平成28年度 仕 様 書 特許庁

平成28年度
産業財産権制度各国比較調査研究等事業
「適切な範囲での権利取得に向けた特許制度に関する調査研究」
仕
様
特許庁
書
1.件名
平成28年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業「適切な範囲での権利取得に向
けた特許制度に関する調査研究」
2.調査研究の目的、必要性
特許制度における特許請求の範囲とは、特許発明の権利範囲がこれに基づいて定めら
れる点において、重要な意義を有している。しかし、特許出願時に特許発明の将来の実
施の態様を全て予測し、特許請求の範囲に反映させることは困難であることから、特許
出願人は適切な権利範囲の権利を取得するべく、権利化前の段階において補正等を行っ
ている。これにより出願人は、拒絶理由を避けつつ、製品の開発動向に沿った知財戦略
を構築することが可能となる。
しかし、権利化前の段階の補正については、いつでも補正できるとすると第三者の監
視負担が大きくなることから、補正できる期間を制限し、また、特許請求の範囲につい
て補正が何回も行われると、その都度審査を行うことが必要とされるため、審査遅延を
もたらす一因となっていたことから、二回目以降の拒絶理由通知に対する特許請求の範
囲の補正については、既に行われた審査結果を有効に活用できる範囲のものとするな
ど、補正ができる内容的な制限をも設けている1。特許出願人は、これら時期的制限や
内容的制限の中で権利範囲の見直しを行っている。
近年権利化までに要する期間が短くなってきていることから、未だ製品展開の方向性
が定まっていない段階で権利化される場合や、技術の標準化の動向が見えない段階で権
利化される場合など、必ずしも出願人にとって適切な範囲で権利取得ができていない場
合が起こり得る状況となってきており、適切な範囲での権利取得に向けた特許制度を検
討する必要性が生じている。
①権利範囲の柔軟な設定
適切な範囲での権利取得に向け、権利化後に特許請求の範囲を見直す手続としては、
訂正の請求や訂正審判がある。しかし、訂正が認められた場合に、遡及効が生じること
もあり、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求
の範囲に含まれることとなると、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるた
め、いずれも特許請求の範囲の実質的な変更や拡張は認められていない。
一方、米国においては、権利取得後においても一定の期間内であれば特許請求の範囲
の拡張も認められる再発行制度(reissue)2があるが、その利用実態等については不明
な点も多い。
そして、我が国において権利化後に特許請求の範囲を見直す手続等については、平成
1
2
特許法第17条の2第5項、特許・実用新案審査基準第Ⅳ部第1章3.補正の実体的要件
米国特許法第251条
1
27年度特許庁産業財産権制度問題調査研究「知財訴訟に関する諸問題に関する法制度
面からの調査研究」3において、特許請求の範囲の実質的な変更や拡張を認める仕組み
について法制面からの検討が行われており、そこでは、「特許査定時に出願人の検討が
不十分だった権利についてクレームを適切に補正できることはあり得るが、中用権や遡
及効制限が必須であり、現行制度の考え方を大きく変えるものであるから、十分に時間
をかけて慎重な検討が必要である」とまとめられているところである。
また、権利化前の特許請求の範囲の見直しを行う手続である補正についても、二回目
以降の拒絶理由通知に対する特許請求の範囲の補正について、今日の審査の迅速化の状
況等を踏まえて、要件緩和等の検討を行うことも必要である。
②訂正審判請求等を要件としない訂正の再抗弁について
一方、権利化の段階において、審査官や出願人等が発見できなかった無効理由の原因
となり得る公知文献等が発見された場合に、前段のように特許権者が自発的に訂正審判
等を行うことで無効理由を回避することも考えられるが、第三者からの特許無効審判に
おいて訂正の請求を行うことや、侵害訴訟において被疑侵害者からの無効の抗弁に対す
る対抗策として訂正の再抗弁を行うことも考えられる。後者の訂正の再抗弁について
は、「実際に適法な訂正審判請求等を行っていることが必要」等とする裁判例が複数あ
り、原則として、特許庁への訂正審判請求や訂正請求を行わずに、訂正の再抗弁を行う
ことができない運用がなされているが、権利者は、訂正審判によって権利範囲の減縮が
早期に確定することを防ぐとともに、紛争の長期化につながる無効審判の誘発を防ぐた
