無償資金協力 案件概要書 2016 年 6 月 28 日 1.基本情報 (1) 国名:ベナン共和国 (2) プロジェクトサイト/対象地域名:アトランティック県 (人口:122 万人) (3) 案件名:アトランティック県小学校建設計画(Projet de Construction et Equipement de la Salle de Classe dans les Ecoles Primaires Publique dans le Département de l'Atlantique) (4) 事業の要約:本計画は、アトランティック県において、小学校の教室建設及び 教室家具の整備を行うことにより、対象地域における初等教育へのアクセス及 び学習環境の改善を図り、もって同国の人的資源開発に寄与するもの。 2.事業の背景と必要性 (1) 当該国における教育セクターの開発の現状・課題及び本事業の位置付け ベナン共和国は、一人あたり GNI が 890 米ドル(2014 年、世界銀行)、人間開発 指標は 187 か国中 165 位(2014 年、UNDP)であり、後発開発途上国(LDC)に 位置付けられている。同国政府は、第三次貧困削減戦略文書(PRSP 2011-2015) において、貧困層に対する社会サービス(教育、水、保健等)の提供を課題と位置 付け、教育セクターについては、 「基礎教育へのアクセス及び教育の質の改善」を重 点分野としている。 同国における初等教育総就学率は、我が国が初の小学校建設協力を開始した 1996 年には 68%であったが、全国各地で小学校建設を進めた結果、2006 年には 95%に まで改善した。同年、同国政府は、教育セクターの上位計画として、 「教育セクター 10 か年計画(Plan Décennal de Développement du Secteur de l’Education ; PDDSE 2006-2015)」を策定し、初等教育を完全無償化した。これに伴う就学児童数の増加 に対し、教室建設が追い付かず、1 教室あたりの平均児童数は 48 名(2004 年)か ら 57 名(2014 年)となり、劣悪な教育環境により低下した学習効率の改善が喫緊 の課題となっている。同国政府は、2015 年に PDDSE のレビューを実施し、かかる 状況を改善するためには、次期 10 か年(2016-2025)において約 13,500 教室(1,350 教室/年)の増設が必要になるとしている。 我が国は、1996 年から総就学率改善のため全国各地で小学校の建設を支援してき たが(第一~三次)、2006 年以降は、当時、特に教室数の不足が深刻であった中部 及び北部における既存校の増築支援(第四~五次)を実施した。本計画の対象地で あるアトランティック県は、同国南部に位置し、最大の経済都市であるコトヌ市に 隣接、ベッドタウンとして人口増加が進んだ結果、1 教室あたりの平均児童数は 82 名(2014 年)と同国基準(40 名)の約 2 倍となっており、上述した最新のレビュ ー結果において、教室増設に係る最優先県に指定されている。本計画は、同県にお いて、新規建設需要の 1 割強を満たす約 160 教室の増設を図るものであり、同国に おける次期 PDDSE10 か年計画に貢献するものとして位置付けられている。 (2) 教育セクターに対する我が国の協力方針等と本事業の位置付け 対ベナン共和国国別援助方針(2012 年 12 月策定)では、「人的資源開発」を重 点分野に位置付け、初等教育の完全無償化に伴う教室不足を解消する支援を行い、 教育への公平なアクセスと質の改善を図ることが明記されており、本計画は右方針 に合致する。 (3) 他の援助機関の対応 世界銀行、イスラム開発銀行、アフリカ開発銀行等による支援が実施されている。 これらドナーから構成されるコモンバスケット(Partenariat Mondial pour l’ Education et le Fonds Commun Budgétaire ; PME/ FCB)は、主に北部 4 県を対象 とした教室建設を実施中。対象県内の異なる地域において 27 教室を建設中である ほ か 、 同 国 政 府 に よ る 住 民 参 加 型 の 小 学 校 建 設 イ ニ シ ア テ ィ ブ ( ” Initiative DOGBO”)により 144 教室を建設中。 (4) 本計画を実施する意義 本計画は、幼少初等教育大臣から我が国に対して強い協力要請があったものであ り、対象地域が先方政府の上位計画のレビューにおいて最優先県に指定されている ことから、緊急性及び我が国支援による裨益効果が大きい。また、我が国の国別援 助方針の重点分野「人的資源開発」に整合し、我が国が 2013 年 6 月の TICADⅤに おいて発表した支援策「新たに 2,000 万人の子供に対して、質の高い教育環境を提 供」に寄与することから、無償資金協力として支援する意義は高い。 3.事業概要 (1) 事業概要 ① 事業の目的 本計画は、アトランティック県において、小学校の教室建設及び教室家具の整備 を行うことにより、対象地域における初等教育へのアクセス及び学習環境の改善を 図り、もって同国の人的資源開発に寄与するもの。 ② 事業内容 ア) 施設、機材等の内容:小学校約 160 教室の建設及び教室家具の調達等。 イ) コンサルティングサービス / ソフトコンポーネントの内容:協力準備調査 にて確認。 ウ) 調達・施工方法:現地業者の施工能力及び財務面の能力等、現地業者による 施工を検討する上で必要な情報を協力準備調査にて確認する。 ③ 他の案件との関係:過去、小学校建設や初等教員養成校の建設と JOCV の派遣を 組み合わせて、学習環境改善や教育の質の向上を図っており、本事業との相乗効 果が期待される。 (2) 事業実施体制 ① 事業実施機関/実施体制:幼少初等教育省(Ministère des Enseignements Maternel et Primaire ; MEMP) ② 他機関との連携・役割分担:上記2. (3) 「他の援助機関の対応」で前述のと おり、コモンバスケットによる小学校建設は北部地域を支援し、我が国は南部の 首都周辺地域を支援する方針とし、役割分担を行う予定である。 ③運営/維持管理体制:協力準備調査にて確認する。 (3) 環境社会配慮 ① カテゴリ分類 □A □B ■C □FI ② カテゴリ分類の根拠:本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」 (2010 年 4 月公布)上、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される ため。 (4) 横断的事項:特になし。 (5) ジェンダー分類:ジェンダー活動統合案件 (6) その他特記事項:特になし。 4. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 ベナン共和国「第四次小学校建設計画」の事後評価結果等においては、同国にお いて現地施工業者を活用して建設事業を実施する場合は、現地施工業者の技術面及 び財務面における実施能力の不足が、資材入手の遅れ等につながり工期に影響を及 ぼすという教訓が得られている。本事業においても、現地施工業者の活用を想定し ていることから、協力準備調査にて施工業者の実施能力を確認、適切な工程管理が 可能な業者をリストアップした上で、入札参加資格を決定するとともに、現地業者 の能力に適合した設計・施工計画とする。 以 上 [別添資料]地図 アリボリ県 アタコラ県 ボルグ県 ドンガ県 コリネ県 ズー県 コウフォ県 プラトー県 対象県:アトランティック県 ウエメ県 首都:ポルトノボ モノ県 コトヌ市 リトラル県 【参考】対ベナン協力「基礎教育改善支援プログラム」における過去案件実績 1. 第一次小学校建設(1996):全国対象 45 校舎 192 教室 2. 第二次小学校建設(1997):全国対象 45 校舎 192 教室 3. 第三次小学校建設(2003):ドンガ、コリネ、コウフォ、モノ、ズー、ウエメ、 プラトー県対象 45 校舎 192 教室 4. 第四次小学校建設(2007):コウフォ、ズー、コリネ、ウエメ県対象 57 校舎 275 教室 5. ジョグー初等教員養成校(2011):ドンガ県 6. 第五次小学校建設(2013):アタゴラ、ドンガ県対象 53 校舎 241 教室 ※ その他、青年海外協力隊員を全国各地の視学官事務所に配置、上記協力校を含む対象地域の 小学校にて理数科教育の質の拡充を図っている。
© Copyright 2024 ExpyDoc