雇用保険法等の 一部改正について ②介護関係

2016年6月15日
Japan law update
EY弁護士法人
雇用保険法等の
一部改正について
②介護関係
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サマリー
2016年3月29日、雇用保険法等の一部
を改正する法律が成立しました。本改正
は、雇用保険法のみならず複数の法律
の改正を行うものです。本稿では、育児・
介護休業法改正による介護に関する諸
制度の改正を取り上げていますが、
施行
日
(2017年1月1日)
までに、
就業規則等
社内規程の改訂が必要となりますので、
ご留意ください。
I. はじめに
2016年3月29日、雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました(以下、本
改正)。本改正は、雇用保険法のみならず、育児休業、介護休業等育児又は家族介
護を行う労働者の福祉に関する法律
(以下、
育児・介護休業法)
などの複数の法律の
改正を行うものです。本稿は、
前回の育児関係に引き続き、
本改正のうち育児・介護
休業法改正による介護に関する諸制度の改正を取り上げます。介護に関する諸制
度の今回の改正は非常に大きなものですので、
一層の留意が必要です。
なお、本稿のうち下線を付した部分は、脱稿時に未だ成立していない、本改正に
関わる厚生労働省令案・指針事項案に基づく記載ですので、
ご留意ください。
II. 育児・介護休業法の改正による育児関連諸制度の
改正内容 <2017年1月1日施行>
本稿では、
本改正による改正後の条文番号を記載しています。
1. 対象となる「家族」の範囲の拡大
本改正前は、介護休業、介護休暇、時間外労働の制限などの介護に関する制度の
対象となる
「対象家族」
は、
以下の者とされていました。
① 配偶者
(事実婚を含む。)
3. 介護休業の改正②(取得期間・取得回数)
② 父母
本改正前は、介護休業の取得には、2つの制限がかかっていま
した。
③ 子
④ 配偶者の父母
⑤ 祖父母
(同居かつ扶養が必要)
⑥ 兄弟姉妹
(同居かつ扶養が必要)
⑦ 孫
(同居かつ扶養が必要)
本改正により、
前記⑤から⑦までの者について、
同居・扶養要件
が削除されます
(育児・介護休業法施行規則)
。つまり、
本改正の
施行後は、祖父母・兄弟姉妹・孫について、同居や扶養の有無を
問わず、
介護休業をはじめとする介護関連の諸制度の利用が可
能となります。なお、
前記の①から④までの者については、
本改
正前から、
同居や扶養の有無は問題とならず介護休業をはじめ
とする介護関連の諸制度の利用が可能です。
2. 介護休業の改正①(有期雇用労働者の範囲)
本改正前は、
有期雇用労働者については、
下記の2つの要件を
満たす場合に限り、
介護休業の申出ができることとされていま
した。
① 継続雇用期間が1年以上であること
② 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を
超えて引き続き雇用されることが見込まれること
(ただ
し、93日経過日から1年を経過する日までの間に、その労
働契約の期間が満了し、
かつ、
当該労働契約の更新がない
ことが明らかである場合を除く)
一つ目は、一度ある対象家族について介護休業を取得した場
合、同じ対象家族が前回の介護休業開始から引き続き要介護
状態にあるときには、
原則として新たな介護休業は取得できな
いという制限です
(同じ対象家族についても異なる要介護状態
であれば新たな介護休業の取得は可能です。)
。
二つ目は、
対象家族ごとに、
介護休業の日数のみならず、
これと
時短措置などの諸措置を受ける日数の合計での上限が93日と
されているという制限です。
本改正により、
これらの制限は大幅に変更されました。
まず、第1の制限については、要介護状態の継続・別を問わず、
対象家族ごとに3回まで介護休業を取得できることとされました
(育児・介護休業法11条2項1号)
。
対象家族ごとに、
時短措置など
そして、
第2の制限については、
介護関連の配慮措置を受ける日数とは関係なく、介護休業の
みでの日数の上限を93日としました(育児・介護休業法11条
2項2号)。
4. 介護休暇の改正
本改正前は、介護休暇は、1日単位で取得するものとされてい
ましたが、
本改正により、
使用者に、
1日未満の単位(半日単位)
での付与を義務付けることとなりました(育児・介護休業法
16条の5第2項、同法施行規則)。ただし、一定の短時間労働者
(1日の所定労働時間が4時間以下の労働者)は、
この改正の
本改正により、②の要件が改正され、以下のようになりました
対象からは除外されます。
(育児・介護休業法11条)
。①は変わりありません。
この「半日単位」
とは、1日の所定労働時間数の2分の1とされ
②´介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から
ています。
また、
日によって1日の所定労働時間数が異なる場合
6カ月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更
には、
1年間における1日の平均所定労働時間数の2分の1とな
新される場合にあっては、更新後のもの)
が満了すること
ります。また、半日単位の休暇は、始業時刻又は終業時刻と連
が明らかでないこと
続することを要するものとされています。
(雇用均等分科会)
での配布資料
(資
第172回労働政策審議会
また、
「半日」
については、
労使協定で定めることにより、
