ハイスピードフローサイトメーター CyAn™ADPを用いた細菌生存率の測定

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CyAn No. 2
CyAn No.2
ハイスピードフローサイトメーター
CyAn™ADPを用いた細菌生存率の測定
はじめに
細菌生存率の評価は、食品・医薬品の製造から環境モニタリングにいたる多くの用途において極めて重要です。従来の
測定は、希釈・播種による細菌培養で行われ、数日を要します。それに対してフローサイトメトリー分析なら、1秒当たり
最大50,000個の細胞を正確かつ迅速に評価することができます。以下にインビトロジェン社のLIVE/DEAD® BacLight™
Bacterial Viability Kit*を用いたCyAn ADPの細菌測定例を紹介します。
材料と方法 - 細胞調製と染色
Escherichia coli は、Tryptic Soy Brothを用いて37℃で培養しました。培養液から1mLを分取し、10,000×gで3分間
遠心し、ペレットにHank緩衝塩溶液(HBSS)で再懸濁し、濃度を1~5×106 cells/mLとしました。
LIVE/DEAD BacLight Bacterial Viability Kitは、2種類のDNA染色試薬で構成されています。細胞膜透過性のある
SYTO 9(励起波長488 nm、最大蛍光波長498 nm)はすべての細胞を染色します。一方、細胞膜非透過性のPI(励起
波長488 nm、最大蛍光波長630 nm)は、膜が損傷した細胞(non-viable cell)にのみを染色します。1mLの細菌懸濁液
に、SYTO 9およびPIを各1.5 µL加え、室温暗所で10分間放置し、CyAn ADPで測定しました。コントロールサンプルには、
生きていることを確認した培養細胞を生細胞コントロールとして、アルコール固定細胞(70%エタノールで1時間処理)を
死細胞コントロールとして使用しました。
結果
CyAn ADPの光学フィルタ設定では、488nmレーザ用の
標準光学フィルタを用いました。トリガーはFL1に設定し、
FS Log vs. SS Logプロット(図1)で細胞集団にリージョン
を設定し、ゲートに用いました。
BacLight で 染 色 さ れ た 生 細 胞 / 死 細 胞 集 団 は 、
FL1 Log(SYTO 9)vs FL3 Log(PI)のプロットで確認しま
した。
図2は E.coli のコントロールサンプルでの生細胞/死細
胞集団の測定例です。
図1
図2
図3
図4
図3は培養7日目のE.coli の生存率の測定例です。この
方法をマロラクティック発酵菌である Oenococcus oeni
でも検討し、その染色例を図4に示しました。
AP8-0808
考察
ここでは、細菌生存率を正確に測定する簡単かつ
迅速な方法をご紹介しています。ほぼリアルタイムで
データを得られることは、研究をスピードアップさせると
ともに、産業用途での大量培養においても重要と考え
られます。
今回の例では、32,000細胞/秒以上の速度で測定
しています。CyAn XDPでは、ハイスピードアナリシスが
可能です。図5に示すように実測した場合、66秒で
トータル細胞数 2,118,565個(32,099個/秒)が測定
できます。
図5
ヒント
•
装置のセットアップには、測定する細菌と同程度のサイズのビーズを用います。ビーズのサイズ選択の際は、その細胞の
状態(例:双球状、連鎖状、房状など)も考慮する必要があります。側方散乱光用の電圧の調整、および前方散乱
光用のニュートラルデンシティ(ND)フィルタを変更し、粒子がFS Log vs SS Logのヒストグラム上で適切に表示される
ようにします。
•
バッファ液のみを測定し、ノイズレベルを確認してください。ノイズを減らすには、ゲーティングを行うか、Threshold(閾値)
を大きくします。側方散乱光、または蛍光パラメータの検出感度を低くしてもノイズを減らすことができます。測定時に
生細胞/死細胞集団の分離が良くない場合は、色素の添加比率を調整してください。適切な染色ができているか
どうか、また、一方の色素の染色が他方より顕著かどうかは、蛍光顕微鏡観察で確認することをお勧めします。
•
SYTO 9を用いて測定を行った後は、その後のサンプルに蛍光色素のコンタミネーションの恐れがありますので、フロー
サイトメーターのサンプルインジェクション系を十分に洗浄してください。その際、70%エタノール4mLをサンプルとして
流してください(Boostingを使用し、速度を上げることで洗浄のスピードアップができます)。洗浄の確認には、実験の
前と洗浄の後に8 Peak FluoroSphereなどのビーズを測定することをお勧めします。8 Peak FluoroSphereビーズの
最初と最後のピークにリージョンを設定し、これらが洗浄後も同一であることを確認します。さらにエタノール洗浄が必要
な場合は、新しいビーズで再度検証してください。
参考文献
Stocks S.M. 2004. Mechanism and use of the Commercially Available Viability Stain, BacLight. Cytometry Part A 61A: 189-195.
*LIVE/DEAD BacLight Viability Kitは、invitrogen社の登録商標です。