補充問題の解(一部)

力学2演義スタンダード補充問題(阿久津)(2016年)解答(一部)
http://wwwacty.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~acts/mechanics2/mechanics2.html#engi
補充問題:総合演習問題
[補.1] (基本)1自由度系(一般化座標 q )に関し、最小作用の原理からラグランジュ方程式を導
出せよ。
[補.2] (標準)自由粒子の1次元運動に関し、ラグランジュ方程式の解が、確かに作用汎関数の最
小を与えていることを示せ。
m
(解)L = ẋ2 より、ラグランジュ方程式の解 x(t) からの変分を計算すると
2
δS = S[x(·) + δx(·)] − S[x(·)]
]
.
∫ tB [
z{
m
m
=
dt
(ẋ + δx)2 − (ẋ)2
2
2
tA

( . )2 
.
∫ tB
z{
z{
m
=
dt 2ẋ δx + δx 
2
tA
(
. )
∫ tB
∫ tB (z{. )2
z{
m
m
dt
=
dt δx .
2ẋ δx +
2
2 tA
tA
.
z{
δx の1次の項は、部分積分+ラグランジュ方程式によって消える。よって
δS =
∫
m
2
tB
( . )2
z{
dt δx
tA
≥ 0.
つまり、ラグランジュ方程式の解は作用汎関数の最小である。
[補.3] (やや難)1次元調和振動子に対するラグランジュ方程式の解は、作用汎関数の停留値を与
えるが、最小値を与えないことを示せ。
1
1
(解)ラグランジアンを L[x, ẋ] = mẋ2 − mω 2 x2 とする。[補.2] と同様に(ラグランジュ
2
2
方程式の解からの)作用 S の変分を計算すると、
δx の1次の項は、ラグランジュ方程式(停
.
z{
留条件)をもちいて消える。よって、δx, δx の2次のみ残る:

