mediastudies20100423

メディア社会文化論
2009年12月11日
1.2 メディア論(メディア)と資料論
資料とは①
• 資料論
• 専門資料論、図書館資料論・・・司書科目
• 資料とは何かという分野は当然、研究分野と
しても、ありうる
• →(図書館資料論→)選書論、コレクション形
成論(専門資料論→)学術情報流通論
資料とは②
• 資料とは?(メディアとの関係において)
• 2つの考え方
①資料⊆メディア(後述)
②資料=メディア
資料=メディアについて①
• ②の資料=メディアについて
印刷資料以外の資料を捉える際、メディアと
いう用語を用いるのが好適
• 「こうした現状を踏まえ,本章では知識・情報
を伝達するあらゆる装置,仕組みを広く取り
上げようとする主旨から,印刷資料のみなら
ず,多様な非印刷資料等も含む各種の資料
を総称する意味でメディアということばを用い
ることにした」(長澤雅男1988 247)
資料=メディアについて②
• 資料をメディアという例
図情図書館プリントメディア部門
ディジタルメディア部門
• 資料→メディアと呼び換える代える以上に、
図書館→インフォメーションセンターと呼び換え
るべき
メディアの分類①
• 1)伝送(伝達)と記録という観点から分類
①情報を伝送(伝達)のみするもの・・・空気、電
波、電話線
②情報を記録のみするもの・・・レコード、音楽C
D、DVD
③情報を伝送(伝達)し、さらに記録するも
の・・・新聞紙
→しかし本当にこうなるの?という感じはある・・
メディアの分類②
• 2)また、上記②(および③)でも
②(Ⅰ)記録される能力があり、実際には記録され
ていないものと、
②(Ⅱ)記録される能力があり、実際に記録されて
いるもの
とに、分けられる。
なお、「資料」=記録された情報ゆえ
②(Ⅰ)は、メディアであるが、資料ではない。
(資料⊆メディア)
メディアの分類③
• 3)さらに、「伝送(伝達)」と「記録」は実体的
に分けられない。・・・1)の分類は便宜的なも
の
例
• 紙=記録媒体
紙切れに書いたメモを渡す・・・(記録を)伝送
する媒体
メディアの分類④
• 本・・・記録媒体←読者が読む・・・伝送媒体に
• 音、空気・・・伝送媒体、空気の揺れの記録
(まとまり・単位)が伝えられる側面も
メディアの分類⑤
• 媒体というもの(実体)と、それの機能とを分けて
考えよう。
• ①記録媒体も、ある程度時間を隔てた情報の伝
送という意味で、電送媒体の機能を果たす。
• ②伝送媒体も、微少な記録の繰り返しによって
伝送を果たすという意味で、記録媒体の機能も
有する。
1.3 情報とメディアと資料の定義
1.3.1 情報の定義①
『コミュニケーション論』(後藤将之著、中公新書、
1999,p.45)での定義
• もっとも広義の情報・・・物質やエネルギーが構
成するなんらかのパターン、あるいはそれが持
つ一定の秩序性
• その上で二種類の情報
①それが当初は人為によって構成されたような情
報
②当初は少なくとも人為によって構成されてはいな
かった情報
情報の定義②
• 『広辞苑』での定義。
Information
①あることがらについてのしらせ。「極秘--」
②判断を下したり行動を起したりするために必
要な、種々の媒体を介しての知識。「--が
不足している」
情報の定義③
• 後藤将之の定義の「物質やエネルギーが構成す
るなんらかのパターン、あるいはそれが持つ一
定の秩序性」について
• 「パターン」「秩序性」・・・認識する主体を要する。
ただし情報の出来る当初から「パターン」を要す
る訳ではない。
• 「パターン」を機械に教え込めば、機械も「パター
ン」を「認識」できるように。
• しかも機械(コンピュータ)の情報の送受信・・・パ
ターンの認識も不要かも
物財の情報性①
• 「情報を専門的に担うのは、情報媒体(情報メ
ディア)ですが、情報媒体として意図されていな
い存在物であっても、そこに多くの情報や意味
が結果的に担われていることは多々あります」
(後藤将之p.52)
• →物財の情報性への着目
• 先週の配付資料の「情報の二義性」のうちの
「②伝えられることを伝達者が意図していずに(あ
るいはそもそも伝達者という明確な主体の存在
しない)情報」に相当
物財の情報性②
• しかし物財の情報性は、「情報媒体として意
図されていない存在物」の専有物?
