Page 1 I 実践 の 記録 教育実習に関する、実習生の自己評価と 実習校

II実
践
教 育 実 習 に 関 す る,実
の 記 録
習 生 の 自己 評 価 と
実 習 校 に お け る成 績 評 価 の 関 係 に つ い て
一
そ
の(1)一
古屋 野
1.は
本 稿 は,r教
じ
め
素
材
に
職 ・社 会 教 育 主 事 課程 年 報 第8号 』(昭 和61年3月)所
収 の,「 教 育実 習成 績評
価 表 の集 計 と分 析一 実 習校 にお け る明大 生 に対 す る評 価 の傾 向 と問 題 点 一 」 と関 連 す る も の
で,大 学 教育 の一 環 と して の 開 放制 教 師教 育 にお け る,教 育 実 習 の位 置 付 け の検 討 を め ざす も
ので あ る 。
今 回 は,昭 和62年 度 教 育 実 習 の事 後 指 導(昭 和62.6∼7月
の 筆 者 が担 当 した ク ラ ス)の 際 に
実 習終 了 者 に記 入 を求 め た,「 実 習 に関 す る 自己 評 価 」 と 実 習校 に お け る指 導 教 員 の 評 価 をつ
き合 わせ る作 業 か ら,実 習 生 の 自己評 価 の傾 向 と,実 習生 と実 習校 側 の意 識 の ズ レな ど を把 握
す るこ とに よ り,今 後 の教 職 専 門科 目や 教 科 専 門 科 目の指 導 お よび事 前 指 導 の充 実 ・改 善 の方
向 性 を見 い だ して ゆ くこ とを 目的 と した。
本 号 で は,紙 幅 の関 係 か ら,今 回 の調 査 ・検 討 の概 要 と,得 られ た結 果 の一 般 的 な傾 向,及
び デ ー タ のサ ンプ ル の一 部 分,を 呈 示 し,次 号 で,実 習 校 側 の 自分 に対 す る評 価 へ の学 生 側 の
感 想等 を ク ロス した詳 しい デ ー タ を示 す こ と とす る。
上 記 の 「自 己評 価 表 」 は,実 習 校 に記 入 を依 頼 す る 「明治 大 学 教 育 実 習 成 績 評 価 表 」 と同 じ
8っ の評 価 項 目にっ い て,5段
階 表 示 に よ る ス コ ア と,そ れ ぞ れ の項 目に設 け た 「反 省 す る こ
と ・心 が け た こ と」 とい う欄 へ の コ メ ン ト,を 記 入 す る形 に した が,.各 評 価 項 目につ い て は,
自己評 価 を行 う場 合 の手 が か り と して,「 評 価 の ポ イ ン ト」 とい う評 価 の際 の観 点 を説 明的 に
加 え てお い た。 これ は,実 習 校 側 に依 頼 す る評 価 表 に は(実 習 校 それ ぞれ の独 自 の評 価 視 点 が
反 映す る こ とを期 待 して)こ の よ うな"観 点"を っ け て は い な い もの の,実 習 生 の場 合 に は何
か評 価 の手 が か りが な い と記 入 が難 しい だ ろ う と判 断 した こ とに よ る。
な お,「 評 価 の ポ イ ン ト」 は,上 記 のr年 報8号 』 の成 績 評 価 表 の検 討 の際 浮 かび 上 が って
きた,そ れ ぞ れ の項 目で各 実 習 校 にお い て共 通 して い る評 価 視 点 を下 敷 き に した もの で あ る。
一39一
以 下,自
己 評 価 表 の 「評 価 の ポ イ ン ト」, 評 価 ス コ ア の一 般 的 傾 向,自
成 績 評 価 の 対 比 の実 例,を
示す。
2.「
・緬 事項・1
1)参
2)協
観態度
3)基
力態度
礎学力
評 価 事 項 」 お よ び 「評 価 の ポ イ ン ト」
〈評 価 の ポ イ ン ト〉
5)指 導技術
6)事
7)教
務処理
師 として
の資質
8)実
習録
〈 事 前 指 導 に お け る注 意 のポ イ ン ト〉
目標 の 設 定 ・記 録
板 書 や 発 問,生 徒 の 学 習 活 動 情 況 の把 握,な
事後の質問
す る こ と。 参 観 記 録 か ら教 師 の指 導案 を復 元 す る試 み
自分 の 授 業 へ の 応 用
な ど。
学校行事への協力
指導教師への協力
同僚実習生への協力
引 っ込 み 思 案 にな らず 積 極 的 な姿 勢 で 。 相 手 の立 場 に
どに 注 目
板書 文字(筆 順な ど)
日頃の読書量の反 映
