理論(4)交流回路に関する解説(pdfファイルが開きます)

電験3種 奮闘講座 理論④ 交流回路
監修:電験予備校 東京電気学院(不許複製)
【問題】
図の回路において、12[Ω]のコンデンサを
流れる電流が 15[A]であるとき、この回路
で消費される電力 P[kW]を求めよ。
【解答】電験3種 奮闘講座
理論④ 交流回路
図 1 のように、回路の全電流を𝐼 [̇ A]、各
枝に流れる電流を𝐼1̇ [A]、𝐼2̇ [A]とする。
回路で消費される有効電力𝑃[W]は抵抗
𝑅[Ω]で消費される電力であり、そこに流れ
る電流𝐼[A]を得れば、𝑃 = 𝐼 2 𝑅[W]より求める
ことができる。(コイルとコンデンサでは電
力は消費されない)
𝐼1 [A]は題意より与えられているので、
𝐼2 [A]を求めればキルヒホッフの電流則(回
路網中の任意の分岐点に流れ込む電流の和
𝐼2̇ [A]を求めるためには、並列回路に掛か
る電圧𝑉̇ [V]を求める必要がある。
並列回路では、電圧𝑽̇を基準ベクトルとす
る 。 電 流 𝐼1̇ は 容 量 性 リ ア ク タ ン ス ( 𝑍1̇ =
−𝑗5[Ω] ) に 流 れ る た め 、 進 み 電 流 ( 𝐼1̇ =
𝑗15[A])となる。よって、電圧𝑉̇ は、
𝑉̇ = 𝐼1̇ 𝑍̇1 = j15 × (−j5) = 75[V]
電流𝐼2̇ [A]は、
𝑉̇
75
𝐼2̇ = 𝑍 ̇ = 𝑗15 = −𝑗5[A](遅れ電流)
2
キルヒホッフの電流則より、回路の全電
流𝐼 [̇ A](図 2)は、
𝐼 ̇ = 𝐼1̇ + 𝐼2̇ = 𝑗15 − 𝑗5 = j10[A]
(𝐼 = 10[A])
※1 直流と異なり交流計算では、位相を考
慮する必要があるので、スカラー和 (𝑰 =
𝑰𝟏 + 𝑰𝟐 = 𝟏𝟓 + 𝟓 = 𝟐𝟎[𝐀])とはならない。
は,流れ出る電流の和に等しい)から𝐼[A]を
求めることができる。
◇
並列部分の各合成インピーダンス𝑍̇1 [Ω]、
𝑍̇2 [Ω]は、次式で示すことができる。
𝑍1̇ = 𝑗𝑋𝐿1 − 𝑗𝑋𝐶1 = 𝑗7 − 𝑗12 = −𝑗5[Ω]
(容量性)
𝑍2̇ = 𝑗𝑋𝐿2 − 𝑗𝑋𝐶2 = 𝑗37 − 𝑗22 = 𝑗15[Ω]
(誘導性)
※2
したがって、回路で消費される電力𝑃[W]
は次式で示すことができる。
∴𝑃 = 𝐼 2 𝑅 = 102 × 10 = 1000[W]
= 1[kW](答)
※2 ベクトル図はフェザーともいう。
<ポイント>
・ 交流回路では、基準ベクトルを明確にし
たうえでベクトル図を正確に描くこと
がポイントとなる。
・ 交流では電圧・電流が時々刻々と変化す
る。位相や大きさは変わるが角速度
𝜔[rad/s]は一定のため静止ベクトルとし
て扱う。
・ 直列回路:電流
・ 並列回路:電圧
③ 基準ベクトルをもとに関係するベクト
ルを描く。
④ 回路素子による位相関係
電圧が基準ベクトルの場合、電流の位
相関係は回路素子ごとに次のようにな
る。
・ 抵抗:同相
・ コイル:π/2[rad]遅れ
・ 直流回路では、キルヒホッフの法則やテ
ブナンの定理などいろいろな回路の定
理を適用したが、交流回路においても、
直流回路の諸定理が同じように適用で
きる。
<ベクトル図の基本>
ベクトル図は、電圧と電流の位相関係を
明確に表現でき、物理的なイメージを捉え
ることができるため、交流回路を解く上で
・ コンデンサ: π/2[rad]進み
実際に交流回路で計算を行う場合には、
回転ベクトルのある状態を静止ベクトルと
して扱う。ただし、ベクトル図を描く場合、
波形の最大値でなく、実効値でその大きさ
を表す。
非常に重要となる。
① キルヒホッフの法則(電圧則もしくは電
流則)より立式。
② 基準ベクトルの取り方
各枝、素子に共通の電圧または電流を
基準ベクトルとする方がベクトル図は
書きやすくなるため、一般的に次のよ
うに決める。
表 1:記号法と瞬時値の対応
記号法
(直交座標表示)
𝑉̇ = 75[V]
𝐼1̇ = 𝑗15[A]
𝐼2̇ = −𝑗5[A]
𝐼 ̇ = 𝑗10[A]
瞬時値
𝑣 = 75√2𝑠𝑖𝑛𝜔𝑡[V]
𝜋
𝑖1 = 15√2(𝑠𝑖𝑛𝜔𝑡 + 2 )[A]
𝜋
𝑖2 = 5√2(𝑠𝑖𝑛𝜔𝑡 − 2 )[A]
𝜋
𝑖 = 10√2(𝑠𝑖𝑛𝜔𝑡 + 2 )[A]