韓国人高校生のためのIS連想法 ひらがな学習カードの開発 記憶方略およびARCS動機付けモデルからの評価 鈴木庸子(国際基督教大学) 水田澄子(名古屋外国語大学) 梅田康子(愛知大学) 2008.7.13 日本語教育学会世界大会 於釜山外国語大学 発表の概要 1.IS連想法とは 2.IS連想法のひらがなカード開発と試行 (韓国語版) 3.評価1 記憶方略から見る 4.評価2 ARCSモデルから見る 5.今後の課題 1.IS連想法とは ① ひらがなを短時間で覚える 46字を48分で ② Image と Storyを使う Quackenbush H, C. (1999) HIRAGANA/KATAKANA in 48minutes: teacher guide. Curriculum Corporation, Melbourne, Vic. Australia 具体例 • 「あ」と antena を結びつける • イメージ • ストーリー • アンテナのストーリー 2.開発と実験授業 • 開発: 韓国高校生対象 2006-2007 高校日本語教師+研究者の共同研究 ・実験授業 2006.1月 • 成果発表:2007/2 韓国日本学会 (建国大學校) • 「IS連想法による韓国人日本語学習者の ひらがな学習の効果」(水田澄子ほか) 他 実験群 統制群 46 44 ~ 43 40 ~ 39 36 ~ 35 32 ~ 31 28 ~ 27 24 ~ 23 20 ~ 19 16 ~ 15 12 ~ 7 11 8~ 4~ 3 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 -5 0~ 成果1 直後の再認テスト 実験群 統制群 46 44 ~ 43 40 ~ 39 36 ~ 35 32 ~ 31 28 ~ 27 24 ~ 23 20 ~ 19 16 ~ 15 12 ~ 11 8~ 7 4~ 3 0~ 授業1ヶ月後の再認テスト 30 25 20 15 10 5 0 実験群と統制群の比較(直後) 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 あ う お き け さ す そ ち て な ぬ の ひ へ ま む も ゆ ら る ろ を 実験群 統制群 なぜ成功したのか? 3.記憶方略から見る • 記憶:情報を覚える段階(記銘場面、符号化) 情報を保持もしくは貯蔵する段階 情報を想起あるいは検索する検索場面 ・ 記憶方略:「記銘場面と検索場面において、主体が意図的に行う活動・手段」 (太田・多鹿、2000) ・ IS連想法と記憶方略 無意味な表音文字のひらがなに ①同じ音で始まる韓国語の単語の絵(イメージ)を重ねる ②ストーリーによって意味づけをする。 →符号化の中でも処理水準が深く、情報が長期記憶に転送しや すくなると考えられている ③グループ化、体制化の工夫をする →ストーリーを考える際に、類似性の高い文字を組み合わせて 一つのストーリーにする。記憶を助ける働きをすると考えられている。 アンケート調査の結果 • 〔絵とストーリーが役に立った文字〕(IS連想 法、114人中)(括弧内の数字は票数) • お(33) ひ(31) き(30) あ(28) い(21) け・た・ね・ん(19)は(19) • 〔覚えやすかった文字〕(従来の教授法 117 人中) • あ(57)い(54) お(33) う(32) こ(30) ん(26) え(25) の(21) く(20) へ(19) 赤(実験群) 青(統制群) 黄(両方) • • • • • あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの ・はひふへほ • • • • まみむめも やゆよ らりるれろ わをん • 同様に覚えにくかった文字を尋ねたところ、26文字 (延べ数73)が挙がり、そのうち「む、を、は、み、れ、 わ」は再認テストの得点も80%未満と低い。理由と して「を、は、れ、わ」は他の文字との混乱、「む、を、 は、み」はストーリーまたは絵が挙げられた。26文 字全体で「他の文字との混乱」が覚えにくさの理由 の45%を占め、絵やストーリーは26%であった。混 乱の見られた文字は「ぬ/め」(5人)、「け/は/ほ/ ま」「れ/わ/ね」(2~3組)「た/に」「ち/ろ」「の /こ」(1組) 覚えにくい文字 赤(実験群) (覚えにくいという意識のあった26文字で 得点80%以下) ・はひふへほ • あいうえお • まみむめも • かきくけこ • やゆよ • さしすせそ • らりるれろ • たちつてと • わをん • なにぬねの まぎらわしい文字 (実験群) 「け/は/ほ/ま」「れ/わ/ね」「た/に」「ち/ろ」 • • • • • あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの ・はひふへほ • • • • まみむめも やゆよ らりるれろ わをん 覚えにくい理由 • 他の文字との混乱「を、は、れ、わ」45% • ストーリー、絵「む、を、は、み」26% • 混乱の見られた文字は 「ぬ/め」 「け/は/ほ/ま」「れ/わ/ね」 「た/に」「ち/ろ」「の/こ」 なぜ成功したのか? 4.ARCSモデルから見る ARCSモデル →動機付けに焦点をあてた授業設計モデル • Attention おもしろそうだ • Relevance 知ってる、使えそうだ • Confidence できそうだ、できた • Satisfaction よかった Keller, 1983 Attention 高校生の注意を引く • カードのイラスト (絵)は明るくユーモラスなタッチ • シンプルな線 • イラストを見せながら教師が学習者にストーリーを 伝えるという教授方法 (1)ストーリーの内容自体 (2)教師とのインターラクション (3)一風変わっている、単調でない (4)授業者の熱意 Attention 高校生の注意を引く(2) • 感想 直後のアンケート・インタビュー おもしろい・興味深い 32名中19名(約59%) 退屈しない・集中する 11名(34%) Relevance 関連がある • 日本語授業の一環。 • イメージとストーリーのアイデアを高校生から 募集した。 • 高校生の教育に精通したベテランの教師が 合議の上で厳選した。 • ⇒高校生の日常生活と結びついて連想しや すく、かつ親しみやすい。 Relevance 関連がある(2) 覚えやすいと思った文字に当てられた連想語 イヤリング、ラーメン、クッキー、虫歯 それ以外に自分で関連付けたことば 父、日本の歌、よく見かける Confidence 自信につながる • 再認テスト平均点 38.9(82%) ⇒46文字中、39字を「50分で覚えられた」 • 生徒の感想:感想速く覚えられて感動した Satisfaction 満足 • インタビューの回答 「易しい・覚えやすい・記憶に残る」延べ39名 「楽しい、気楽」13名 「効率がいい」1名 今後の課題 1.指導技術の習熟のための研修機会 カードの扱い方 イメージとストーリーの熟知 テキパキした授業運営 2.地域や状況に合わせられるように配慮 絵やストーリーは身近な内容を選ぶ。地域などに より異なるはず 3.定着を図るための方略 書き方 特殊拍 カタカナの指導との連携
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