• 形態書誌学等は?
• 昔の本=写本、奥付なし、一冊、一冊違う
1.3.2 メディアの定義①
• 「メディア」英語のmediateの名詞形
• mediate 「媒介する、仲介する、取り次ぐ、取
り持つ、介在する、中間にある、連結の役を
する」
• 名詞形の単数がmedium、複数がmedia
• 太鼓持ち、仲人、くっつけるもの
• 弁証法の「媒介」
粉川哲夫のメディアの定義①
• 『社会学事典』(弘文堂,1989)「メディア」(粉
川哲夫)
• 「「中間」「媒介」などを意味するラテン語
mediumの複数が語源であることからも分か
るように、伝達を「媒介」するもののこと」
• 従来のメディア・・・「透明な媒体」を理想・・・
自らの存在感を極小化(ノイズの減ってくる録
音の歴史、モノラル→ステレオ、白黒→カ
ラー) →電子メディアに
粉川哲夫のメディアの定義②
• 透明性の逆説・・・透明性が増すと、「「送り
手」のメッセージがそのまま「受け手」に伝わ
るわけではないという逆説」
• ←例えばレコードは生演奏の際限ではなく、
一度も存在しない音を作り出す。
• では「透明性」の増す時代のメディアとは?
「コミュニケーションそのものを成り立たせる
「場」であって、単なる通路ではない」。
粉川哲夫のメディアの定義③
• 「「今や「メディアがメッセージ」を作るのであり、
「送り手」「媒介」「受け手」という発想そのもの
を無意味にしているのである」。
• 「 「メディアがメッセージ」 を作る」・・・マクルー
ハン「メディアはメッセージである」
• 「送り手」「媒介」「受け手」の無効化・・・前回、
申し上げたようなそれらの相対化の必要性を
裏付ける
2.マクルーハンのメディア論とそこか
ら発展させた議論
2.1 マーシャル・マクルーハンの略歴
• マクルーハン(1911-1980)「カナダの社会学者・文明批
評家。「メディアはメッセージである」とするメディア論
を展開。著「グーテンベルグの銀河系」「メディアの理
解」など」(広辞苑)
• 主著 『グーテンベルグの銀河系』(1962)邦訳みすず
書房
• 『メディア論(人間拡張の原理)』(1964)邦訳みすず書
房
• 多分、歴史上最も著名で、批判も賛美も含め(毛嫌い
する人も多い)最も言及されるメディア論の学者
Marshall McLuhan
左http://jackiebreckenridge.wordpress.com/2009/09/03/marshall-mcluhan/
右http://rpo.library.utoronto.ca/display_rpo/edition/mcluhan.html
マクルーハンの代表的著作の邦訳書
http://ecx.images-amazon.com/images/I/51T62KnzDjL._SL500_AA240_.jpg及び
http://ec3.images-amazon.com/images/I/61AjAEwz0rL._SS500_.jpg
Marshall McLuhan
(みすず書房のウェブによる略歴
http://www.msz.co.jp/book/author/13941.html)
1911年、カナダのアルバータ州エドモントンに生れる。マニトバ
大学で機械工学と文学を学んだ後、英国ケンブリッジ大学のト
リニティー・カレッジに留学。F.R.リーヴィス、I.A.リチャーズを識る。
帰米後1937年、カトリックに改宗、1942年、エリザベス朝の詩人
トーマス・ナッシュについての論文で博士号を取得。アメリカの
ウィスコンシン大学やセントルイス大学をはじめ諸大学で教鞭
をとり、1946年にカナダのトロント大学教授となる。「スワニー・
レビュー」や「ケニヨン・レビュー」などの諸雑誌に、数多くの文
学研究論文を発表。1951年に最初のメディア論『機械の花嫁』
を刊行し、この分野での独創的な研究に手を染める。
1962年、西欧文化における活版印刷の影響を扱った大著
『グーテンベルクの銀河系』を、ついで1964年に『メディア論』を
刊行し、現代文明論・メディア論の先駆者となる。1980年トロン
トの自宅で死去。
2.2 マクルーハンの
思想的バックグラウンド
①カナダ人であること
②元々は英文学者(エリザベス朝の文学研究)
③ 元来、テレビや若者文化が理解できなかっ
た(それらの擁護者として名を売っているの
に)
④ プロテスタントからカトリックに改宗
⑤オングやイニスの影響
⑥晩年、自己批判の書物を書く。
①カナダ人であること
• カナダ
1)メディアリテラシー教育の最も盛んな国
• 隣の大国アメリカの商業主義の影響を嫌う
2)アメリカよりもリベラルな政治文化風土(反戦、
国民皆医療制度)
