スペクトル法による数値計算について

スペクトル法による数値計算の原理
-一次元線形・非線形移流問題の場合地球流体力学研究室
荻原弘尭
0:目次
1: 目的
2: 離散化と差分近似
3: 1次元線形移流方程式の場合
4: スペクトル法の特徴
5: 1次元非線形移流方程式の場合
6:スペクトル法による数値計算の流れ
7: 今後の目標と参考文献
1:目的
・大気大循環モデルなどで用いられるスペクト
ル法の基礎を理解し, 実際にスペクトル法を
用い線形問題と非線形問題を解けるようにな
る
・今回の発表の目的
-1次元移流問題を例にとり, スペクトル法の
特徴と原理を見る
2:離散化と差分近似
・離散化
-連続した値を有限個の点での値で表現すること
・その分けた点を分点という.
区間
を等間隔に分点
・差分近似
-微分を分点での値で表現する近似
例:中心差分の場合
で分けたとき
3-1:1次元線形移流方程式の場合
1次元線形移流方程式
初期条件:
境界条件:
を考えてみる.
3-1-1: 1次元線形移流方程式の場合
~差分法~
を差分法で解く.
1:差分近似を行い
2:
を解く
に代入
3-1-2: 1次元線形移流方程式の場合
~スペクトル法~
1:境界条件を満たす滑らかな直交関数系を用
いて展開
-今回は展開関数は三角関数
2:偏微分方程式の残差 を算出
3-2-1:スペクトル法による線形問題
~重みつき残差法~
3:重みつき残差法
-残差 に重み関数
をかけて領域積分したもの
が となるとみなして展開係数に関する常微分方
程式を得る方法.
今回は領域は
で
は
.
三角関数の直交性から
3-2-2:スペクトル法による線形問題
~性質~
後はこの結果から
が求められる.
これは各モードが位相速度1で の正の方向に
動いていて厳密解
と同じ性質
である.
4:スペクトル法の特徴
•長所 例:1次元線形移流問題
-偏微分を差分近似することに伴う誤差がない
-展開の収束が非常に速い場合がある
-常微分方程式が非常に簡単になる場合がある
•短所 例:1次元非線形移流問題
-展開関数系が簡単に構成できない場合がある
-展開係数と分点上の物理量との変換コストがかか
る
-非線形問題を扱うとき別に工夫が必要
5-1:1次元非線形移流方程式の場合
1次元非線形移流方程式
境界条件と初期条件は線形の問題と同じとす
る
・非線形の場合は線形問題と異なり変換法が
必要になる
5-2:1次元非線形移流方程式の場合
~差分法とスペクトル法~
線形問題と同様に行うと
差分法
スペクトル法
5-3: スペクトル法による非線形問題
~計算量~
これを解けば良いがこのまま計算したら
項は
が各 について
計算量が合計で
の
個の総和があるので
となってしまう.
変換法を用いると計算量を
げることができる
まで下
5-3: スペクトル法による非線形問題
~変換法~
・非線形項をそれぞれかけるのではなくまるごと変
換して計算する方法
①展開係数から分点上での値への変換
②分点上での非線形項の評価
③数値積分による非線形項の展開係数の計算
6:スペクトル法による数値計算の流れ
線形問題
非線形問題
フーリエ逆変換
フーリエ逆変換
変換法
時間積分
時間積分
フーリエ変換
フーリエ変換
7:今後の目標と参考文献
•今後の目標
-スペクトル法を用いて計算コードを作ってみる
具体例として線形移流問題と非線形移流問
題を数値的に解いてみる
-大気大循環モデルにおいてスペクトル法はどう使わ
れているかを調べる
•参考文献
‣石岡圭一,2004:スペクトル法による数値計算入門,
東京大学出版会 232pp.