オープンデッキに広がる夢(諏訪市) ワンコインサロン(上田市)

2015 年(平成 27 年)4 月 1 日 水曜日
人生二毛作かわら版
第8号
公益財団法人長野県長寿社会開発センター
昨年度はシニアの社会参加をテーマに
県内各地でタウンミーティングが開催
されました。木曽会場ではワールドカ
フェスタイルで地元の様々なグループ
と交流し賑やかな意見交換が広がりま
し た 。 (3 月 20 日 長 野 県 木 曽 合 同 庁 舎 )
オープンデッキに広がる夢(諏訪市)
と
デザートのケーキは娘さん、そして、コーヒ
ある住宅街。通りから少し入ると民家の
ーは旦那さんがご担当。コーヒーポットを手に
一室を改装したカフェがあります。見慣
「いらっしゃいませ」と姿を見せると、手際よ
れた玄関を入ると茶葉を焙じた香が出迎えてく
く豆を挽いて、丁寧にお湯をドリッパーへ注い
れました。案内された客室には、陽の光があふ
で、
「 ど う か な ? 」と 最 後 の テ イ ス テ ィ ン グ は 奥
れるオープンデッキテラスが窓ガラスの向こう
さんの役目です。
に広がり、その先の庭木の枝には、小鳥が次々
調度品の数々は、スプーンのひとつまで、時
と飛んできては、羽ばたいています。いつか体
間をかけて集めてきたもの。お客の数を増やさ
が鈍くなってきたときのために、と室内をバリ
ないのは、無理をせずに自分のペースで楽しん
アフリーに改装して、オープンデッキを庭先に
でいるから。ご本人すら「まさかこういう展開
しつらえた。すると、訪れた友人がここでお茶
になるとは思ってもみなかった」という奥さん
を飲みたい、と言ったのがそもそもの始まりと
は、それでも「好きだから続けられる」と話し
のことでした。
ま す 。「 続 け ら れ る う ち は ・ ・ ・ 」 と 、 ひ と 品 、
ひ と 品 、に こ や か に ご 馳 走 し て い た だ き ま し た 。
庭の枝垂桜が咲くころには、小鳥たちで賑やか
なオープンデッキになるはずです。
ワンコインサロン(上田市)
千
曲川の西岸、正面に太郎山を望む傾斜地
に造成された住宅地の一角に「ふれあい
ワンコインサロン」の看板が見えます。日中と
もなれば人の気配すらしない団地の中で、玄関
先に設えた“ふれあい地蔵”の奥から賑やかな
声が漏れてきます。かつてレストランだった空
き店舗を高齢者が集うサロンに提供している竹
内 さ ん は 、「 人 と 関 わ る の が 生 き る 証 」 と 話 す 。
出てくる料理はどれもひと手間かけて、おい
市の福祉推進員になった数年前、参加した研
しい工夫がいっぱいでした。おすすめのおやき
修会で、何をすればいいかと質問したところ、
は以前からずっと趣味で作り続けていたもの。
民生委員は家の中、福祉推進員は(家にこもら
オーナーの女性は「好きでやってきたことが無
ないように)玄関から外へ連れだすのが仕事、
駄ではなかったと実感しています」と、お料理
と講師からアドバイスを頂いた。高齢者の居場
を出しながら話してくれました。
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2015 年(平成 27 年)4 月 1 日 水曜日
人生二毛作かわら版
第8号
所はたくさんあった方がいい。そこからサロン
町の市街地の一角、かつてこの場所には『春日
の立ち上げが始まった。
時計店』という一軒の時計屋さんが建っていま
午 前 10 時 。ぞ く ぞ く と 集 ま っ て き た 地 元 の 方
した。まだ機械式の時計が当たり前だった頃、
でとたんにサロンは笑い声でいっぱいになった。
店内では修理に訪れた地元の障がい者施設で暮
“ ワ ン コ イ ン ” の 看 板 通 り 、 訪 れ た 方 か ら 500
らす方々が畳に上がりお茶をいただく姿も見ら
円を頂戴するのは気兼ねなく利用してほしいこ
れました。
とへの配慮。
「 損 得 じ ゃ な く て 、ボ ラ ン テ ィ ア の
