2016(平成 28)年度 「海洋大気圏環境学」 第 1 回試験 解答 作成:2016/7/21 担当:荒井 正純 問題 1. [1] 余弦定理より, r2 = a2 + d2 − 2ad cos β となる.よって, 1 1 = 2 r3 [a + d2 − 2ad cos β]3/2 (A1) である. [2] (A1) を変形する. 1 1 = 3[ r3 d 1 ( )2 ]3/2 ( ) a cos β + a 1−2 d d (A2) ここで,x = a , b = cos β と置き,x の関数, d f (x) = 1 (1 − 2bx + x2 )3/2 の x = 0 の回りのテーラー展開を考える. 一般に,関数 f (x) は,x = 0 の回りに, f (x) = f (0) + f ′ (0)x + · · · とテーラー展開することができる.関数 (A3) の場合,その 1 階微分は, f ′ (x) = − 3(x − b) (1 − 2bx + x2 )5/2 となる.この関数では,f (0) = 1, f ′ (0) = 3b となるから, f (x) = 1 + 3bx + · · · とテーラー展開される.よって,x が微小な場合, f (x) = 1 + 3bx と近似することができる. 1 (A3) これを (A2) に適用すると, a が微小な場合, d ) 1 1 ( a cos β = 1 + 3 d r3 d3 (A4) と近似することができる. [3] (A4) を (3) 式の右辺第 1 項に代入すると, ( ) − → −−→ 1 −→ F = GMM 3a4 cos β · EM − 3 EQ d d (A5) となる.その x 成分は, ( Fx = GMM 3a cos β · d − 1 · a cos β d4 d3 ) = GMM 2a3 cos β, d その y 成分は, Fy = GMM ( ) 1 − 3 · a sin β = −GMM a3 sin β, d d となる.以上をまとめて記す. Fx = GMM 2a3 cos β, d (A6a) Fy = −GMM a3 sin β. d (A6b) 問題 2. [1] (4) を時間微分すると, ẍ − Ωẏ = Ẍ cos Ωt + Ÿ sin Ωt + Ω(−Ẋ sin Ωt + Ẏ cos Ωt), ÿ + Ωẋ = −Ẍ sin Ωt + Ÿ cos Ωt − Ω(Ẋ cos Ωt + Ẏ sin Ωt), となる.右辺の括弧内に (4) を適用すると, ẍ − Ωẏ = Ẍ cos Ωt + Ÿ sin Ωt + Ω(ẏ + Ωx), ÿ + Ωẋ = −Ẍ sin Ωt + Ÿ cos Ωt − Ω(ẋ − Ωy), が得られる.右辺の最後の項を左辺へ移項すれば, ẍ − 2Ωẏ − Ω2 x = Ẍ cos Ωt + Ÿ sin Ωt, (A7a) ÿ + 2Ωẋ − Ω2 y = −Ẍ sin Ωt + Ÿ cos Ωt, (A7b) に帰着する. 2 [2] (A7) の両辺に質量 m を掛ける. m(ẍ − 2Ωẏ − Ω2 x) = mẌ cos Ωt + mŸ sin Ωt, m(ÿ + 2Ωẋ − Ω2 y) = −mẌ sin Ωt + mŸ cos Ωt. ここで,右辺に,静止系での運動方程式 (5) を適用すると, m(ẍ − 2Ωẏ − Ω2 x) = FX cos Ωt + FY sin Ωt, m(ÿ + 2Ωẋ − Ω2 y) = −FX sin Ωt + FY cos Ωt, となる.右辺に力の変換則 (6) を適用すると,回転系 Oxyz 系における運動方程式, m(ẍ − 2Ωẏ − Ω2 x) = Fx , (A8a) m(ÿ + 2Ωẋ − Ω2 y) = Fy , (A8b) に帰着する. 問題 3. [1] (8) の定義より, ζ + f = hq である.これを渦度方程式 (7a) に代入する.コリオリ係数 f が定数であることに留意すると, ( ) ∂ (hq) + u ∂ (hq) + v ∂ (hq) + hq ∂u + ∂v = 0 ∂t ∂x ∂y ∂x ∂y となる.ここで,積の偏微分は, ∂ (hq) = ∂h q + h ∂q , ∂t ∂t ∂t ∂ (hq) = ∂h q + h ∂q , ∂x ∂x ∂x ∂ (hq) = ∂h q + h ∂q , ∂y ∂y ∂y と計算される.これらを (A9) に適用し,整理すると, ( ) ( ) ( ) ∂q ∂q ∂q + q ∂h + u ∂h + v ∂h + hq ∂u + ∂v = 0, +u +v ∂t ∂x ∂y ∂t ∂x ∂y ∂x ∂y ( ) [ ] ∂q ∂q ∂q + q ∂h + ∂ (hu) + ∂ (hv) = 0 +u +v ∂t ∂x ∂y ∂t ∂x ∂y h h となる.ここで,連続の式 (7b) より, ( h ∂q ∂q ∂q +u +v ∂t ∂x ∂y 3 ) =0 (A9) となる.