日頃愛用 の辞 書や事典類 を移動先 にも。実習校 や地 元
の図書館 や書 店の資料整備情況 を早め に把握 してお く
こと。
た って の,自 分 に 期 待 され て い る役 割 の,機 敏 な判 断
の訓 練 。
教科 ・教材 に関す る知識 量
4)教 材準備
己評 価 と実 習 校 側 の
丹念 な下調べ ・資料作成
教師の助言の受容
生徒 の理解度への配慮
既 習 事 項 や読 解 に つ まつ く生 徒 が でそ うな表 現 ・熟 語
板 書 ・話 し方 ・声 量
指 導案 の 内容 は な るべ く頭 に入 れ てお き,で き る だ け
生徒 の反 応 の理 解
教 室全 体 に 目 を向 け る。板 書 内 容 は事 前 に 黒 板 で 練
机 間 指 導 ・機 器 の 活用
習。
採点 ・集 金等の処理
生徒 への事務連絡
その他 の雑 事
指 示 され た業 務 内容 の 充 分 な確 認 ・理 解 。 事 務 処 理 後
生徒 に対 す る愛情
生徒 か らの信頼
責任感 ・指 導力
服 装 ・姿 勢 ・挨 拶 ・言葉 づ か い,等 の 言 動 にか んす る
等 も徹 底 的 に チ ェ ッ ク。 図 表 や 資 料 等 の 活 用 を事 前 に
万 全準 備 。
の整理 ・報 告 の徹 底 。 生 徒 と親 し く交 流 す る機 会 と し
て も。
節 度 と一貫 性 は き ま じめ に 。 明 朗 な若 者 ら し さ は遠 慮
せずに。
内容 のある丁寧 な記述
決 め られた時間内の提 出
段 階へ の課 題 を見 出 す 意識 で 。 驚 きや感 動 や 困 惑 は率
教師 の助言 の吟味
直 に。
テー マ を も っ て観 察 した こ と を整理 ・考 察 して 。 次 の
*〈 事 前 指 導 にお け る注 意 のポ イ ン ト〉 は,昭 和62年4月
∼5月 の 筆 者 が 担 当 した 「
事 前指導 クラス」
で,実 習 成 績 評価 表 の 項 目 を紹 介 す る際 に,実 習生 と して 期 間 中 留 意 す べ き努 力 目標 の 目安 に な れ ば
と示 した もの で あ り,「 事 後指 導 」 に お ける 「自己 評 価 表 」 で は この部 分 が 自己 評価 ス コ ア や 「
反省
す る こ と ・心 が け た こ と」 の 記 入 欄 に な って い る。
3.評
今 回,筆
価 ス コアーの一 般 的傾 向
者 の担 当 した 「事 後 指 導 」 に 出席 して,「 自己 評 価 表 」 に記 入 した 実 習 終 了 者 は,
男 子学 生 が146名,女
子学 生 が62名,計208名
で,所 属 学 部 は 本学 の全学 部 にま た が って お り,
実 習校 も,地 方 出 身 校 もあれ ば,大 学 で 紹 介 した都 内公 立 中高 校 お よび 明 大付 属 中 高 校 もあ っ
て,バ
ラ エ テ ィ ー に富 ん で い る。
一40一
そ の彼 等 の,自 己評 価 にお け る各項 目の ス コア ー の分 布情 況 を示 す のが,表1で
数 と して の208名
表2は,実
は,今 年度 の本学 の教 育 実 習生 全 体 の ほぼ25%に
あ る。 標 本
あ た る。
習 校 側 の成 績 評 価 価 を,昭 和57年 度 か ら昭 和61年 度 まで の5年 間 の計4,269名
実 習生 全 員 に っ い て 集計 して 作 成 した も ので あ る。(こ の成 績 評 価 の集 計 に つ い て は,前
の
r年 報 第8号 』 の拙 稿 を参 照 され た い 。 な お 今 回 の208名
述の
を含 む昭 和62年 度 の全 実 習 生 にっ い
て の ス コ ァ ー の集 計 は ま だ で き て い な い。)
表1実
習 生 の 自己 評 価 に お け るス コア ー 分 布
評順 当
参観態 度
協力態度
基礎学力
教材準備
指導技 術
事務処理
教師資質
実習 録
表1,2と
表2実
習 校 側 の 成 績 評 価 の ス コ ア ー分 布
5
4
3
2
1
評価事司
5
4
3
2
32
52
15
(3)
(0)
(0)
(0)
(0)
参観態度
協力態度
基礎学 力
教材準備
指導技 術
事務処理
教 師資質
実習 録
59.1
27.0
13.6
0.3
64.1
29.8
5.7
0.4
35.9
51.3
12.2