時は流れ、時計店のご夫婦も高齢となり店を
精神です」と竹内さん。女性たちに中に男性の
たたむ時を迎えました。その際、時計店から地
姿も見える。当初は入りずらかったとのことだ
元の障がい者施設へ申し出がありました。地域
が、今では年に一度みんなで出かける旅行の際
との関係を大切にする施設にこの場所を使って
には“添乗員”役をかって出るのだという。
ほしい、と。そうした想いがつながり、時計店
昭 和 40 年 代 の 造 成 当 時 は 働 き 盛 り の 家 庭 に
は障がい者の就労を支援するカフェへと生まれ
多くの子どもで賑わった新興住宅地も、およそ
変わりました。
半世紀を経過して数百世帯の団地には多くの高
昔 の面 影 を伝 える「 修 理 中 」と貼 られた柱 時 計
齢者が暮らす一方、子どもの数は両手をわずか
に超えるほどだという。同地区の自治会長も務
める竹内さんは「朝日ヶ丘お助け隊」を結成し
て地域のちょっとした暮らしの問題に取り組み、
傾斜地の住宅地ゆえに孤立しがちな高齢者のた
めに地元のスーパーへ移動販売車の利用を依頼
した。
「 そ れ だ け 切 羽 詰 ま っ た 状 況 だ っ た 」と の
こ と だ が 、そ れ で も ま だ 80 歳 代 は 少 な い 。高 齢
化の本番はこれからなのだという。
今では心やすまる居場所として地域に根づく
『 か ま ど カ フ ェ 小 春 日 和 』。お 店 の 案 内 に は こ の
ように書かれていました。
-「 小 春 日 和 」は 利 用 者・地 域 の 方 々 に と っ て 、
柔らかな光が降り注ぐ穏やかなひだまりのよう
な場所になることを目指して命名いたしました。
「小春日和」は多くの皆様の心休まる場所とし
て 、新 た な 時 を 刻 ん で い き た い と 思 っ て い ま す 。
どうぞお気軽にお立ち寄りください。
サロンのテーブルを囲んで話は尽きません。
『かまどカフェ小春日和』のネーミングには
竿竹屋のスピーカーが遠くを流れていきます。
奇遇にもかつての時計店の名前が入っています。
「この前の料理どうだった?」
「 肉 じ ゃ が 、お い
窓の外の雪解けを待つ空を眺めながら名物の"
し か っ た ! 」「 私 が 牛 ス ジ で 作 っ た ん だ よ 」「 肉
か ま ど プ リ ン "を い た だ き ま し た 。時 計 の 修 理 を
じゃが、ナンバーワン!」
待つあいだの楽しいおしゃべりが聞こえてくる
みんなと話すのが本当の幸せ、という竹内さ
ような小春日和の午後でした。
んの言葉が印象に残りました。
(* ) かまどカ フェ 小 春 日 和 : 昭 和 37 年 に 社 会 福 祉 法 人 長 野 県 社
会 福 祉 事 業 団 が長 野 県 内 初 の知 的 障 がい者 の入 所 施 設 として
旧 豊 野 町 に 設 置 した 水 内 荘 の グループ施 設 とし て平 成 24 年 4 月
に開 設 した 障 がい者 就 労 移 行 支 援 事 業 所 「小 春 日 和 」のカフェ。
時を刻む想い(長野市)
路
肩の雪を踏み越えながら店内に入ると、
** *
日差しの明るい室内に赤と白の椅子が並
二毛作かわら版はホームページでもご覧いただけます
http://www.nicesenior.or.jp
べられていました。かまど炊きのごはんでつく
( 編 集 ・ 発 行 ) 公 益 財 団 法 人 長 野 県 長 寿 社 会 開 発 センター
〒380-0928 長 野 市 若 里 七 丁 目 1 番 7 号 長 野 県 社 会 福 祉 総 合 セ ン タ ー 5 F
TEL 026-226 -3741 / FAX 0 26-226-8327
るおにぎりや地元で打ったうどんがご馳走の
『 か ま ど カ フ ェ 小 春 日 和 』(*)。長 野 市 、旧 豊 野
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