傾いたディラックコーンをもつ系における 磁場中のエネルギー準位構造

傾いたディラックコーンをもつ系における
磁場中のエネルギー準位構造
12-041-016 ガラムカリ 和
目次
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ディラックコーン
傾いたディラックコーン
一様磁場中の傾いたディラックコーン
六角格子系
・この発表を通して電子のスピンは一切考慮しない
・扱う系は全て2次元系
ディラックコーン
2次元系のディラックコーン
自由電子の分散関係
ディラックコーン
𝜀𝑘
𝜀𝑘
ky
ky
kx
kx
2
𝜀𝑘 ∝ ±|𝐤|
2
ℏ |𝒌|
𝜀𝑘 =
∝ 𝐤
2𝑚
2
例:グラフェン
2次元
2次元系における磁場中の議論
ディラックコーン
𝜀𝑛
⋯
⋯
自由電子の分散関係
𝜀𝑛
ここに注目
0
1
𝜀𝑛 = ℎ𝜔 𝑛 +
2
ゼロ点振動
0
𝑛 = 0,1,2 ⋯
𝜀𝑛 = 0をみたす状態がない
⋯
古典的にはサイクロトロン運動
→調和振動子の形に帰着
𝜀𝑛 = ±ℎ𝜔 𝑛
𝑛 = 0,1,2 ⋯
𝜀𝑛 = 0をみたす状態がある
ディラックコーンを実現する系の例
例:グラフェン(六方格子上にC原子を並べたシート)
𝜀𝑘
𝜀𝑘
kx
ky
kx
ky
ディラックコーン
例:α-(BEDT-TTF)2I3
𝜀𝑘
𝜀𝑘
kx
ky
kx
ky
傾いたディラックコーン
傾いたディラックコーンに磁場を与えた時のゼロエネルギー準位を調べる
J. Phys. Soc. Jpn. 78 (2009) 114711
傾いたディラックコーンについて調べる
傾いていないディラックコーン
ディラックコーンを実現するハミルトニアン
0
𝐻 𝒌 =𝑣
𝑘𝑥 + 𝑖𝑘𝑦
𝑘𝑥 − 𝑖𝑘𝑦
0
サブ格子A
サブ格子B
ディラックコーンの分散関係
𝜀𝑘 = ±𝑣 𝑘𝑥
2
+ 𝑘𝑦
2
= ±𝑣 𝐤
𝜀𝑘
ky
kx
傾いたディラックコーン
傾いたディラックコーンを実現するハミルトニアン
𝜂𝑘𝑦
𝐻 𝒌 =𝑣
𝑘𝑥 + 𝑖𝑘𝑦
𝑘𝑥 − 𝑖𝑘𝑦
𝜂𝑘𝑦
𝜂∈ℝ
傾いたディラックコーンの分散関係
𝜀𝑘 = 𝑣𝜂 ± 𝑣 𝑘𝑥
2
+ 𝑘𝑦
2
= 𝑣𝜂 ± 𝑣 𝐤
ディラックコーンを傾かせる。
𝜀𝑘 = 𝑣𝜂𝑘𝑦 ± 𝑣|𝐤|
𝜀𝑘
倒れ切る
母線
ky
kx
𝜂=0
𝜂 = 0.6
𝜂=1
𝜈に対して𝜂を大きくするとコーンが傾く
ディラックコーンに磁場をかける
磁場なし
0
𝐻 𝒌 = 𝜈
𝑘𝑥 + 𝑖𝑘𝑦
𝑘𝑥 − 𝑖𝑘𝑦
0
一様な磁場B=(0,0,B)を印加。 𝑨 = 0, 𝐵𝑥, 0
𝒌 → 𝒌 − 𝑒𝑨
0
𝑘𝑥 − 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝐻 𝒌 =𝜈
𝑘𝑥 + 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
0
[𝑥, 𝑘𝑥 ] = 𝑖
非可換性をどうするか
ディラックコーンに磁場をかける
一様な磁場B=(0,0,B)を与える。 𝑨 = 0, 𝐵𝑥, 0
0
𝐻 𝒌 =𝜈
𝑘𝑥 + 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝑎=
1
2𝑒𝐵
(𝑘𝑥 − 𝑖𝑘𝑦 − 𝑖𝑒𝐵𝑥)
0
𝐻 𝒌 = 2𝑒𝐵 †
𝑎
𝜙0 𝑥 =
0
𝜓0
