2015/09/21 日本教育工学会 第31回全国大会 口頭発表 (教師教育2) 認知カウンセリングを通じた 学習指導力育成の試み -大学での一斉授業における実践研究- 深谷達史 1・植阪友理 2 1 群馬大学 2 東京大学 [email protected] 背景 • 教師に求められる学習指導力 教師 学習者 診断 深い理解 不十分 支援 学習方略 藤村 (2012)など 2 背景 • 教員養成における大学の課題 中央教育審議会答申 (文部科学省, 2006) • 実践的指導力の育成が不十分 • 授業方法の改善 • 支援体制の充実 学生自身が学習支援の主体になることが必要 ⇒ 認知カウンセリングに着目 3 背景 • 認知カウンセリング (CC) とは (市川, 1993など) – 個別的な面接を通じた学習支援活動 カウンセラー クライアント ○○がよく 分からない 診断・支援 問題 ② 認知心理学 を活かす ① 認知的問題 を扱う 4 背景 • 大学生の学習支援の問題 教師の知識 研究 Tutoring 研究 診断・説明が手続き的レベルに 留まる (e.g., Tirosh, 2000) 1対1の指導場面でもチューターは 相手の理解状態を正確に把握 で きない (Chi et al., 2004) 本実践が学生の指導方略を 変容させたかを検討 5 実践 • 「教育内容方法学概論」 – 対象:103名(学部2年生が中心) – レポート課題としてCCを実施 • A4版で2枚 • 1~2回の指導(対象は問わない) • 診断,支援,考察を含める 6 回 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 トピック 内容 ガイダンス イントロ 知識 記憶と理解 メタ認知 学習観,学習方略 学習意欲 自己効力感,2要因モデル CC① CCの技法,CCの事例① CC② CCの事例② 習得の授業① OKJとは,OKJの事例① CC③ レポート発表とふり返り 習得の授業② OKJの事例② 習得の授業③ 授業指導案づくり 習得の授業④ 授業指導案発表 探究の授業 探究のプロセス 教育評価 テストの影響,実践事例 総まとめ 復習とふり返り 最終試験 レポート 課題の解説 実施 ↓ 提出 ふり返り 実践 • 具体的な内容① – 第5回:CCの技法 (市川, 1993を一部改変) 診断 説明 ふり返り 仮想的教示 理由質問 図式的説明 教訓帰納 8 実践 • 具体的な内容② – 第5・6回:CCの事例 正事例 負事例 • 市川 (2000) • 小学校校長 – 6年生の児童 – 4年生の児童 – 20m2は何cm2か? – 文章題の指導 – 診断,方略指導 – 診断,方略指導が 行われず 9 実践 • 具体的な内容③ – 第8回:代表者の発表とふり返り 発表 (代表者) • 2次関数の指導 (高1) • よかった点と改善点を 受講者で議論 ふり返り (全員) • 自身の事例を改めて 見直し,改善点を 考える 10 検証デザイン • 場面想定法 (tutoring scenario method) – つまずきを示した児童にどう関わるか • 第1回と第8回授業にて実施 • 2種類の問題をカウンターバランス 第1回 第7回 半分の 受講者 分数課題 円課題 もう半分の 受講者 円課題 分数課題 11 検証デザイン • 場面想定法 (tutoring scenario method) – 以下の技法に対応した,4つの観点から分析 診断 指導 ふり返り 仮想的教示 理由質問 図式的説明 教訓帰納 12 • 分数課題 ある児童が「分数がよく分からない」といって相談 にきました。試しに問題を解いてもらったところ, 1 2 1 3 2 2 + = = 1 という回答を示しました。 • 4つの分析の観点 診断 ・立式の理由を質問したか 説明 ・概念的な説明をしたか 理解確認 ・説明を求めて相手の理解状態を 確認したか 方略指導 ・学習方略に関する指導を行ったか 13 結果と考察 • 結果:診断と説明 100% 80% 60% ** 81% 79% 56% ** 事前 事後 65% 64% 56% 38% 40% 20% 10% 0% 分数 円 診断 分数 円 説明 14 結果と考察 • 結果:理解確認と方略指導 事前 事後 100% 80% 60% ** ** ** 44% 34% 40% 31% † 13% 20% 2% 0% 0% 分数 理解確認 円 2% 2% 分数 円 方略指導 15 結果と考察 • 成果:大学生における学習支援力の向上 CCの経験 養成課程の学生 診断 支援 16 結果と考察 • 課題①:CCに関われる体制の構築 CCの経験 養成課程の学生 診断 支援 17 結果と考察 • 課題①:CCに関われる体制の構築 CCの経験 養成課程の学生 診断 支援 長期的にCCに関われる体制を構築する必要性 18 結果と考察 • 課題②:更なる研究の必要性 CCの経験 養成課程の学生 学習者 診断 理解 支援 学習方略 実際の支援行動や学習者における変化の検証 19
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