一発屋に影響力なし 藤代 宏一

Market Flash
一発屋に影響力なし
2016年8月30日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・7月米名目個人消費支出は前月比+0.3%と市場予想に一致。実質ベースでも+0.3%と堅調で、3ヶ月前
比年率では+4.3%と3Qは順調な滑り出しとなった。名目個人所得は前月比+0.4%と引き続き堅調で、
賃金は前年比で+4%程度のトレンドを維持している。貯蓄率は5.7%へと0.2pt上昇。エネルギー支出の
減少(▲0.9%)が貯蓄の源泉になっているとみられる。PCEデフレータは前年比+0.8%と6月から
0.1%pt減速も、コアは前年比+1.6%を維持。
(前年比、%) 名目個人消費・所得
10
(%)
10
8
所得
貯蓄率
9
6
8
4
7
2
6
0
5
消費
-2
-4
4
-6
3
-8
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
米
13
14
15
2
16
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は4日ぶり反発。米指標が堅調で買い安心感。WTI原油は46.98㌦(▲0.66㌦)で引け。特
段の材料はなかったが、ジャクソンホール・シンポジウム通過後の利上げ観測浮上が原油に打撃となって
いる。
・前日のG10 通貨はまちまちの動きとなりUSDの強さは中位程度。USD/JPYは102前半まで上値を伸ばした後、
小幅に反落。EUR/USDは1.11後半での推移が続いた。英国が休日で閑散相場だったこともあり、最強のNZD
が+0.2%、最弱のGBPも▲0.2%と小幅な値動き。
・前日の米10年金利は1.560%(▲7.0bp)で引け。米債市場は、26日の急落に対する修正もあり米国時間入
り後に一貫して堅調に推移。年内利上げ観測の上昇を横目に、ロングエンド主導で超長期ゾーンが堅調。
欧州債市場(10年)は総じて堅調。ドイツ(▲0.083%、▲1.1bp)が小幅な金利低下となったほか、イタ
リア(1.120%、▲1.4bp)、スペイン(0.936%、▲0.8bp)、ポルトガル(3.033%、▲1.1bp)が揃って
金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY反落、米株上昇が綱引きとなり、小幅安で推移(10:00)。
・7月失業率は3.0%と6月から0.1%pt低下。今次サイクルの最低を更新し1995年以来の低水準を記録。就
業者数が20.0万人増加した一方、失業者数が7.0万人減少。非労働力人口も減少(≒労働参加率上昇)して
おり、質の良い回復が続いている。求人関連指標は有効求人倍率が1.37倍と1991年以来の高水準を維持、
新規求人倍率も2.01倍と異例の高水準を維持した。共に分子の求人数が増加しており、企業の旺盛な採用
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
意欲が窺える。
6
5.5
(%)
日 雇用関連統計
新規求人倍率(右)
5
有効求人倍率(右)
4.5
(万人)
(倍)
2.1
105
1.8
95
1.5
85
1.2
75
0.9
65
0.6
55
新規求人数
4
3.5
3
失業率
2.5
0.3
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
16
45
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
・7月消費統計は実質消費支出(家計調査)が前月比+2.5%、振れの大きい住居等を除いたベースのコア支
出が前月比+0.3%と2ヶ月連続の増加。後者は前年比▲0.8%と依然としてマイナス圏での推移となって
いるものの、昨年11月をボトムに改善が続いている。販売側統計である小売売上高(商業動態統計、名目
値)も前月比+1.4%と2ヶ月連続の増加。ガソリンを除いたベースでは前月比+1.6%と強く伸び、前年
比でも+0.8%と3ヶ月ぶりにプラス圏を回復した。消費は緩やかに回復している。
115
実質消費支出
(2010=100)
小売売上高(商業業態統計)
115
110
110
105
105
100
100
95
95
90
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 家計調査ベース、コア
14
15
16
太線:除く燃料小売
・ジャクソンホール・シンポジウムにおけるイエレン議長(講演)とフィッシャー副議長(インタビュー)
の合わせ技で俄かに9月および年内2回利上げ説が現実味を帯びてきた。直後の市場は素直に米金利上
昇・USD高・米株下落で反応。USD/JPYも102に乗せた。9月1日のISM製造業景況指数を無事に通過した
後、2日発表の8月雇用統計で15万人程度の雇用者数増加と、2%台半ばから後半の平均時給上昇が確認
されれば、21日のFOMCで追加利上げが俎上に上がるのは確実だろう。大統領選を控えた不透明感が強まる
時期に引き締め政策は採りにくいという問題はあるにせよ、追加利上げを阻害する確固たるデータがない
のも事実。筆者個人の見解としては12月の追加利上げがメインシナリオだが、場合によっては年内2回
(9・12月)の利上げもあり得る。なお、本日はフィッシャー副議長のインタビューが予定されている
(日本時間19:30、対ブルームバーグ)。ジャクソンホール・シンポジウムで、9月に利上げが実施され
年内に複数回の利上げがあると予期するべきかとの質問に対し、「イエレン議長がこの日の講演で述べた
ことは、この2つの質問に対し『イエス』と答えることと整合性が取れている」と回答した経緯がある。
この発言が裏書きされるかに注目。
・もっとも、年内2回の利上げ計画(及び実施)がUSD/JPYのトレンド反転に繋がるとは考えにくい。2015年
半ば頃までのようにUSD/JPYが上昇基調を辿るには、FEDの複数回かつ断続的な利上げシナリオが市場参
加者に共有される必要があるのだが、現時点で意識されているのはせいぜい2回程度の追加利上げであり、
その先の利上げ計画はほとんど折り込まれていない状況だ。利上げがUSD高要因であること自体は否定しな
いが、目先、1発、2発の利上げがUSD/JPYの軌道に大きな影響を与えることはない。USD/JPYが100を中心
に推移するとの見方に変更はない。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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