従って,ポテンシャル渦度方程式, ∂q ∂q ∂q +u +v =0 ∂t ∂x ∂y (A10) が得られる. 【別解】 (8) を,t, x, y について偏微分すると,それぞれ, ] 1 1 [ ζ + f ∂h ∂q ∂ζ = 2 ∂ (ζ + f ) · h − (ζ + f ) ∂h = − , ∂t ∂t h ∂t h ∂t h2 ∂t ] 1 1 [ ζ + f ∂h ∂q ∂ζ = 2 ∂ (ζ + f ) · h − (ζ + f ) ∂h = − , ∂x ∂x h ∂x h ∂x h2 ∂x ] 1 1 [ ζ + f ∂h ∂q ∂ζ = 2 ∂ (ζ + f ) · h − (ζ + f ) ∂h = − , ∂y ∂y h ∂y h ∂y h2 ∂y となる.ここで f が定数であることを考慮した.これより, ) ζ +f ( ) 1 ( ∂ζ ∂q ∂q ∂q ∂ζ ∂ζ ∂h + u ∂h + v ∂h +u +v = +u +v − 2 ∂t ∂x ∂y ∂x ∂y ∂t ∂x ∂y h ∂t h (A11) である.ここで,(??) より, ( ) ∂ζ ∂ζ ∂ζ +u +v = −(ζ + f ) ∂u + ∂v ∂t ∂x ∂y ∂x ∂y である.又,(??) より, ∂h + u ∂h + h ∂u + v ∂h + h ∂v = 0 ∂t ∂x ∂x ∂y ∂y ∴ ( ) ∂h + u ∂h + v ∂h = −h ∂u + ∂v ∂t ∂x ∂y ∂x ∂y である.これらを (A11) の右辺に適用すると, ζ +f ∂q ∂q ∂q +u +v =− ∂t ∂x ∂y h ( ) ( ) ∂u + ∂v + ζ + f ∂u + ∂v , ∂x ∂y ∂x ∂y h 従って, ∂q ∂q ∂q +u +v =0 ∂t ∂x ∂y (A12) に帰着する. [2] ポテンシャル渦度はオイラー式記述では (x, y, t) の関数である.一方,ラグランジュ式記述では,流体 粒子に付随したその値は,(x, y) が時間の関数であるから,q(x(t), y(t), t) のように合成関数として時間の 関数になっている.従って,流体粒子の運動に追随した q の時間変化は, dq ∂q dx ∂q dy ∂q ∂q ∂q ∂q = + + =u +v + ∂x dt ∂y dt ∂t ∂x ∂y ∂t dt 4 となる. dq = 0 となる.これは,風応力のような外 dt 力がない場合,ポテンシャル渦度は,流体粒子の運動に付随して不変に保たれることを意味する. ところで,(A10) 式によれば,上式の右辺は 0 となるから, 問題 4-1. [1] 周期を T , 波長を λ とすると, T = 2π , ω λ= 2π , k である.これを ω = ck に適用すると, T = λ c となる.題意より,λ = 1 2 , c = 3 であるから, 1 T = 6 となる. [2] 時刻 t0 において座標 x0 にある位相点が,時刻 t1 におい て座標 x1 に移動するとすると,この 2 点の間で位相が等しい ことより,関係式, kx0 − ωt0 = kx1 − ωt1 が成り立つ.これより, x1 − x0 = ω (t1 − t0 ) k となる.題意より, ω = c = 3, t1 − t0 = 1 2 であるから, k 3 x1 − x0 = 2 1 であるから,これは 3 波長分に相当する.図 (a) の • 印に対して 3 波長 となる.ところで,波長は λ = 2 だけ右にずれた点は,同図の ◦ 印である.図 (a) の • 印の位相点は, 1 2 だけ時間が経過した後には,この ◦ 印と同じ x 座標の点に移動する.この点を図 (b) に • 印で図示する. [3] 図 (a),(b) それぞれに振幅の包絡線を点線で示す.包絡線の最大点から最大点への移動(図に矢印で示 す)が,群速度での移動を表す. [4] 包絡線の極大点は,図 (a) から図 (b) へかけて,1 波長分右に移動する.これは距離にして 12 である. 1 だけ経過する.従って,包絡線の極大点の移動速度,即ち,群速度は, 図 (a) から図 (b) へかけて時間は 2 1 となる. 5 問題 4-2. [1] ω が極大と成る波数,即ち, dω = 0 となる波数を k0 と dk おく.図より,k < k0 では dω > 0 であるから群速度は正, dk dω k > k0 では < 0 であるから群速度は負となる. dk [2] 図に示すようになる. [3] 群速度が 0 に近い波数,従って,周期の外力が波動に与 えられる場合を考える.群速度が 0 に近い場合,エネルギー が伝播せず,その場所で集積する.その結果,振幅の大きい 波動が成長する. 6
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