0.6
47.0
41.4
10.9
0.7
18.5
61.3
19.3
0.8
29.4
48.1
16.4
0.6
53.6
37.8
7.8
0'7
44.0
43.1
12.4
0.5
66
32
2
10
40
40
(1)
10
30
46
23
1
17
56
25
2
40
54
6
48
40
12
(1)
(1)
27
48
20
5
も 単位 は%,()内
(0)
(0)
(0)
(0)
は実 数(そ
1
(0)
(1)
(1)
(3)
(2)
(2)
(5)
(2)
の得 点 の学 生 数)。
詳 しい 分 析 は次 回 に譲 る こ と とす る が,こ の2つ の表 を比 べ て み る と,第1位
得 点(そ の項
目で該 当 者 が一 番 多 い ス コア ー)の 分 布 傾 向 は か な りよ く似 て い る も のの,基 礎学 力 ・教 材準
備 ・指 導 技 術 に っ い て は,実 習生 の 自己評 価 は か な り辛 い傾 向 を示 して い る とい え よ う。 これ
は,次 に示 す 実 習 生 の く反 省 す る こ と ・心 が け た こ と〉 の記 入例 に も明 らか な よ うに,現 場 で
教 師 の仕 事 の実 際 に 触 れ て,そ の 手慣 れ た授 業 運 営 や生 徒 指 導 の 技 術 と,自 分 達 実 習生 の っ け
焼 刃 の授 業 実 践 の 格差 の大 き さを あ らた め て痛 感 す るこ とか ら くる もの とい え よ う。
4.「
自 己 評 価 表 」 記 入 例 と実 習 校 側 の 成 績 評 価
次 に2人 の実 習 生 に っ い て,「 自己 評 価 表 」 と実 習 校 側 の成 績 評 価 を対 比 して 示 す 。
この2例 は,筆 者 が期 間 中 そ れ ぞ れ の実 習校 で の訪 問 指導 を担 当 した学 生 の 内 か ら,与 え ら
れ た紙 幅 に合 わ せ て選 ん だ ケ ース で,中 学 ・高 校,文
系 科 目 ・理 系科 目,男 子 ・女 子,と い う
お お ま か な 目安 以外 に特 別 な 基 準 に拠 らず,ほ ぼ ア トラ ン ダ ム に抜 き出 した も ので あ る。
(こ の2例
を含 む20余 りの ケ ー ス にっ い て は,実 際 に実 習 中 の状 況 に接 した り,実 習 校 の 指
導担 当教 員 と面 談 す る機 会 を得 た り,・事 後 に学 生 本人 と話 し合 うな ど して,そ れ ぞ れ の 自己
評価 や成 績 評 価 の 背 景 を筆 者 が あ る程 度 把 握 して お り,次 回 のや や 詳 しい分 析 ・検 討 の核 と
な る ケ ー スで あ る。)
※ 以下,各 事 例 と も;「 自」 は実 習 生 の 自己評 価,「 学 」 は 実 習 校 の 成 績 評 価,数 値 は 評 点 。
一41
A:中
1)参
学 校 ・理 科
観態 度
都 区 内 公立
農 学 部 ・女 子
自 〔4〕 授 業 参 観 の ノ ー トは わ り あ い よ く と れ て い た と 思 うが,自
業 へ の応 用 が 十 分 で き な か っ た(発
学
2)協
力態 度
〔4〕 各 教 科 の 授 業 に 関 心 を も ち,積
自 〔4〕 大 体 で き て い た と思 う が,生
分 の授
問 な ど)。
極 的 に参 観 で き た 。
徒 指 導 の 方 に ば か り か ま け て,教
員
間 の 作業 へ の参 加 を怠 っ た こ とが あ っ た。
学
〔5〕 生 徒 の 理 解 に 努 め,ク
ラ ス 全 体 の 指 導 に 対 し て 協 力,班
の会議等
に積 極 的 に加 わ って い た。
3)基
礎学 力
自 〔3〕 字 が き た な い 。 専 門 教 科 の 学 力 不 足 が 非 常 に 苦 し か っ た 。
学
4)教
材準備
〔4〕 第1分
野 は 苦 手 の よ う だ っ た が,よ
く勉 強 し,努
自 〔3〕 当 初 は 大 学 の 講 義 の よ う な 授 業 を し て,何
力 して い た 。
度 も指 導 の 先 生 に 注 意
さ れ た が,回 を 重 ね る う ち に そ の 意 味 が 理 解 で き る よ う に な っ た 。
学
〔5〕 実 験 の 準 備 等,大
変 な 仕 事 だ っ た が,各
