物理 復習プリント (物理・第1篇「力と運動」 その 1 平面運動) Jul. 2016 ©T. Hasegawa 1. 用語の説明 1 – 1 速度 (速度)=(変位)÷(時間) 。変位=移動した距離を、移動にかかった時間で割ったもので、その時間内の移動 による位置の変化の割合になる。または、「1 秒間にどれだけ移動するか」を意味する。単位は m / s のように、 距離 / 時間 となる。英語で velocity というので、v と書くことが多い。 1 – 2 加速度 (加速度)=(速度の変化量)÷(時間) 。速度が変化したとき、変化にかかった時間で割ったもので、その時間 内の速度の変化の割合になる。または、 「1 秒間にどれだけ速度が変化するか」を意味する。単位は、m / s2 であ るが、これは、 「m / s」 / s という意味で、速度 / 時間である。速度の大きさが変わらなくても、向きが変わると きには、加速度が働いている( 「物理」p13 問 2) 。英語で、acceleration というので、a と書くことが多い。 物体の落下を扱うときには、重力加速度を加速度に用いる場合が多い。重力は英語で gravity というので、g と 書くことが多い。 2. 平面の運動に関する公式 2 – 1 速度の公式(暗記する) t = 0 で初速度 v0 の物体が、加速度 a を受けて運動するとき、その速度は 1 秒当たり、a だけ変化する(a が正 なら加速、負なら減速) 。t 秒後には、at だけ変化しているはずだから、t 秒後の速度 v は、 速度の公式 = (1) である(図 1) 。加速度がないとき( a = 0 )、速度は v0 のままである。加速度が存在すると( a ≠ 0)、速度は時間 で変化する。at の単位は[ m / s2 ]×[ s ]で[ m / s ]となり、速度の単位を持つことを確認しよう。 図1 1 2 – 2 変位の公式(暗記する) 変位(移動距離)は、 (変位)=(速度)×(時間)である。図 2 を参照して、加速度がないとき( a = 0 )、速度 は初速度 v0 で一定であるので、時間 t で、x = v0×t だけ変位する(進む) 。図では、横軸(時間) 、縦軸(速度) で囲まれた面積が移動距離に相当する。横軸(時間)の単位が[ s ]、縦軸(速度)の単位が[ m / s ]とすると、そ の積は、単位が[ m ]となって距離に相当することを確認してみよう。 加速度が存在すると( a ≠ 0)、速度は時間で変化し、移動距離も図 3 のように、速度一定の場合と異なる。図 2 と同様に横軸(時間)と、縦軸(速度)で囲まれる面積が移動距離に沿うとすると考えると、図 2 の⾧方形の 上に乗った三角形の分だけ移動距離が変化することになる。三角形は、底辺が t [ s ]、高さが、at [ m / s ]の三角 形であるので、この部分の面積は、 となる。 となる。すなわち、図 3 の場合の移動距離は、 変位の公式 1 2 = 図2 図3 2 (2) 2 – 3 速度と初速度に関する、3 番目の公式 =2 は、以下のようにして、(1)式、(2)式から求めることができる。自分で計算することも可能だが、 余力があったら覚えておくほうが良い。 (1)式より、 これを、(2)式に代入すると、 = = = 1 2 2 2 = 2 = よって、 2 (3) =2 となる。(3)式は、平面内の運動において、時間があらわに含まれていない問題を解く場合に有効な式である。 3. 斜方投射 3 – 1 斜方投射の基本 平面内の運動は、結局のところ、水平方向と鉛直方向に分離して考えてしまえば、一次元の運動に帰着される。 斜めに物体を打ち上げる斜方投射が最も複雑な問題であるが、分離してしまえば、水平方向には等速直線運動、 鉛直方向には、鉛直投げ上げを行っているだけで、単純な問題に読み替えることができる。 図4 3 斜方投射の状況を図 4 に示す。t = 0 に、原点から角度、初速度 v0 で物体を投射する。上向きに y 軸の正の向 きを取り、投射前方に x 軸の正の向きを取る。このとき、重力加速度は下向き=y 軸負の方向で、- g となる。運 動を水平方向(x 軸方向) 、鉛直方向(y 軸方向)に分離すると、x 軸方向の初速度は正方向に、v0 cos 、y 軸方向 の初速度は正方向に v0 sin である。x 軸方向には加速度は働かず、y 軸方向に重力加速度のみ働く。したがって、 x 軸、y 軸方向それぞれについて、(1)、(2)式から、 = = (4-b) cos = = (4-a) cos sin sin (5-a) 1 2 (5-b) となる。符号に注意すること。式を見ると、x 方向には、初速 v0 cos の等速直線運動、y 方向には、初速 v0 sin の、鉛直投げ上げと同じ運動を行っていることがわかる(図 5) 。 図5 3 – 2 斜方投射の頂点、落下位置 斜方投射で特徴的な点は、頂点と、再び地面に落ちてくる落下位置であるので、詳しく見てみよう。 (1)頂点 頂点は、y 軸方向の速度がゼロになる点である。まず、vy がゼロになる時間を求めて、次いで x 座標、y 座標を求 める。(5-a)式より、vy がゼロになるのは、 = 0 として、 = sin 代入して、 = = である。この t を(4-a)、(5-a)式に sin cos (6-a) sin 2 (6-b) を得る。これが、頂点の位置となる。このとき速度は vx = v0 cos (不変) 、vy = 0 である。 4 (2)落下位置 落下位置は、y 座標が再びゼロになることから求めることができる。(5-b)式から、 = 1 2 sin =0 とおいて、落下位置に到達する時間を求めることができる。変形して、 1 2 sin =0 である。この式の t についての解は、t = 0 または、 = である。t = 0 のとき y = 0 の解は、投射最初に原 点に物体があったことに相当するので、再落下の解としては不適当である。従って、再落下の時間は、 = となる。このとき x の位置は、 = 2 sin から、 cos = 2 sin cos (7) となる。これが、物体の再落下点である。ちなみに、この t の時、物体の y 軸方向の速度 vy は、(5-a)式に、 = を代入して、 = sin = sin である。スタート時の鉛直方向上向きの速度が、そのまま鉛直方向下向きの速度に代わっている。 (3)斜方投射の運動を図解する 以上で求めた、頂点の座標、再落下位置の x 座標、および、再落下位置での vy から、斜方投射の運動を描くと図 6 のようになる。 図6 5 3 – 3 最も遠くに物体を届かせるためには 斜方投射でよく聞かれる問題が、飛距離を最大にするときの角度である(g、v0 は一定) 。物体の落下位置は(7) 式で求めたとおりであるので、この式で記述される落下点が、最も遠くなるように考える。倍角の公式、 2 sin cos = sin 2 を用いると、(7)式は、 sin 2 = となる。この式は、2 = 90°、すなわち、 = 45°の時に最大値、 をとる。ボールを投げるときに、45°に 近い角度で投げるときに最も遠くなる理由である。 (実際には空気抵抗等の影響で、45°よりやや低い角度が適 しているようである) 。 (第 1 篇「力と運動」その1平面運動 おわり) 6
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