対称性と保存則

物質情報学 1(解析力学),担当 谷村省吾,講義ノート 5
対称性と保存則
保存則
最小作用の原理と対称性の概念を組み合わ
せると保存法則が導かれる.このことをネー
力学系の配置を表す変数 q = (q1 , · · · , qn )
ターの定理という.今回はこれを説明する.
が,ある運動法則に従って時間変化する.つ
まり,時刻 0 での q(0) の値を指定すれば,運
動法則によって任意の時刻 t の q(t) の値が決ま
対称性
るとする.このとき,変数 q とその時間微分
対称性という概念を説明する.A という状 q̇ = (q̇1 , · · · , q̇n ) の関数
態の対象に R という変換や操作を施した結果,
G(q, q̇)
(2)
′
A という状態になるとする:
A 7→ R(A) = A′
が,いかなる初期条件 q(0), q̇(0) に対しても
(1)
G(q(t), q̇(t)) = G(q(0), q̇(0))
(3)
例えば,図形を平行移動したり回したりひっ を満たすならば,G はこの運動法則に関する
くり返したりするのは変換の一種である.一 保存量 (conserved quantity) と呼ばれる.同じ
般に,変換を施した後の状態 A′ は元の A とは ことだが,
異なる.しかし,もしも A′ = A になっていれ
d
G(q(t), q̇(t)) = 0
dt
ば,A は変換 R の下で不変 (invariant) である,
(4)
もしくは,A は R について対称性 (symmery) と言ってもよい.
問 6. m, k は正の定数とする.変数 x(t) が運
を持つ,という.なお,何もしない操作を恒等
変換 (identity transformation) といい,数学的 動方程式
には,恒等変換も変換の一つとみなす.
mẍ = −kx
問 1. 平面上の二等辺三角形の対称性を述べ
(5)
に従って時間変化するならば,関数
よ.また,正三角形の対称性を述べよ.
1
1
E = mẋ2 + kx2
2
2
問 2. 正四面体を不変にとどめる変換をすべ
て列挙し,それら変換全部の数を言え.
(6)
は保存量であることを証明せよ.つまり,
問 3. 正六面体を不変にとどめる変換をすべ
dE
=0
dt
て列挙し,全数を言え.同様に正八面体を不変
(7)
にとどめる変換をすべて列挙し,全数を言え. を証明せよ.また,微分方程式 (5) の一般解を
問 4. 平面上の円はどういう対称性を持つか. 求めて,関数 x(t) のグラフを描け.微分方程
問 5. 無限に広い平面はどういう対称性を持 式 (5) に従うシステムは調和振動子 (harmonic
つか.また,平面上の格子模様はどういう対称 oscillator) と呼ばれる.また,保存量 (6) は全
性を持つか.何通りかの格子模様を検討せよ. エネルギーと呼ばれる.
1
問 7. m, k, γ は正の定数とする.変数 x(t) が である.
運動方程式
また,変換 (11) に伴って一般化座標の時間
mẍ = −kx − γ ẋ
微分は
(8)
q̇i 7→ q̃˙i =
に従って時間変化するならば,関数
n
∑
∂ϕi
∂qj
j=1
1
1
E = mẋ2 + kx2
2
2
(9)
(15)
に変わる.無限小変換 (13) の下で時間微分は
の値は時間とともに単調に減少することを証
q̇i 7→ q̃˙i = q̇i + ε
明せよ.つまり,
n
∑
∂fi
j=1
dE
≤0
dt
q̇j
(10)
∂qj
q̇j
(16)
の分だけ変わる.これを速度の無限小変換と
であることを証明せよ.また,微分方程式 (8) いう.
の一般解を求めて(係数 γ の大小によって場合
問 8. ε が無限小であるとき,ε の 2 次以上の
分けする必要がある),関数 x(t) のグラフを描 項は無視できる.例えば,厳密には
け.微分方程式 (8) に従うシステムは線形な摩
(1 + ε)2 = 1 + 2ε + ε2
擦のある振動子あるいは減衰振動子 (damped
oscillator) と呼ばれる.
(17)
だが,
(1 + ε)2 = 1 + 2ε
連続変換と無限小変換
(18)
パラメータづけられた連続変換というもの としてよい.同様に,厳密には
を考える.それは
qi 7→ q̃i = ϕi (q, ε) (i = 1, · · · , n)
(1 + ε)3 = 1 + 3ε + 3ε2 + ε3
(19)
(1 + ε)3 = 1 + 3ε
(20)
(11)
だが,
という形の変換である.ε は変換の度合いを表
す実数パラメータであり,ε = 0 のときは恒等
変換だとする:
q̃i = ϕi (q, 0) = qi
としてよい.一般に
(i = 1, · · · , n)
(12)
F (x + ε) = F (x) +
とくに ε が無限小(限りなく 0 に近い微小な
(21)
となる.同様の扱いによって以下を計算せよ:
数)であるときは,変換 (11) を
1
√1 + ε
1+ε
qi 7→ q̃i = qi + εfi (q) (i = 1, · · · , n) (13)
と書いてよい.これを無限小変換 (infinitesimal
transformation) の式という.ここで
∂ϕi fi (q) =
∂ε ε=0
∂F (x)
ε
∂x
(14)
2
(22)
(23)
eε
(24)
cos ε
(25)
sin ε
(26)
問 9. 平面においてベクトル (cx , cy ) の方向 で定める.ノルムが 1 に等しいベクトルを単位
への平行移動は
( )
( ) ( )
( )
x
x̃
x
cx
7→
=
+ε
y
ỹ
y
cy
ベクトル (unit vector) という.互いに直交す
る単位ベクトル
 