めに、訂正審判請求等を躊躇する状況であるため、訂正審判請求等をしなくても訂正の
再抗弁ができることを明確にすべきとの指摘4がある。
③権利の有効性について特許庁による判断を受ける機会
前段までは、新たに無効理由の原因となる関連文献が発見された場合に、無効理由を
回避するために、補正・訂正等によって権利範囲の変更を行うことを前提にしてきたが、
権利が無効となることをおそれて補正・訂正等が必要なかったにもかかわらず権利範囲
を変更することで、本来得られていたはずの適切な権利範囲を喪失してしまうケースも
考えられる。
そこで、適切な権利範囲を維持したまま、新たな無効理由については、改めて権利の
有効性について特許庁による判断を受けたいという要望があり5、権利の有効性を権利
3
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2015_07.pdf
知的財産戦略本部 知財紛争処理システムの機能強化に向けた方向性について
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/hokokus
ho2.pdf)
5 「知的財産推進計画 2016」の策定に向けた意見募集の結果における日本弁理士会からの意見
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ikenbosyu/2016keikaku/kekka3.pdf)
4
2
者が確認することで、権利の逐次安定化を図ることができると考えられる。
また、この点に関しては、侵害訴訟において侵害訴訟の被疑侵害者は、無効審判請求
と無効の抗弁という2つの手段を選択できる一方で、権利者は、被疑侵害者が無効審判
を請求しない限り、特許権の有効性について特許庁による判断を受けることができな
い。このため、機会均等の観点から、侵害訴訟の権利者等の求めに応じ、侵害訴訟にお
いて特許庁が権利の有効性についての見解を示すことができるような仕組みが考えら
れる。
これにより、侵害訴訟において被疑侵害者から無効理由となる証拠が提出された際
に、特許権を付与した立場で職権探知が可能な専門官庁である特許庁の判断を加味し、
裁判所の判断の参考とすることは有用であり、特許庁による判断を期待しているユーザ
ーのみならず、裁判所と特許庁の判断の統一を求めるユーザーの納得感が高まることが
期待されている。
上記①~③については、いずれも権利者か第三者かのいずれの立場によって得られる
利益を異にするものであり、一概に制度を導入すべきとはいいがたい。このような新た
な制度について検討する際には、ユーザーニーズや他国の制度の利用実態等の把握は必
須である。
そこで、本調査研究では、適切な範囲での権利取得に向けた特許制度についてのユー
ザーニーズを調査し、権利の活用のさらなる活性化に向けた検討の場における基礎資料
とすることを目的とする。
3.調査研究内容及び実施方法
(1)公開情報調査(適切な範囲での権利取得に向けた特許制度について)
書籍、論文、判例、調査研究報告書、審議会報告書、データベース情報及びインター
ネット情報等を利用して、日本、及び、米国、英国、独国、EPO、中国、韓国等6か
国程度の補正・訂正等の適切な範囲での権利取得に向けた特許制度に関する文献等(海
外の文献等を含む)を調査、整理及び分析する。その際、以下の項目について重点的に
調査を行う。
また、適切な範囲での権利取得の特許制度を把握するため、日本、及び、米国、英国、
独国、EPO、中国、韓国等6か国程度における補正・訂正等の制度について調査及び
整理すること。
調査項目の設定に当たっては、多様な観点を踏まえて検討を行い、庁担当者と事前に
協議して作業を進めること。
<重点調査項目>
権利化後の権利範囲の見直し
3
・米国における再発行制度
なお、実施に当たっては以下の点に留意すること。
・収集した外国語文献については、必要に応じて日本語に翻訳すること。
・報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から引用する場合には、報告書
に適切な著作権処理を行い、正当な引用であることを庁担当者に報告すること。
・報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から転載する場合には、著作権
者から転載許諾を得ること。
・本調査研究の研究員は、公開情報調査の結果について、平成28年11月中を目
処に、それぞれ庁担当者へ報告すること。なお、必要に応じて中間的な報告を求め
