3
失業率(右)
豪
雇用統計
(%)
66
3.5
65.5
4.5
労働参加率
64
63
65
62
64.5
61
5
2
5.5
1
64
6
0
6.5
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
60
就業率(右)
63.5
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
59
12
13
14
15
16
・ECBのハト派バイアス修正をきっかけにグロ-バルな債券売りが観測されるなど、9月FOMCを目前に市
場が慌しくなってきた。9月FOMCの利上げ確率は18.0%と、市場では追加利上げ見送りが既定路線になっ
ているものの、日銀9月会合でイールドカーブのスティープ化を促す政策変更があるとの見方が支配的に
なっており、それが本邦投資家の外債購入インセンティブ低下を通じて先進国全体の超長期ゾーン金利上
昇に繋がっているとみられる。要するにFEDの利上げ観測が高まらなくても、ECB、日銀が緩和の手
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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を強めないと市場が判断すれば、金利が上昇するということだ。そうしたなか、筆者が注目するポルトガ
ル10年金利はやや不気味な動きとなっている。リスクオフに対して(適度に)脆弱な同国債10年金利は対
独スプレッドのワイドニングを伴いつつ3.4%まで上昇しており、イールドハンティングの流れが修正され
つつあることを物語っている。こうした流れが続くようだと、世界的に債券代替投資先として資金流入が
続いている高配当株、ディフェンシブセクター、REITなどに影響が広まる可能性が懸念される。世界
的に株式配当利回りが低下していることもあり、イールドハンティングのリスクが再考される可能性はあ
るだろう。投資家の利回り追求意欲を測るうえでポルトガル10年金利に注目。
(%)
ポルトガル10年金利・世界株(MSCiワールド)
4
ポルトガル
10年金利
3.5
世界株(配当利回り)
(%)
3.1
1400
3
1500
2.9
3
1600
2.8
2.5
1700
2.7
2
世界株(右) 1800
1.5
1
15/01
2.6
2.5
16/01
1900
15/05
15/09
16/01
16/05
16/09
16/03
16/05
16/07
16/09
(備考)Bloomberg MSCIワールド
(備考)Bloomberg 対独スプレッド
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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