3.人材育成活動 3 人材育成活動 ❏産業振興分野 エンターテイメントエデュケーションセミナー 今年度初の試みとして、滋賀大学社会連携研究センターと熊本大学政策創造教育センターが共同主催して セミナーを開催した。健康に興味はあるけれども、予防や生活習慣の振り返りなどに無関心な人々が多いの も事実である。このような集団に対して、ヘルスメッセージを届けるため、ナラティブの力を活用するエン ターテインメントエデュケーションの有効性が米国を中心に少しずつ実証されつつある。 河村らは『教育とエンターテイメント融合は、人類の存在とほぼ同様の長い歴史をもつ。たとえば、わが 国でも馴染みの深い昔話は教訓を含み、私たちは昔話を使って世代間で学びを受け継ぐ。様々な形態で文脈 すなわち「物語」を通して、私たちは多くのことを学び、その学びは情報だけを得るよりも強く心に残る。 このように私たち人類は太古の昔から、人脈や分化に関わらず、物語を教育と融合してきたのである。しか し、この戦略的応用が始まったのは数十年前であり、その歴史は浅い。』と述べている(エンターテイメント・ エデュケーションの過去とこれから:我が国の公衆衛生分野における活用可能性,日本健康教育学会,2013) 。 今年度のセミナーでは、エンターテインメントエデュケーションの第一人者であるサンドラ・バッフィン トン氏から米国での成功事例を紹介してもらい、社会環境の実情に即した形で、有用な情報をより多くの人 に、適切に届けるための戦略について考えるため の機会を設けた。 サンドラ氏は社会変革のために「エンターテイ メント」を活用する先駆的な女性研究者・実践家 である。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス 校)内に公衆衛生の向上を目的としたグローバル メディアセンターを創設し、ディレクターに就任 している。また、USC(南カリフォルニア大学)で はハリウッドの脚本家を支援して、テレビや映画 の中で人々の健康が改善するよう働きかけるスト ーリーを作り、健康に関する啓発活動を展開する 仕組みを構築した。彼女が携わった作品の中には、 日本で人気のテレビドラマもあり、2009 年から 2012 年で 91 タイトル、計 565 本の番組が世界中 で放映されている。また、2015 年にブラジルで行 われた「精管切除を促進するキャンペーン」の TV スポットでは、カンヌ国際広告祭をはじめとして、 7 つの国際広告賞を受賞している。 他大学と共同でのセミナー開催という初めての 【サンドラ氏の講演風景】 試みであったが、受講者の反応は上場であった。 今年度は十分な広報が出来ず、小規模での開催に 3.人材育成活動 なってしまった。今後は、さらに地域の保健師やマスメディア産業界にも輪を広げ、物語やエンターテイメ ントの力で社会をもっと元気にする方策について論じる機会を提供していきたい。 ◯受講者の感想 ◆エンターテイメント・物語、各々の力や影響力の強さを感じました。将来、教員を目指していますが、映 像、更にはストーリーを活用することで、児童生徒にとって情報の理解が進むのだということを実感できま した。 ◆今回の講演のようなテーマの話を聞いたのは初めてで、とても良かったです。海外の実践から日本が学ぶ べき事はとても大きいと感じました。 ◆今回の内容を学校教育で何とか応用できないだろうかと強く興味を持ちました。 ◆日本の学校教育にエンターテイメントをいかにして取り入れるかということを考えるのが、大変面白いと 思いました。 【講演後のディスカッション風景】 (文責 教育学部 准教授 大平 雅子)
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