1
 
e1 = ex = 0 ,
0
 
0
 
e3 = ez = 0
1
(27)
で与えられる.速度の変換則を求めよ.
問 10. 平面において回転変換は
( )
( ) (
)( )
x
x̃
cos ε − sin ε
x
7→
=
(28)
y
ỹ
sin ε cos ε
y
(36)
を規格直交系 (orthonormal system) という.ク
で与えられる.この変換の下で
A = x2 + y 2
 
0
 
e2 = ey = 1 ,
0
ロネッカーのデルタ (Kronecker’s delta) と呼ば
(29)
れる記号とレヴィ・チヴィタのイプシロン (Levi-
は不変であることを確かめよ.また,回転変換 Civita’s epsilon) と呼ばれる記号をそれぞれ
{
に対する無限小変換の式を求めよ.
1
(i = j)
δij =
(37)
問 11. 平面における変換として
0
(i ̸= j)

( )
( ) (
)( )

(i, j, k が 1,2,3 の偶置換)
x
x̃
cosh ε sinh ε
x
 1
7→
=
(30)
εijk =
−1 (i, j, k が 1,2,3 の奇置換)(38)
y
ỹ
sinh ε cosh ε
y

 0
(それ以外)
を考える.この変換はどのような変換か図示せ
と定めると,直交単位ベクトル同士の内積と外
よ.また,この変換の下で
積は
2
2
S =x −y
(31)
ei · ej = δij
(39)
3
は不変であることを確かめよ.また,この変換
∑
εijk ek
(40)
ei × ej =
に対する無限小変換の式を求めよ.
k=1
問 12. 3 次元空間のベクトル a と b
 
 
ax
bx
 
 
a = ay  , b = by 
az
bz
に等しく,
a=
(32)
ai ei
(41)
i=1
a·b=
の内積 (inner product) と外積 (exterior prod-
3
∑
δij ai bj =
i,j=1
uct, cross product) を,それぞれ
a·b := ax bx + ay by + az bz