3)英語圏(プロテスタント)と仏語圏(カトリック)
双方を抱える国(国民の 59.7%が英語・23.2%
が仏語を母国語に)
②元々は英文学者(1)
(エリザベス朝の文学研究)
• トーマス・ナッシュ(1567-1601)と共にジョン・
ダン(1572-1631)などの形而上詩人やシェイ
クスピアのソネットを研究
(ダンの肖像はwikipedia日本版より)
• ダン「イギリスの形而上派
の代表的詩人・神学者。逆説
と奇想に満ちた恋愛詩と宗教
詩はマニエリスム文学の極致
とされる・・・」(広辞苑)
②元々は英文学者(2)
• ダンら形而上詩人を再評価したのがT.S.エリ
オット(1888-1965)
http://nobelprize.org/nobel_prizes/literature/laureates/1948/eliot-bio.html
②元々は英文学者(3)
• エリオット「イギリスの詩人・批評家。アメリカ
生れ。宗教と伝統を重んじる。・・・詩「荒地」
「四つの四重奏」、詩劇「寺院の殺人」、批評
集「伝統と個人的才能」など。ノーベル賞。
(1888-1965)」(広辞苑)
• マクルーハンはエリオットの詩もよく引用する。
• エリオットはアメリカからイギリスに帰化し、プ
ロテスタントからアングリカンチャーチに改宗
②元々は英文学者(4)
• メディアの歴史的展望は、文学史研究の一環
として確かなもの。
• しかし近未来への展望は、思いつきに過ぎな
い面もあり、という批判は多く受ける。
• もっともそこが評価の高いところでもある。
③元来、テレビや若者文化が
理解できなかった
•
•
•
•
アメリカのウィスコンシン大の若手教員時代
若者文化、テレビ文化理解不能
それらを批判する論文を多く書く。
→マスコミがそれらの擁護者のようにマク
ルーハンを祭り上げる
• →若者文化、テレビ文化の擁護者に自己規
定
④プロテスタントからカトリックに改宗
• 1937年改宗
• マクルーハンの活字文化批判にはプロテスタ
ント批判の側面が強いといわれる・・・濱野保
樹
• エリオットのプロテスタントからアングリカン
チャーチへの改宗に対応か?
• マクルーハンの着想にヒントを与えたオング
もカトリック(しかも司祭)
⑤オングやイニスの影響
オング(1)
• オングWalter Jackson Ong(1912-2003)
• 「オング神父は米国のイエズス会の宣教師に
して、英文学と文化史、宗教史並びに哲学の
教授である」 (http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_J._Ongより意訳)
• 「彼はミズーリ州カンサスシティに、プロテスタ
ントの父とローマ・カトリックの母の間の子供
として、生をうけた」
オング(2)
• 「大学卒業後、印刷出版の仕事に携わり、そ
の後1935年イエズス会に入り、46年司祭に叙
任される」
• 「1941年にセントルイス大学に提出した彼の
修士論文は、若きマーシャル・マクルーハン
の指導を受けた」
• →いわば英文学者マクルーハンの教え子で
もあった(37-44年マクルーハンはセントルイ
ス大の教員)
オング(3)
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Walter-ong.jpg
オング(4)
• オングとの相互引照(師弟が 本質的でないとこ
ろで相互に言及し合っている)
• 「ラメ(ラムス)の研究はなかなかなされなかった
が、幸いウォルター・オングがついに内容の濃い
研究を発表してくれたのである」(マクルーハン
『グーテンベルクの銀河系』邦訳p.221)
• オング『声の文化と文字の文化』(藤原書店)
(1982→1991) (図情図書館801-O65)
• オングはマクルーハンの「地球村」にも言及する
(邦訳 p.280)
⑤オングやイニスの影響
イニス(1)
• ハロルド・イニス(Harold Adams Innis、1894年11
月5日-1952年11月8日)は、カナダの経済学者、
社会学者。専門は、経済史、メディア論。
• マックマスター大学卒業後、1920年、シカゴ大学
で博士号取得。それ以降、トロント大学で教鞭を
とる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%8B%E3
%82%B9
• 代表作『コミュニケーションのバイアス』1951(邦
題『メディアの文明史』(新曜社))(図情図書館
361.45/I-54)
イニス(2)
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Harold_Innis_public-domain_library_archives-canada.jpg
