Extremal Combinatorics 15. Orthogonality and Rank Arguments 2009年7月13日 木下 直紀 15.1. Orthogonality • 2個のベクトル u,v は、内積 <u,v> = 0 のとき、直交 している(orthogonal)という。 • 直感的には、 2個のベクトルが直交 ⇒ ベクトルが「かなり異な る」 15.1.1. Orthogonal coding • 族 F の要素からベクトル空間 Fqm への単射 (injection)が可能であるとき、|F | ≦ qm が成り立つ。 • Fqm: 各要素∈{0, …, q–1} の m 次元空間 符号ベクト ル (code vector) 単射 族F ベクトル空間 Fqm 15.1.1. Orthogonal coding • 命題14.2. 有限次元線形空間 V の部分空間 U⊆V について、dim U + dim U┴ = dim V • dim U┴ = {v∈V : v = 0 for all u∈U} を双対(dual)また は直交補空間(orthogonal complement)という。 • うまく符号ベクトルをとると、各ベクトルはある 次元 d の部分空間に対して直交する。このとき命 題14.2より、 |F | ≦ qm–d が成り立つ。 • このことを用いて次の結果を示す。 15.1.1. Orthogonal coding • • • • A,B⊆2X を n 要素集合 X の部分集合族とする。 直積 A×B のサイズはどのくらいだろうか? 何も情報がなければ、|A×B| = |A|・|B| ≦ 22n A,B がいずれも単調増加(減少)のときは? • 定理11.6.(Kleitman) |A|・|B| ≦ 2n・|A∩B| • e.g. X = {1,2,3}, A = {{},{1},{1,2},{1,2,3}}, B = {{}, {3},{2,3},{1,2,3}}, n = 3, |A| = |B| = 4, |A∩B| = 2 • さらに、 A∈A, B∈B について |A∩B| が常に偶数ま たは常に奇数であるとき、より良い上界が示せる。 15.1.1. Orthogonal coding • • • • 定理15.1.(Ahlswede–El Gamal–Pang 1984) A,B : n 要素集合 X の部分集合族 A∈A, B∈B について |A∩B| が常に偶数 ⇒ |A|・|B| ≦ 2n • e.g. X = {1,2,3,4}, A = {{},{2,4},{1,2,3},{1,3,4}}, B = {{},{1,3},{1,2,4},{2,3,4}}, n = 4, |A| = |B| = 4 • なお「常に奇数」の場合は |A|・|B| ≦ 2n–1 となる (Exercise 15.1)。 15.1.1. • • • • • • 定理15.1. A,B : n 要素集合 X の部 分集合族、 A∈A, B∈B について |A∩B| が常に偶数 ⇒ |A|・|B| ≦ 2n 証明. U,V : A,B に対応する生成(incidence)ベクトル集合 生成ベクトルは F2n 空間。1 + 1 = 0 (mod 2) に注意 U',V' : U,V の張る F2n の部分ベクトル空間 |A|・|B| = |U|・|V| ≦ |U'|・|V'| ≦ 2dim U' + dim V' 生成ベクトルの内積は、対応する集合 A,B の共通 部分サイズのパリティ = |A∩B| mod 2 (常に偶数) なので、 • for all u∈U, v∈V : <u,v> = 0 15.1.1. • • • • • 定理15.1. A,B : n 要素集合 X の部 分集合族、 A∈A, B∈B について |A∩B| が常に偶数 ⇒ |A|・|B| ≦ 2n for all u∈U, v∈V : <u,v> = 0 より、U,V は直交 U',V' はそれぞれ U,V の張る空間 ⇒ U',V' も直交 U'⊆V' ┴ および補題14.2より、 dim U' ≦ dim V' ┴ = n – dim V' |A|・|B| ≦ 2dim U' + dim V' ≦2(n – dim V') + dim V' = 2n □ • 教科書の証明は「常に奇数」の場合にも対応する ため少し複雑になっている。上記証明は「常に偶 数」のみに対応して簡略化した。 15.1.2. A bribery party • • • • • • bribery : わいろ ある町に n (偶数)人の住人がいる 町会議員はできるだけ次も当選したい 議員は毎年住人に幸福かどうかアンケートを取る k 年後、町会議員選挙 議員は k 年の間アンケートに幸福(YES)と不幸(NO) を同じ回数答えた人を「パーティー」に招待する • 何人パーティーに招待されるか? • k が奇数なら当然誰も招待されない。k が偶数な ら? 15.1.2. A bribery party • 安定性 : どの2年(連続でなくてよい)を比較して も、ちょうど半分の住人のアンケート結果が異 なっている • 少なくとも n / k 人は招待されないことを示す。 • s(k) : パーティーに招待されない人数 • i 回目のアンケート結果を (–1,+1) ベクトル vi = (vi1, …, vin) で表す。vij = +1 ⇔ 住民 j がYESと回答 • s(k) = (v1+…+vk の非ゼロ要素数) • 安定性より、任意の i ≠ j について <vi,vj> = 0 • 求める結果 s(k) ≧ n / k は次のより一般的な結果で 15.1.2. A bribery party • • • • • • 補題15.2.(Alon 1990a) 1 ≦ i ≦ k について、 v1, …, vk :互いに直交するベクトル vi = (vi1, …, vin) : vij∈{–1,+1} 実数 c1, …, ck : not-all-zero ⇒ y = c1v1 + … + ckvk は少なくとも n / k 個 0 でない要素を含む。 補題15.2. v1, …, vk :互いに直交, vi = (vi1, …, vin) : vij∈{–1,+1}, 実数 c1, …, ck : not-all-zero ⇒ y = c1v1 + … + ckvk は少なくとも n / k 個 0 でない要素を含 む。 15.1.2. • 証明. 一般性を失わずに、|c1| = maxi |ci| • y = (y1, …, yn), |y| = (|y1|, …, |yn|) • s : y の 0 でない要素数 i.e. s = |S|, S = {j : yj ≠ 0} k k kc12 n ci2 n ci vi , ci vi i 1 i 1 n y yj j 1 2 j jS 2 k k c v ,c v i 1 i i 1 1 y j s jS jS i 1 2 i i y, y 1 yj s jS Cauchy - Schwartz : vi2 ui2 vi ui i 1 i 1 i 1 n n n 2 2 補題15.2. v1, …, vk :互いに直交, vi = (vi1, …, vin) : vij∈{–1,+1}, 実数 c1, …, ck : not-all-zero ⇒ y = c1v1 + … + ckvk は少なくとも n / k 個 0 でない要素を含 む。 • v1, …, vk は互いに直交しているので、 i 1 vi , v1 : 直交 n n n k vi , v1 0 yj y j v1 j ci vij v1 j 15.1.2. j 1 vij 1,1 j 1 k j 1 i 1 n k i 1 j 1 i 1 ci vij v1 j ci vi , v1 c1 v1 , v1 c1n 2 c12 n 2 • 前頁より、 2 1 n kc1 n y j s s jS s k □ 15.1.2. A bribery party • Hadamard行列 H : 要素が {–1,+1} からなり、 各行(列)が直交する n×n 行列 • H のランク(線形独立な行の数) : rk(H) = n • Alonの補題15.2より、H の十分大きな部分行列も、 最大ランク(= 行数)を持つことがいえる。 • 以下、Hadamard行列の要素は実数として扱う。 • 系15.3. t > (1 – 1 / r)・n ⇒ n×n Hadamard行列 H の r×t 部分行列 H' はランク r を持つ。 15.1.2. • • • • • 系15.3. t > (1 – 1 / r)・n ⇒ n×n Hadamard行列 H の r×t 部分行列 H' はランク r 証明. 背理法。 rk(H') < r とすると、H' のある 2 行 v1,v2 について、 ∃c1,c2 ≠ 0 s.t. c1v1 + c2v2 = 0 … (1) v1,v2 に対応する H の行 : u1,u2 補題15.2より、c1u1 + c2u2 は少なくとも n / r 個 0 でない要素を含む • ⇒ t > (1 – 1 / r)・n より、c1v1 + c2v2 は少なくとも1 個 0 でない要素を含む • ⇒ (1)に矛盾 15.1.2. A bribery party • 行列 M の一部を書き換えてランクを減らす事を考 える • 定義. rigidity RM(r) : M のランクを r 以下にするため に書き換えなければならない最小の要素数 • n×n Hadamard行列については、以下の結果がある • (Pulak–Razborov–Savicky 1988) RH(r) ≧ n2 / r3 log r •• 系15.3より、次の(上記より強い)結果がいえる 系15.4. H : n×n Hadamard行列 ⇒ R (r) ≧ n2 / r2 H 15.1.2. • • • • • 系15.4. H : n×n Hadamard行列 ⇒ RH(r) ≧ n2 / r2 n r 証明. r r H を n / r 個のr×n 部分行列に分割 (n / r)2 未満しか書き換えなかったとするr 部分行列のうち最低1個は n / r 未満の書き換え 書き換えられていない部分だけの部分行列を考え ると、t > n – n / r として r×t 行列が取れる • ⇒ 系15.3より、この部分行列のランクは r 以上 • ⇒ RH(r) ≧ n2 / r2 H □ 15.1.3. Hadamard matrices • Hadamard行列 H : 要素が {–1,+1} からなり、 各行(列)が直交する n×n 行列 • • • • 補題15.5.