ay bz − az by


a×b := az bx − ax bz 
ax by − ay bx
3
∑
a×b=
(33)
3
∑
3
∑
a i bi
(42)
i=1
εijk ai bj ek
(43)
i=1
という等式が成り立つ.以下の問に答えよ:
(34)
(i) 偶置換と奇置換の定義を述べよ.
(ii) 次の関係式を証明せよ:
で定める.また,ベクトル a のノルム (norm) を
√
√
||a|| := a·a = (ax )2 + (ay )2 + (az )2 (35)
3
∑
i=1
3
εijk εipq = δjp δkq − δjq δkp
(44)
ネーターの定理
(iii) 3 次元空間の任意のベクトル a, b, c, d の
力学系のラグランジアン L は一般化座標
内積や外積について
と q = (q1 , · · · , qn ) とその時間微分 q̇ =
b × a = −a × b,
(45) (q̇1 , · · · , q̇n ) の関数
a × a = 0,
(46)
L(q, q̇, t)
a · (b × c) = b · (c × a) = c · (a × b),(47)
(58)
である.変数 q(t) はオイラー・ラグランジュ方
(a × b) · c + b · (a × c) = 0,
(48)
a · (a × b) = 0,
(49)
b · (a × b) = 0,
(50)
a × (b × c) = (a · c)b − (a · b)c,
(51) に従って時間変化する.さらに,任意の値の連
程式
( )
d ∂L
∂L
−
= 0 (i = 1, · · · , n)
dt ∂ q̇i
∂qi
a × (b × c)
= (a × b) × c + b × (a × c),
(a × b) · (c × d)
続パラメータ ε による変数変換 (11) とそれに
(52) 伴う速度の変換 (15) の下でラグランジアンが
不変であったとする:
˙ t) = L(q, q̇, t)
L(q̃, q̃,
= (a · c)(b · d) − (a · d)(b · c), (53)
||a × b||2 = ||a||2 ||b||2 − (a · b)2
G :=
問 13. 単位ベクトル n を軸として微小角 ε
n
∑
∂L
i=1
の分だけベクトル v を回す無限小変換は
∂ q̇i
fi
(61)
とおくと,
dG
=0
dt
(55)
(62)
が成り立つ.すなわち,ラグランジアンに対
で与えられることを説明せよ.また,有限の角
称性があれば,オイラー・ラグランジュ方程式
θ の分だけ回す変換
に保存量がある.この主張をネーターの定理
(Noether theorem) という.また,(61) 式で定
ṽ = (v · n)n + n × v sin θ
+(n × v) × n cos θ
(60)
(54) 以上の仮定の下で,
という関係式が成り立つことを証明せよ.
ṽ = v + εn × v
(59)
められる G をネーター保存量,もしくは,ネー
(56)
ターチャージ (Noether charge) という.
で与えられることを説明せよ.
問 15. (59) と (60) から (62) を導け.
問 14. ベクトル v, w の無限小回転を ṽ =
問 16. 最小作用の原理からネーターの定理
v + εn × v, w̃ = w + εn × w で定めると,ε を直接導け.
の 2 次の量を無視すると
問 17. 関数 f (x, y, z) に対して
(
)
∂f ∂f ∂f
∂f
ṽ · w̃ = v · w
(57)
:=
,
,
∂r
∂x ∂y ∂z
(63)
が成り立つことを証明せよ.よって,内積やノ で定まるベクトルを f の勾配ベクトル場 (graルムの値は回転変換の下で不変である.
dient vector field) という.この記法を使うと
4
ラグランジアン L(r, v) に対するオイラー・ラ グランジアン (69) が不変であることを示せ.
(iv) (iii) で述べた対称性に伴うネーターチャー
グランジュ方程式 (59) は
( )
d ∂L
∂L
=0
−
dt ∂v
∂r
ジを求めよ.
(64) (v) 位置エネルギーの各項が
(
)
GN mα mβ
と書ける.以下の問に答えよ:
Uαβ ||r α − r β || = −
(70)
||r α − r β ||
(i) 定数のベクトル c = (cx , cy , cz ) と関数 f (r +
で与えられるとき,ラグランジアン (69) に対
εc) について
∂f (r + εc)
∂f (r + εc)
=
·c
∂ε
∂r
が成り立つことを示せ.
(ii) 関数 F (r) の引数 r に r =
√
するオイラー・ラグランジュ方程式を書け.た
(65) だし GN はニュートンの万有引力定数である.
x2 + y 2 + z 2 =
同値なラグランジアン
||r|| を代入した関数について
 