イニス(3)
• イニス・・・トロント大のマクルーハンの年長の
同僚
• 『コミュニケーションのバイアス』の影響を、マ
クルーハンは受ける。
• もっとも同書の「序文」はマクルーハンが書い
ている。
• 「彼の競争者のマクルーハン同様、イニスは
メディアについて深く省察したことで知られて
いる」http://fr.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより意訳
イニス(4)
• 「イニスの同僚にして知性面での弟子でもあ
るマーシャル・マクルーハンはイニスが夭折し
たことを人間知性の災害的な損失と痛く悲し
んだ」 http://en.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより直訳
• 「イニスはトロント大学経済学部長として、英
米の大学出身の、カナダの歴史や文化を知
らない人物にあまり頼らなくて済むよう、カナ
ダの研究者の幹部を作ることに奔走した」
http://en.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより大意
⑥晩年、自己批判の書物を書く
•
•
•
•
彼の有名な「地球村」などの発想
自己批判する著作を晩年に記す。
しかし仏語
紹介されず(濱野保樹)
→大活躍した1950-1960年代のマクルーハンの
文章のみがもて囃される
2.3「メディアはメッセージである」
①・・・メディア概念の重層性の議論
• 「メディアはメッセージである」・・・マクルーハ
ンの最も有名な言葉
• メディア・・・外側・乗り物、
• メッセージ・・・内側・乗せられる物、情報
→「外側は内側で(も)ある」??
「乗り物は乗せられる物で(も)ある」??
「メディアはメッセージである」②
• メディアと情報の区分を相対化ないしは無効
化
• 実体ではなく機能で分ける(中井正一の発想
に近い)
「メディアはメッセージである」③
具体的局面で考えると
• ラブレターを藁半紙のような再生紙にワープ
ロで印字して渡しても、効果があるか?
• 情報は無色透明、中立であるか否か
• 同じ発言でも誰が言うかで、捉えられ方は異
なる。
• 真理性よりも真実性
「メディアはメッセージである」④
【マクルーハン以前の普通の考え方】
• 情報と媒体の二元論・・・情報(メッセージ)と
媒体(メディア、乗り物)とは、別個のもの、全
く切り離されたものという考え方
【マクルーハンの考え方】
• メッセージ性のない、無色透明な媒体そのも
のというものはない。媒体そのものが何であ
るかということ自体にメッセージ性がある。情
報媒体それ自体が情報を発信している。
「メディアはメッセージである」④
• 「メディアはメッセージである」・・・メディア概念
が無限に広がる
• →メディア概念の重層性(吉見俊哉)
メディア概念の重層性①
メッセージ1VSメディア1
↓
〔メッセージ2VSメディア2〕
↓
【〔メッセージ3〕VSメディア3】
↓
【メッセージ4】VSメディア4
メディア概念の重層性②
• 含まれるものと含むものと関係が無限に連鎖す
る。
• 「電気の光というのは純粋なインフォメーションで
ある.それがなにか宣伝文句や名前を描き出す
のに使われないかぎり,いわば,メッセージをも
たないメディアである.この事実はすべてのメ
ディアの特徴であるけれども,その意味するとこ
ろは,どんなメディアでもその『内容』はつねに別
のメディアである,ということだ」(McLuhan
1964=1987 8)
メディア概念の重層性③
• メディアと内容とは,関係性のなかで把握さ
れる
• メディアは実体的にメディアであるわけではな
い。内容も固定的に内容であるのでもない
• 関係性のなかで相対化される.
メディア概念の重層性④
• 「書きことばの内容は話しことばであり,印刷
されたことばの内容は書かれたことばであり,
印刷は電信の内容である.もし『話しことばの
内容はなにか』と問われたら,『実際の思考
のプロセスで,それ自体は非言語的なもの』
ということにならざるをえない」(McLuhan
1964=1987 8)
• このマクルーハンの議論を延長すると・・・
メディア概念の重層性⑤
• 「印刷は電信の内容である」(上記の引用)→
• 《印刷は電信,出版物,新聞といったメディア
の内容である》.さらにこれを拡張する.《電
信,出版物,新聞は,電話線・電話会社,出
版社,新聞社といったメディアの送信される
内容である》.さらに《出版物,新聞は図書館
というメディアの選別される内容である》.
