T2K実験

090824
サマーチャンレンジ
Tokai-to-Kamioka
長基線ニュートリノ振動実験
T2K
小林 隆
KEK
素粒子原子核研究所
1
T2K 実験
J-PARC
@JAEA
2009年4月実験開始





世界最大強度のJ-PARCでニュートリノを生成し、
世界最大のニュートリノ検出器スーパーカミオカンデで測定し、
ニュートリノ振動現象を詳細に調べることにより、
ニュートリノの重さ、世代間の関係を明らかにし、
極微の世界をつかさどる究極の法則や宇宙の物質創生の謎を探求すること。
2
現在の素粒子の世界像(標準模型)


これまでほとんどの実験
結果を説明。大成功!
ニュートリノ




3種類
質量は0と仮定(されてい
た)
弱い相互作用のみ
しかし、説明できないこと
も多い



なぜ3世代?
質量や電荷を説明できない
などなど
究極の理論の近似であろ
う?
標準模型を超える新しい
理論


素粒子屋の長年の夢
3
素粒子物理学の大目標
大統一理論
(Grand Unified Theory: GUT)
未知!
電弱理論
(Electroweak theory)
確立!
強い力:量子色力学
(Quantum Chromo Dynamics)
標準模型
電磁気学
量子電磁力学(QED)
ニュートン1998年7月号
全ての力を記述する一つの統一理論の構築
4
ニュートリノと素粒子物理

素粒子物理の目的


究極の物質像、究極の法則、物質の起源を解明すること
ニュートリノの謎

質量が異様に小さい



neの質量 電子の約5桁以上
なぜ他のレプトン、クォークに比べてそんなに軽いのか?
非常に軽いν質量を説明する有力なモデル



世代間の関係


クォークと大きく異なっているように見える。
クォークと同様CP対称性が壊れているのか否か?


シーソー模型(柳田1974)
非常に大きな質量を持つ粒子の存在を示唆
宇宙の物質反物質非対称性の謎解明のヒントになりうる。
ニュートリノの世代間関係や質量を解明することにより、
大統一理論などの標準理論を越える物理や宇宙の物質
起源のヒントが得られる可能性がある
5
Neutrino Oscillation (in 2flavor approx.)
Neutrino Mixing
 n

n
 
  cos 

  sin 

Weak eigenstates
 sin    n 1
  
cos    n 2




mass
m1
m 2  m12  m22
m2
Mass eigenstates
n  (0)  n 1 cos   n 2 sin 
i
m12
L
2E
i
m22
L
2E
n  (t )  n 1 e
cos   n 2 e
sin 
Probability to change flavor L:flight dist、En:neutrino energy
1-P(nn)
P(n   n  )  n  n  (t )
m22
m
sin222
sin 2
2

m 2 [eV 2 ]  L[km] 

 sin 2  sin 1.27
E
[
GeV
]
n


2
Appearance (出現)
Disappearance (消失)
L=250km, m232=3x10-3eV2
1
2
E (GeV)
2
現象
 元の種類のニュートリノが減少
(“Disappearance”)
 別の種類のニュートリノが出現
(“Appearance”)
 振動に特徴的なエネルギー分布
Takashi Kobayashi (KEK), PAC07
6
ニュートリノ振動の直感的説明(音のうなり)
と
の質量が 同じなら、「波長」が同じである
違うと、「波長」が異なる
波の伝播
時間
合成した波
(うなり)
ミューニュートリノ
ミューニュートリノ
タウニュートリノ
ミューニュートリノ
7
ニュートリノの3世代混合
フレーバー固有状態
ne
n
n
U MNS
1

 0
0

0
 c23
 s23
n e  ユニタリー行列n 1 
 
 
n    U MNSn 2 
n 
n 
 
 3
0   c13

 s23  0
 c23   s13e i
大気、加速器
0
1
0
 s13e  i
0
 c13
(大気)、加速器
m1
質量固有状態
m2
m3
  c12

  s12
 0

 s12
 c12
0
0

0
1 
太陽、原子炉
ニュートリノ振動をつかさどる6個のパラメータ
12, 23,
13,

2-m 2

m
=m
2
2
2
ij
i
j
m12 , m23 , m13
cij  cos( ij ), s ij  sin(  ij ) 8
ニュートリノの理解の現状


長い間質量は0だと信じられてきた。
1998年スーパーカミオカンデによってニュー
トリノ振動現象が発見された。




有限な質量
世代間で混合
p, He ...
n に変身
n
大発見!
n
その後K2K, KamLANDなどで続々振動確認
わかってきたこと


L = 10~30km
n
nのまま
L=13000km
p, He ...
p, He ...
質量の(二乗)差の有限な値
混合の度合いの一部
 c12

U    s12
 0

s12
c12
0
上向き
下向き
0 1
0
0   1 0 0   c13 0 s13 
 
 
 

