ラゴス変電設備緊急復旧計画準備調査(PDF)

無償資金協力
案件概要書
2017 年 2 月 28 日
1.基本情報
(1) 国名: ナイジェリア連邦共和国
(2) プロジェクトサイト/対象地域名: アパパロード変電所/ラゴス州
(3) 案 件 名 : ラ ゴ ス 変 電 設 備 緊 急 復 旧 計 画 ( The Project for Emergency
Rehabilitation of Lagos Transmission Substation)
(4) 事業の要約: ラゴス州のアパパロード変電所の増強・復旧を行うことにより,
ナイジェリア国内最大の港湾であるアパパ港(総輸入取扱量の50%)を含む
港湾施設や周辺産業地域への電力供給の安定性・安全性向上を図り,もって港
湾の強化を通じた基礎インフラの整備に寄与することを目的とする。
2.事業の背景と必要性
(1) 本計画を実施する外交的意義
2016 年 8 月の TICAD VI の機会に行われた安倍総理とブハリ大統領との首脳会談
では,両国の経済関係促進,国際場裡での協力関係強化を確認した。
我が国は TICAD VI において約 100 億ドルの質の高いインフラ投資を実施する旨
表明しており,本計画への支援は,同コミットメントの達成にも貢献するものであ
る。
ナイジェリア連邦共和国(以下「ナイジェリア」という。)はアフリカ最大の産油
国(OPEC 第 7 位)であり,日産約 231 万バレル(2015 年)の産油量を誇るとと
もに,アフリカ最大の天然ガス埋蔵量(世界第 9 位)を誇っている。原油及び液化
天然ガスはナイジェリアの対日輸出の主要品目となっており,同国との安定的な関
係の維持は,エネルギー資源の輸入元の多様化を通した資源確保の安定化の観点か
ら重要である。
ラゴス州はナイジェリアの経済・産業の中心地であり,同州に位置する同国最大
のコンテナ港であるアパパ港は本邦企業も輸出入に利用している他,同地区に工場
を運営する日系企業もある。維持管理不足で老朽化が進んだ変電設備が系統事故を
起こした場合,長期間の電力供給が滞り,地域経済への甚大な影響が予想され,変
電設備の復旧は我が国企業支援の観点からも意義が大きい。
(2) 当該国における電力セクターの開発の現状・課題及び本計画の位置付け
ナイジェリアの中心地であり急速な拡大を続けるラゴス州は,人口約 900 万人(出
所:2006 年国勢調査)を擁する同国最大の港湾都市である。ラゴス州の電力需要は
現在 1,250MW であるが,平均電力供給は 650MW(出所:ラゴス州電力委員会)で
あり,絶対的に電力が不足する中で,過負荷による強制停電が送電系統の各所で頻
発しており,また設備の維持管理不足により全系統停電となる事故も発生している。
ラゴス州のアパパロード変電所は,ナイジェリア総輸入量の 50%(出所:APM
Terminals)を占める同国最大港湾のアパパ港を含む港湾施設や周辺産業地域及び一
般家庭に電力を供給している。アパパ港では,船舶の安全航行用夜間照明,冷凍設
備やクレーン機材等のために安定的かつ大量の電力を必要としているが,同変電所
の変電容量不足により港湾業務に支障をきたしており,また産業地域では停電によ
る生産ラインの停止により産業活動が阻害されている。他方,港湾及び産業地域の
電力需要は年々増加を続け,ピーク時電力負荷(83MW)は同変電所が供給可能な
変圧容量(45MW)を大幅に超過しており,変圧器容量の増設が急務である。また,
同変電所では,系統保護・監視制御の機能を持つガス絶縁開閉装置(以下,「GIS」
という。)が,老朽化により稼働 35 年経過した 2012 年に故障・停止しており,応
急対応として使用している遮断機に短絡焼損事故等のトラブルが発生した場合,系
統設備に甚大な損傷を与え長期の停止を伴うリスクが高まっている。長期の停電に
よる港湾や周辺産業への影響は甚大なため,GIS 設備の復旧が急務である。
ナイジェリア政府は,国家開発計画「Nigeria Vision 20: 2020」において,インフ
ラ整備(電力・運輸)を最優先課題の一つとして掲げている。本計画は,変圧器の
増設及び GIS 設備の復旧を行うものであるが,安定した電力供給に必要な送配電網
の強化は,同国家開発計画において緊急的に対応すべき優先事業として位置付けら
れている。
(3) 電力セクターに対する我が国の協力方針等と本計画の位置付け
我が国は対ナイジェリア連邦共和国国別開発協力方針(2012 年 12 月)において,
「基幹インフラの整備」を重点分野と定めており,本計画は我が国の協力方針に合
致する。また,我が国は技術協力(「電力開発計画アドバイザー」,
