一般演題口演 高血圧(基礎)・腎血行動態2 O

一般演題口演 高血圧(基礎)・腎血行動態2
6月19日 09:00〜10:12
Room 5 (パシフィコ横浜会議センター 4階 413)
司会
市原 淳弘 司会 (東京女子医科大学内科学(第二)講座)
O-274 鉄が大動脈中膜細胞石灰化の促進に関与する
演者
川田 早百合 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
長澤 康行 (兵庫医科大学病理学部門機能病理学)
川邉 睦記 (兵庫医科大学病理学部門機能病理学)
守上 祐樹 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
木田 有利 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
名波 正義 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
木村 知子 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
山本 清子 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
蓮池 由起子 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
倉賀野 隆裕 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
中正 恵二 (兵庫医科大学病理学部門機能病理学)
中西 健 (兵庫医科大学内科学腎・透析科)
【目的】CKD患者において,血管石灰化は生命予後を悪化させる重要な合併症である.CKD患者
に多いとされる血管中膜石灰化のメカニズムはまだ解明されていない点が多い.そこで鉄代謝と
血管中膜石灰化に関連について研究することにした.
【方法】ヒトの大動脈平滑筋細胞を培養し,鉄,TNF-αを負荷した(計約3週間培養).アリザ
リン染色を施行し,石灰化の程度を確認した.またday0とday3においてマイクロアレイを施行
し,遺伝子発現量を比較した.この結果において鉄・TNF-αにより相乗的増加が認められたサイ
トカインについて,リアルタイムPCRで遺伝子発現量を確認した,タンパクレベルでも検討した
【結果】アリザリン染色において,鉄,TNF-αの負荷で強く染色され,その両方の負荷でさらに
染色が増強された.マイクロアレイの結果でも鉄とTNF-αの負荷で増加しているものが認められ
た.リアルタイムPCRおよびELISAによる検討でもシナジスティックな増加が認められた.
【結論】鉄とTNF-αの刺激で石灰化が増強された.鉄が血管中膜石灰化を促進しているメカニズ
ムに,早期よりのこの遺伝子変化が関与している可能性が示唆された.
O-275 新規Reduced Uterine Perfusion
Pressure(RUPP)マウスモデルの開発
演者
伏間 智史 (東北大学薬学研究科臨床薬学分野)
堰本 晃代 (東北大学薬学研究科臨床薬学分野)
大江 佑治 (東北大学腎高血圧内分泌学分野)
佐藤 恵美子 (東北大学薬学研究科臨床薬学分野)
伊藤 貞嘉 (東北大学腎高血圧内分泌学分野)
佐藤 博 (東北大学薬学研究科臨床薬学分野)
高橋 信行 (東北大学薬学研究科臨床薬学分野)
【目的】Preeclampsia(PE)の動物モデルとしてラットで用いられているReduced Uterine
Perfusion Pressure(RUPP)モデルの術式を改変し,マウスでの新規PEモデルを確立する.【
方法】ICRマウスを交配し,膣栓確認日を妊娠0.5日として,妊娠14.5日にRUPP手術を行った.
マウスを,1. sham群, 2. 卵巣側近の子宮動静脈(A,A’)結紮群, 3.
膣側の子宮動静脈(B,B’)結紮群, 4. その両方(A,A’+B,B’)結紮群の4群に分けた.超音波計測
法を用い,結紮前後の子宮動脈血流を測定した.tail-cuffによる血圧測定,妊娠18.5日に随時
尿にてACRを測定後,胎仔の数・生死・胎仔体重を測定した.【結果】結紮による子宮動脈血流
の低下はA,A’群に比べB,B’群で大きかった.RUPP 3群は高血圧・流産・早産を引き起こし,妊娠
18.5日での生存胎仔重量は有意に低値を示した.ACRはB,B’結紮群で有意に高値を示し,腎病理
はメサンギウム基質の増加,endotheliosisを示した.【結論】本研究で子宮血流のみを低下さ
せ,高血圧・蛋白尿・流産・胎児発育不全を示す新規RUPP PEマウスモデルを開発することに成
功した.このモデルは,遺伝子改変動物と組み合わせが可能であり,重症PEなどの動物モデル確
立につながり,PE合併症の病態解明や治療薬開発が期待される.
O-276 抗加齢因子Klotho発現低下に伴う食塩感受性高血圧発症機序の解
明
演者
河原崎 和歌子 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
丸茂 丈史 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
西本 光宏 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
鮎澤 信宏 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
広浜 大五郎 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
上田 浩平 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
渡邉 篤史 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
藤田 敏郎 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
【背景】高血圧は加齢に伴い増加し,血圧の食塩感受性も亢進する.また,加齢と共に血清中の
抗加齢因子Klotho値は低下する.既報ではKlothoヘテロノックアウトマウス(Klotho+/-)は
食塩感受性高血圧を呈するが,その機序は未解明である.【方法】C57BL6マウス(C57)とそ
れをbackgroundとする16週齢のKlotho+/-雄に通常食塩食(NS群,0.5%NaCl含有)または高
食塩食(HS群,8%NaCl含有)を2週間与え,負荷前後の血圧を測定し,麻酔下にて腎臓を採取
し,各種遺伝子発現及び蛋白発現について解析を行った.【結果】C57NS群及びHS群,Klotho
+/-NS群では血圧が不変であったが,Klotho+/-HS群では他の群に対し有意に血圧が上昇し
,腎臓では上皮性Naチャネル(ENaC)の蛋白発現が上昇していた.Klotho+/-の腎臓ではKlo
tho遺伝子の発現がC57に比し半減していたが,低分子量GTP結合蛋白質RhoAの蛋白発現がHS群
で顕著に上昇していた.RhoAの血圧への関与を調べるためにRhoキナーゼ阻害薬ファスジルをKl
otho+/-HS群に投与したところ,有意に血圧が抑制され,ENaCの発現も抑制された.【結論
】Klotho+/-の食塩感受性高血圧にはRhoA-ENaC系の亢進が関与しており,加齢に伴う高血圧
の発症機序解明や新治療開発に有用な標的となると考えられる.