( . )2
z{
1
m
dt 
δx − mω 2 (δx)2 
2
2
tA

( . )
2
∫ tB
z{
m
dt  δx − ω 2 (δx)2 
2 tA
∫
δS
=
=
=
δ S̃
≡
def

tB
m
δ S̃
2

( . )
∫ tB
z{ 2
dt  δx − ω 2 (δx)2  .
tA
境界条件 δx(tA ) = 0, δx(tB ) = 0 を満たす δx(t) で δS が容易に計算可能なものとして、まず
[
]
π
δx(t) = sin
(t − tA )
tB − tA
の場合を考える。
[
]
d
π
π
δx(t) =
cos
(t − tA )
dt
tB − tA
tB − tA
∫
(
tB
dt
tA
∫
]
)2
)2
[
∫ tB (
d
π
π
2
(t − tA )
δx(t)
=
cos
dt
dt
tB − tA
tB − tA
tA
(
)2
π
1
=
(tB − tA ). (半角の公式をもちいて計算)
tB − tA
2
∫
tB
dt δx(t)
2
=
tA
dt sin
tA
=
[
tB
2
]
π
(t − tA )
tB − tA
1
(tB − tA ). (半角の公式をもちいて計算)
2
よって
[(
]
)2
tB − tA
π
δ S̃ =
− ω2
2
tB − tA
)
(
π
.
< 0
for ω >
tB − tA
つまり、ある程度大きな ω に対しては、S が最小にならないことが言える。実は、逆に、フー
π
リエ級数の方法をもちいると、ω <
の場合には最小となることが示せるが、これに
tB − tA
ついては割愛する。
[補.4] (基本)中心力ポテンシャル中の粒子の3次元運動では、角運動量ベクトル ⃗ℓ が保存される
ことを示せ(なるべく解析力学風に)。
[補.5] (標準)
「角運動量ベクトル ⃗
ℓ が保存する」ことをもちいて、粒子が平面運動することを導け。
[補.6] (重要)中心力ポテンシャル中の粒子の3次元運動で保存される、角運動量の大きさを ℓ と
する。運動を極座標で記述し、角運動量保存則をもちいると、動径の運動が、中心力ポテン
シャルと遠心力ポテンシャルの中での1次元運動となることを示せ(遠心力ポテンシャルの
具体的表式をもとめよ)。
(解)第14回 [A.1] 参照。
[補.7] (標準)2重振り子のラグランジアンを記し、運動方程式を書き下せ(2つの振り子の質量
を m1 , m2 、長さを ℓ1 , ℓ2 とする)。
[補.8] (標準)上記2重振り子の微小振動について議論せよ(規準モードをもとめよ)。
[補.9] (基本)固定軸のまわりの剛体の回転運動を考える。軸のまわりの慣性モーメントを I 、回
転角 φ に依存するポテンシャルを U (φ) とする。ラグランジアンを記し、運動方程式を書
け。また、正準運動量 p の表式を求め、ハミルトニアンを記せ。
[補.10] (標準)傾斜角 θ の坂を、滑らずに最短距離で下る球の加速度(坂道に沿った)をもとめよ。
[補.11] (基本、重要)調和振動子(質量 m、座標 x、角振動数 ω )のラグランジアン L の表式、正準
運動量 p の定義、ハミルトニアン H の表式、正準方程式、位相空間の面積、について記せ。
[補.12] (標準)ネーターの定理は何を主張しているのか述べよ。また、その適用例を具体的に示せ。
[補.13] (標準)「変数変換 {qi }, {pi } → {Qi }, {Pi } が正準変換であるための必要十分条件は、基本
ポアソン括弧が不変に保たれることである」ということが知られている。ここで言う、基本
ポアソン括弧が不変とは、性質 {Qi , Qj }q,p = 0, {Pi , Pj }q,p = 0, {Qi , Pj }q,p = δij が成り立つ、
ということである。このことを踏まえて、変数変換 q, p → Q = q α cos βp, P = q α sin βp が正
準変換となるための α, β に対する条件を求めよ。
(解)基本ポアソン括弧を計算する。{Q, Q} = 0, {P, P } = 0 は自明。
∂q α cos βp ∂q α sin βp ∂q α sin βp ∂q α cos βp
{Q, P } =
·
−
·
∂q
∂p
∂q
∂p
( α−1
)
(
)
α
α−1
= αq
cos βp · βq cos βp − αq
sin βp · (−βq α sin βp)
(
)
= αβq 2α−1 cos2 βp + sin2 βp
= αβq 2α−1 .
これが 1 となるには
1
α= ,
2
β = 2.
[補.14] (やや難)張力一定の膜の微小振動が2次元波動方程式を満たすことを示せ。
[補.15] (やや難)
「球面上の2点を最短で結ぶ曲線は大円の一部である」ということを、ラグランジュ
未定乗数法をもちいた変分法で導出せよ。
(ヒント)まず、単位球面上の曲線上の点 x, y, z を
ある変数 t でパラーメータ化し(x = x(t), y = y(t), z = z(t))、曲線の長さ ℓ を
∫ 1√
dx
ℓ=
ẋ2 + ẏ 2 + ż 2 dt (ẋ =
, . . .)
dt
0
と表す。「単位球面上にある」という拘束条件を x(t)2 + y(t)2 + z(t)2 − 1 = 0 と表現し、ラ
グランジュ未定乗数 λ を導入して
∫ 1 {√
[
]}
ℓ̃ =
dt
ẋ2 + ẏ 2 + ż 2 − λ(t) x(t)2 + y(t)2 + z(t)2 − 1
0
の変分問題を考える。中心力ポテンシャル中の力学の問題と近い問題となり、
「角運動量」に
相当する保存量の存在が言える。これから、解曲線が原点を通る平面上にあることが言え、
大円の一部となることが示される。
(解)
∫
ℓ̃ =
1
dt
{√
[
]}
ẋ2 + ẏ 2 + ż 2 − λ(t) x(t)2 + y(t)2 + z(t)2 − 1
0
の停留条件式(オイラー・ラグランジュ方程式)は
( √ )
d ∂ ⃗r˙ 2
∂⃗r 2
=0
+ λ(t)
dt
∂⃗r
∂⃗r˙
d
dt
⇕
(
⃗r˙
√
⃗r˙ 2
)
+ 2λ(t)⃗r = 0.
これより、次の量 m
⃗ が「保存量」(t に依らない) であることがわかる:
(
)
⃗r˙
m
⃗ = ⃗r × √
⃗r˙ 2
(実際に t 微分して確認できる)。この定義により
⃗r · m
⃗ =0
が成立する。よって、⃗r は、座標原点を通り、定ベクトル m
⃗ に直交する平面上にある。この
平面と単位球面の交わりは大円である。