大阪樟蔭06 行動分析実習 4)「対人援助」の思想としての 行動分析 B.F. Skinner Not be punitive! 行動分析学の創始者 望月昭 [email protected] HP: http//www.ritsumei.ac.jp/~mochi/ 1 今日の課題 • 人を援助する際に、その対応のあり方として 重要な要件を述べよ。 • 「GivenよりGet」の意味を述べよ • 正の強化と負の強化の違いを述べよ • 「障害」を行動分析的に表現せよ • ノーマリゼーションの思想を行動分析的に表 現しなおせ • 「行動の成立の保証」に必要な3つの作業に ついて説明せよ 2 「人を援助する際の倫理」 (The ethics of helping people) Skinner, 1978 ①“物を与える事ではなく、彼らが物を得るということ に「生活の質」の目標をおくこと” Given Get 自発的に「行動できる」ということが基本 3 ②罰やそれを背景とした「負の強化」でコント ロールされるのではなく、「正の強化」でなされ るように環境設定を整える。 (Skinner,1990.「罰なき社会」→秘密資料) 「自発的に行動できる」というのは、周囲の 環境と無関係に振る舞えるということではな い。 ●「自由」=「正の強化」で行動が維持され ているときの状態をさす。 Skinner, “Beyond Freedom and Dignity” 4 対人援助全般の作業における 行動分析的表現による一般的な目標設定 「正の強化」で維持される行動の機会を持ち、 その機会が拡大していくように援助すること [正の強化]:本人にとって、好ましい結果事 象を随伴させることによって、行動が成立・ 維持させる操作 [負の強化]:嫌悪的な刺激事象がなくなると いう随伴性によって行動を成立・維持させる 操作(いやいや行わせる) 5 「障害」と「行動分析」 「障害」の軽減や解消に向けての対人援助の ツールとして、行動分析学の「枠組み」や「思 想」は、どう貢献できるのだろう? 6 「障害」 ある個人における、正の強化で維持さ れる「行動」の不足あるいは不成立 「行動」:先行および結果事象の配置によっ て(一定に)恣意的(人為的)に成立の可否 が決まる 本人の属性的表現(impairment)で はない点を特徴とする 7 ノーマライゼーションの思想(方向性) 社会が、障害を持つ人を、生まれながらの権利と してそして個人差のままに受け入れることを要請 する・・・ (Nirje, in Shaddock & Zigler, 1991) 個人差のままに受け入れる (?) 行動的な翻訳することで具体的課題となる 個体的(反応形態的)差異によらず、社会の中で 行動(正の強化で維持される)の成立を保証する 8 障害のある人への支援・サービスのありかた 統合 平等派 同化 異化 差異派 排除 石川准(2000)9 行動の成立の保障(1)教授・治療: これまでの主流 個人の側の「能力」(ability)をあげて、あるいは「差異」を 縮めて、現実社会の中で「行動」として成立するよう にする。 「能力のボトムアップ」(いわゆる「教授・治療」) 行動分析的方法:Wolfensbergerも推薦していた。 様々な行動修正的な技法(shapingなど)を用いての 反応の形成 問題点:障害が重いと能力向上に時間がかかりすぎ る(今、社会の中で受け入れることにならない) 般化模倣、刺激等価手続きなど、様々な行動獲得の為 の「短縮方法」は開発されている。 10 行動の成立の保障(2):援助 現状の「能力」(ability)のままで、あるいは「差異」のあるま ま、オペラントとしての「行動」を成立させるべく新しい環境 の設定や強化基準の変更を行う(いわゆる「援助」)。 行動分析的方法:「差異」(反応形態)の違いを前提とした 行動成立(機能)の表現とアピール 問題点:環境の変更を要請(→援護)する必要 がある。 「行動」の成立を環境のタームで表現することで、従来の 福祉的作業(環境・制度改善)へ繋げることが可能 11 行動成立の保障(3):援護 個人から社会へ、連続的に個別の行動成立に必要な 環境設定を要請していく。「援護」 そのための共通言語としての「行動」 個人(ミクロ) 社会・制度(マクロ) ミクロとマクロの「分担」 随伴性を辿って「連携」(→行動福祉→対人援助学) 12 行動成立の保証に関わる3つの仕事 新しい環境での学習 治療・教授 援助 行動成立のための 新たな環境設定 援護 援助設定の定着のた めの要請 13 応用問題 「ミクロからマクロまで随伴性を辿っていく」と いうのは、 行動の原因(あるいは行動成立の対処)は外 へ外へと押し出されていくかのようにみえる。 これは素朴な「環境主義」か? 社会福祉政策があれば個別の対処はいらな い? ということにはならないか? 14
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