2011年8月21日 第3章 空間データの変換と管理 1.空間データの変換 政春尋志 [email protected] 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ここで学ぶこと 空間データを利用する上で、何らかの変換処理を施す必要が あることが多い。例えば、異なる座標系で記述された地理空間 データはそのままでは重ね合わせて表示したり解析したりでき ないので、どちらかの座標系に統一する必要がある。また、 データ量を低減して扱いやすくする必要があることもある。ここ では、空間データの変換に関する以下の事項について学ぶ。 画像の解像度の変換 データの集成・単純化 空間座標の変換と地図投影法 画像の幾何補正 オルソ補正 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 画像の解像度の変換 • 画素数が大きい画像のファイルサイズが大き すぎて扱いにくい場合は、解像度を落として 画素数を小さくすることができる。縦横n×n画 素を平均して1画素とすることにより、画素数 は1/n2になる(nは正の整数)。 11 12 10 9 8 7 10 11 10 8 5 5 11 9 6 8 9 8 7 6 4 8 7 5 7 8 8 6 5 4 7 8 7 4 4 3 8 5 4 9 9 5 3 3 4 2×2画素の平均化 (小数点以下四捨五入) 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 解像度を1/4(画素数1/16)に低下させた 空中写真の一部 (原画像) (解像度を低下させた画像) 空中写真の出典:国土地理院 仙台市内の一部 http://saigai.gsi.go.jp/h23taiheiyo-ok/photo/sendai/thumb/C08/CTO-2010-4-C08_0147.jpg 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 解像度を1/4(画素数1/16)に低下させた 空中写真(前スライドの一部を拡大) (原画像) (解像度を低下させた画像) 空中写真の出典:国土地理院 仙台市内の一部 http://saigai.gsi.go.jp/h23taiheiyo-ok/photo/sendai/thumb/C08/CTO-2010-4-C08_0147.jpg 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ベクトルデータの集成、単純化 • 集成(aggregation):領域内での均一性を仮定して、 データをまとめること (例)いくつかの統計区のデータを合算し、まとめた領 域のデータに変換する。 • 単純化(simplification):多くの頂点(vertex)で表され た複雑な形状の図形を少数の頂点で表されるより単 純な図形に変換すること 集成の例:右下の領域はデータの値が少数なので、個々のデータ内容が明らかに なることを防ぐというプライバシーへの配慮から、隣接領域と集成している。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ベクトルデータの単純化 Douglas-Poikerアルゴリズム • 始点と終点を結んだ線から 最も距離が大きい点を探し、 この距離があらかじめ定め た許容値よりも大きければ 残し、小さければ削除する。 ここでは残す。 • 始点とその点を結んだ線か ら最も離れた頂点までの距 離があらかじめ定めた許容 値より小さければそれらの 頂点は削除する。 • 終点との間を直線で結び同 様の処理を行う。 • 最終的に細い黒線のように なる。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地図投影と座標系 • 直接参照(*)で表された地理空間情報はすべて何 らかの座標系に基づいて記述される。 • 座標系を大別すると以下の二つになる。 – 回転楕円体として表した地球表面上に定義された経 緯度座標(地理座標geographic coordinates) – 地図投影(map projection)で地球上の位置を平面に 表すことにより、平面上で定義された座標系(投影座 標projected coordinates) (*) 空間参照における直接参照と間接参照については「第1章6. 参照系」を 参照。間接参照による記述から直接参照の座標値を得ることは、次節「ジオ コーディング」の主題である。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地球上での位置の表し方 ~緯度・経度・標高~ z 地球楕円体 高さ グリニジ 子午線 x 緯度 経度 赤道 y • 地球の形は回転楕円体 (ellipsoid of revolution)でよく近 似される。 • 地球上の地点の位置は、その点 から楕円体に垂線を下ろし、楕 円面と交わった位置における緯 度(latitude)・経度(longitude)と 高さ(*)で表される。 • 緯度は当該点から楕円面に下ろ した垂線が赤道面(equatorial plane)と交わる角度 • 経度は当該点を含む子午面がグ リニジ子午面となす角度 (*) 高さについては後で説明するが、この図に 示したものは厳密には楕円体高であり、標高 ではない。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 さまざまな地球楕円体 地球楕円体 年代 ベッセル楕円体 1841 赤道半径(m) 扁平率の逆数 (1/f) 6,377,397.155 299.152813 クラーク楕円体 1880 6,378,249.145 293.4663 ヘルマート楕円体 1906 6,378,200 298.3 ヘイフォード楕円体 1909 6,378,388 297.0 クラソフスキー楕円体 1940 6,378,245 298.3 測地基準系1980 (GRS80)楕円体 1980 6,378,137 298.257222101 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ジオイドと標高 • 幾何的に単純な形としては地球は回転楕円体で表され、 経緯度の基準は回転楕円体である。(既述) • 物理的な地球の形をより精密に表すものとしてジオイド (geoid)という概念がある。ジオイドは、潮汐や海流がない 仮想的な静止した平均海面が作る地球の形であり、陸域 にも水面を仮想的に延長してできる閉じた曲面である。ジ オイドとは重力の等ポテンシャル面のうち、平均海面に一 致するものである。 • 標高の基準は、ジオイドである。すなわち、標高とは当該 地点からジオイドに下ろした法線に沿ったジオイドまでの 距離である。ジオイドより上(地球の外側)にある場合標高 は正で、ジオイドより下では標高は負となる。 • 日本では、東京湾平均海面がジオイドに一致するとみなし て、東京湾平均海面を基準とする標高が定められている。 • ジオイドの凹凸を回転楕円面を基準とした高さで表したも のをジオイド高という。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 二つの高さ~標高と楕円体高 • GPSで計測される位置は地球の重心に原点を置いた3 次元空間座標であり、これを換算して得られる高さは 回転楕円面からの距離である楕円体高である。 • GPS測量の結果から標高を求めるには各地点でのジ オイド高が必要であり、日本国内のジオイドモデルが 国土地理院から提供されている。 • (ジオイド高)+(標高)=(楕円体高) すなわち、(標高)=(楕円体高)-(ジオイド高) 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 日本のジオイド モデル 出典:国土地理院 http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/ geoid/survey/survey.html 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 測地系の変換 • 今日では、地球重心を基準とする世界測地系が普及しつつあるが、各国 で近代的測地測量を開始した時点では宇宙測地技術はなく、それぞれ の国の原点の経緯度を天文測量で定めた。天文測量は局所的な重力場 による鉛直方向のずれの影響を受けるため、それぞれの測地系は地球 重心系に対してずれている。このずれは、地球重心に対する準拠楕円体 の中心の3軸方向のずれ(平行移動)として表され、このずれ量が分かれ ばこれをパラメーターとして世界測地系との間の座標変換が可能である。 • 日本では、2002年4月にそれまでの日本測地系から、世界測地系に移行 した。そのため全国の緯度と経度が変わった。このとき、同時に日本測 地系に内在していたひずみも解消されたので、上に述べた3パラメーター 変換では変換できず、細かなグリッド領域ごとに変換パラメーターを与え て座標変換する方法がとられている。旧日本測地系(Tokyo datum)から、 世界測地系による新日本測地系「日本測地系2000」(Japanese Geodetic Datum 2000)への変換は国土地理院が提供しているtky2jgdプログラム が利用できる。 • 空間データが準拠する座標については、後に述べる地図投影だけでは なく、測地系の違いにも注意を払う必要がある。