0    0 c23 s23    0 1 0    0
1 0
1   0  s23 c23   0 0 e i    s13 0 c13 
わかったこと
12~33o m122~0.00008eV2
23~45o m232~0.0025eV2
13<10o (m132~m232)?
 ???
13小さいけど未知!
さっぱりわからない!
今後のニュートリノ物理における課題

3番目の振動。3世代間の混合はあるか?
未発見のnne振動最後の未知の混合角
T2K実験
原子炉反ニュートリノ消失探索実験


CP対称性は破れているか
宇宙の物質反物質非対称性の起源のヒント?
次世代加速器長基線ニュートリノ振動実験



質量のパターン
次世代加速器長基線ニュートリノ振動実験
絶対質量
ニュートリノ振動で測れるのは2乗差のみ。
(トリチウム)ベータ崩壊スペクトル精密測定
ニュートリノレスダブルベータ崩壊探索実験


ニュートリノと反ニュートリノは同じ粒子か?
ニュートリノが極めて軽いことを説明する非常に高いエネル
ギーにおける理論解明のヒント?
ニュートリノレスダブルベータ崩壊探索実験

10
最も重要かつ緊急な課題: 13. なぜ?
CPV & sign(m2) will be probed thru ne appearance in accel LBL
Leading
CP-odd
, a-a for n   n e
+ other terms..

CP非保存の効果
 sin   s12  s23  s13

  E 


3  
 [g cm ]   [GeV ] 
Matter eff.: a  7.56 105[eV 2 ]  
(where sin12~0.5, sin23~0.7, sin13<0.2)
The size of 13
Decide future dir.!
1999日本(戸塚+西川)が
世界で初めて着目T2K提案
Takashi Kobayashi (KEK), PAC07
11
13の測り方
加速器ニュートリノによる13
• ミューニュートリノ:<En> ~ O(GeV)  ne出現実験
• P(nne) = sin223・sin2213・sin2(1.27m231L/E) + many terms (incl. )
 Appearance measurement
 統計(=ビームパワーx検出器サイズ)勝負
原子炉ニュートリノによる13
• 反電子ニュートリノ:<En> ~ a few MeV  ne消失実験
• P(nene) = 1- sin2213・sin2(1.27m231L/E) + O(m221/m231)
 Almost pure measurement of 13.
消失信号が小さい 系統誤差勝負
T.Kobayashi (KEK)
1212
Tokai-to-Kamioka (T2K) long baseline
neutrino oscillation experiment
Goal



n 消失の精密測定.
Intense narrow spectrum n beam from J-PARC MR



ne 出現の発見13決定
Off-axis w/ 2~2.5deg
Tuned at osci. max.
n x

振動確率@
m2=3x10-3eV2
OA0°
OA2°
OA2.5°
OA3°
SK: largest, high PID performance
1600nCC/yr/22.5kt
(2.5deg)
13
ニュートリノビームの作り方
崩壊領域
収束
装置
陽子 標的
ビーム

n
p
ビームダンプ
収束装置: 電磁ホーン
p beam
磁場
磁場
p+
p+
半径 r
電流
Aluminum
I [ A]
10
磁場強さ B
5r [m]
B  4.3 T , r  15 mm, I  320kA
トロイダル磁場 B [T ] 
純粋なn ビーム (≳99%)
ニュートリノ/反ニュートリノはホーンの極性反転で切り替え
14
世界初: オフアクシスビーム
First Application
Super-K.
(ref.: BNL-E889 Proposal)

Decay Pipe
n flux
TargetHorns
p decay Kinematics
En (GeV)
振動確率@
m2=3x10-3eV2
OA0°
OA2°
OA2.5°
0°
1
OA3°
2°
2.5°
3°
0
0
2
5
pp (GeV/c)
8
 Quasi Monochromatic Beam
 x 2~3 intense than NBB
Tuned at oscillation maximum
T.Kobayashi (KEK)
Statistics at SK
(OAB 2.5 deg, 1 yr, 22.5 kt)
~ 2200 n tot
~ 1600 n CC
ne ~0.4% at n peak
15
ニュートリノ施設
電磁ホーン
ニュートリノモニター棟
標的(グラファイト)
•建設ほぼ終了
•機器の立ち上げ調整中
•2009年4月からビーム受入れ開始
一次陽子ビームライン(超伝導)
CERNから寄贈された
UA1磁石(1000ton).
ニュートリノモニター棟内に
設置済み
ビームダンプ
ターゲットステーション完成
16
Decay volume completed
16
280m 前置検出器
(ニュートリノモニター)
17
17
INGRID: 軸上検出器



