一般演題口演 幹細胞・再生 O-132 TetOP-H2B

一般演題口演 幹細胞・再生
6月18日 15:40〜16:40
Room 4 (パシフィコ横浜会議センター 4階 411+412)
司会
喜多村 真治 司会 (岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科)
O-132 TetOP-H2B-GFPマウスを用いた腎尿細管Labelretaining細胞同定の試み
演者
高橋 駿介 (群馬大学生体統御内科学)
前嶋 明人 (群馬大学生体統御内科学)
中里見 征央 (群馬大学生体統御内科学)
坂入 徹 (群馬大学生体統御内科学)
池内 秀和 (群馬大学生体統御内科学)
金子 和光 (群馬大学生体統御内科学)
廣村 桂樹 (群馬大学生体統御内科学)
野島 美久 (群馬大学生体統御内科学)
【目的】以前我々はBrdU を用いて分裂速度が非常に遅いLabel-retaining
cell(LRC)が尿細管に存在し,再生過程で中心的な役割を果たすことを報告した(JASN
2003).今回,Doxycycline(DOX)誘導Histone 2B-GFPマウスを用いて,GFP標識LRCの同
定を試みた.【方法】本マウスは,DOX処理により増殖期の細胞がGFP標識される.そこで,D
OXによるOn/Off(Pulse/Chase)を行いLRCをGFP陽性細胞として検出し,その局在を調べた
.【結果】DOX投与より腎臓内にGFP陽性細胞が観察され,そのほとんどはAQP1陽性であった
.DOX Pulse期間の延長に応じて,腎臓内のGFP陽性細胞数は増加した.DOX long
pulse後のGFP陽性細胞はChase期間の延長に応じて徐々に減少したが,Chase
10w後も残存した.DOX short pulse直後Single cellの状態であったGFP陽性細胞は,Chase期
間の延長に応じてDuplicateやTriplicateで存在していた.【結論】DOX誘導H2B-GFPマウスを
用いて腎内LRCをGFP標識することが可能であった.このシステムはLRCの増殖・分化様式を解
析する上で有用と思われる.
O-133 ARPKD肝病変の疾患モデル作製に向けたヒトiPS細胞から胆管上皮
細胞への分化誘導法の開発
演者
松井 敏 (京都大学iPS細胞研究所)
笠原 朋子 (京都大学iPS細胞研究所)
安田 勝太郎 (京都大学iPS細胞研究所)
吉利 エレーナ幸江 (京都大学iPS細胞研究所)
小高 真希 (京都大学iPS細胞研究所)
近本 裕子 (東京女子医科大学)
菅原 典子 (東京女子医科大学)
沖田 圭介 (京都大学iPS細胞研究所)
浅香 勲 (京都大学iPS細胞研究所)
才津 浩智 (横浜市立大学)
服部 元史 (東京女子医科大学)
長船 健二 (京都大学iPS細胞研究所)
常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)肝病変の初期像は胎生20週前後の肝内胆管のDuctal
plate malformation(DPM)である(Awasthi A,2004).胎児サンプルを用いた研究は倫理的
,技術的に難しく,胆管上皮細胞がDPMを起こすメカニズムは不明である.我々は,その解明の
ため1)ヒトiPS細胞から胆管上皮細胞への分化誘導法の開発,2)誘導した胆管上皮細胞の単離
法の開発,3)肝繊維症型,肝嚢胞型の症例からのARPKD特異的iPS細胞の樹立を行った.まず,
ヒトiPS細胞から肝芽細胞を高効率に誘導した.肝芽細胞から胆管上皮細胞への分化誘導の報告
は極めて少ない.そこで発生学的知見を基に独自の分化誘導法を開発し,AQP1,CK19などの胆
管系譜遺伝子を発現する細胞の誘導に成功した.次に本誘導系において,AQP1が胎生20週前後
の胆管上皮前駆細胞の単離に有用な遺伝子と考え,遺伝子編集技術を用いてAQP1-GFP レポータ
ーヒトiPS細胞株を樹立した.GFP陽性細胞を単離したところ,胎生12-20週相当の遺伝子発現プ
ロファイルが得られた.さらにARPKD特異的iPS細胞を胆管上皮前駆細胞へ分化誘導することに
成功し,病態解析に向けて研究を進めている.