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地図投影とは 地図投影(地図投影法ともいう,map projection): 球面あるいは回転楕円面として表した地球上の位 置を地図の平面上に規則的に対応させる方法 x f ( , ) y g ( , ) φ, λ:緯度と経度 x, y :平面上の直交座標 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地図投影はなぜ必要か? • 地理情報は地図として、紙の上あるいはコン ピューターディスプレイ上に表すことによって認 識できるが、これらは理念的には平面と考えら れている。つまり、平面上に表す必要がある。 • 大縮尺の地理情報を地球儀で表現するには、巨 大な地球儀を必要とし実現不可能 • 球面(回転楕円面)上では、計測データの処理 が複雑になり不便 球面あるいは回転楕円面上の図形を一切のひ ずみ(distortion)なく、平面上に写すことは不可 能である。理想的な地図投影法が存在しないゆ えに、地図表現の目的に応じた、様々な地図投 影法を使い分ける必要がある。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地図投影法の分類 • さまざまな観点での分類がありうるが、重要なのは、投 影に際して保存される図形的性質による分類と、投影 の幾何的構成方法による分類の二つである。 • 投影に際して保存される図形的性質による分類 – 正積図法(equal-area projection, equivalent projection):地 図平面上で図形の面積が(縮尺に応じて)正しく表される 地図投影法 – 正角図法(conformal projection):球面上で交わる大円の なす角が地図平面上に正しく表される地図投影法。極など 一部の点で正角性が成り立たない例外のあるものも含め る。 • 幾何的構成方法による分類 – 円筒図法(cylindrical projection) – 円錐図法(conic projection) – 方位図法(azimuthal projection) 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 円筒図法 • 球にかぶせた円筒側面上に地点の緯 度に応じた位置に投影する。これを母 線に沿って切り開いて平面に表すと、 緯線は赤道に平行な直線、経線は緯線 に垂直な等間隔の直線群となる。 正距円筒図法による世界地図 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 円錐図法 • 円錐面に投影した図形を切り開く と、緯線は同心円弧、経線はこの 円弧の中心を通る直線群となる。 正距円錐図法による世界地図 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 方位図法 • 球に1点で接する平面に 投影する • 緯線は同心円、経線は緯 線円の中心を通る直線群 • 地図上の経線のなす角が 地球上での角と等しくなる =正方位 正距方位図法による世界地図 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 主な地図投影法の分類表 円筒図法 正積図法 擬円筒図法 ランベルト正積 サンソン図法 円筒図法 モルワイデ図 法 円錐図法 方位図法 左記以外の 図法 アルベルス 正積円錐図 法 ランベルト正 積方位図法 ボンヌ図法 グード図法 正角図法 メルカトル図法 上記以外 の図法 正距円筒図法 台形図法 ゴール図法 ロビンソン図 法 ミラー図法 ヴェルネル 図法 ハンメル図法 ランベルト正 角円錐図法 平射図法 ラグランジュ 図法 正距円錐図 法 正距方位図 法 エイトフ図法 心射図法 正射図法 外射図法 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ヴィンケル図 法 正規多円錐 図 簡単な正積図法~サンソン図法 • 縦軸に沿った長さを球上の子午線の長さに等しく取り、横軸に沿っ た長さを球上での緯線の長さに等しく取れば、正積図法が得られ る。これがサンソン図法(Sanson projection, sinusoidal projection) である。 • 𝑥 = 𝑅𝜆 cos 𝜙, 𝑦 = 𝑅𝜙 (φは緯度、λは中央子午線からの経度差、Rは地球の半径) 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 正角図法の基礎~ メルカトル図法(Mercator projection) • 地図平面上で経線と緯線が直交し、かつ球面上 での長さに対するそれぞれの方向の拡大率を等 しくすれば正角図法が得られる。 • 球面上では緯度をφとして緯線の長さはcosφに 比例するが、円筒図法では地図平面上で緯線 の長さは一定であるので、緯線は1/cosφ倍に拡 大されている。すなわち円筒図法で正角図法を 得るためには、経線方向にもあらゆる場所で 1/cosφ倍しなければならない。 • ゆえに 𝑥 = 𝑅𝜆, 𝑦 = (ここでlogは自然対数である) 𝜑 𝑅𝑑𝑡 0 cos 𝑡 = 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 𝜑 𝑅 log tan( 2 + 𝜋 ) 4 メルカトル図法による南北緯度80度以下の範囲の地図 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 横メルカトル図法 • メルカトル図法の横軸法を横メルカトル 図法(transverse Mercator projection)と いう。メルカトル図法では赤道が標準緯 線であってひずみがないが、これを横軸 法にすると特定の子午線に沿ってひずみ のない正角図法ができる。対象地域の中 央を通る子午線を中央子午線にすれば この子午線に沿った地域でひずみが小さ い正角図法になる。 • 地球を球として扱う場合の投影式は R 1 cos sin x log 2 1 cos sin tan y R tan cos 1 中央経線を140°Eと した横メルカトル図 法の地図 φ:緯度 λ:中央子午線からの経度差 R:地球の半径 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 楕円体に適用した横メルカトル図法 ~ガウス-クリューゲル図法~ • 地球を回転楕円体として扱う場合の横メルカトル図法 が、ガウス-クリューゲル図法(Gauss-Krüger projection)である。 • この投影法は次の二つの条件で決まる。 – 中央子午線が正距の直線として表される – 正角図法である • 回転楕円体の子午線の長さ、すなわち楕円の周長は 初等関数で表すことができず、楕円積分という関数に なることが知られている。地球楕円体の扁平率や離 心率は小さな量なので、離心率のべきで級数展開し 項別に積分した級数式で表されることが多い。このた め、ガウス-クリューゲル図法の投影式も級数展開式 で表される。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 ガウス-クリューゲル図法の投影式 • ここでは、従来広く用いられている式とは別の、より 広い範囲に適用可能で、数式の形が規則的で簡明 な式を紹介する 1 e sin tan tan 4 2 4 2 1 e sin 1 2 log tan 1 sin cos 1 sin cos tan cos e/2 緯度φから正角緯度χを求める (eは楕円体の離心率) 中央子午線からの経度差λと 正角緯度χからη’とξ’を求める x A( 1 cos 2 sinh 2 2 cos 4 sinh 4 3 cos 6 sinh 6 4 cos 8 sinh 8 ) y A( 1 sin 2 cosh 2 2 sin 4 cosh 4 3 sin 6 cosh 6 4 sin 8 cosh 8 ) 上の式で、x,y座標を計算する。定数Aや各項の係数γ1等は次のスライドで説明 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 各パラメーターの計算式 e n f (2 f ) 1 1 e2 1 1 e2 A a b f ab 2 f a 1 2 1 4 n 1 n 1 n 4 64 1 2 2 5 3 41 4 n n 3 16 180 13 2 3 3 557 4 n n n 48 5 1440 61 3 103 4 n n 240 140 49561 4 n 161280 1 n n2 2 3 4 fは地球楕円体の扁平率 aは地球楕円体の赤道半径 (地球楕円体のパラメーターとしてaとf を与えれば他は 左に与えた式から計算される) bは地球楕円体の極半径 eは地球楕円体の離心率 nは第3離心率とよばれることがある、地球楕円体の形 状に関するパラメーター Aは地球楕円体と等しい子午線長を持つ球の半径 γ1,γ2,…は級数展開項の係数 GRS80楕円体に対する数値は以下の通り a=6378137 m, f=1/298.257222101 (以上は定義値) e= 0.08181919104 n= 0.0016792203946 A= 6367449.146 m γ1=0.0008377318247, γ2=7.6085278×10-7 γ3=1.19764×10-9, γ4=2.44338×10-12 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 斜軸変換 • 球面上のある点を新たな極とみなしてその他の点の緯度経度を 新しい極を基準とした緯経度に変換し、これを地図投影の数式に 代入すれば、任意の地域をひずみを小さく表現したり、任意の地 点からの方位が正しい方位図法の地図を作成したりできる。 • 点P(緯度φ、経度λ)について点O(緯度φ0、経度λ0)を極と見た場 合の緯度経度に相当する量αとβを求める。最後に点Oの回りに角 ψだけ回転することにして、3次元空間における任意の回転を表現 するようにする。このαとβ’を新たな緯経度として投影式に代入す れば斜軸変換した地図が描ける。 sin 1[sin 0 sin cos 0 cos cos( 0 )] cos 1[(sin 0 sin sin ) / cos 0 cos ] ただし,βの正負は,sin(λ-λ0)の正負と同じにする。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 斜軸法による地図の例 35°N, 140°Eを地図の中心(地図主点)と するランベルト正積方位図法の世界地図 60°W, 50°Nを新しい極とし、この点 の回りに55度の回転を加えたモルワイ デ図法の世界地図 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 別の地図投影法への変換 • ある地図投影法による地図データを別の投影法 によるデータに変換するには、まず元の地図投 影法から投影の逆変換により経緯度に変換し、 この経緯度を新しい地図投影法で投影する。 地図投影法A によるデータ 緯度、経度 地図投影法B によるデータ 緯度、経度 UTM座標に よるデータ (例) (国土交通省告示 の)平面直角座標 系のデータ 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 画像の幾何補正 • 目的:画像データを変換式に従って幾何的に 変形すること リモートセンシング画像等について原画像よ りも幾何的精度を高めることを目的として行 われる場合、幾何補正という • ベクトルデータの座標変換は、データを構成 する各頂点のx, y座標を変換式に従って変換 すればよいが、ラスター画像データの変換は 再配列(resampling)という処理が必要である。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 幾何補正の例 左に約10度傾いた画像を、正しい位置関係になるように補正している Landsat画像 東京中心部 フォールスカラー合成 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 画像の再配列 j列 i行 出力画像 入力画像 ラスター画像は、縦横等間隔に規則的に画素を並べたものなので、 再配列のためには、出力画像の位置を定めそのi行j画素目に対応す べき入力画像上の位置を求めて、入力画像のその周りの画素の値か ら内挿補間する。 つまり、画像の再配列のためには、入力画像から出力画像へ位置 座標を変換する式ではなく、出力画像から入力画像上の位置を求め る逆変換式が必要である。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 画像の輝度値の内挿補間 • 出力画像(i, j)に対応する入力画像の座標(ライン番号、ピク セル番号)が(x, y)であるとする。ただし、ここで i とj は整数で あるが、x と y は一般には整数でない実数である。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● • 左図は入力画像の一部を示したもの で、黒点は入力画像の各画素の中央 の位置を示す。赤点の位置が(x, y)を 示す。 • よく用いられる内挿法には、最近隣内 挿法(nearest neighbor interpolation)、 共一次内挿法(bi-linear interpolation)、3次畳み込み内挿法 (cubic convolution)がある。 • 最近隣法では左図の中央の画素の 値を出力画素の値とする。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 画像の内挿法 (I, J) v (I, J+1) • u • (I+1, J) (I+1, J+1) • 左図では格子点が入力画像の画素の中心であるとする。 I=[x], J=[y], u=x-I, v=y-J ([x]はガウス記号で、xを超えない 最大整数を表す) 最近隣内挿法では、xとyを四捨五入した座標位置の画素 の値を出力画像の値とする(前述)。 最近隣内挿法は計算が速く、入力画素の値を保存するの で物理量の算出に適している。一方で、0.5画素以内の位 置誤差を生じ、画像は滑らかさを欠く。分類コードのような 名目データからなる画像に対して適用可能な唯一の内挿 法である。 共一次内挿法では(I, J)の画素値をPI Jとして 1 − 𝑢 (1 − 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 幾何補正のための地上基準点(GCP) • 衛星画像はセンサーの内部定位や衛星の軌道姿勢情報によ り地図座標に合わせた画像に変換される。