[41]~白血球について その3

2013 年 2 月
けんさの豆知識
《41》
~白血球について
血液検査についての豆知識です。前回(2010年9月
今回はリンパ球について説明します。
臨床検査部
発行
その③~
第45号)は顆粒球について説明しました。
・リンパ球は白血球中に 30~40%存在します。
(図1)
。またリンパ組織(胸腺・リンパ節・脾臓など)
にも多く存在します。
さらに、リンパ球は大きく以下の 3 種類の細胞に分けることが出来ます。
リンパ球
T 細胞
65~75%
B 細胞
5~15%
NK 細胞
5~15%
リンパ球(メイ・ギムザ染色)
注意:見た目ではリンパ球の種類の鑑別は出来ません。
T 細胞
リンパ球の幼若な細胞が、血流に乗って胸腺に到着して、そこで T リンパ球となります。
【役割】
・
感染した細胞を見つけて排除し、体を守ります。
・
T細胞は 2 種類あり、それぞれ司令塔と殺し屋の役割を担います。
①
・
ヘルパーT細胞(司令塔)
他の細胞から病原菌の情報を受け取り、他のリンパ球(キラーT 細胞含む)・好中球・マクロファージに指令を
与え、現場に急行させます。
・ B細胞(後述)に対して病原体の抗体を産生させる指示を出します。
②
・
キラーT細胞(殺し屋)
ヘルパーT細胞から指示があると現場に急行して、異物となる細胞(癌細胞・ウィルス感染細胞)に
パーフォリンという物質を放出し、標的細胞の細胞膜に穴を開けて破壊します。
・
殺し屋としての役目を終えたキラーT 細胞は、そのほとんどが死滅してしまいます。
しかし、一部はメモリーキラーT 細胞として残り、次に同じ敵が攻めてきたときに備えます。
つまり、再び同じ敵が攻めて来た時メモリーキラーT 細胞が、ただちに増えて攻撃します。
B 細胞
リンパ球の一番若い細胞が骨髄中で、ある程度まで成熟し、次に血流に乗って脾臓に到着して、
そこでBリンパ球となります。
【役割】
・
ヘルパーT細胞からの指令により、病原菌(抗原)に応じた抗体の産生をします。
・
一度抗体が産生されると、その情報はメモリーB細胞に記憶され、次に同じ病原菌(抗原)が進入すると、
速やかにそれに反応する抗体産生が開始されます。
NK 細胞
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、体内を常に独自でパトロールしながら、癌細胞やウイルス感染細胞などを発見
します。すると、ヘルパーT細胞からの攻撃指令がなくても独自に戦闘態勢に入り、標的細胞(癌細胞・ウィルス
感染細胞)を破壊する性質があります。 特に、抗腫瘍効果には抜群の威力を発揮します。
【リンパ球の増加・減少する疾患・状態】
増加
減少
・
伝染性単核症
・
後天性免疫不全症(AIDS)
・
サイトメガロウィルス感染症
・
悪性腫瘍
・
リンパ性白血病
・
全身性エリテマトーデス
・
リンパ腫
・
抗がん剤・免疫抑制剤
マメマメちしき
~~
T 細胞:
名前の由来
~~
T 細胞は胸腺で成熟します。この胸腺(thymus)の頭文字をとって T 細胞とな
りました。因みに thymus の語源は香辛料(ハーブ)の〝タイム〟です。日本で
は胸腺が食卓に上がることはあまりありませんが、フランス料理で豚の胸腺が出
されることがあります。その香りがタイム(thyme)に似ているので thymus と
なりました。
B 細胞: 鳥において、B 細胞がファブリキウス嚢(bursa of Fabricius)で成熟することが
わかったので、その頭文字をとって B 細胞となりました。人においてファブリキ
ウス嚢に相当する B 細胞成熟器官は、骨髄・小腸のパイエル板や虫垂などといわ
れていますが、正確にはわかっていません。