16モジュール中7モジュール完成、設置済み
宇宙線を観測中
残りのモジュールも夏の間に設置
18
18
FGD(カナダ、日)
Off-axis 検出器
TPC(カナダ・仏)
エレクトロニクス(英・仏、加)
12-FEM board stack-up before
burn-in phase



SMRD(米、ポーランド、ロシア)
P0D(米)
ECAL(英)
製作、組立、
試験進行中。
9月ごろ設置
開始
冬以降のビー
ムに備える
19
19
(April 1996 commissioned)
スーパーカミオカンデ

50000トンの容積の水タンク
(42m高さ、40m直径)





32000トン有感度体積
22000トン有効体積
11146本の20インチ光電子
増倍管
光電面被覆率 40%
地下1000mの神岡鉱山内
40m
20
期待されるニュートリノの数
(1日に2兆5千万個)
T.Kobayashi (KEK)
21
ニュートリノ(反応)の捉え方
反応で出てきた荷電粒子が出す
チェレンコフ光を検出
光センサー
荷電粒子が
媒質中の光速
より速く走るとき
に放射される。
v:荷電粒子の速度
c:光速
n:屈折率
円錐状に放射
22
J-PARCから来たニュートリノを識別:GPS
• J-PARCから
• 大気ニュートリノ
1日 約10個
1日 約10個
到着時間で区別する
GPS
(1000万分の1秒の誤差)
今うったよ
J-PARC
T.Kobayashi (KEK)
今きたよ
ニュートリノ飛行時間
約1000分の1秒
SK
23
ニュートリノの種類を識別するには?
電子ニュートリノ
電子
生成された
粒子の種類で
識別
μニュートリノ
μ粒子
τニュートリノ
τ粒子
Q3:τ粒子の質量を1.8GeV/c2として、一番したの反応が起こるために必要な最低のニュートリノエネルギーは?
24
とeの識別


素直に走るためパターンが
きれいなリング
e-
e
e-
g
e-
e+
g
ee-
電磁シャワーを起こすた
めパターンが汚い
25
nne振動で予想される信号と感度
電子ニュートリノ候補事象
信号事象
シミュレーション
10倍以上感度向上
背景事象
sin2213=0.1, 2.5deg, 750kWx5yr
sin2213
n(CC+NC)
Beam ne
Osc’d ne
0.1
10
17
143
T.Kobayashi (KEK)
26
23, m232 Sensitivity:μニュートリノ消失
M.Diwan, Venice, Mar.2009
# of events (arb. unit)
-like(ミューらしい)
事象
--68%CL
--90%CL
--99%CL
w/o osc.
m2 = 3.0 x 10-3 eV2
T.Kobayashi (KEK)
Goal :
(sin2223)~0.01,
(m223) <1×10-4 [eV2]
27
T2K experiment
started!
28
T2K beamline started operation!
First shot after turning on SC magnets at 19:09, Apr.23, 2009
Muon monitor signal
Ion chamber
Behind 5GeV equiv material (dump)
Silicon detector
Scintillator (for commissioning)
First observation of muons produced in neutrino beamline29
T2K Mid-term Schedule

June~Sept, 2009 (during scheduled shutdown)




Fall~Winter, 2009




Want to accumulate O(100kW x107s) by Summer 2010
First physics results in 2010
 Exceed sensitivity of present world record result from Chooz
experiment
After Summer 2010



Beam/Detector commissioning
Winter JFY2009 ~ Summer 2010


Horn 2 and 3 installation and operation test
On-axis INGRID detector completion
Ready to accept beam on Oct. 10
Physics data taking with > a few 100kW
Next milestone: 1~2MW.yr
Final goal: 3.75MW.yr (approved by PAC)
30
Quest for the Origin of Matter Dominated Universe
One of the Main Subject of the
KEK Roadmap
T2K
(2009~)
Discovery of
the ne Appearance
Neutrino
Intensity Improvement
Huge Detector R&D
Establish
Huge Detector Construction of
Huge Detector
Technology
v
Water Cherenkov
~Mt
Discovery of
Lepton CP Violation
Proton Decay
Liquid Ar TPC
~100kt
31
まとめ

T2K実験






5年間(2004年度~2008年度)かけて原研敷地内
のニュートリノ生成装置を建設。
2009年4月実験開始。
ニュートリノ物理の分野はこれから。




原研東海村のJ-PARCを用いて、これまでの約100倍強
いニュートリノビームを生成。
295km先のスーパーカミオカンデで検出
ニュートリノ振動現象の精密測定を通して、物質の究極の
世界を探る。
ニュートリノはまだまだ謎がおおい。
クォークの例をみると数十年はやることがありそう。
皆さんが活躍できるチャンスはたくさんあると思います。
興味のある方は大学の素粒子実験の研究室のドア
をたたきましょう。いろいろ教えてくれるはずです。
32