1標本のt検定 3年 地理生態学研究室 脇海道 卓 t検定とは ・帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統計量 がt分布に従うことを利用する統計学的検定法 の総称である。 母集団について正規分布であるという知識し か持たないで、母平均μを推定したい。 →母平均μ以外は観測された標本だけを用い 計算できる検定量で、その分布がはっきり解る ようなものがあれば良い。 統計量Tを用いる! ・自由度 ある統計量を計算するために用いられる観測データ の数を表す。 大きさNの標本から平均を推定するとN-1の自由度 が残る。 t 検定の検定統計量の場合,母平均μを1 個推定し ているので,自由度はn- 1となる。 統計量Tは以下の手順で計算される。 正規母集団からn個のデータを観測したとする。 ステップ1 n個データの標本平均x を計算する。 x x1 x2 xn n ステップ2 n個データの標本標準偏差sを計算する。 ( x1 x) 2 ( x2 x) 2 ....( xn x) 2 s n ステップ3 標本平均 x から母平均μを引いて、標本標準偏 差sで割り n 1 をかける。これが統計量Tとなる。 ( x μ) n 1 t s t分布 検定統計量Tの値をプロットした曲線。 自由度が高いほど尖る。 検定の手順 研究対象としての母集団に対して,帰 無仮説H0 を立てる ↓ この母集団から標本を無作為抽出し, これらの値から検定統計量T を計算する ↓ 検定統計量T が棄却域に入るとき帰無 仮説H0 を棄てる 1標本のt検定は次の検定をする。 ・1標本のt検定は関連する2群の差に意味があるか どうかの検定。 例:同じ人で薬を飲む前と後で最高血圧を測定した とする。このとき血圧の差はあるか。 ・正規分布に従う母集団の平均が、特定の値に等し いかどうかの検定。 例:医学書の人間の体温の平均は東邦大生に当て はまるのか。 ・仮説の設定 帰無仮説(H0) 「2群間に差がない」(μ=μ0)と仮定する。 対立仮説(H1) 「2群間に差がある」(μ≠μ0)と仮定する。 ・確率を求める 各ペアの差を求め、この平均値を統計量とし、検定 量Tを出す。 ( x μ) n 1 t s x :標本平均 S:標準偏差 n:データ数 このとき、求められた検定量は、自由度df = n-1 のt分布に従い、t分布表からtαの値を求める。 ・判定 |t|≦tαのとき P≧αとなり帰無仮説を棄却できない。 |t|>tαのとき P<αとなり帰無仮説を棄却する。 ( x μ) n 1 α≦ ≦ α s この式をμについて解けば、95%信頼区間が求められる。 例題 コンピュータのある部品M の製品仕様によると,こ の部品の直径は15.4 インチとなっ ている.最近製造された部品M からランダムに9 個 を取り出したところ {15.5 15.7 15.4 15.4 15.6 15.4 15.6 15.5 15.4} となった.この部品M は仕様通りに製造されている と言えるか? ・仮説を立てる 母集団:コンピュータの部品M の直径 帰無仮説H0:母平均μ15.4 部品M の直径は「15.4 インチより大きくても小さく てもいけない」ので,帰無仮説H0 に対する対立仮説は… 対立仮説H1:母平均μ15.4 標本平均と標本標準偏差を求め、統計量tの式に代入する。 x x 15.5 15.4 15.7 15.4 15.6 15.4 15.6 15.5 15.4 15.5 9 s 0.01361 s ( x μ) n 1 t s t= 2.857143となる。 に代入。 この検定統計量T は自由度(9-1)のt 分布に従う 有意水準α=0.05 のときの, 自由度(9-1)のt 分布の棄却域をt分布表から求 める。 →2.3060 |t|= 2.857143>2.3060であるから、帰無仮説は 棄却される。 結果、対立仮説は採択され、部品Mは仕様通りに 製造されていないと言える。
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