𝑘𝑥 − 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
0
𝑎, 𝑎† = 1
調和振動子の昇降演算子
𝜀𝑛
𝑎
0
が基底状態
𝜓0 :調和振動子の基底状態
0
0
0 𝑎
𝐻 𝒌 𝜙0 = 2𝑒𝐵 †
=0
𝑎
0 𝜓0
エネルギー0の準位が存在することを確認した。
傾いたディラックコーンに磁場をかける
磁場なし
𝜂𝑘𝑦
𝐻 𝒌 = 𝜈 𝑘 + 𝑖𝑘
𝑥
𝑦
𝑘𝑥 − 𝑖𝑘𝑦
𝜂𝑘𝑦
解けてる
一様な磁場B=(0,0,B)を印加。 𝑨 = 0, 𝐵𝑥, 0
𝒌 → 𝒌 − 𝑒𝑨
𝜂(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝑘𝑥 − 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝐻 𝒌 =𝜈
𝑘𝑥 + 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝜂(𝑘𝑦 + 𝑒𝐵𝑥)
[𝑥, 𝑘𝑥 ] = 𝑖
傾いたディラックコーンに磁場をかける
一様な磁場B=(0,0,B)を印加。 𝑨 = 0, 𝐵𝑥, 0
𝜂(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝑘𝑥 − 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝐻 𝒌 =𝜈
𝑘𝑥 + 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝜂(𝑘𝑦 + 𝑒𝐵𝑥)
= 2𝑒𝐵
𝑖
− (𝑎† −
2
†
𝑎
𝑎)
𝑎
𝑖
− (𝑎†
2
− 𝑎)
𝑎, 𝑎† = 1
ゼロエネルギー状態が現れるかは分からない。
→傾いたディラックコーンを実現するモデルを考える
→そこに磁場を与えた時のスペクトルを数値的に求める
六角格子系
傾いたディラックコーンを実現するモデル
グラフェンをベースにした六角格子モデル
−𝒂𝟏
−𝒂𝟑
−𝒂𝟐
𝒃𝟐
𝒃𝟑
第1隣接へのHopping 𝑡1 > 0
第2隣接へのHopping 𝑡2 ≥ 0
サイト数 2N2
周期境界条件
電子は第1隣接と第2隣接の一部にとびうつる
六角格子系のバンド構造
六角格子系のハミルトニアン
𝐻=
−2𝑡2 [cos 𝒌 ⋅ 𝒃1 + cos(𝒌・𝒃2 )]
∑𝑖 [cos 𝒌 ⋅ 𝒂𝑖 + 𝑖 sin 𝒌 ⋅ 𝒂𝒊 ]
𝑡1 = 1, 𝑡2 = 0
∑𝑖 [cos 𝒌 ⋅ 𝒂𝑖 − 𝑖 sin 𝒌 ⋅ 𝒂𝒊 ]
−2𝑡2 [cos 𝒌 ⋅ 𝒃1 + cos(𝒌・𝒃2 )]
ディラックポイント近傍でのバンド構造
𝑡1 = 1, 𝑡2 = 0
𝐸
𝐸
𝑘𝑦
𝑘𝑥
𝑡1 = 1, 𝑡2 = 0.5
𝐸
𝑘𝑥
𝑘𝑦
𝑘𝑦
𝑘𝑥
𝑡1 : 𝑡2 = 1: 0.5でコーンが倒れ切る
六角格子系に一様磁場を与える
𝐁 = 0,0, 𝐵
𝐀 = 0, 𝐵𝑥, 0
Hopping
𝑡1 → exp
𝑡2 → exp
𝑒
𝑖 𝐶
ℎ
𝑒
𝑖 𝐶
ℎ
𝑨 𝒓 ・𝑑𝒓 𝑡1
𝑨 𝒓 ・𝑑𝒓 𝑡2
とびうつりの経路に沿った𝑨 𝒓 の線積分
だけ位相がズレる。
サイト数 2N2
2𝑛𝜋
ℏ 𝑛∈ℤ
周期境界条件より 𝐵 =
𝑁
フーリエ変換ができない。
実空間でのハミルトニアンを書き下して数値計算
