Jun 8, 2016 No.2016-026 Economic Monitor 伊藤忠経済研究所 主席研究員 武田 淳 主任研究員 石川 誠 03-3497-3676 [email protected] 03-3497-3616 [email protected] 日本経済:1~3 月期 2 次 QE は上方修正ながら停滞評価は変わらず 1~3 月期の実質 GDP は 1 次速報の前期比+0.4%(年率+1.7%)から本日発表の 2 次速報で+ 0.5%(+1.9%)へ小幅上方修正された。設備投資のほか、個人消費や住宅投資も上方修正され たが、在庫投資が下方修正された。上方修正されたとはいえ、設備投資や個人消費は停滞が続い ており、今後についても円高が懸念材料。停滞から抜け出す材料を見出し難い状況。 設備投資や個人消費の上方修正を在庫投資の下方修正が減殺 本日、発表された 2016 年 1~3 月期 GDP の 2 実質GDPの推移(季節調整値、前期比年率、%) 次速報値(QE)は前期比+0.5%(年率+1.9%) 15 となり、1 次速報値の前期比+0.4%(年率+ 実質GDP 10 1.7%)から小幅に上方修正された。それでも、 その他 5 前の期(10~12 月期)の前期比▲0.4%(年率▲ 1.8%)を埋める程度にとどまっており、日本経 0 済が停滞局面から脱していないことを示した。な ▲5 お、小幅上方修正は当研究所を含めた大方の予想 ▲ 10 通りであり、サプライズはない。 ▲ 15 純輸出 個人消費 設備投資 公共投資 2010 主な需要項目を見ると、設備投資(1 次速報前期 2011 2012 2013 2014 2015 2016 ( 出所) 内閣府 比▲1.4%→2 次速報▲0.7%)のほか、個人消費(+0.5%→+0.6%)や住宅投資(▲0.8%→▲0.7%)が 上方修正されたものの、民間在庫投資(GDP の前期比に対する寄与度▲0.0%→▲0.1%)の下方修正が GDP 成長率への影響を減殺した。 国内民間需要の停滞続く 設備投資は上方修正となったものの、3 四半期ぶりの前期比マイナスであることは 1 次速報から変わらず、 しかも、 増加が続いた前 2 四半期も小幅増にとどまっていた(7~9 月期前期比+0.8%、10~12 月期+1.3%) ことから、停滞局面が長期化しているという評価になろう。前年同期比が 10~12 月期の+4.1%から 1~3 月期は+0.4%まで鈍化していることが、その証左 個人消費の財別推移(季節調整値、前期比、%) である。 4 個人消費に至っては、前期比+0.6%に上方修正さ れたが、前の期の▲0.8%という落ち込みを埋め切 れておらず、1~3 月期の水準が閏年によって押し 上げられていたことも考慮すると、低迷が続いた という評価が妥当であろう。財別の内訳を見ると、 3 2 1 0 ▲1 ▲2 ▲3 その他 非耐久財 耐久財 ▲4 耐久財が前期比+6.6%と顕著に増加しているが、 ▲5 大部分が前の期に落ち込んだ反動とみられ(10~ ▲6 12 月期▲5.8%)、同じく前の期に大きく落ち込ん 2010 2011 半耐久財 サービス 家計消費 2012 2013 2014 2015 2016 ( 出所) 内閣府 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研 究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告 なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。 Economic Monitor 伊藤忠経済研究所 だ衣料品や雑貨などの半耐久財は+0.6%と概ね横ばいにとどまるなど(10~12 月期▲3.2%) 、マインド に左右されやすい選択的な消費は回復に程遠い状況にある。さらに、閏年によって嵩上げされやすい食料 品などの非耐久財が前期比横ばいにとどまったことは、節約志向が強まっている可能性を示しているとい う見方もできよう。 円高の影響が今後の懸念材料 2 四半期ぶりの増加に転じた輸出(10~12 月期前期比▲0.8%→1~3 月期+0.6%)についても、リバウン ドの域を脱しておらず、今後については年初から進んだ円高の影響が懸念される。円高は企業収益の下押 しを通じて設備投資にも悪影響を及ぼす可能性もあり、民間需要は総じて先行きに関する好材料に乏しい。 当面は、昨年度 2 次補正予算の執行が本格化することに伴う公共投資の持ち直しに、景気の下支え役を期 待せざるを得ない状況であり、個人消費の復調が待たれるところである。 2
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