東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授 ・ 博士 1975 年広島県生まれ。建築環境を専門にし、住宅の エネルギーに関する幅広い研究に携わる。 著書:エコハウスのウソ(日経 BP 社、2012 年 6 月 出版) 長岡会場パネリスト/ 飯塚一樹氏 長岡会場パネリスト/ イイヅカカズキ建築事務所 代表 ネイティブディメンションズ 一級建築士事務所 代表 (株)穐谷建築事務所 代表取締役 鈴木淳氏 穐谷勝浩氏 新潟会場パネリスト/ 新潟会場パネリスト/ 沢井拓 (株)大井 代表取締役 ハウジングこまち編集長 大井淳氏 コーディネーター 真之(まえ まさゆき)氏 講師 前 イベントレポート 「人がしあわせになる家づくりセミナー」主催/ハウジングこまち 共催/東北電力 (株)新潟支店 会場:2015年7月23日 新潟市東区NOCプラザ/2015年7月24日 ハイブ長岡 EVENT REPORT 2020年「省エネ基準適合住宅」義務化に! これからの住宅はどう変わっていくのか? 2013 年に施行された新省エネ基準は、2020 年をめどに全ての新築住宅で義務化される予定だ。住宅業界向けに開 かれた当セミナーでは、それにより住宅や暮らしがどう変わるのかを、専門家や住宅関係者が分かりやすく解説した。 全ての新築住宅で 「義務化」 が始まる 快適になるという間違った認 識 が あ り ま す が、 体 の 熱 は 『対流(=空気) 』だけでなく、 も失われます」と前氏。断熱 性能が低いと、冬の壁の表面 『放射(=壁など) 』によって がしあわせになる家づくり から体温が奪われるという。 温度は低いままなので、そこ ・ 長 岡 市 で 開 催 さ れ た「 人 セミナー」 。会場には、のべ 20 15 年7 月 に 新 潟 市 300名を超える住宅業界関 宅」の義務化について。前半 る予定の「省エネ基準適合住 2020年をめどに実施され う。そのため、暖房設備はフ が下から吸い込まれてしま も、暖気が上から抜け、冷気 いくら暖房で室内を暖めて 係 者 が 集 ま っ た。 テ ー マ は また、気密性能が低いと、 は、建築環境を専門とする東 り、増エネになるばかりか、 ル稼働になって効率が下が 温熱環境のムラができ、乾燥 京大学大学院准教授 ・ 前真 代表を交えたパネルディス もしやすくなるのだそうだ。 之氏の講演、後半はビルダー カ ッ シ ョ ン、 そ し て 各 メ ー る」と、性能の見える化の重 ていただけるように努めてい 要性について話した。 んでいるお客さんの光熱費の 穐谷勝浩氏は、 「すでに住 データを見せることで、新し やすく伝えている。これから いお客さんにも性能を分かり は地域全体で性能の高い住宅 づくりに取り組み、技術とノ ウハウを底上げしていきた い」と、地域全体の住宅の質 向上を呼びかけた。 にこだわった自宅が完成し、 飯塚一樹氏は、 「断熱性能 オープンハウスなどでその 快適さを実感してもらってい を総合評価する新たな省エネ 体の「一次エネルギー消費量」 紹介という三部構成。建物全 前氏は、電気温水器を「電気 湯」 、その次に 「暖房」がある。 ギー消費で最も高いのが「給 躍 す る ビ ル ダ ー・ 設 計 事 務 潟、長岡それぞれの地域で活 日本の家庭におけるエネル セミナーの第二部では新 の暖房給湯設備が良いのか。 所の代表によるパネルディス 付加価値について話した。 を前提とした上で、さらなる をしたい」と、高い住宅性能 した上で、デザインで差別化 化していくもの。それを満た る。また、性能の高さは平準 基準の「義務化」を控え、人 カッションが行われ、新潟の 前氏は、 「北海道では早く カーによる最新省エネ設備の 次に、なぜヒートポンプ式 が幸せになる住まいとは何か 家づくりの現場における住宅 期優良住宅を求める方は多い メーターなど共通の指標とな たことが一因。今後スマート 分かりやすい指標を共有でき から住宅の断熱性能への意識 生焚」と表現し、非常にエネ が、深く理解している方はま が一般の人の間でも高まった ルギーは少なくて済む。これ だまだ少ないように感じる。 るものが普及すると、他の地 が、それは『ドラム缶何本分 は給湯だけでなく暖房の場合 域でも断熱への意識が高まっ の省エネルギー化の現状につ しい前真之氏は、日本の住宅 も同様だという。 自分は職人としてやってきた 明する。一方、ヒートポンプ ルギー効率が悪いものだと説 高断熱高気密化と ヒートポンプが必須に を取り巻く問題について取り の で、 施 工 技 術 で 次 世 代 基 の灯油が節約できた』などの 上げながら、 「住宅の高断熱 暖房に必要な熱は少しで済 「断熱気密性能を高めれば、 ていく」と話した。 いて意見が交わされた。 高気密化と、ヒートポンプ式 準の家づくりに貢献したい」 仕組みのため、消費するエネ 大井淳氏は「一般の方で長 の暖房給湯設備を取り入れる む。ヒートポンプ式の暖房を 住宅のエネルギー問題に詳 ことが、省エネ・快適への唯 と、その意気込みを語った。 「放射」による熱の損失につ 重要なのかを理解する上で、 の答えと言えそうだ。 の「義務化」に適合する住宅 と前氏。これが、2020年 ちょうどいい湿度を保てる」 して、時間がたっても納得し で、しっかりと性能を数値化 要。 住 宅 は 高 い 買 い 物 な の 数値化して明示することが重 す強まっていきそうだ。 る。その傾向は、今後ますま することが重要になってく 性能選びを自分事として意識 る上で、誰もが住宅の設備や 省エネや家族の健康を考え 使えばさらに省エネが実現で いて考える必要があるとい き、温熱環境のムラもなく、 鈴木淳氏は「住宅の性能を う。 「空気温度を調整すれば まず高断熱高気密がなぜ 一の道である」と話した。 式は外気から熱を移動させる について話し合われた。 新潟の現場で見られる 断熱性能への意識 会場に集まった業界関係者が、前氏の講演を興味深そうに聞き入っていた。 (ハイブ長岡) 6
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