腎疾患登録・病理診断標準化委員会企画 CP2

腎疾患登録・病理診断標準化委員会企画
6月17日 09:00〜11:00
Room 10 (パシフィコ横浜会議センター 5階 501)
司会
佐藤 博 司会 (東北大学臨床薬学分野)
長田 道夫 司会 (筑波大学腎・血管病理学)
CP2-4 LMX1B関連腎症:実態調査による新たな疾患概念の確立
演者
張田 豊 (東京大学小児科)
爪膝蓋骨症候群(NPS)では爪,肘関節,膝蓋骨,腸骨などの異常とともに,特徴的な電子顕
微鏡所見(糸球体基底膜へのコラーゲン沈着)を呈する腎症を発症する.LMX1B遺伝子異常がN
PSの原因であるが,近年特定のLMX1B変異(R246Q等)がNPSと同様の腎症のみを呈するnailpatella-like renal disease(NPLRD)やFSGSの原因となりうることが明らかになった.我々は
過去10年間におけるLMX1B関連腎症の可能性がある症例についてJ-RBRデータの調査および,腎
臓学会評議員,小児腎臓病学会代議員,腎病理協会会員を対象としたアンケート調査を実施した
.その結果腎症を有するNPS17例,R246Q変異を有する腎症症例7例,NPLRD6例の報告が有っ
た.NPSの17例中4例は高度腎機能低下または末期腎不全であった.腎外症状を有しないR246Q
変異症例においても加齢とともに腎機能低下症例が存在した.病理学的にはNPSにおいて特徴的
基底膜変化が確認された症例は約半数にとどまっており,逆に特徴的基底膜変化が認められたNP
LRD症例の中にLMX1B遺伝子変異は認めず,別の遺伝子変異の存在が明らかになった症例も存在
した.すなわち糸球体基底膜のコラーゲン沈着所見はNPS腎症に特異的ではなく,二次的な変化
であることを示している.これらの結果をふまえ,これらの疾患群を古典的/症候的な疾患名で
はなく,メカニズムに基づいた疾患概念でとらえ直す必要があると考えられた.調査結果を元に
NPSおよびLMX1B関連腎症の診断基準を作製した.
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