これをシステム補 正というが、画像には大きな平行移動的な誤差や若干の内 部ひずみが残っていることが多い。 • そこで、画像上で位置を特定できる対象物を用いてその位置 を地図上あるいは現地測量で計測し、これにより画像の位置 を定める。これらの点を地上基準点(ground control point: GCP)という。 • GCPは、入力画像上の点のラインピクセル番号と、これの地 上座標(経緯度や投影座標)のデータの組であり、これを用い て幾何補正のための逆変換式を求めればよい。逆変換式に は多項式が用いられことが多く、GCPでこれらの式の係数を 定める。多項式の次数が高いほどGCPで合わせやすいが、 GCPに誤差があるとその付近の画像をゆがめることにもなる ので1~2次式までの低次の式を用いることが望ましい。 • GCPを用いて1画素以内の精度で補正することを精密補正と いう。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 地上基準点の取得 • 画像の解像度に応じた地上座標の取得 – 地上分解能30mのLandsat TM画像では、地上座標は地形図を 計測して取得 – 地上分解能2.5mのALOS PRISM画像では、地上座標を取得す るには現地でGPS測量を行う • 衛星画像では近赤外バンドの画像は水域と陸域との反射 率の差が大きいので、海岸の人工構造物などはGCPの良 い候補である。しかし、突堤の突端などは画像がにじんで いたりして位置を特定しにくい場合がある。また、河川の 中州の形状はよく変わるので、画像と地図との対比がよく できないことにも注意。 • 高解像度衛星画像や空中写真では、道路のマーキングな ども使える場合がある。この時も線の端ではなく2本の線 の交点などのほうが位置を精度よく特定できる。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 オルソ補正 センサー 水平位置のずれ • 画像を撮影した視線方向が鉛直 ではない場合に水平位置にず れが生じる。これを真上から見 た位置に補正して、画像を地図 と重なるようにすることをオルソ 補正、補正した画像をオルソ画 像(正射画像 orthoimage)という。 • オルソ補正には、撮影時のセン サーの位置と傾き、およびディジ タル標高モデル(digital elevation model: DEM)を用いる。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 衛星画像のオルソ補正と 空中写真のオルソ補正 直下視 斜方視 • 高度600~700kmの宇宙から撮影する高 分解能衛星画像は視野角が狭いので、 直下視画像はもともとほとんどオルソ画 像になっており、補正は必要ない。しかし、 観測機会を増やすため斜方視観測も行 われるので、この場合はDEMを用いたオ ルソ補正が有効である。 • 空中写真は、広角レンズで撮影されるの で、1枚の写真の中で画像の端部では相 対的に高い部分が外側に倒れて写る。 それで、地図と正確に重ねられる画像に するにはオルソ補正が必要である。オル ソ画像にすることによって、連続して撮 影された写真をモザイクして広範囲の写 真地図を作成することもできる。 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志 参考文献 Longley, Paul A., Michael F. Goodchild, David J. Maguire, David W. Rhind 2010. Geographic Information Systems and Science, Third Edition. Wiley, 539p. Snyder, John P. 1987. Map Projections - A Working Manual, U.S. Geological Survey Professional Paper 1395. US Government Printing Office, 383p. (http://pubs.er.usgs.gov/publication/pp1395からダウンロード可, accessed on 26 June 2011) 高木幹雄・下田陽久監修 2004. 『新編 画像解析ハンドブック』東京大 学出版会 地理情報システム学会編 2004. 『地理情報科学事典』朝倉書店. 日本リモートセンシング学会編 2011. 『基礎からわかるリモートセンシ ング』理工図書 政春尋志 2011. 『地図投影法-地理空間情報の技法』朝倉書店. 地理情報科学教育用スライド ©政春尋志
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