O-134 腎臓由来iPS細胞におけるEpigenetic MemoryのGenome-Wide
Methylation解析
演者
高瀬 敦 (東京大学腎臓内分泌内科先端腎臓・再生医学講座)
辻村 太郎 (東京大学腎臓内分泌内科先端腎臓・再生医学講座)
南学 正臣 (東京大学腎臓内分泌内科先端腎臓・再生医学講座)
菱川 慶一 (東京大学腎臓内分泌内科先端腎臓・再生医学講座)
腎臓再生に関してiPS細胞を利用した腎臓への分化誘導法もいくつか報告されているが未だ確立
していない.我々は2つの既存の腎系統特異的分化誘導法を検討して,線維芽由来と腎臓由来iPS
細胞の間,また各誘導法の間で分化度に相違を認めた.それはiPS細胞における分化誘導が必ず
しも生理的な発生過程と同じ経路を辿るものではない事を示している.iPS細胞には樹立前の細
胞記憶が残されており,iPS化した細胞にはそれぞれ個性を持っている事から誘導が一定しない
と考えられる.我々は各iPS細胞のEpigenetic Memoryを検討するため,腎臓由来と線維芽由来
のiPS化樹立前後の包括的DNAメチル化解析を行った.27,000のメチル化サイトについて解析し
た結果,特にHigh CpGプロモーター領域において腎臓分化誘導に関わると考えられる細胞記憶
遺伝子の中で高メチル化遺伝子56個,低メチル化遺伝子17個を同定した.更に候補遺伝子4個に
ついてreal time-PCRで発現状況をみた.由来別iPS細胞間で優位な発現パターンが違う遺伝子を
見出した.本研究にて腎臓由来iPS化で残された細胞記憶遺伝子の中で,腎系統特異的分化誘導
に深く関わる遺伝子を見出した.今後は更なる細胞記憶遺伝子の確認と,その遺伝子をTargetと
した新規誘導法を検討する.
O-135 マウス虚血再灌流(IR)急性腎不全モデルに対する再生治療~ヒト
末梢血単核球由来培養細胞の効果
演者
大竹 剛靖 (湘南鎌倉総合病院腎臓病総合医療センター)
野入 英世 (東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科)
小林 修三 (湘南鎌倉総合病院腎臓病総合医療センター)
【目的】マウスIR急性腎障害モデルに対するヒト末梢血単核球由来培養細胞投与の効果を検討し
た.
【方法】オスNOD/SCIDマウス両腎動脈を30分クランプしIRモデルを作成.健常人末梢血単核球
を5種の増殖因子を含む培養
条件で1週間培養した後に尾静脈より106
個静注投与(培養
細胞投与群).コントロール群,未
培養ヒト末梢血単核球106
個投与群(未培養細胞投与群)との3群で経時的に腎機能,腎組織障害,蛍光抗体法(CD31抗体
)で評価した傍尿細管毛細血管脱落(PTC
loss)ならびにIR作成2週後の間質線維化を比較した.
【結果】培養細胞投与群(N=13)は,コントロール群(N=13)と比し細胞投与48時間後にBU
N, Crとも有意に低下を示し(BUN;99.5±39.4 vs. 36.1±4.3 mg/dl, p<0.05, Cr;0.89±0.19
vs. 0.25±0.06 mg/dl, p<0.05),腎組織障害スコアも著明な改善を示した.急性期PTC lossも
有意に軽減し(p<0.01)IR作成2週後の間質線維化(定量評価)も同様な改善を認めた(p<0.0
1).一方でこれら改善効果は未培養細胞投与群では認められなかった.
【結論】ヒト末梢血単核球由来培養細胞投与によりIRモデル急性腎障害は明瞭な改善を示した.
PTC lossの軽減が作用機序と考えられる.
O-136 脱分化脂肪細胞(DFAT)のTSG-6を介した腎症改善効果
演者
丸山 高史 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
福田 昇 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
阿部 雅紀 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
上野 高浩 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
松本 太郎 (日本大学機能形態学系細胞再生・移植学分野)
遠藤 守人 (八戸学院大学人間健康学部)
岡田 一義 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
松本 紘一 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
相馬 正義 (日本大学内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野)
河内 裕 (新潟大学医歯学総合研究科附属腎研究施設分子病態学分野)
【目的】本学で開発され間葉系幹細胞と同等の多分化能を持つDFATの腎症改善効果を進行性腎
障害ratで検討した.【方法】MoAb1-22-3誘発腎炎とAdriamycin腎症に腎動脈又は尾静脈から
DFATを細胞移植し1ヶ月後に評価した.【結果】他家移植の場合MoAb1-22-3誘発腎炎は改善し
た.特にDFATが腎に到達しない尾静脈投与群で改善していた.その際血清中TSG-6濃度は上昇
し腎内TSG-6,TNF-αの mRNA発現も亢進,IL-6とIL-12βは抑制されていた.脾臓内のT
regの割合は有意な変化を観なかった.DFATのTSG-6の発現を siRNAでknock
downした場合,腎症改善効果が消失した.自家移植でも腎症改善効果は同等だった.in vitroで
は培養DFATにTNF-αを添付すると線維芽細胞より培養上清中TSG-6濃度は上昇した.又DFATと
SHR-SPのメサンギウム細胞をトランスウエルで培養した場合,単独培養よりもTSG-6の細胞内
発現や培養上清中濃度は上昇していた.Adriamycin腎症では移植による改善は得られなかった.
【結論】DFAT細胞移植によるTSG-6を介した免疫調整作用が腎症改善の機序の一つに考えられ
た.
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