O-277 PendrinとNCC発現調節におけるアンジオテンシンIIとアルドステ
ロンの異なる役割
演者
広浜 大五郎 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
柴田 茂 (帝京大学医学部内科学講座)
上田 浩平 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
鮎澤 信宏 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
西本 光宏 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
河原崎 和歌子 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
渡邉 篤史 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
丸茂 丈史 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
藤田 敏郎 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座)
【背景】遠位曲尿細管のNa+-Cl共輸送体(NCC)と腎集合管間在細胞のCl-/HCO3輸送体Pendrinは,体液NaClバランスと血圧維持に寄与する.両輸送体の活性調節にはレニン・
アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)が関与することが知られているが,その発現調
節は明らかでない.今回,両輸送体の発現調節におけるRAA系の関与を比較検討した.【方法】
マウスにvehicle,アンジオテンシンII(AngII)投与を行い,副腎摘を行う群(ADx-AngII),副
腎摘に加えてアルドステロン(Aldo)補充を行う群(ADx-AngII-Aldo)も作成した.さらに,A
ldo単独投与群も作成し,膜蛋白PendrinとNCC発現を検討した.【結果】AngII投与で血中Aldo
上昇と共に,膜Pendrin, 膜NCC発現増加を認めた.副腎摘により両者の発現上昇は抑制され,Al
do補充により回復したことから,Aldoの重要性が示唆された.しかし,Aldo単独投与では血中A
ngII低下と低カリウム血症を生じ,NCCは上昇したが,Pendrinの上昇は認められなかった.【
結論】Pendrin,NCCはRAA系により異なる発現制御を受けており,AngIIによる膜Pendrin発現
上昇にはAngII,Aldoの両者が必要であることが示唆された.
O-278 遠位ネフロン特異的HSD11B2遺伝子欠損マウスの高血圧発症機序
演者
上田 浩平 (東京大学先端研臨床エピジェネティクス講座)
11βHSD2は腎
尿細管・腸・神経系
に発現し,コルチゾルを分解・不活化す
る酵素である.HSD11B2
遺伝子の変異は,コルチゾル刺激による鉱質コルチコイド受容体MRの過剰な活性化を介して塩
分感受性高血圧・低カリウム血症(AME症候群)を惹起すると考えられている.ところが近年報
告されたHSD11B2-/(全身KO)マウス・ラットは減塩に抵抗性の高血圧を呈し,利尿薬を用いた解析によってもそ
の腎機序は同定されなかった.
そこで我々は遠位ネフロン特異的ノックアウト(KO)マウスを作出したところ,対照群と比較
して血中カリウム濃度・蓄尿中アルドステロン量の低下を認めた.KOマウスは対照群と比較し
てテレメトリー測定下平均血圧の有意な上昇を認め,この有意差は通常食から減塩食への置換に
伴い経時的に消失した.更にKOマウスは腎臓
のNa+-Cl共輸送体(NCC)
リン酸化・細胞膜分画発現量の増加を
認めたが,上皮性Na+
チャネル(ENaCα)の細胞膜分画発現量は対照群と同等であった.そしてそのNCC発現量増加は
MR拮抗薬エプレレノン混餌又はGR拮抗薬RU486皮下投与により抑制されなかった.
以上の結果から,HSD11B2
遺伝子の腎作用欠失が定説とは異なる機序で塩分感受性高血圧の原因となり,我々が作出した腎
特異的KOマウスはその未知なる腎機序の解明に有用なモデル動物であることが強く示唆された
.
O-279 補体C3は腎尿細管上皮間葉化による組織RA系の活性化からSHRの
高血圧発症因子である
演者
根岸 英理子 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
福田 昇 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
上野 高浩 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
阿部 雅紀 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
岡田 一義 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
相馬 正義 (日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学)
【目的】今回,SHRよりZFN法によりC3ノックアウト(KO)SHRを系統樹立し,血圧,表現形
,血管腎臓の組織,遺伝子発現を検討した.【方法】C3遺伝子に対するZFN
mRNAを受精卵にインジェクションし,C3 KO SHRを確立した.血圧をTail cuff法でモニタリン
グした.生直後,8,20週齢の大動脈,心臓,腎臓を取り出し組織学的評価,SMemb,レニン,
KLF-5,E-カドヘリン発現を評価した.In vitroでWKY,SHR及びC3 KO
SHR由来メサンジウム細胞(MC)の血清による増殖能を評価した.【結果】4から16週齢のC3
KO SHRのSBPは,SHRより約20 mmHg低かった.生直後のSMembはSHRで亢進し,C3 KO
SHRで抑制されていた.SHRの腎髄質でレニン,KLF-5発現が亢進し,C3 KO SHRでは低下して
いた.またSHRの腎髄質ではE-カドヘリン発現が低下し,EMTが起こっていたが,C3 KO
SHRでは抑制されていた.SHR由来メサンジウム細胞の細胞増殖はWKYに比し亢進し,C3 KO S
HRのMCでは増殖が抑制されていた.【結論】補体C3は間葉系組織を合成型形質に変換し,また
EMTにより腎内RA系を亢進し,SHRの高血圧の発症,病態の一義的因子であると考えられた.
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