微分方程式 Ⅰ 小テスト 4 2016 年度前期 未来科学部 2 年 情報メディア学科 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) 注. どこに解答が書かれているのかが はっきりと 分かるようにすること。必要ならば裏も使って良いが、 その旨を明記すること。解答が判別出来ない場合は得点がつかない可能性もあるので気をつけよう。 ※ If you are not good at writing Japanese sentences, you can answer the following problems in English. 問題 4-1. 以下の空欄に当て嵌まる語句を答えなさい。 [2 点] dy 『1 階線形微分方程式 + p(x)y = q(x) · · · (†) に於いて、右辺の非斉次項 q(x) を定 dx dy 数関数 0 に置き換えて得られる微分方程式 + p(x)y = 0 を、線形微分方程式 (†) の dx と呼ぶ。 』 問題 4-2. 微分方程式 dy 1 − (cos x)y = − sin x dx cos2 x · · · (∗) について以下の設問に答えなさい。 (1) 定数関数 y = tan(x) が (∗) の特殊解となっていることを確認しなさい。 (2) 微分方程式 (∗) の一般解を求めなさい。 [2 点] [3 点] 【解答】 問題 4-1. 同伴方程式 問題 4-2. (1) y = tan x を (∗) の左辺に代入して計算すると ((∗) の左辺) = d 1 (tan x) − (cos x) · tan x = − sin x = ((∗) の右辺) dx cos2 x となり、等式 (∗) が成り立つので、y = tan x は (∗) の特殊解。 ※ tan x の微分は、 d sin x d (tan x) = に 商の微分法 を用いて計算する。 dx dx cos x ∫ dy − (cos x)y = 0 の一般解は y = Ce + cos x dx = Cesin x なので (但し dx C は任意の実数)、(∗) の一般解は y = tan x + Cesin x (但し C は任意の実数) となる。 (2) (∗) の同伴方程式 採点講評 問題 4-1. 大方 良く出来ていました。 一部 斉次 1 階線形微分方程式 という解答が (少なからず) 見られま したが、「右辺の q(x) を 0 に置き換えて得られる」 と強調しているのであるから 同伴方程式 と いう単語をスマートに答えて欲しいものです。というわけで 斉次 1 階線形微分方程式 という解答 は残念ながら 1 点です。 また 非斉次 1 階線形微分方程式 という解答も見られました。 斉次 と 非斉次 のどちらがどち らであったかはしっかりと区別できるようにしておきましょう。 問題 4-2. 良く出来ていました が、定数変化法を用いようとしてはまっている人も見られました。残念。 1 階線形微分方程式の基本は 特殊解 + 同伴方程式の一般解 です。今回のように 特殊解が分かっ てしまっている場合 (或いは直ぐに見当が付いてしまう場合) は、さらっと同伴方程式の一般解と ドッキングさせて一般解を求めてしまいましょう。 (1)「特殊解」とは言っているけれど、要するに y = tan x が (∗) の解であることを確認しなさい ということなのだから、y = tan x を (∗) の左辺に代入したら右辺になること をきちんと計 算して確認するだけです。ぶっちゃけ サービス問題 です。(1) に全く手が付けられていな い人は、そもそも 「微分方程式 (の解) とは何か?」 というところを曖昧にしてしまっている ように思えます。 この先 2 階の微分方程式等どんどん複雑な微分方程式を扱っていくにつれ て、「微分方程式を解く」ということの意味 を見失ってしまいがちです。初回の講義ノート や参考書の最初の方を読み返して、「微分方程式を解くとはどういうことか?」 を今のうちに 振り返っておきましょう。 (2) (∗) の特殊解は (1) で与えられているのだから、後は 同伴方程式の一般解を求めるだけ です。 - 同伴方程式の一般解 y = Ce+ sin x については多くの方が但しく求められていましたが、 やはり 符号のミス y = Ce− sin x も少なくありませんでした。恐らく 1 階線形微分方程 式で最もミスしやすい箇所がこの部分の 符号 ですので、しっかり復習しておくととも に、(講義中にも述べたように) もし ± のどちらだったか忘れてしまったとしても、検算 して正しい符号を選べるようにしておきましょう。人間の記憶力なんて当てになりません ので、このような 予防策を幾重にも張り巡らせておくこと がケアレスミスを無くすため の最善策です。 - 同伴方程式の一般解は正しく求められていたのに、最後の最後でツメの甘い 惜しい答案 が数多く見られました。例えば ⋆ 同伴方程式の解 y = Cesin x をそのまま解にしてしまった; ⋆ 特殊解ではなく、(∗) の右辺をドッキングして y = 1 − sin x を解としてし cos2 x まった など、何れも 最後に数秒見直せば気付けるミス です。まぁ今回は良い人生経験だと思っ て、次回以降同じミスをしないように心掛けましょう。 ⋆ やはり 定数変化法 を試みて玉砕された方が何名も出てしまいました。お疲れさまです。 定数変化法は、一見すると万能な方法にも見えますが、途中で登場する C ′ (x) の積分が 必要以上に複雑になる ことも多く*1 、今回の問題のように簡単には積分が計算出来ない ことも少なくありません。したがって 定数変化法を用いなくても特殊解が簡単に分かる なら、それを用いた方が圧倒的に速い ことは頭の片隅に置いておいた方が良いです。今 回は (1) に特殊解が 書いてある のですから、それを使えばおしまいです。ひとつのやり 方に固執せず、物事の大局を俯瞰できるような心の余裕を常に持つようにしましょう。 後半の講義で扱う 定数係数 2 階線形微分方程式 に於いても定数変化法は登場しますが、 1 階の場合と比べても圧倒的に計算が複雑になるため、その他の方法で特殊解を求めた方 が速い場合も多くなります。微分方程式の解法にはそれぞれ一長一短があります。定数変 化法は 確実に解は計算出来る (はずだ) けど、途中の積分計算がしんどくなる場合が多い というメリットとデメリットを兼ね備えた方法である、ということは頭の片隅においてお きましょう。 *1 例えば講義で解いた例題 y ′ + xy∫= 6x2 に現れる特殊解 y = 6 はそれこそ「当て勘」でも見つけられますが、定数変 化法で解こうとすると 置換積分 1 3 6x2 e 3 x dx の計算が必要だったことを思い出して下さい。
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