メディア概念の重層性⑥
この捉え方のメリット
スライド3の以下の矛盾も解消に
①資料⊆メディア(後述)
②資料=メディア
記録されざるメディア(媒体材料)、資料、
マスメディアまでを統合的に見られる
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
①
• 熱いメディア・・・新聞などの活字メディア、映
画、写真、ラジオ、講義
・・・一方向的、あるいは単一の感覚を高精細度
で拡張するメディア
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
②
• 冷たいメディア・・・テレビ(映画に対するテレ
ビ)、電話(ラジオに対する電話)などの電気メ
ディア(一般にマクルーハンのこの「電気メ
ディア」を、現代の状況にあわせて「電子メ
ディア」と捉える論者が多い)、漫画(写真に
対する漫画は低精細度)双方向的、演習
・・・低精細度のメディア、あるいは双方向的なメ
ディア
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
②
• マクルーハンの「熱い、冷たい」の分類・・・
個々のメディアで単独に取り出すと訳分から
なくなる
• あくまでも対にして、相対的な意味で理解す
る。
• あと日常感覚の「熱い」「冷たい」とあえて逆
になっている
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
③
• 「電話が冷たいメディア、すなわち「低精
細度」のメディアの一つであるのは、耳
に与えられる情報量が乏しいからだ。さ
らに、話されることばが「低精細度」の冷
たいメディアであるのは、与えられる情
報量が少なく、聴き手がたくさん補わな
ければならないからだ」メディア論』邦訳
p.23) 。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
④
• 「一方、熱いメディアは受容者によって
補充ないし補完されるところがあまりな
い。したがって、熱いメディアは受容者に
よる参与性が低く、冷たいメディアは参
与性あるいは補完性が高い」(『メディア
論』邦訳p.23)
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑤
• 参与性の高低が二つを隔てるポイントに。
• 参与性高い・・・冷たいメディア
• 参与性低い・・・熱いメディア
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑤
• 「熱いメディアと冷たいメディアの使用上の基本
的な差違を指摘する一つの方法は、交響楽の演
奏の放送と交響楽のリハーサルの放送とを比較
対照してみることである。これまでにCBCカナダ
放送が放映した最上の出しものの二つが、グレ
ン・グールド(1932-82)のピアノ・リサイタルのレ
コード吹き込みの模様と、イゴール・ストラヴィン
スキー(1882-1971)がトロント交響楽団を指揮し
た自作のリハーサルの模様だった。テレビのよう
な冷たいメディアが本当に用いられると、この場
合のようにプロセスへ巻き込まれないわけにい
かなくなる。」(『メディア論』邦訳p.32)
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑥
• 演奏・・・完成品・・・パッケージメディア的・・・
参与性(相対的に)低い
• リハーサル・・・未完成品・・・開かれたメディア、
モザイク(モザイクについては後述)状・・・参
与性(相対的に)高い
イーゴリ・ストラヴィンスキー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%
A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
• 1882年6月17日 - 1971年4月6日)は、ロシア
の作曲家で、初期の3作品『火の鳥』、『ペト
ルーシュカ』、『春の祭典』で特に知られる他、
指揮者、ピアニストとしても活動した。サンクト
ペテルブルク近郊のオラニエンバウム(現・ロ
モノソフ)に生れ、ニューヨークで没した。
指揮するストラヴィンスキー
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/010/284/57/N000/000/000/stravinsky05.jpg
グレン・グールド略歴①
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%BC%E3
%83%AB%E3%83%89
• グレン・グールド(Glenn Herbert Gould, 1932年9
月25日 - 1982年10月4日)は、カナダのピアニス
ト、作曲家。
• かねてより、演奏の一回性へ疑問を呈し、演奏
者と聴衆の平等な関係に志向して、演奏会から
の引退を宣言していたグールドは、1964年3月
28日のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活
動からは一切手を引いた。これ以降、没年まで
レコード録音及びラジオ、テレビなどの放送媒体
のみを音楽活動の場とする。同年には、トロント
大学法学部より、名誉博士号を授与された。
グレン・グールド略歴②