ることもある。
(2)国内アンケート調査(適切な範囲での権利取得に向けた特許制度について)
国内企業1,000者程度を対象に、適切な範囲での権利取得に向けた特許制度の在
り方についてのアンケート調査を実施する。アンケート調査先の選定及びアンケート項
目の設定については、多様な観点を踏まえて検討を行い、庁担当者と事前に協議した上
で進めること。
なお、実施に当たっては以下の点に留意すること。
・アンケート調査に当たっては、アンケートの作成、送付(送付先の確認を含む)、
回収、取りまとめ作業を行うこと。
・アンケートは、簡便な選択式の問と、自由意見を書き込み可能な問とを組み合わ
せる等の工夫をすること。
・アンケート用紙を含む送付書類一式(質問票や返信用封筒など)については、庁
担当者に提示の上、承認を得ること。
・調査票における趣旨・用語の説明の追加や、回答方法の平易化に努めるとともに、
回収に当たっては未回答者に対し督促用葉書により本調査への協力を依頼するこ
とに加え、電話で協力依頼を行うなど、回収率3割以上を目標とした工夫をするこ
と。
・本調査研究の研究員は、国内アンケート結果を活用して整理、分析を行い、単純
集計やクロス集計等をし、平成28年11月上旬を目途に分析及び取りまとめの
上、庁担当者へ報告すること。なお、必要に応じて中間的な報告を求めることもあ
る。
(3)国内ヒアリング調査(適切な範囲での権利取得に向けた特許制度について)
前記(2)のアンケート調査対象者のうち10者程度に対して、国内ヒアリング調査
4
を実施する。
国内ヒアリング調査は、公開情報調査及び国内アンケート調査を踏まえてさらに深掘
りすることを目的とし、ヒアリング調査先の選定及びヒアリング内容については、公開
情報調査等を踏まえて、多様な観点を踏まえて検討を行い、庁担当者と事前に協議した
上で進めること。
なお、実施に当たっては以下の点に留意すること。
・調査対象先との連絡調整を行うこと。
・国内ヒアリングの実施、メモ取り、取りまとめ、分析作業を行った上で、国内ヒ
アリング結果について議事録及び概要を作成し、速やかに庁担当者に提出するこ
と。
・国内ヒアリング結果につき、公開情報と非公開情報の区分リストを作成すること。
・国内ヒアリング結果については、平成29年1月中を目途に分析及び取りまとめ
の上、庁担当者へ報告すること。なお、必要に応じて中間的な報告を求めることも
ある。
(4)海外質問票調査(適切な範囲での権利取得に向けた特許制度について)
米国、英国、独国、中国、韓国等の5か国程度において法律事務所等(各国5者程度)
に対し、各国の権利化後に特許請求の範囲を見直す制度及びその利用実態や、各国の制
度に関する議論の状況を調査するための質問票を送付し、実態調査を実施する。
海外調査票の送付先の選定及び調査項目の設定については、多様な観点を踏まえて検
討を行い、送付先の属性に応じて複数種類作成し、庁担当者と事前に協議した上で進め
ること。
なお、実施に当たっては、以下の点に留意すること。
・海外質問票調査については、公開情報調査及び国内アンケート調査と同様の点に
留意して実施すること(前記(1)、(2)参照)。
・質問票については、送付先の国・地域ごとに、質問項目を決定の上、翻訳等を行
い、作成すること。
・海外質問票調査の結果等は、速やかに日本語に翻訳を行い、平成29年1月中を
目途に分析及び取りまとめの上、庁担当者へ報告すること。なお、必要に応じて中
間的な報告を求めることもある。
(5)海外現地ヒアリング調査(適切な範囲での権利取得に向けた特許制度について)
米国、英国、独国、中国、韓国等の5か国程度における、前記(4)の海外質問票調
査表対象者のうち、各国3者程度に対して、海外現地ヒアリング調査を実施する。
5
海外現地ヒアリング調査は、公開情報調査及び海外質問票調査を踏まえてさらに深掘
りすることを目的とし、ヒアリング調査先の選定及びヒアリング内容については、公開
情報調査及び海外質問調査票調査等を踏まえて、多様な観点を踏まえて検討を行い、庁
担当者と事前に協議した上で進めること。
なお、実施に当たっては以下の点に留意すること。
・調査対象先との連絡調整を行うこと。
・海外現地ヒアリングの実施、メモ取り、取りまとめ、分析作業を行った上で、海
外ヒアリング結果について議事録及び概要を作成し、速やかに庁担当者に提出する
こと。
・海外現地ヒアリング結果につき、公開情報と非公開情報の区分リストを作成する
こと。
・海外現地ヒアリング結果については、平成29年1月中を目途に分析及び取りま
