リアル・バーチャル 吉田 第二回 リアル・ワールドにヴァーチャル・ ワールドの区別 可能世界と現実世界 PW1 現実世界はただひとつ。 m(IR)∧t(I) そこから可能世界が想像される。 現実世界を出ることはできない。 現実世界だけが感覚・行為・出会い・持続する。 AW 想像する ¬m(IR)∧¬t(I) 想像する PW3 PW2 ¬m(IR)∧t(I) m(IR)∧¬t(I) VR世界と現実世界 人はヴァーチャル・ワールドに ログオンする。 そこで、感覚し、行為し、出会い、 その世界は持続する。 AW 二つの世界が並存? 想像する ¬m(IR)∧¬t(I) VR m(IR)∧t(I) ログイン 想像する PW3 PW2 ¬m(IR)∧t(I) m(IR)∧¬t(I) VWとAW AW=Actual World:現実世界 VW=Virtual World:ヴァーチャル(仮想)世界 VR技術は、VWをAWにどこまで近づけること ができるのか? 将来的に区別がつかなくすることは可能か? そのような技術開発の方向は望ましいか? VR技術 コンピュータによって、世界を心の中に実現 する。 AW VW VR技術の構成 シミュレーション・システム – VWの整合性を保ちつつ自律的に成長させる インターフェース・システム – コンピュータ中の世界モデルを 人間の意識の中でVWとして 再現できるように 感覚器官に適切に 出力する。 インターフェース・システムの限界? VWはポリゴン・ワールド? – つまり、VWはあまりにも感覚的精度が粗すぎる 精度は技術(とくに処理速度や記憶容量など)の発展に伴っ て向上した – 人間の感覚器官の精度は有限である以上、VR技術の出力する精度 が人間の感覚器官の精度に追いつく可能性は十分にある。 だが、十分な認知科学の成果を待たねば、適切な出力を人 間の感覚器官に与えることはできない。 – たとえば嗅覚の研究などは、立ち遅れがはなはだしいし、果たして人 間の感覚的認知や知覚の構造がVWの要求する水準まで解明され るときがくるのかはわからない。 シミュレーション・システムの限界? 整合性の計算は大切 – VWがそもそもWである(可能世界PWまたは現実世界AW)であるた めには整合性を保たねばならない。整合性のないWとは、可能性の 外のナンセンスでしかない。 タイムラグの問題 – 自然・不自然の感覚は、タイムラグによっても生じる。このタイムラグ は、処理速度に依存し、ゼロになることはない。一方、自然界におけ るタイムラグはゼロである。限りなくゼロに近づくなら、VWはRWと区 別はつかなくなるが、どうだろう? アフォーダンス(潜在的情報)の問題 – RWには、無数の潜在的情報が埋まっている。人は、世界に対して新 しい働きかけによって、この情報を探りつつ生きている。これはいわ ば、無限な能力をもつとされる神が考えた可能世界の豊かさである。 VWにも潜在的な情報をプログラムすることはできる。ただ、無限なる 神と有限者であるプログラマの差は、乗り越えられるものではない。 これからのVR VWの限界を前提とした展開 – PWでなく、AWの一部を実現するAR(人工現実 感) • テレロボティクス – 限定的な領域での限定的な目的でのVR • 訓練、治療、ゲーム、等々 VWの限界への挑戦 – VRへのアフォーダンスの埋め込み • プログラマや設計者のセンス次第では、より深い現実 感を実現できる。 想定される問題 特に倫理的観点から考えてみよう – 故障によるトラブル(AR) カーナビの故障 – VR中毒(ゲーム、その他) – VRでの暴力や詐欺、その他の非倫理的行為 ヴァーチャルな世界だから何をしてもよいのか? – VRとAWの干渉または融合によってAWに生じる 問題 VRでのVサービスのために、現実世界でリアル なお金を稼いで、V世界につぎ込む 参考リンク 吉田の物置(授業資料)のURL http://www.geocities.jp/yoshida_inf/ http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/vr.html バーチャルリアリティ(VR)の簡単な説明のページ http://www.ntts.co.jp/SO/so2/iroha/ http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0411/vr.html VRの利点。特に医療の分野での発展 http://www.enaa.or.jp/JPMF/library/open/online/0408/takane.html 危険性を批評しているページ。 http://www.nihonbinary.co.jp/Virtual/ ↑現在あるVRを利用したソフト、デバイスなど。PHANToMやFreeFormなどといっ た、三次元感触を取り入れたシステムツールの紹介。 http://www.ritsumei.ac.jp/~hideytam/maindoc/mr.html ↑人工現実感に関するページ。 http://www.jst.go.jp/pr/report/report197/details.html ↑VRによる機能障害リハビリテーションへの導入について 参考文献 『知性はどこに生まれるか ダーウィンとアフォーダンス』 佐々木正人 (1996)、講談社(現代新書)。しつこくミミズを観 察しつづけたダーウィンはすごいと思える本。 『聖なるヴァーチャル・リアリティ』西垣通(1995)、岩波書店、 1700円。現代社会でのバーチャル・リアリティのもつ危険性と 可能性を鋭く指摘。 『バーチャル・リアリティって何だろう』廣瀬通孝(1997)、ダイ ヤモンド社、1500円。バーチャル・リアリティ紹介の最近の名 著。 『人工現実感の世界』服部桂(1991)、工業調査会、2233円。 わが国でバーチャル・リアリティを紹介した古典的な名著。 あと、バーチャル・リアリティ関係のSFとして、超有名作 「「ニューロマンサー」」ギブソン。文庫です。スリルあるストー リーでおもしろい。 来週 ヴァーチャル世界での倫理
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