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%BC%E3
%83%AB%E3%83%89
• 1977年、グールド演奏によるバッハの「平均
律」第2巻 前奏曲とフーガ第1番ハ長調の録
音が、未知の地球外知的生命体への、人類
の文化的傑作として宇宙船ボイジャー1号・2
号にゴールデン・レコードとして搭載された。
• ピアノという楽器の中で完結するようなピアニ
ズムを嫌悪し、自分は「ピアニストではなく音
楽家かピアノで表現する作曲家だ」と主張し
たグールドであったが、第1の業績が斬新で
完成度の高いそのピアノ演奏であることは異
論のないところである。
グレン・グールド略歴③
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%BC%E3
%83%AB%E3%83%89
• グールドは、ピアノはホモフォニーの楽器では
なく対位法的楽器であるという持論を持って
おり、ピアノ演奏においては対位法を重視し
た。事実、グールドのピアノ演奏は、各声部
が明瞭で、一つ一つの音は明晰であり、多く
はペダルをほとんど踏まない特徴的なノン・レ
ガート奏法であった。
マクルーハンとグールド①
• 単にトロント大学繋がりというのではない。
• グールドもマクルーハンを評価。
• レコード>>>演奏会という部分は、リハの
番組を重んじるマクルーハンと対立しそう。
• ただしピアノで完結しないこと、モノフォニーで
なくポリフォニー志向であることなど、マク
ルーハンと合致する。
マクルーハンとグールド②
• 『グレン・グールド書簡集』(邦訳、みすず書房、
1999年)にマクルーハン宛の書簡が2本掲載
されている(pp.160-162;202-203)。
• その注によると、マクルーハンはグールドの
持っているラジオ番組で、インタビューを受け
ている。
帽子を被って演奏したり脚を組んで演奏するグールド
http://book-dvd.blog.ocn.ne.jp/photos/uncategorized/2008/11/16/glenn_gould003.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200910/22/61/d0103561_224938100.jpg
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑥
• 「小ぎれいに整った番組はラジオやレコード
のような熱いメディアに向いている。フランシ
ス・ベーコン(1561-1626大法官、イギリス経験
論の父)は熱い散文と冷たい散文を対照させ
ることに倦むことがなかった。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑦
• 「方法」に則って書いたもの、すなわち完全に
仕立てあげられたものを、警句で書いたもの、
すなわち「報復は一種の野蛮な正義である」
というような単一の観察と、対照させてみた。
受動的な消費者は完成品を求めるけれども、
知を追い求める者は警句に赴くのではないか。
そうベーコンは言うのであった。警句は不完
全であり、深いところで参加を求めるからに他
ならない」(『メディア論』邦訳p.32)。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑧
• 文学研究者の本領発揮
• 受け手の解釈の可能性、参与性で(冷たいメ
ディアを)プラスに評価
• 象徴主義(サンボリズム)、反小説(アンチロ
マン)、ヌーヴェルヴァーグ
• 作品の完成を拒む
• 作品を作るという行為そのものを描き、作る
行為を相対化
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑨
→作ることの意味を問う芸術の潮流
• 前衛芸術の作者の相対化、作品の完成性へ
の崩壊の流れ≒マクルーハンの芸術理論(芸
術の志向性)
→「冷たいメディア」擁護
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア1
⑩
(写真のインパクトを論じる中で)
• 「詩人や小説家は、われわれがそれを用いて洞
察力を獲得し、われわれ自身や世界をつくりあ
げていく、あの精神の内的身振りというものに目
を転じた。このようにして、芸術は外界との対応
から内面での創造へと移っていった。既知の世
界に対応する一つの世界を描き出す代わりに、
芸術家たちは創造の過程を提示して、公衆がそ
れに参加できるようにする方向へ変わった。いま
やわれわれには創造過程に参与する手段が与
えられたのである」(『メディア論』p.198)
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑪-活字文化批判①
• 活字文化批判との絡み
• オーラルコミュニケーション・・・双方向性ある
• この反対が活字文化
• 講義(一方向)と演習(双方向)
• 文字、活字文化批判--民衆をエリートが支
配する道具としての文字
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑫-活字文化批判②
• 活字文化批判ないしは「熱いメディア」批判
• 価値中立的でないという問題(ウェーバーの
方法、「メディア社会学」の授業参照)
• ただし彼の批判する「活字文化」の内実は?