所定労
料1)
として公表されている指針事項
(案)
においてこの②´の
働時間の2分の1以外の時間数とすることも可能とされます。
解釈について説明がなされており、以下がそのポイントとなり
ます
(指針事項案1(2))
。
以下の労働者は、労使協定に定めることにより、介護休暇の取
得対象から除くことが可能です
(本改正前から同様)
。
① 介護休業申出の時点で判明している事情に基づく判断で
あること
① 勤続 6カ月に満たない労働者(育児・介護休業法 16 条の
6第2項において準用する同法6条1項1号)
② 93日経過日から6カ月が経過する日までに不更新が生じ
ることが契約
(口頭合意を含む)
上確実である場合以外は、 ② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(育児・介護休
「満了することが明らかでない」場合になること
業法第16条の6第2項において準用する6条1項2号、同
法施行規則30条の6、
同7条2号、
平成23年3月18日厚生
有期雇用労働者からの介護休業の取得申出については、上記
労働省告示58号)
に十分留意して取り扱うことが大切です。
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本改正により、1日未満の単位での介護休暇の取得に限り、労
使協定で対象から除外できる労働者が追加して定められました
(育児・介護休業法16条の6第2項において準用する同法6条
1項2号)。
③ 業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、1日未満
の単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業
務に従事する労働者
(雇用均等分科会)
での配布資料
(資
第172回労働政策審議会
料1)
として公表されている指針事項
(案)
においては、
このよう
な業務の例として、以下のような業務が挙げられています
(指
針事項案3)
。
① 国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務
員等の業務等であって、勤務時間の途中まで又は途中か
ら介護休暇を取得させることが困難な業務
半日単
② 長時間の移動を要する遠隔地で行う業務であって、
位での介護休暇を取得した後の勤務時間又は取得するま
での勤務時間では処理することが困難な業務
③ 流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、半日単
位で介護休暇を取得する者を勤務体制に組み込むことに
よって業務を遂行することが困難な業務
6. 介護のための所定労働時間の短縮等の措置
本改正前も、使用者の措置義務は存在しましたが、前記のとお
り、
対象家族ごとに、
介護休業日と合わせて93日間を上限とす
るものでした。
本改正により、
使用者の措置義務は、
介護休業の日数とは関係
所
なく、
労働者による申出の日から起算して3年間以上の期間、
定労働時間の短縮その他の措置を講ずる義務となりました
(育
児・介護休業法23条3項、
4項)。この「その他の措置」の内容に
ついては、
フレックスタイム制、
始業時刻又は終業時刻の繰り上
げ又は繰り下げ制度、労働者が負担する費用の助成などが想
定されています。また、
この3年間以上の期間において、
少なく
とも2回以上の申出を可能とする必要があります。
この措置義務の対象からは、労使協定により、以下の労働者
を除外することが可能です(育児・介護休業法 23 条 3 項 1 号、
2号)。
① 勤続1年に満たない労働者
② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
III. おわりに
本稿で解説した介護関連の改正は、前回解説した育児関連
ただし、
これら以外であっても該当する業務はあり得、また、
の改正と合わせ、
就業規則に定めを要する事項ですので、
来年
これらであれば直ちに困難と認められるわけでもないとされて
(2017年)1月1日までに所要の検討の上必要な社内規程を
いるため、労使協定の締結に当たっては慎重な検討が必要で
改訂する必要があります。各社におかれましては、本改正の内
しょう。
容に留意しながら、
改訂作業を進めていく必要があります。
5. 介護のための所定外労働免除制度の創設
育児に関しては、育児休業、子の看護休暇のほか、①所定外労
働の制限、
②時間外労働の制限、
③深夜業の制限、
④短時間勤
務等の措置、
が整備されています。育児については、①∼④に
ついての改正はありません。
これに対し、介護に関しては、本改正前においては育児におけ
る①に対応する所定外労働の制限制度が定められていません
でしたが、本改正により、介護のための所定外労働の制限制度
。
が導入されました
(育児・介護休業法16条の9)
制度の内容は、育児のための所定外労働の制限制度(育児・介
とほぼ変わりありません(育児のための所
護休業法16条の8)
定外労働の制限制度の条文をほぼそのまま準用する形で立法
されています。)
。
介護のための所定外労働の制限制度からは、育児のための同
制度と同じく、
労使協定により一定の労働者を適用対象から除
外することができますが、あくまでも労使協定が必要とされて
いる点(現在育児に関して労使協定が存在しても、それではカ
バーされない点)
には留意すべきです。
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