の硬X線フレアの統計解析

YOHKOH/HXT-今太陽活動極大期
(1996年~2001年末)の硬X線フレアの
統計解析
簑島敬、横山央明(東大地球惑星)
佐藤淳(名大STE研)
本日の内容
• 硬X線ダブルソースの各物理量比較
(Sakao 1994 の結果の検証)
• 硬X線強度のパラメータ依存性
(現在進行中)
硬X線フレアの基本的構造(Sakao 1994)
• 「二つ目玉」構造が全体の約4割
(「一つ」と「三つ以上」が各々3割)
• 両者の物理量は大方非対称
1. 両者の磁性は反転している
2. 明るい方の硬X線源の方が磁場
強度が弱い
3. 明るい方の硬X線源の方がスペ
クトルが硬い
• 両者の硬X線強度曲線の時間同時
性は非常に良い
Sakao (1994) で提唱されたモデル
Sakao 1994 では、解析に用いられたサンプル数が
7個と少なかったので、今太陽活動極大期のデータ
を用いてサンプル数を増やし、硬X線強度、スペクト
ル、磁場強度の相関について、検証を試みた
単一磁気ループに非熱的電子が注入され、両足元でエネルギーを
失い、硬X線を放射するモデル=「坂尾タイプ」フレア
解析に用いたデータ
• YOHKOH/HXT:
1. YOHKOH/HXTとSOHO/MDIが同時観測していた1996
年~2001年末の
2. M2バンドのピークが30 CTS/SEC/SC以上で
3. 硬X線源が2つ見える
全45イベント
• SOHO/MDI: 1時間半毎に撮られた全球画像のうち、フレ
アの時間帯の直前のもの
解析方法(硬X線強度とスペクトル)
•ダブルソースを切り取り、ピー
ク値の10%を閾値として各々
Sakao (1994) の結果は、明るい方の硬X線源の方がスペクト
の硬X線強度、スペクトルの硬
ルが硬い
さを求めた
強度比 I  I1 / I 2 、スペクトルの硬さの差
   1   2 とすると
I 1
  0
•スペクトルの硬さは基本的に
M2/M1とH/M2を求めた
解析結果(硬X線強度 vs スペクトル)
Δγ(M2/M1)
Δγ(H/M2)
2
2
1
1
0
0
-1
-1
-2
-2
-3
0.1
-3
1.0
10
0.1
1.0
10
M2の強度比(log)
Δγ= γ1 γ2
解析方法(磁場強度)
•ソースの強度の重心の位置に対応
するMDIデータ(2×2pixel)の平均、
をソースの磁場強度とし、空間的な分
散を誤差とした
Sakao (1994) の結果は、明るい方の硬X線源の方が磁場強
•ただし、以下の様なイベントについて
度が弱い
は磁場データを取得していない
B  B1 / B2 とすると
硬X線強度比 I  I1 / I 2 、磁場強度比
1. リム近くのイベント
2. 硬X線源の位置と磁場構造が本
解析に適していないもの
(磁気中性線が同定できなかったり、
硬X線源が磁気中性線をまたいでし
まっている)
I 1
B 1
24イベントについて、磁場データを取得できた
解析結果(硬X線強度 vs 磁場強度)
磁場強度比(log)
10
•赤いシンボル…硬X線
強度比とスペクトルの硬
さの関係が坂尾タイプと
一致
1.0
•青いシンボル…硬X線
強度比とスペクトルの硬
さの関係が坂尾タイプと
一致しない
0.1
0.1
1.0
M2の強度比(log)
10
解析結果(硬X線強度 vs 磁場強度)
磁場強度比(log)
10
•赤いシンボル…光度比
とスペクトルの硬さの関
係が坂尾タイプと一致
•青いシンボル…光度比
とスペクトルの硬さの関
係が坂尾タイプと一致し
ない
1.0
•緑線…光度比が1:2
0.1
0.1
1.0
M2の強度比(log)
10
ここまでのまとめ
• 1996年~2001年末までの45個(磁場データを使えたものは
24個)のダブルソースイベントについて、Sakao (1994)の結
果の検証を行った
• 硬X線強度とスペクトルの硬さに関して、坂尾タイプと同様の
傾向はかろうじて見えたが、ばらつきが非常に大きかった
• 磁場データを使うことの出来るイベントについて、誤差の小さ
い良質なデータのみをセレクションしたところ、硬X線強度比
が極端でないイベントでは、坂尾タイプとほぼ完全に一致す
る傾向が見られた。硬X線強度比が極端な場合は、ダブル
ソースが単一磁気ループの両足元でない可能性もあり、反
例とは言い切れない(検証が必要)
硬X線フレアのパラメータ依存性
• そもそも硬X線強度を決めているのはどのような物
理量なのか?
1. 領域の磁場強度が強いほうが硬X線強度が大きい?
2. スケールが小さいほうが硬X線強度が大きいという経験
則の妥当性と原因
3. 他の様々なパラメータ(密度、温度、シア角等)はどのよう
に関わってくるのか?
現在揃っている、ダブルソースイベントのデータを用いて、
硬X線強度のパラメータ依存についての解釈を試みる
磁場強度 vs 硬X線強度
ダブルソースからの
M2の総硬X線強度(log)
10000
•赤いシンボル…フット
ポイント間距離が20秒
未満
1000
•緑のシンボル…20秒
から30秒の間
100
•青いシンボル…30秒
以上
10
100
1000
フットポイントの磁場強度の平均(log)
フットポイント間距離 vs 磁場強度
フットポイントの
磁場強度の平均
1200
1000
800
ばらつきはあるが、正の相
関が見られる
相関係数~0.6-0.7
600
400
200
0
0
10
20
30
フットポイント間距離
40
50
現時点での解釈
• 足元の磁場強度が弱い場合…解放される磁気エネルギー
は少ないが、スケールも小さいため、上空(加速領域)の磁
場強度は足元に対してそれ程落ち込まず、ゆえにミラー比が
低いので、磁気ループの足元への落下効率が良い
• 足元の磁場強度が強い場合…解放される磁気エネルギー
は多いが、スケールも大きいため、上空の磁場強度が足元
に対してかなり弱くなり、ゆえにミラー比が大きくなって、磁気
ループの足元への落下効率が悪くなる
磁場強度が強くなるにつれてエネルギー解放率が大きくなり(加速
効率が上がり)、硬X線強度が増すが、磁場強度が強くなりすぎる
とミラー効果が大きくなって足元への落下効率が下がり、結果硬X
線強度が減るのではないか
今後の展望
• シングルソースイベント等を上手く使うことで、サン
プル数を増やす
• 磁場強度、フットポイント間距離共に同じくらいのイ
ベントで、硬X線強度が1桁違うような極端な例があ
る。こういったばらつきを決めていると思われる新た
なパラメータの導入
• そのようなパラメータの例として、密度、温度、シア
角などを扱うことを考えている
• フレアの持続時間について。硬X線強度曲線には
様々なタイプのタイムプロファイルがあるが、これら
の違いは何によって決められているのか