対角化する7200次元行列
⋯
𝑒 −𝑖𝐵 𝑡1
0
𝑒 𝑖𝐵 𝑡1
⋯
0
𝑒 −𝑖𝐵 𝑡1
0
⋯
𝑡1
3
𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
0
⋯
3
−𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
𝑡1
3
𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
⋯
0
3
−𝑖2𝐵
𝑡1
⋯
0
−𝑖2𝐵
𝑡1
⋯ 𝑒
3
−𝑖2𝐵
𝑡1
1
𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
⋯
3
−𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
𝑡1
⋯
0
𝑒 𝑖2𝐵 𝑡1
0
0
⋯
0
𝑒 𝑖2𝐵 𝑡1
0
⋯
0
𝑒 −𝑖2𝐵 𝑡1
0
0
0
𝑒 −𝑖2𝐵 𝑡1
𝑒 𝑖2𝐵 𝑡1 ⋯
0
⋯
⋯
⋯
⋯
0
⋯
0
𝑡2
⋯
0
𝑒
⋯
3
𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
𝑡1
⋯
𝑡1
𝑒
⋯
⋯
𝑡2
⋯
0
3
𝑖 2𝐵
⋯
0
0
⋯
3
𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
⋯
⋯
0
⋯
𝑡1
3
−𝑖 𝐵
⋯ 𝑒 2 𝑡2
⋯
𝑡1
⋯
⋯
𝐻=
𝑒
0
0
𝑒 𝑖𝐵 𝑡1 ⋯
0
⋯
0
−𝑖𝐵
⋯
3
−𝑖 𝐵
𝑒 2 𝑡2
0
𝑒
⋯
⋯
0
⋯
𝑡1
⋯
⋯
0
⋯
⋯
0
⋯
⋯
𝑒 𝑖𝐵 𝑡1
⋯
⋯
0
⋯
𝑒 = 1, ℏ = 1
⋯
六角格子系に磁場を与えた系のスペクトル
𝑡2 = 0(コーンは傾いていない), 𝑁 = 60の場合
E
エネルギーゼロの準位がある
𝑛 = 1で𝑡2 を動かしていく
𝑛(磁場)
六角格子系に磁場を与えた系のスペクトル
E
𝑁 = 60, 𝑛 = 1, 𝑡1 = 1
連続したスペクトルに埋没
注目
傾くとゼロエネルギー準位がなくなる
𝑡1 /2
𝑡2 (傾き具合)
まとめ
・コーンを倒すとゼロエネルギー準位が消える。
・ゼロエネルギー準位につながる孤立準位は残る。
・コーンが倒れ切ると孤立準位は連続した準位に埋没する。
E
𝑡1
2
今後の課題
・倒れ切る直前までの解析解と比較する。
𝑡2 (傾き具合)
どのように数値計算したか
• 六方格子系を正方格子系に帰着させた。
質問用
どのように数値計算したか
質問用
格子点 𝑥, 𝑦 に粒子がある状態 |𝑥, 𝑦
|𝑥, 𝑦 = |𝑥 + 𝑁, 𝑦
境界条件
|𝑥, 𝑦 = |𝑥, 𝑦 + 𝑁
Hopping
𝑡1 → exp
(0,0)
𝑡2 → exp
𝑒
𝑖 𝐶
ℎ
𝑒
𝑖 𝐶
ℎ
𝑨 𝒓 ・𝑑𝒓 𝑡1
𝑨 𝒓 ・𝑑𝒓 𝑡2
この系のハミルトニアン
𝑥, 𝑦の偶奇が一致のときのみ足す
𝐻 = −𝑡1 ∑𝑥,𝑦 |𝑥, 𝑦 𝑥 + 1, 𝑦| + |𝑥, 𝑦 𝑥 − 1, 𝑦|
偶奇が不一致のときのみ
−𝑡1 ∑𝑥,𝑦 |𝑥, 𝑦 𝑥, 𝑦 + 1| + |𝑥, 𝑦 𝑥, 𝑦 − 1|
−𝑡2 ∑𝑥,𝑦 |𝑥, 𝑦 𝑥 − 1, 𝑦 + 1| + |𝑥, 𝑦 𝑥 + 1, 𝑦 + 1| + H. c.