班 の 用 意 な ど,細
かい と
こ ろ ま で 気 を 配 り,熱 心 だ っ た 。
5)指
導技術
自 〔3〕 生 徒 は ビ ジ ュ ア ル な刺 激 に よ っ て 授 業 に 興 味 を も っ て くれ る こ と
が わ か っ た の で,後
で 見 直 して も意 味 が わ か る よ うな 板 書,ゼ
チ ャ ー 入 りの 話 し方,ビ
学
6)事
務処 理
師資 質
デ オ な どの 利 用 を心 が けた 。
意 す べ き こ と は 注 意 し,堂
々 とした態 度 だ っ た。
自 〔4〕 概 ね で き て い た よ うに 思 う。
学
7)教
〔4〕 声 も 大 き く,注
ス
〔4〕 き ち ん と し た 態 度 で,事
務 処 理 能 力 が あ った 。
自 〔4〕 生 徒 を 「こ う し て ゆ こ う」 と い うエ ゴ を 反 省 し,「生 徒 と共 に 歩 い
て 行 き た い 」 と い う思 い で 生 徒 に 接 す る こ と の重 要 性 を 感 じ た 。
学
〔5〕 何 事 に も熱 心 で,生
ら,資
8)実
習録
徒 の こ と を 真 剣 に 考 え,思
い や りの あ る 点 か
質 が 十 分 に あ る と言 え る 。
自 〔3〕 悪 い くせ だ が,文
章 を 抽 象 的 に 書 く と こ ろ が あ っ て,十
分 に理 解
して も ら え た か ど うか 不 安 。 教 師 の 助 言 を 素 直 に 受 け,か
っそ の
教 師 の色 に染 ま らない よ うに し た か っ た。
学
〔4〕 自 分 で 悩 み な が ら も,ど
り,誠
B:高
1)参
等 学 校 ・国 語
観態度
う した ら良 い 指 導 が で き る か 考 え て お
実 さが あ らわ れ て い た 。
地 方 公 立 校(出
身 校)文
学 部 ・男 子
自 〔3〕 諸 先 生 の 授 業 を 見 て,一
つ 一 つ ポ イ ン トを み つ け た が,そ
分 の 授 業 に十 分 生 か せ な か っ た 。
学
〔4〕 よ く メ モ を と り な が ら参 観 し,予
一42一
習 して 参 観 に 臨 ん だ 。
れ を 自
2)協
力態度
自 〔5〕 二 週 と も,日 曜 日 を潰 して 模擬 試験 な ど の行 事 に参 加 ・門 前 指 導
や 試 験 監 督 の 仕 事 で,教 師 や 同 僚 実 習 生 へ の協 力 が で きた 。
学 〔4〕 ク ラ ス運 営 上 の仕 事 や 授 業 の準 備,そ
3)基
礎学 力
の他 協 力的 で あ っ た。
自 〔2〕 板 書 は読 み に くい と指 摘 され た。 古 典 文 法 の知 識 力 が暖 昧 。
学 〔3〕 国文 学 ・国語 学 的 学 力 は か な り もっ て い る。
4)教
材準備
自 〔4〕 指導 教 師 か らの助 言 も活 かす よ う心 が け た が,授 業 で の生 徒 の反
応 を無 視 した もの に な りが ち だ った。
学 〔5〕 時 に は徹 夜 を した ほ どで あ り,学 校 図書 館 もよ く利 用 した。
5)指
導技 術
自 〔2〕 板書 の ま とま りが悪 く,字 が 汚 か っ た。 本 ば か り見 て生 徒 の顔 を
あま り見 な か った。 机 間指 導 は二 度 ほ ど実 行 した 。
学 〔4〕 研 究 授 業 を含 め,熱 心 で他 の教 師 の評 価 も高 か った。
6)事
務処理
自 〔4〕 採点 ・集 金 は よ くで きた と思 うが,事 務 連 絡 な ど も っ と楽 しい話
題 を入 れ な が ら工 夫 してや れ ば 良 か った 。
学 〔3〕 生 徒 指導 の仕 事 ま で も良 く手 伝 って くれ た。
7)教
師資 質
自 〔3〕 気 に な った生 徒 や話 しか け て く る生 徒 に 指導 が傾 き,他 の生 徒 へ
の積 極的 な関 係 作 りが で き な か った。
学 〔4〕 沈着 冷 静 さ と情 熱,生 徒 へ の愛 着 心 な ど強 い 。
8)実
習録
自 〔3〕 他大 学 の実 習生 に較 べ る と,内 容 が詳 し く書 けな か った が(記 入
欄 が 少 な い た め),充 実 して い る とは 思 って い る。
学 〔3〕 毎 日 ま じ めに 提 出 した 。
一43一