「電力マスタープ
ラン策定プロジェクト」)の実施を通じて,同国の電力セクターの開発計画の策定を
支援してきており,本計画はその一部を事業化するもの。
(4) 他の援助機関の対応
世界銀行,アフリカ開発銀行,フランス開発庁が当国における電力セクターの主
要ドナーである。送電部門では,世界銀行及びフランス開発庁が設備増強のための
借款案件を実施。また,世界銀行は送電に特化した国家マスタープランの策定を支
援している。
(5) 本計画を実施する開発政策上の意義
ナイジェリアの所得水準は相対的に高いことから,
「所得水準が相対的に高い国に
対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき,無償資金協力の供与の適
否について精査が必要である。
ラゴス州では,送変電設備の維持管理不足により各所で強制停電が頻発し,同州
の電力供給能力を著しく低下させている。アパパロード変電所は,日系企業や大企
業が集中するラゴス市及び同国最大港湾であるアパパ港を含む港湾施設への電力供
給を行っており,系統事故を起こした場合,電力供給が滞り甚大な影響があるため,
復旧の緊急性が高い。また,本計画は,ナイジェリアの開発課題・開発政策並びに
我が国の協力方針に合致し,変電所機能の増強・復旧を通じて電力供給の安定性・
安全性を向上するものであり,SDGs ゴール 7 に貢献すると考えられる。
本計画については,本邦企業が多く展開するアパパ港周辺地域の安定的な電力供
給を緊急に復旧させる必要性にかんがみ,無償資金協力の供与が適当と判断される。
3.事業概要
(1) 事業概要
① 事業の目的: ラゴス州のアパパロード変電所の増強・復旧を行うことにより,
ナイジェリア国内最大の港湾であるアパパ港(総輸入取扱量の50%)を含む港
湾施設や周辺産業地域への電力供給の安定性・安全性向上を図り,もって港湾の
強化を通じた基礎インフラの整備に寄与することを目的とする。
② 事業内容:
ア)変電所機材の調達: GIS(1 式:132kV 屋外型),変圧器(2 台:45MVA×
2),その他機材
イ)コンサルティング・サービス
ウ)ソフトコンポーネント(変電設備の日常点検等,協力準備調査にて詳細確認)
③ 他の JICA 事業との関係
現在協力準備調査を実施中の円借款「送電網強化事業」により,ラゴス郊外及
び隣接するオグン州の送変電網を強化予定。本計画ではラゴス州中心部の変電設
備を増強・復旧することから,
「送電網強化事業」と合わせ,ラゴス州の包括的な
送電網強化に寄与する。
(2) 事業実施体制
① 事業実施機関/実施体制: 連邦電力・公共事業・住宅省(Federal Ministry of
Power, Works and Housing)/ナイジェリア送電公社(Transmission Company of
Nigeria。以下,「TCN」という。)
② 他機関との連携・役割分担: 特になし。
③ 運営/維持管理体制: 本計画の運営・維持管理は TCN が行うが,変電設備
の日常点検等について改善・強化が必要であるため,本計画のソフトコンポーネ
ントで能力強化を実施予定。なお,維持管理に係る費用は,TCN の 2019 年度以
降の予算として確保される予定である。
(3) 環境社会配慮
① カテゴリ分類 □A □B ■C □FI
② カテゴリ分類の根拠: 本計画は,
「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」
(2010 年 4 月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される
ため。
(4) 横断的事項: 特になし。
(5) ジェンダー分類: ジェンダー主流化ニーズ調査・分析案件
(6) その他特記事項: 特になし。
4. 過去の類似案件の教訓と本計画への適用
アゼルバイジャン共和国向け無償資金協力「バクー市ムシュビク変電所改修計画」
の事後評価等では,整備された機材の適正利用・管理のためのトレーニングが定期
的に実施され,24 時間体制の機器点検を実現し,事業の効果発現に寄与したと指摘
されている。
本計画においても,既設変電所の運営状況を把握した上で,ソフトコンポーネン
トで機材の適切な維持管理のためのガイドラインの整備や研修等を行い,組織内で
の知見の共有体制や維持管理体制の強化を行う。
以
[別添資料]地図
上
広域(ラゴス州・
オグン州)
の送電系統
(330kV、132kV)
ラゴス中心部
オグン州
州境
ラゴス州
ナイジェリア
ラゴス中心部
ラゴス州
アカングバ変電所
アパパロード変電所
アパパ港
ティンカンアイランド港