(J. H. Lindsey) H : n×n Hadamard行列 T : H の任意の a×b 部分行列 ⇒ T の要素で –1 と +1 の個数の差は高々 abn 補題15.5. n×n Hadamard行列 H の任意の a×b 部分行列 T において要素 –1 と +1 の 個数の差は高々 abn 15.1.3. • 証明.(Babai, Frankl and Simon) • vi = (vi1, …, vin) : H の i 行目ベクトル • T は H の a 行 b 列部分行列 a b vij とおく。 abn を示したい。 i 1 j 1 a • x = (1b0n–b) として、y y1 ,, yn vi とおくと、 i 1 • Cauchy-Schwartzの不等式より、 2 2 2 2 2 x, y x y b y 補題15.5. n×n Hadamard行列 H の任意の a×b 部分行列 T において要素 –1 と +1 の 個数の差は高々 abn 15.1.3. • H はHadamardであるので、各行 vi は直交するので、 y y, y 2 • 前頁より、 a a v ,v i 1 i i 1 i a a vi , v j vi , vi an i 1 j 1 b y abn, abn 2 a i 1 2 □ 15.1.3. Hadamard matrices • Hadamard行列の任意の行(列)に –1 をかけたもの もまたHadamard行列である。 • 上記を用いて、1行目と1列目の要素がすべて1から なる形にできる。この状態を正規(normalized)とい う。 • 定理15.6. • H : n×n 正規Hadamard行列 • このとき1行目と1列目以外は –1,+1 が n / 2 ずつあ る。 • n > 2 ならば、1行(列)目を除く任意の2行(列) で、 15.1.3. 定理15.6. H : n×n 正規Hadamard行列 ⇒ n > 2 な らば、1行(列)目を除く任意の2行(列)で、 同じ位置にある +1 の数はちょうど n / 4 個で ある。 • 証明. • 「1行目と1列目以外は –1,+1 が n / 2 ずつある」は 自明 • (他の行(列)との内積が 0 になるため) ui vi 個数 • 1行目以外の任意の2列を u,v とおく +1 +1 a • u,v で両方 +1 が a 個とする +1 –1 n / 2 – a • 片方 +1 がそれぞれ n / 2 – a 個 • 両方 –1 が n – a – (n / 2 – a) = a 個 –1 +1 n / 2 – a –1 –1 a • <u,v> = 2a – (n – 2a) = 4a – n = 0 n 計 • よって a = n / 4 □ 15.1.3. Hadamard matrices • • • 1 H : n×n Hadamard行列 1 H 1 Cn : H, –H のすべての 1 行の –1 を 0 に置き換えた 1 ベクトルの集合 1 H Cn をHadamard符号という 1 e.g. 1 1111 1 1 1 1100 1 1 1 1010 1 1 1 1 1 1 1001 ,C 1 1 1 4 0000 0011 1 1 1 1 1 1 0101 0110 1 1 1 • 定理15.7. • Hadamard符号 Cn において、 どの符号語も少なくとも n / 2 箇所異なる。 15.1.3. • • • • • 定理15.7. Hadamard符号 Cn において、 どの符号語も少なくとも n / 2 箇所異 なる。 証明. 任意の x,y∈Cn, x ≠ y x,y がそれぞれ H,–H の同じ i 行目 ⇒ 全個所異なる それ以外 ⇒ H の中に異なる2行 u,v が存在して、 x∈{u,–u}, y∈{v,–v} (ただし u,v の–1は0に読み替 え) • ±u,±v はそれぞれ直交するので、<u,v> = 0 • u,v は n / 2 箇所異なる ⇒ x,y は n / 2 箇所異なる □ 15.1.3. Hadamard matrices • 定義13.1. • X = {1, …, v} : 点(point)の集合 • X における (v,k,l)-designは X の異なる部分集合 (block)の族 D であって、次を満たすものをいう。 • (1) 各ブロックはそれぞれちょうど k 個の点を含む • (2) すべての異なる点の2個組(pair)はちょうど l 個 のブロックに含まれる • 上記で2個組を t 個組にしたもの → t-(v,k,l) 設計 • |D| ≡ b = v のとき対称(symmetric)であるという 15.1.3. Hadamard matrices • 定義13.1. (v,k,l)-design : v 要素集合 X の k-uniformな 部分集合(block)の族 D で、X の要素の任意のペア がちょうど l 個のブロックに含まれるもの。 • 特に、|D| = v のとき対称(symmetric)であるという。 • e.g. (7,3,1)-design X 1234567 D 1 2 4 1 3 7 1 5 6 2 3 5 2 6 7 3 4 6 4 5 7 15.1.3. 定義13.1. (v,k,l)-design : v 要素集合 X の k-uniformな部 分集合(block)の族 D で、X の要素の任意のペアが ちょうど l 個のブロックに含まれるもの。|D| = v の とき対称 定理15.6. H : n×n 正規Hadamard行列 ⇒ n > 2 ならば、 1行(列)目を除く任意の2行(列)で、同じ位置に ある +1 の数はちょうど n / 4 個である。 • 定理15.8. 次数 4n のHadamard行列に関して、 (4n – 1, 2n – 1, n – 1)-designが存在する。 • 証明. • H : 次数 4n の正規Hadamard行列(1行,1列が全て 1) • M : H から1行,1列を削除し、–1を0に書き換えた行 列 • 定理15.6より、各行はちょうど 2n – 1 個の 1 を含 み、どの2列の組もちょうど n – 1 個の 1 を共有す 15.1.3. 定義13.1. (v,k,l)-design : v 要素集合 X の k-uniformな部 分集合(block)の族 D で、X の要素の任意のペアが ちょうど l 個のブロックに含まれるもの。|D| = v の とき対称 • e.g. (7,3,1)-design • M の各列を {1, …, 7} の各要素に対応 • どの2列もちょうど1ペアの1を共有する 1 1 1 1 H 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 1 1 M 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 0 1 1 1 1 1 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 1 0 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 1 1 0 0 0 1 1 0 15.2. Rank arguments • ランクのsub-additivityの応用など • ランクのsub-additivityとは? • 任意の行列 A, B について、 • rk(A+B) ≦ rk(A) + rk(B) • Formula sizeのlower boundへの応用 15.2.1. Balanced families • 集合 X の部分集合の族 A1, …, Am は、I,J⊆{1, …, m} s.t. I,J ≠ f, I∩J = f が存在して、次を満たすとき平 衡(balanced)であるという。 A A かつ A A i iI j jJ i iI j jJ • 定理15.9.(Lindstorm 1993) • n 要素集合の異なる部分集合からなる、 サイズ m ≧ n + 2 の族は平衡である。 15.2.1. 定理15.9. n 要素集合の異なる部分集合か らなる、サイズ m ≧ n + 2 の族は平衡であ る。 • 証明. • A ⊆ {1, …, n} について、 • ( A, A ) の生成ベクトルを以下のように定める • v = (x1, y1, …, xn, yn), xi = 1 iff i∈A, yi ≡ 1 – xi • これらのベクトルは、x1 + y1 = … = xn + yn を満たす (実数上)ベクトル空間 V に属する。 • 主張15.10. dim V = n + 1 • 証明. x1, …, xn, y1 がわかれば、残り y2, …, yn は yi = x1 + y1 – xi として線形従属(主張15.10証明終) 定理15.9. n 要素集合の異なる部分集合か らなる、サイズ m ≧ n + 2 の族は平衡であ る。 15.2.1. • • • • 集合 Ai に対応する生成ベクトル : vi = (vi,1, …, vi,2n) v1, …, vm は空間 V に属する。 m ≧ n + 2 > n + 1 = dim V より、 I,J⊆{1, …, m} s.t. I,J ≠ f, I∩J = f および任意の i∈{1, …, m} について i,bi > 0 が存在し、次を満た す。 i vi b j v j iI jJ A B A B • これは次を意味する。 Ai Aj かつ Ai Aj Ai Aj iI jJ iI jJ iI jJ 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • DeMorgan formula(または単にformula) : And, Or, Notゲートにより木構造状に表現される回路 • (1) ブール変数 xi とその否定xi はサイズ1のformula である(これらは葉と呼ばれる)。 • (2) F1,F2 がサイズ l1,l2 のformulaであるとき、F1∧F2 および F1∨F2 はサイズ l1+l2 のformulaである。 • Formula F のサイズは F の含む葉の数に等しい。 • あるブール関数 f を表わすのに必要なformulaのサ イズはどのくらい? → lower bounds 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • 簡単なcountingで、ほとんどの n 変数関数が n の指 数関数サイズ必要であることがわかる。 • にもかかわらず、明示的な関数としてはいまだに n3 – o(1) のもの(Hastad 1993)しか得られていない。 • 葉に変数の否定xi を認めない(monotone)場合 • monotoneな関数しか計算できない • ∀i : xi ≦ yi ⇒ f (x1, …, xn) ≦ f (y1, …, yn) • この場合超多項式サイズ必要な関数が知られてい る。 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas Reduction to set-covering • A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f について、 • あるブール関数 F が存在して、 • ∀a∈A : F(a) = 1, ∀b∈B : F(b) = 0 • を満たすとき、F は「A,B を分割する」という。 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • • • • • • 定義15.11. A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f, R = A'×B' ⊆ A×B, 以下の条件を満たすとき R をrectangleという。 ∃i, ∀a∈A', ∀b∈B' : a(i) ≠ b(i) 次のより強い条件を満たすときmonotoneという。 ∃i, ∀a∈A', ∀b∈B' : a(i) = 1, b(i) = 0 • e.g. A,B ⊆ {0,1}3, • A = {100,101,110,111}, B = {000,001,010,011} • R = A'×B' ⊆ A×B はmonotone rectangle 15.2.2. 定義15.11. A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f, R = A'×B' ⊆ A×B, ∃i, ∀a∈A', ∀b∈B' : a(i) ≠ b(i) ⇒ R : rectangle, さらに a(i) = 1, b(i) = 0 ならmonotone • 次の定理は、DeMorgan formulaのサイズに関する lower boundを証明する問題を、直積 A×B をdisjoint なrectanglesでカバーする問題に還元している。 • 補題15.12.(Rychkov 1985) • A,B がサイズ t の(monotone) DeMorgan formulaに よって分割されるとき、集合 A×B は t 個の (monotone) rectanglesによってカバーできる。 15.2.2. • • • • • • • 定義15.11. A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f, R = A'×B' ⊆ A×B, ∃i, ∀a∈A', ∀b∈B' : a(i) ≠ b(i) ⇒ R : rectangle, さらに a(i) = 1, b(i) = 0 ならmonotone 補題15.12. A,B がサイズ t の(monotone) DeMorgan formulaによって分割されるとき、集合 A×B は t 個 の(monotone) rectanglesによってカバーできる。 証明. F : A,B を分割するDeMorgan formula i.e. A ⊆ F–1(1), B ⊆ F–1(0) t = size(F) とおき、t に関する帰納法を用いる。 size(F) = 1 のとき : F は xi もしくはその否定、 A×B はそれ自身rectangle、命題は成り立つ。 15.2.2. • • • • • • • • 定義15.11. A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f, R = A'×B' ⊆ A×B, ∃i, ∀a∈A', ∀b∈B' : a(i) ≠ b(i) ⇒ R : rectangle, さらに a(i) = 1, b(i) = 0 ならmonotone 補題15.12. A,B がサイズ t の(monotone) DeMorgan formulaによって分割されるとき、集合 A×B は t 個 の(monotone) rectanglesによってカバーできる。 