ロンドンからリオへ意外なギフト

Market Flash
ロンドンからリオへ意外なギフト
2016年6月29日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・6月CB消費者信頼感指数は98.0と市場予想(93.5)を大きく上回り、5月から5.6pt改善。現況(113.2
→118.3)、期待(78.5→84.5)がともに改善した。この間のガソリン価格上昇やミシガン大学調査の結果
を踏まえると、やや出来過ぎの印象があるものの、2015年10月以来の高水準に回帰した。他方、雇用統計
の先行指標として有用な雇用判断は+0.1と5月の±0.0からほぼ横ばいだった。
・6月リッチモンド連銀製造業景況指数は▲7と市場予想(+3)に反して5月(▲1)から悪化。ISM
換算では51.0と2013年9月以来の低水準へ落ち込んだ。これまでに出揃った地区連銀サーベイをISM換
算したうえで合成した指数は48.9と5月から1.0pt改善。2004年以降のデータを基に単回帰分析で得られる
6月ISMは49.6と引き続き50割れのリスクを示唆している。
・4月ケース・シラー住宅価格指数は前年比+5.43%と市場予想に概ね一致。過去2年超にわたって住宅価
格は同水準の伸びとなっている。
CB消費者信頼感指数
140
60
現況
120
ISM・地区連銀サーベイ
ISM
55
総合
100
50
80
45
期待
60
地区連銀平均
40
40
35
20
07
08
09
10
11
12
13
14
15
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反発。BREXITを受けた初期反応が一服、S&P500(+1.8%)は27日の下落を取り戻した。欧州
株も総じて反発。英国(+2.6%)、ドイツ(+1.9%)、イタリア(+3.3%)、スペイン(+2.5%)が
軒並みラリー。WTI原油は47.85㌦(+1.52㌦)で引け。リスクオフが一服し商品市況にも資金回帰。
・前日のG10 通貨はJPYが最弱でそれにCHF、USDが続いた。反対にGBPは買われ、EUR、SEKなど欧州通貨も堅
調に推移。USD/JPYは102半ばに戻し、EUR/USDは1.10後半での推移。
・前日の米10年金利は1.466%(+2.9bp)で引け。欧州債市場はコア国がまちまちだった一方、周縁国は堅
調。逃避需要が後退するなか英10年金利(0.961%、+2.7bp)、ドイツ10年金利が(▲0.112%、+0.4bp)
ともに上昇した反面、イタリア(1.399%、▲11.0bp)、スペイン(1.314%、▲14.0bp)、ポルトガル
(3.145%、▲15.7bp)が金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、欧米株高に追随して3日続伸で寄り付いた後、もみ合い。魅力的なバリュエーションなどを背
景に24日の突出した下落が修正されている。
・5月小売売上高(商業動態統計)は前月比±0.0%と市場予想に一致。前年比では▲1.9%と4月(▲0.8%)
から下落幅が拡大。広範な業種で前年比伸び率が縮小(ないしは下落幅拡大)し、ガソリンを除いたベー
スでも前年比▲1.0%とマイナスに転じており、基調的な弱さが窺える。円高で訪日外国人消費が逆風を受
けているほか、国内居住者が逆資産効果から裁量的支出を手控えている可能性が指摘できる。先行きは、
消費増税先送りがマインド改善を通じて、実際の消費に繋がるかに注目。
(前年比、%)
15
小売売上高(商業業態統計)
10
5
0
-5
-10
-15
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 除くガソリン
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・BREXIT後、G10通貨の間では、リスク回避の流れからJPYとUSDが買われ、反対に欧州通貨が全面安となった
(6月23日NY時間終値から起算)。JPYが+3.1%で独歩高となった一方、GBP(▲10.3%)、SEK(▲
4.1%)、EUR(▲2.8%)が大幅下落。他方、主要31通貨に視野を広げると、JPYが最強であることに変わ
りはないが、それに続くのがBRL(+1.0%:ブラジルレアル)、IDR(+0.6%:インドネシアルピア)で、
それ以降15通貨は全て新興国通貨であった(例外的だがHKD:香港ドル、SGD:シンガポールドルも含む)。
・こうした新興国通貨のアウトパフォームはBREXITによってFEDの利上げ確率が大幅に低下(寧ろ利下げ
すら織り込まれている)したことが主背景。この間の資源価格下落は、資源・新興国通貨の逆風となった
が、それよりもFEDがハト派傾斜することの効果が勝ったということだろう。こうした見方に基づけば、
ブラジルなど目先的にマクロファンダメンタルズにほとんど明るい兆候が見られない国の資産でも、米国
を中心とする先進国経済の成長鈍化がより強く意識された際のヘッジとして投資を検討する価値があるだ
ろう。米経済の成長が鈍化し、FEDの利下げやQE4が意識された場合、これまでFEDの利上げ観測
の下で売り込まれてきた高金利・経常赤字・資源という3つの要素を持つ通貨がアウトパフォームする可
能性が指摘できる。クロス円で考えた場合、USD/JPYが100まで下落しても、リターン(円安+金利差)を
確保できる通貨ペアがあるだろう。
4
(%)
2
0
-2
-4
-6
-8
-12
英ポンド
南アフリカ ランド
スウェーデン クローナ
ポーランド ズロチ
ノルウェー クローネ
ハンガリー フォリント
メキシコ ペソ
アルゼンチン ペソ
チェコ コルナ
オーストラリア ドル
コロンビア ペソ
ユーロ
デンマーク クローネ
ニュージーランド ドル
スイス フラン
カナダ ドル
韓国 ウォン
トルコ リラ
イスラエル シェケル
マレーシア リンギ
シンガポール ドル
インド ルピー
中国元
台湾 ドル
ペルー ソル
ロシア ルーブル
香港ドル
チリ ペソ
インドネシア ルピア
ブラジル レアル
日本円
-10
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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