リアル・ヴァーチャル 吉田第一回 可能世界 ヴァーチャル・リアリティ ヴァーチャル=仮想の – =本物ではない リアリティ=現実感 – =本物のような ヴァーチャル・リアリティ(VR) ベイエリア風 – =本物のようだけれど本物ではない =アーティフィシャル・リアリティ(AR) MIT風 – 人工的に作られた仮想の世界 可能世界(possible world) 「もしも~だったら」の世界 – もしも、ナポレオンがロシアに攻め込まなかったら – もしも織田信長が本能寺から逃げ延びていたら – もしもあのとき、許すことができたなら・・ どこにもない but 心の中に存在する世界 – われわれがイメージする世界 – 現実の世界と比較して、後悔、希望、反省、計画 を生み出すもの – 人の意識はこうした可能世界を漂っていると見な し得る 可能世界をつくる準備 命題(事実を表現する文=真または偽を値と する文)によって表現できる – 名詞:R(Rさん)、 I(私) – 動詞:m(結婚する)、 t(教師になる) – 接続詞:∧(連言「かつ」)、 ¬(否定「・・ない」) 私はRと結婚していて、かつ、教師になった – m(IR)∧t(I) 可能世界のイメージ PW1 二つの命題の真偽の組み合 わせから可能世界が構成さ れる。 これが、たった二つの事実か らスターとしたわれわれのモ デルの限界である。 m(IR)∧t(I) PW2 m(IR)∧¬t(I) PW3 ¬m(IR)∧t(I) PW4 ¬m(IR)∧¬t(I) 可能世界の性質 可能世界の数は命題の数=nとすると、2のn乗 すべての可能世界の中にひとつだけ現実世界 (AW)がある。 「可能性」とは – われわれが知っているすべての対象に命名する – そこから可能なすべての命題を構成する – そのすべての命題の真偽のすべての組み合わせによっ て可能世界を作る – この可能世界のすべてが形作る論理的空間を「可能性」 という 可能世界と現実世界 PW1 m(IR)∧t(I) 想像する AW 想像する ¬m(IR)∧¬t(I) 想像する PW3 PW2 ¬m(IR)∧t(I) m(IR)∧¬t(I) 行為による現実世界の移動 PW1 m(IR)∧t(I) 行為によって、ま たは技術、etc.に よってt(I)を実現 想像する もと 実現する 新しい AW ¬m(IR)∧t(I) AW ¬m(IR)∧¬t(I) 想像する PW2 m(IR)∧¬t(I) 可能世界と人間存在 可能世界は人間の知性がつくる意味の空間 – 今回は論理モデルによって構成したが、絵画などの表現 手段によってもアプローチ可能だろう 人間は可能世界をただ考えることだけができる – 可能世界の外部は考えることができない – 外部にはただナンセンスの無限の空間が広がっている – 人間は、現実世界にしか存在することはできない すなわち、人間は現実世界をとりまく可能世界の空 間には足を踏み入れることはできない 昔からあった可能世界 小説、映画、絵画によるフィクション – 漱石『こころ』では、「先生」と「K」と「お嬢さん」そして「私」 の物語が提示される。論理学的観点から見ると、展開さ れる順序は無視され、そこで可能世界が展開されたとみ なされる。 – スウィフト『ガリバー旅行記』、宮崎駿『千と千尋』、ボッティ チェリ『ビーナスの誕生』、etc. etc. 神話、死後の世界、伝説、形而上学 – 現実かもしれないけどそこに行ったり見たりすることので きない世界 夢や妄想の世界 – はかなく消えてしまう自分一人の世界 現実とは? 可能世界 – 想像するしかない 現実世界 – そこで何かを見たり(感覚)、何かをしたり(行為)すること ができない <現実>であるとは – – – – 感覚と行為によるアクセス そこで他者に出会える 想像を止めても消えてしまわない 世界は自律的に成長する ヴァーチャル・リアリティ ヴァーチャル・リアリティは人工的に、可能世界に 「現実」の性質を実現する。 – 感覚(HMD、スピーカ、データ・グローブ) • 感覚を通して世界のイメージを与える。 – 行為できる(データスーツ、マイク) • 「行為」を通して世界のイメージに働きかける – ひとつの世界モデルの共有 • ひとつのゲーム世界に複数のプレーヤーがアクセスする – 世界モデルは持続・成長可能 • アクセスの有無に対しても世界モデルをSEが保守する 可能世界とバーチャル・リアリティ こうして、可能世界もまた、VR技術によって 現実になった!? – 人は現実世界を抜け出して可能世界に行くこと ができる! AW ¬m(IR)∧¬t(I) VR1 m(IR)∧t(I) VR世界と現実世界 VR W世界の並存? m(IR)∧t(I) ログイン AW 想像する ¬m(IR)∧¬t(I) 想像する PW3 PW2 ¬m(IR)∧t(I) m(IR)∧¬t(I) 「ヴァーチャル」であるとは ヴァーチャル←ヴァーチュー(virtue 徳) =実効的な力がある – 徳は人を動かす力である VR も – ヴァーチャルリアリティは単なる空想の世界では なく、実際に人に体験を与える力はある 来週 ヴァーチャル世界での倫理
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