x
∂F
∂F r
1 ∂f  
=
=
y 
∂r
∂r r
r ∂r
z
2 つの異なるラグランジアン L, L̃ から出て
来るオイラー・ラグランジュ方程式がまったく
(66) 同じ式になることがある.
問 19. ラグランジアン L(q, q̇, t) が与えられ
が成り立つことを示せ.
たときに,任意の関数 W (q, t) を用いて
(iii) 関数
1
U (r) = U (||r||) = −
r
L̃(q, q̇, t) := L(q, q̇, t) +
(67)
= L(q, q̇, t) +
dW
dt
n
∑
∂W
について
i=1
−
∂U
1 r
=− 2
∂r
r r
∂qi
q̇i +
∂W
(71)
∂t
(68) で新しいラグランジアン L̃ を定めると,L̃ のオ
イラー・ラグランジュ方程式は L のオイラー・
が成り立つことを示せ.
ラグランジュ方程式とまったく同じであること
問 18. 3 次元空間中の N 個の質点からなる を確認せよ.関係式 (71) を満たすラグランジ
系に対するラグランジアン
アン L と L̃ は同値 (equivalent) であるという.
L=
N
∑
1
α=1
2
mα v α · v α −
∑
(
)
Uαβ ||r α − r β || (69)
問 20. 変数 x, y を持つ 2 つのラグランジアン
1
L = m(ẋ2 + ẏ 2 ) + Bxẏ
2
1
L̃ = m(ẋ2 + ẏ 2 ) − B ẋy
2
α<β
を考える.
(i) 質点を一斉に平行移動させる変換 r α 7→
(72)
(73)
r α + εc (α = 1, · · · , N ) の下でラグランジアン のそれぞれのオイラー・ラグランジュ方程式を
書いて,結果的に同じ方程式になっていること
(69) が不変であることを示せ.
(ii) (i) で述べた対称性に伴うネーターチャージ を確認せよ.また,
を求めよ.
L̃ − L =
(iii) 質点を一斉に回転移動させる無限小変換
dW
dt
r α 7→ r α + εn × r α (α = 1, · · · , N ) の下でラ となるような関数 W (x, y) を示せ.
5
(74)
問 21. 関係式 (71) で結ばれる 2 つのラグラ
問 23. (i) 変数 x, y を持つラグランジアン
ンジアン L, L̃ が同じオイラー・ラグランジュ方
1
L = m(ẋ2 + ẏ 2 ) + Bxẏ
2
程式を導くことを,最小作用の原理(変分法)
の観点から説明せよ.
(79)
は x 7→ x + ε という変換の下で準不変である
ことを確かめよ.この対称性に伴うネーター
チャージ Gx を求めよ.
準不変性に伴う保存量
(ii) ラグランジアン (79) は y 7→ y + ε という
2 つの異なるラグランジアン L, L̃ から出て 変換の下で不変であることを確かめよ.この対
来るオイラー・ラグランジュ方程式がまったく 称性に伴うネーターチャージ Gy を求めよ.
同じ式になることがあるのだから,運動法則の (iii) (i), (ii) で求めた 2 つのネーターチャージ
不変性(対称性)を言うためには,(60) のよう Gx , Gy が定数であることから,ẋ, ẏ に対する方
にラグランジアンが完全に不変である必要は 程式を得る.この方程式を解け(結果的に (79)
なく,不変性という条件を緩めてよい.
から出て来るオイラー・ラグランジュ方程式を
無限小変換
解いたことにになる).
qi 7→ q̃i = qi + εfi (q) (i = 1, · · · , n) (75) (iv) (x(t), y(t)) が平面上でどんな運動をするか
図を描いて説明せよ.
に伴ってラグランジアンが
L(q, q̇, t) 7→ L(q + εf , q̇ + εḟ , t)
dW (q, t)
= L(q, q̇, t) + ε
(76)
dt
時間並進対称性とエネルギー保
存則
のように変わるならば,ラグランジアンは変換
力学変数 q(t) は時間の関数であり,結果的
(75) の下で準不変 (quasi-invariant) であるとい
にラグランジアン L(q(t), q̇(t), t) も時間 t の関
う.以上の仮定の下で,
G :=
n
∑
∂L
i=1
∂ q̇i
fi − W
数になるが,直接的には L が t の関数になって
(77) おらず q(t), q̇(t) を通してのみ変数 t に依存す
るような系もあるし,直接的に L が t に依存し
ている系もある.例えば,
とおくと,
dG