• 表音文字批判・・・アルファベット批判
• 表意文字(漢字等)には、やや肯定的
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑬-アルファベットの特質①
• 全ての文字を25文字に集約→文字が普及し
やすい。文字そのものは誰でも読める(単語
の発音はたとえ無理でも)→世界中に普及す
る。
• 単語を形の束縛から解放→より抽象化→言
葉のより普遍的な流通
• 具象性の少ない文字。より抽象的に→地域
の隅々、あるいは世界の隅々に伝わる。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑭-アルファベットの特質②
• 国旗と、それを意味する文字を比較
• 「かりに、星条旗を掲げる代わりに、一枚の布
に「アメリカの旗」と書いて掲げたら、どういう
ことになるか。記号は同一の意味を伝えるで
あろうけれども、効果は完全に異なるであろう。
星条旗の視覚的なモザイクを文字形式に移
し変えてしまえば、それと一体化したイメージ
や経験の質の多くが奪い去られてしまうであ
ろう」(『メディア論』邦訳p.84)。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑮-表意文字①
• 表意文字・・・国旗に近い要素を留める
• 「表音文字で書かれたことばは、象形文字や中国の
表意文字のような形式で確保されていた意味と知覚
の世界を犠牲にする。しかしながら、こういった文化的
に豊かな文字の形式は、部族のことばからなる呪術
的に不連続で伝統的な世界から、冷たく画一的な視
覚メディアの世界に、突然に転移する手段を提供しな
かった。中国社会は幾世紀にもわたって表意文字を
使用してきたが、その家族および部族の継ぎ目のな
い微妙な網の目が脅威にさらされることがなかった」
( 『メディア論』邦訳p.85)。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑯-表意文字②
• →表意文字・・・部族の言葉
• ・・・要するに部族の生活に密接に結びついた
言葉である。・・・よって画一的ではない。
• これは誰が話すかということにも関わり、メ
ディア(話し手とか声)のメッセージ性と不即
不離の関係
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑰-表意文字③
• 「二〇〇〇年前の古代ローマの属領ガリアが
そうであったように、こんにちアフリカでアル
ファベット文字を身につけて一世代もすれば、
少なくとも部族の網から個人を解き放つのに
充分である」( 『メディア論』邦訳p.85)。
• →要するに、部族社会から個人を解放するの
が、アルファベットなどの表音文字
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑱-表意文字④
• 「この事実は、アルファベットで綴られたことば
の「内容」には関係がない。それは人の聴覚
経験と視覚経験が突然に裂けた結果である」
( 『メディア論』邦訳p.85) 。
• 「内容」=メッセージより「聴覚」「視覚」といっ
たメデフィアの変化の方が重要→ここも「メ
ディアはメッセージ」のバリエーション
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑲-表意文字から表音文字へ①
• 前のスライドの「聴覚経験と視覚経験」の分
離とは何か?
• 「表音アルファベットのみがこのような経験の
明確な分割をおこない、その使用者に耳の代
わりに目を与え、その使用者をこだますること
ばの魔術の陶酔と親族の網目から解き放つ
のである」 ( 『メディア論』邦訳p.85) 。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
⑳-表意文字から表音文字へ②
• アルファベットなどの表音文字
• →視覚優位の社会
• 「表音アルファベットは視覚の機能を強化し拡
張するものであるが、文字文化の内部で、そ
れ以外の聴覚、触覚、味覚などの感覚の役
割を縮小させる」(『メディア論』邦訳p.86)。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
21-論理の線形性①
• 表音文字文化-論理の線形性→話が論理的な
前後関係によって構成される→因果関係で物事
を捉える。
• しかし因果関係のない連続というものもあるとマ
クルーハンはいう。
• 「西欧の文字文化をもった社会では、なにかがな
にかから「続いて生じる」というのが、あたかも、
そのような連続を作り出す原因のようなものが
作用しているかのように感じられ、いまなお、い
かにももっともなこととして受け入れられるので
ある」(p.87)。
2.4 熱いメディアvs冷たいメディア
22-論理の線形性②
• 「こんにちの電気の時代に、われわれは非ユー
クリッド幾何学を自由自在に作れるような気がす
るのと同じように、自由自在に非線条(sic)論理
学を作れるようにも感ずる。・・・一行省略・・・結
びつけられた線状の連続は、心理ならびに社会
の組織に普遍的な形式となっているが、これま
でにそれをマスターしたのはアルファベット文化
だけだった」(同ページ)。
• ハイパーテクスト、マルチメディアの構造・・・複
線的・非線形的に情報が流れる