質問用
傾いたコーンに磁場を与えた場合の解析解
傾いたコーンに一様な磁場B=(0,0,B)を印加。
𝒌 → 𝒌 − 𝑒𝑨
𝑨 = 0, 𝐵𝑥, 0
𝜂(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝑘𝑥 − 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝐻 𝒌 =𝑣
𝑘𝑥 + 𝑖(𝑘𝑦 +𝑒𝐵𝑥)
𝜂(𝑘𝑦 + 𝑒𝐵𝑥)
傾いた2次元ディラックコーンに磁場をあたえた系
𝐸𝑛 = 𝑣 𝑒𝐵sgn(𝑛)
2𝜆3 |𝑛|
𝑛∈ℤ
𝜆=
𝜂 < 𝑣で解析的に解けた。
コーンが倒れ切った時の準位の様子はわからない
1 − 𝜂2
質問用
パイエルス位相について
磁場がない場合
𝒑2
𝐻=
+ 𝑈(𝒓)
2𝑚
𝑡12 =
𝑑𝒓𝜙 ∗ 𝒓 − 𝑹1 𝐻𝜙(𝒓 − 𝑹𝟐 )
𝜙 𝒓 − 𝑹 :Rに局在した電子の波動関数
磁場がある場合
(𝒑 − 𝑞𝑨)2
𝐻=
+ 𝑈(𝑟)
2𝑚
磁場がある時に𝑅1 に
局在した波動関数
𝒓
𝐺𝑅 =
𝐴・𝑑𝒍
𝑅
𝑖
𝒑 − 𝑞𝑨 2
𝑡12 =
𝒓 − 𝑹𝟏
+ 𝑈 𝒓 𝑒 ℎ𝐺𝑅 𝜙(𝒓 − 𝑹2 )
2𝑚
2
𝑞 𝑅
𝒑
= 𝑒 𝑖 ℏ 𝑅′ 𝑨・𝑑𝒍 𝑑𝒓𝜙 ∗ 𝒓 − 𝑹1
+ 𝑈 𝒓 𝜙(𝒓 − 𝑹2 )
2𝑚
結晶格子中でベクトルポテンシャルは不変であることを用いた。
𝑖
−ℎ𝐺𝑅 ∗
𝑑𝒓𝑒
𝜙
予備
リフシッツ転移
𝜂 = 𝑣でコーンが倒れ切る
状態密度が小さい
𝜀𝐹
𝜀𝐹
𝜀𝑘
ky
𝜂=0
状態密度が
突然大きくなる
𝜂=𝑣
kx
電子が下のコーンを全て占有している状態を考える
比熱
リフシッツ転移
予備
比熱などの量が不連続に変化。
0
𝜈
𝜂(傾き具合)
𝜀𝐹