=0
dt
1
1
L1 = mẋ2 − kx2
2
2
(78)
(80)
が成り立つ.つまり,ラグランジアンがある変 は,あからさまには変数 t に依存していないが,
換の下で(不変でなくても)準不変でありさえ
1
1
L2 = mẋ2 − kx2 + f x cos Ωt
(81)
すれば,オイラー・ラグランジュ方程式の保存
2
2
量がある.(77) 式で定められる G もネーター はあからさまには変数 t に依存している.
保存量,もしくは,ネーターチャージと呼ば
ラグランジアン L(q, q̇) が直接的には時間 t
れる.
の関数になっていないような系を自律系(自励
問 22. ラグランジアンの準不変性 (76) とオ 系)(autonomous system) という.
イラー・ラグランジュ方程式 (59) と関数 G の
それに対して,ラグランジアン L(q, q̇, t) が
定義式 (77) から,保存則 (78) を導け.
あからさまに時間 t の関数になっている系を非
6
自律系 (non-autonomous system) という.
「外 となる.この式 (86) は式 (76) で W = L と選
からの影響下にある系」と呼ぶ方がわかりやす ぶことに相当し,結果的にラグランジアンは
いかもしれない.例えば,振り子を手で揺さぶ 準不変である.この場合のネーターチャージ
るといった場合は,人為的に決められた外力を (77) は
振り子に加えることになり,外力のありようは
振り子自体の運動によって決まるのではなく,
E :=
外力は時間に依存した関数として用意される.
n
∑
∂L
i=1
∂ q̇i
q̇i − L
(87)
そのような系は,ラグランジアンも時間に陽に
となる.この E をエネルギー保存量という.
依存する.
自律系の場合,力学系は時間並進対称性
問 24. (80) のラグランジアン L1 に伴うエネ
(time-translation symmetry) を持つ.これは, ルギー保存量を書け.
初期条件 q(0) = q 0 を与えた系が時刻 t に
問 25. (69) のラグランジアン L に伴うエネ
q(t) = q 1 まで動くならば,初期条件を課す ルギー保存量を書け.
時刻をずらして時刻 ε に条件 q(ε) = q 0 を与え
問 26. (75) では f は q の関数だと書いてい
i
れば時刻 ε + t に q(ε + t) = q 1 に達する,とい たので,f = q̇ と選ぶことは本当はネーター
i
i
う意味である.
の定理の適用外である.また,(76) では W は
時間並進対称に伴う保存量を見つけること q の関数だと書いていたので,W = L(q, q̇) と
ができる.無限小時間 ε だけ時間をずらすと力 選ぶこともネーターの定理の適用外である.に
学変数は
も関わらず,(87) の E は保存量になっている.
qi (t) 7→ qi (t + ε) = qi (t) + εq̇i (82) オイラー・ラグランジュ方程式 (59) と L の時
∂L
q̇i (t) 7→ q̇i (t + ε) = q̇i (t) + εq̈i (83) 間微分の書き換え (85) と自律系の条件 ∂t = 0
から,エネルギー保存則
の分だけ変換を受ける.これは (75) で fi = q̇i
dE
dt
= 0 を導け.
と選ぶことに相当する.この変換の下でラグラ
ンジアンは
対称性・保存量があると何かい
L(q, q̇) 7→ L(q + εq̇, q̇ + εq̈)
( ∂L
∂L )
· q̇ +
· q̈
= L(q, q̇) + ε
∂q
∂ q̇
(84)
いことがあるのか?
1. 運動方程式を解かなくても(書かなくて
の よ う に 変 わ る .も し も ラ グ ラ ン ジ ア ン
も)対称性からただちに保存量の存在を見抜
L(q(t), q̇(t), t) が t に陽に依存していたら,
くことができる.2. 保存量を使って力学変数
dL
∂L
∂L
∂L
=
· q̇ +
· q̈ +
(85) の個数を減らすことができる.うまくすると,
dt
∂q
∂ q̇
∂t
となるはずだが,いま自律系なので ∂L = 0 で 保存量を使って運動方程式を完全に解くことも
∂t
できる(そういう系は可積分系と呼ばれる).
ある.すると,
L(q, q̇) 7→ L(q + εq̇, q̇ + εq̈)
dL
= L(q, q̇) + ε
dt
3. 運動方程式を解かなくても,保存量を使っ
て系の運動の様子を定性的に分析することが
(86) できる.
7