size(F) = t のとき : t 未満のサイズについて命題が成り立つと仮定。 F = F1∧F2 とする(F = F1∨F2 の場合も同様) ti = size(Fi) とおく ⇒ t = t1 + t2 B1 ≡ {b∈B : F1(b) = 0}, B2 ≡ B – B1 i = 1,2 について、Fi は A,Bi を分割。 仮定より、A×Bi は ti 個のrectanglesでカバーできる。 A×B = A×B1∪A×B2 より、A×B は t = t1 + t2 個の rectanglesでカバーできる。 □ 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • • • • • • • Rychkovの補題を、次のKhrapchenkoの定理に適用。 A,B ⊆ {0,1}n, A∩B = f について、 N(A,B) = {(a,b) : a∈A, b∈B は1箇所だけ異なる} 上記のような a,b を「隣り合う」という。 直感的には、 N(A,B) が大きい ⇒ A,B を分割するformulaも大きい ∵Formulaはよく似た入力も区別しなければならな い 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • 定理15.13.(Khrapchenko 1971) 2 N A, B • A,B がDeMorgan formula F size F によって分割されるとき、 AB • • • • 証明. t 補題15.12の示すrectangle分割 : A B i 1 Ai Bi このとき、Ri ≡ N(A,B)∩(Ai×Bi) とおく。 Rectangleおよび隣接の定義より、Ai×Bi は各行・各 列に高々1個 Ri の要素を含む。 定理15.13. A,B がDeMorgan formula F によっ 2 て分割されるとき、 N A, B size F AB 15.2.2. • 任意の a∈Ai について、(a,b)∈Ri を満たす b∈Bi は a と1箇所だけ異なる。 • ⇒ |Ri| ≦ |Ai|, |Ri| ≦ |Bi| • ⇒ |Ri|2 ≦ |Ai|・|Bi| • Ri はdisjointなので N(A,B) = R1 ∪ … ∪ Rt N A, B i 1 Ri , N A, B t 2 t i 1 2 Ri viui vi2 ui2 • Cauchy-Schwartzの不等式より、 2 t i 1 t 2 Ri t i 1 Ri t i 1 Ai Bi t A B t □ 15.2.2. • • • • • 定理15.13. A,B がDeMorgan formula F によっ 2 て分割されるとき、 N A, B size F AB 定理15.3により、2次サイズのlower boundが示せる。 e.g. パリティ関数 f = x1 + … + xn A = f –1(1), B = f –1(0), |N(A,B)| = n|A| = n|B| ⇒ size( f ) ≧ n2 この定理で示せるlower boundは2次まで。 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas The rank lower bound • R = {R1, …, Rn} : A×B をカバーするrectangleの集合 • Canonical(正準) monotone cover Rmon(A,B) : • Ri = {(a,b)∈A×B : a(i) = 1, b(i) = 0} • e.g. 001 000 010 A\B 100 R1 R2 R3 011 110 111 101 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • A,B 上の行列 : 行、列をそれぞれ A,B の要素でイン デックス付けした行列 • Rectangle R ⊆ A×B に対応する部分行列 : MR • Mˆ R : u , v R となる mu,v を 0 に書き換えた 行列 • L+( f ) : f を計算するのに必要な最小のmonotone DeMorgan formulaのサイズ 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • • • • 定理15.14.(Razborov 1990) A,B ⊆ {0,1}n, f : monotoneブール関数 任意の a∈A, b∈B について f (a) = 1, f (b) = 0 A,B 上の任意の非零行列 M について、 rk M L f max RRmon A, B rk M R 15.2.2. 定理15.14. A,B ⊆ {0,1}n, f : monotoneブール関数, ∀a∈A, ∀b∈B : f (a) = 1, f (b) = 0 ⇒ A,B 上の任意の非 rk M 零行列 M について L f max RRmon A, B rk M R • 証明. • t = L+( f ) とおく。 • 補題15.12より、A×B をカバーするdisjointな monotone rectanglesの集合R が存在し、|R| ≦ t • M RR Mˆ R • ランクのsub-additivityより、 • rk M rk RR Mˆ R RR rk Mˆ R 15.2.2. 定理15.14. A,B ⊆ {0,1}n, f : monotoneブール関数, ∀a∈A, ∀b∈B : f (a) = 1, f (b) = 0 ⇒ A,B 上の任意の非 rk M 零行列 M について L f max RRmon A, B rk M R • 任意の R∈R について、R∈R' となるようなrectangle R'∈Rmon(A,B) が存在する。よって • rk M R rk Mˆ R rk Mˆ R • rk M R max rk Mˆ RR mon A, B R • よって t = |R| = L+( f ) に関するlower boundが示せた。 □ 15.2.2. 定理15.14. A,B ⊆ {0,1}n, f : monotoneブール関数, ∀a∈A, ∀b∈B : f (a) = 1, f (b) = 0 ⇒ A,B 上の任意の非 rk M 零行列 M について L f max RRmon A, B rk M R • Monotoneでないformulaのlower bound : • Ri' = {(a,b)∈A×B : a(i) = 0, b(i) = 1} • という n 個の双対(dual)なrectanglesを Rmon(A,B) に 加えて用いることで同様に示せる。 • しかし、その場合定理15.14の式の右辺は O(n) を超 えないことが示されている(Razborov 1992)。 • Monotoneな場合、O(n) 以上のlower boundも示せる。 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas The lower bound for Paley functions • 2部グラフ G = (V1,V2,E), |V1| = |V2| = n • このグラフにmonotoneブール関数 fG,k を関連付け る。 • f : 2n 変数関数、変数が頂点に対応 • f は X ⊆ V1∪V2 を受け取り、X がサイズ k 以下のあ るS ⊆ V1 とその共通隣接頂点(common neighbors) G(S) S を含むとき、またその時に限り受理。 j V2 : i, j E for all i S GG(S) • f G ,k X xi S V1 , S k iS G S S • V1 V2 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • また、共通非隣接頂点(common non-neighbors) Ĝ S を次で定義する。 • Gˆ S j V2 : i, j E for no i S xi • f G ,k X S V1 , S k iS G S ^ G(S) S • 各And節は長さ 2n 以下、 V1 V2 n • Orで結ばれたAnd節の数はi 0 i • Isolated neighbor conditionを満たすグラフとしては、 上記のformulaはほぼoptimal k 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意の disjointな S,TG⊆SV Gˆ T f 1 について • 定理15.15.(Gál 1998) • G がisolated neighbor condition for 2k を満たすとき、 関数 fG,k はサイズが ik0 ni より小さいmonotone DeMorgan formulaを持たない。 15.2.2. Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 • 証明. • G がisolated neighbor condition for 2k を満たすなら、 次のintersection propertyが成り立つ。 • Intersection property : サイズ k 以下の任意の S,T ⊆ ^ V1 について S T f iff GS Gˆ T f G(S) G(T) • 以下の0-1行列 M を考える。 S • M : 行・列は V1 のサイズ k 以下の 部分集合でインデックス付けされ、 T V 各要素は次で定義される。 V2 1 Intersection property (for 2) • MS,T = 1 iff S∩T = f Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 15.2.2. • M : 行・列は V1 のサイズ k 以下の部分集合でイン デックス付けされ、各要素は次で定義される。 • MS,T = 1 iff S∩T = f T 1 1 1 1 1 S M 1 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 0 0 0 1 1 1 1 1 0 1 1 1 0 1 0 0 1 1 1 1 0 1 1 0 1 0 1 0 1 1 1 1 0 1 1 0 1 0 0 1 0 1 1 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 0 1 1 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 1 {} 1 {1} 1 {2} 0 {3} 0 {4} 1 {1,2} 0 {1,3} 0 {1,4} 0 {2,3} 0 {2,4} 0 {3,4} ^ G(T) G(S) S 1 2 3 T 4 V1 V2 Intersection property (for 2) 15.2.2. Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 • これは14.2.3節で扱ったdisjointness行列 D(n,k) であ る。 k • 定理14.2.3より、M は F2 上の最大ランクを持つ。 n rk F2 M i i 0 • • 定理15.14を適用するため、M の行・列にベクトル 集合 A,B ⊆ {0,1}2n のベクトルによりラベル付けす る。 • 以下の条件を満たすような A,B を作りたい : • (a) ∀a∈A : fG,k(a) = 1, ∀b∈B : fG,k(b) = 0 15.2.2. • • • • • • • Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 S⊆V1 に対応する行 : vS i 1 i S GS T⊆V1 に対応する列 : uT i 0 i T Gˆ T A = {vS : S⊆V1, |S| ≦ k}, B = {uT : T⊆V1, |T| ≦ k} 条件確認(a) ∀a∈A : fG,k(a) = 1, ∀b∈B : fG,k(b) = 0 fG,k(x) = 1 iff x ≧ vS for some S ∴∀a∈A : fG,k(a) = 1 Intersection propertyより、 ∀vS,uT, ∃i : 0 = uT(i) < vS(i) = 1 ∴∀b∈B : fG,k(b) = 0 15.2.2. Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 • 条件確認(b) ∀R∈Rmon(A,B) : rk(MR) = 1 • 各ノード i∈V1∪V2 について、 • Ri = {(vS,uT) : vS(i) = 1, uT(i) = 0} : rectangle • vS S GS , uT T Gˆ T • M S ,T 1 S T f GS Gˆ T f より、 • i∈V1 ⇒ S∩T ≠ f ⇒ MS,T = 0 • i∈V2 ⇒ GS Gˆ T f⇒ MS,T = 1 • Ri に対応する行列 M は全部0または全部1 ⇒ ラン ク1 15.2.2. Isolated neighbor condition for k : 2部グラフ G(V1,V2,E) において、|S|+|T| = k を満たす任意のdisjointな S,T ⊆ V1 について GS Gˆ T f 定理15.15. G がisolated neighbor condition for 2k を満た k n i 0 i より小さい すとき、関数 fG,k はサイズが monotone DeMorgan formulaを持たない。 • Ri に対応する行列 M は全部0 or 全部1 ⇒ ランク≦1 • R = {Ri : v∈V1∪V2} : canonical monotone cover • 定理15.14より、 k rk M L f G ,k rk M n i max RR rk M R i 0 □ 定理15.14. A,B ⊆ {0,1}n, f : monotoneブール関数, ∀a∈A, ∀b∈B : f (a) = 1, f (b) = 0 ⇒ A,B 上の任意の非 rk M 零行列 M について L f max RRmon A, B rk M R 15.2.2. Lower bounds for boolean formulas • Isolated neighbor conditionを満たす k = W(log n) のグ ラフ : Paley graphs Gn (Sec.11.3.2) • ⇒ fG,k を表現するmonotone formulaのサイズの lower bound : nk n W logn : 超多項式 • Circuit(計算結果を再利用できる)はformulaより 強力 • Monotone circuitで多項式サイズだがmonotone formulaでは超多項式になる例(Karchmer-Wigderson 1990)も存在
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