実践教育に必要な教育用の放射線検出器の開発

教育用放射線検出器の開発
立教大学理学部物理学科4年
川茂唯順
高橋達矢
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研究目的
福島の原子炉事故から、放射線に対
する不安を抱えている人が増えている。
知識を得ることによって、
事故に対する適切な対応
自分で適切に判断でき、
行動するための教育
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検出器の全体構成
①電荷信号
③ピーク保持
電圧信号
②電圧信号
検出の流れ
④リセット
パルス
1) 放射線がフォトダイオードに入射
2) 増幅器に電荷信号が生じる
3) 増幅器で電圧信号に変換し、増幅
4) アナログデジタル変換(A/D変換)のために
ピーク電圧を保持
5) コンパレーターでA/D変換すべき信号の波
高弁別
6) A/D変換を行い、デジタル値をPCに表示
7) A/D変換後はピーク保持を初期化
アナログ部
デジタル部
3
半導体検出器原理
高速荷電粒子
最小電離粒子(MIP)
フォトダイオード内エネルギー損失
フォトダイオードの容量から
空乏層の厚さを計算
その厚さをMIPが通過するときの
①半導体に高速荷電粒子が入射
②経路に沿ってたくさんの電子が励起
③電子が同数の正孔とともに電界の作
用で互いに反対方向に引かれて移動
④移動した電荷を電圧に変換し、増幅
エネルギー損失を計算
4
増幅器原理
電荷有感増幅器と波形整形回路(アクティブフィルタ)で構成
微分積分回路による
アクティブフィルタ
V2  Q / C f
Rf t
 t
V4  
exp  
Rin 
 
• 入力電荷Qに比例した電圧を • 時定数τ=RinCin=RfCf
出力
• 出力電圧はt=τのときにピーク
• 増幅率は帰還部のコンデン
• 増幅率はRinとRfの比で決まる
サ容量Cfによって決まる
5
増幅器
電荷有感増幅器と波形整形回路(アクティブフィルタ)で構成
増幅器回路図
電荷有感増幅器
実際の回路の出力
(時定数τは2.2μsec)
MIPが入射した
場合の出力
アクティブフィルタ
VOUT
1
VOUT  Q * exp 1*1013
2
Q Rf t
 t

exp  
12

Q
*
1
.
84
*
10
V
C f Rin 
 
VOUT  3.33mV
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キャリブレーションとノイズ評価
増幅器と波高分析器の
キャリブレーション
波高分析器MCA7600で得たグラ
フのFull Width at Half Maximum
(FWHM)からノイズ量を評価
入力電荷をエネルギーの値
に変換
Q=Vin*2pF
E=(Q/e)*W
e=1.6E-19c
W=3.6ev/pair
キャリブレーション
1.40E+04
Energy[keV]
1.20E+04
1.00E+04
8.00E+03
入力電荷(エネルギー)を変化さ
せエネルギーとピークチャンネル
の関係を一次関数に近似
6.00E+03
4.00E+03
2.00E+03
0.00E+00
16.00
1016.00
2016.00
Peak[ch]
E = 5.5*ch - 300
3016.00
ノイズ量
FWHM
約20keV
Β線MIPの
エネルギー損失
約40keV
7
ピークホールド
入力電圧
VINが正に
なる
VINが
V’より
小さくなる
ダイオードは導通
コンデンサC’充電
ダイオードは逆バイアス
コンデンサの電荷によっ
てピーク値を保持
出力電圧
VOUT
VIN
VOUT
AD変換後
パルスをFETのゲート
に加えC’の電荷放電
左の図は実際の波形
RESET
8
Peripheral interface controller (PIC)
PICは、CPUを中心に、
A/D変換、コンパレータ、
USBインターフェース等を
実装しており、周辺機器の
インターフェースとして活
用できるマイクロコントロー
ラーである。
型式:PIC18F4550
データメモリ:2048bytes
プログラム使用言語:C
プログラムメモリ:32768bytes
A/D変換:10bit
A/D変換速度:約20μsec
コンパレータ実装数:2
価格:1100円(税込)
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波高分析
PIC
アナログ
入力
起動命令
①
①
②
③
④
②
リセット
命令
閾値
ピークホールド
をリセット!
③
④
ピークホールドされたアナログ入力と閾値をコンパレーターで比較。
閾値を超えた、信号と予想されるアナログ電圧のみA/D変換を行う。
デジタル値に変換された波高値を可視化するため、USB経由でPCに転送。
ピークホールドの初期化を行うため、PICからリセットパルスを発生させる。
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オシロスコープでの表示
リセットパルス
閾値
ピークホールド
出力
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PCでの波高値の表示
(Microsoft Visual Studio) Visual C#を使用し、以下のアプリケーショ
・USB、PICの接続終了
ンを作成し、波高値をPCに表示した。
USBポートの選択
・テキストファイルへの書き込み終了
・USB、PICの接続開始
・テキストファイルへの書き込み開始
テキストファイルの
保存先を指定
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接続テスト
シンチレータ
シンチレーターと増幅器
ピークホールド回路
• 制作した検出器を全て接続
• 制作した増幅器と波高分析器でキャリブレーション
137CsをCsIシンチレーターに近づけて配置して10分間計測
137Csを十分に遠ざけてバックグラウンドを10分間計測
PIC
交互に6回
それぞれ計60分
間の計測
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波高分析結果
450
137Cs波高分析
400
350
300
250
200
[
イ
ベ
ン
ト
数
回
]
150
100
50
0
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
エネルギー[keV]
線源からの信号-BG
バックグラウンド(BG)
• 入射γ線エネルギーに相当する光電ピーク(全エネルギーピーク)が見えない
• 主にコンプトン効果による波高分布を表していると考えられる
• 実際に環境放射線を測定したときには核種の特定は難しい
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まとめ
プロジェクトとして出来たこと
・放射線検出から波高分析に必要な基本的な装置を、安
価で入手しやすい部品だけで制作し、波高値をグラフにし
て評価出来た。
これから必要なこと
・検出器部分では、1つの基盤に収め、製品化にむけてそ
れぞれの機能の精度を向上をする。
・波高分析では、カウンターの作成、グラフ表示部の組み
込みを行い、PCを使わず波高値の評価をする。
・大量生産を行い、教育現場で放射線教育に役立てても
らう。
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