とめの上、庁担当者へ報告すること。なお、必要に応じて中間的な報告を求めるこ
ともある。
(6)調査結果の分析・取りまとめ
前記(1)~(5)の調査・検討結果を総合的に分析し、報告書に取りまとめる。
①前記の調査研究内容の結果を報告書にまとめること。
②報告書の表題は「適切な範囲での権利取得に向けた特許制度に関する調査研究」
(仮
称)とすること。
③報告書の要約(文章及び本調査研究を俯瞰する図表6)を報告書に含めること。
④著作権の取り扱い等について報告書に記載すること。
4.研究員について
本調査研究における各調査・分析において、本調査研究分野に専門的な知見を有する
者を庁担当者からの連絡・調整担当の研究員として配置し、庁担当者からの問い合わせ
等に常に直接的かつ迅速に対応できる体制を整備すること。
なお、ここでの「本調査研究分野に専門的な知見を有する者」とは、国内外の特許制
度及び特許権の権利化に関する実務について知見を有している者であることが望まし
い。
5.調査研究に当たっての留意事項
(1)調査研究開始日から報告書納入日までの本調査研究に係る全体スケジュール、調
6
調査研究を俯瞰(ふかん)する図表とは、報告書の内容を把握することができるように総括された図表
のこと。
(1ページ程度)
6
査研究体制、実施機関の連絡体制等について、契約締結後、速やかに庁担当者に
書面にて説明し、承認を得ること。
(2)調査研究進捗状況は、庁担当者の指示する形式・頻度にて報告すること。場合に
より、公開の場も含めて関係者に対する中間的な報告を求めることもある。
(3)調査研究内容については、庁担当者と十分な打ち合わせを行うこと。打ち合わせ
の際の資料を用意すること。
(4)調査研究を進めるに際し、常に案を作成・提案し、必ず庁担当者の承認を得るこ
と。なお、変更が生じた場合は速やかに報告し、庁担当者の指示に従うこと。
(5)納入時に報告書等の著作物は特許庁に帰属するものとするが、報告書を執筆した
者については、本報告書からの引用である旨付記することを条件に執筆部分に限
り複製、翻訳、翻案等の形で利用することを可能とする。
(6)報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から転載する場合には、出典を
明記するとともに、著作権者から転載許諾を得ること。また、転載許諾を得た図
面、写真、文章等の情報を一覧にまとめ、転載許諾書の写しとともに、特許庁に
提出すること。
(7)報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から引用する場合には、適切な
著作権処理を行い、
正当な引用であることを庁担当者に報告し、承認を得ること。
(8)調査研究により知り得た情報を許可なく外部に漏らし又は他の目的に使用しない
こと。
(9)報告書の納入前において、調査研究で得られた情報について、庁担当者が施策検
討等の参考資料として使用の必要があると判断する場合には、その指示に従い、
必要なデータを庁担当者に提供すること。
(10)報告書の作成に当たっては、原則、庁担当者の指示する作成要領のとおりに作成
すること。
(11)その他詳細については、庁担当者の指示に従うこと。
7
6.提出物及び提出期限
提出物
数量
著作権転載許諾一覧及び ①紙媒体 1部
転載許諾書の写し
提出期限
平成29年3月4日(金)
②電子データ一式(CD-R
※著作権者から許諾を得 又は DVD-R に PDF 形式で
る必要があった場合のみ
収納)
各調査の調査結果等(中間 一 式 ( MS-Word 形 式 、 平成29年3月4日(金)
成果物、アンケート結果、 MS-Excel 形式)
ヒアリング結果)の電子デ
ータ
※提出方法については、庁
担当者の指示に従うこと
7.納入物及び納入期限
納入物
数量
納入期限
(1)
一式(CD-R 又は DVD-R に収 平成29年3月4日(金)
調査報告書の電子媒体
納した電子データ(MS-Word
形式、PDF 形式の両方))
(2)
150部
平成29年3月18日(金)
調査報告書の紙媒体
(1)電子媒体
庁担当者の許可を得た場合、MS-Word 形式の一部を MS-PowerPoint®形式、MS-Excel
形式とすることも可能。
(2)紙媒体
両面印刷A4、くるみ製本
※納入に当たっては、テーマ名(件名)を報告書(表紙及び背表紙)、電子ファイル
に記載すること。
8.納入場所
特許庁総務部国際政策課
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