理学部 数理科学科 談話会の実施のお知らせ

理学部数理科学科
学生向け談話会のお知らせ
次の要領で本校教員による学生向け談話会を開催します。
大学院進学を考えている学生や教員の研究内容を知りたい学生
など、多くの学生の方々の参加をお待ちしています。
日時:2016年6月29日(水)
15:00∼16:45
場所:万有館3階セミナー室
講演1 (15:00–15:45)
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伊藤 悠 助教
題目:ラフパス理論について
要旨:T. J. Lyons が 1998 年発表の論文で創始したラフパス解析の理論は,滑らかさの度合
いの小さな関数に関する微積分学の理論であり,確率解析にその起源を持つ.確率解析に
おいて,ブラウン運動に沿った線積分は確率積分により定式化される.ブラウン運動に対し
て確率微分方程式の強解を対応させる Itô 写像は自然な位相について一般に連続ではなく,
この事実が技術的な障害をもたらすことは従前より良く認識されていた.ラフパス理論は
この障害を克服することを初期の動機とした,関数とその重複積分に相当する情報の組を
一般化したラフパスに対する線積分や微分方程式の理論である.特にラフパス空間の標準
位相に関して Itô 写像の対応物が連続写像となるため,確率解析の様々な議論を見通し良く
展開できることが利点である.現在では,従来の確率解析で取り扱えなかったような対象
にまでラフパス理論の応用範囲が拡がり,更なる発展が期待されている研究分野といえる.
本講演では,ラフパス理論の基礎概念や基本定理を紹介するとともに,ラフパス理論の確
率解析への応用における基本的なアイデアを説明する.時間が許せば講演者が取り組んで
いる非整数階微積分 (fractional calculus) に基づいたラフパス理論の研究を紹介する.
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講演2 (16:00–16:45)
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西 慧 助教
題目:双安定な反応拡散系で見られるパルス解のダイナミクスとその解構造について
要旨:自然界でみられるパターンを記述する現象論的なモデル方程式として、反応拡散方程
式とよばれる連立の偏微分方程式がある。方程式自体は比較的単純であるが、反応項の関数
形やパラメータの値などに応じて渦巻き状のパターンや縞状のパターンなど様々なパター
ンが解として現れる。とりわけパルス解やスポット解のように空間的に局在化した解につ
いてはその存在や安定性が過去数十年にわたって調べられており、最近ではパルスの分裂
や対消滅といった遷移ダイナミクスについても力学系の観点から特徴付ける試みがなされ
ている。本講演では特に双安定な反応拡散系で見られるパルス解の振る舞いについて、低
次元の力学系へ縮約することでその分岐理論的メカニズムを調べた結果について紹介する。
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談話会委員
伊藤悠
東谷章弘
(問い合わせ:[email protected] )
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