Title アポルフィン型アルカロイドの合成に関する研究

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アポルフィン型アルカロイドの合成に関する研究(
Abstract_要旨 )
平井, 健太郎
Kyoto University (京都大学)
1960-03-23
http://hdl.handle.net/2433/210717
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
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氏
平
ひら
井
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健 太
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郎
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学 位 の 種 類
薬
学 位 記 番 号
薬
学位授与 の 目付
昭 和 35 年 3 月 23 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第5 条 第 1項該 当
研 究 科 ・専 攻
薬 学 研 究 科 薬 学 専 攻
学位論文題 目
アポル フィ ン型 アル カ ロイ ドの合 成 に関す る研 究
(主
論 文調 査 委員
学
博
博
士
第 1 0 号
査)
教 授 富 田 真雄
論
文
内
教 授 鈴 木 友二
容
の
要
教 授 宇 野 豊 三
旨
ツゾ ラフジ科 M enisperm aceae 植物 の うちで熱帯産 Stephania capitata SpRENO. な らびに 日本産 - ス ノ
ハ カズ ラ Stephania japonica M IERS の アル カ ロイ ドで あ る Stephanine, お よび S tephan ia capitata SpRENO .
な らび に台湾紅頭峡産 コウ トウツツラフ ジ Stephan ia Sasak ii
H A Y A TA
よ り 発見 された アル カ ロイ ド cre-
banine は, いずれ もすで に富 田, 白井によ って種 々の分解反応 の結果 , Stephanin e に対 して は ( Ⅰ) な
る推定構造式が, また crebanine に対 して は ( Ⅱ) 式 が それぞれ提 出 されて い る。 しか るに1954年 M anske
は アル カ ロイ ドの植物生体 内生成 の見地 か ら( Ⅰ), ( Ⅱ) の構造 式 に対 してなお も疑 問をいだ き再検討を要
望 した。 ここにおいて著者 は両 アル カ ロイ ドの全合成 によって それ らの構造 式 に対 し積極 的な証 明を与 え,
さ らに両 アル カ ロイ ドと構造類似 の塩基 を合成 して それ らの物理化学 的性質 を明 らかにす る目的を もって
213/4\
15-CH3
N
6
本研究を実施 し, 以下 に述 べ るよ うな新知見 を得 た。
(Ⅱ
)
I 〔1 〕 dl-Stephanine の合成
d l-Stephanine はつ ぎの C hart l の経路 によ り合成 を完成 した。
C hart 1
N O皇
め= 8 2 3 3H
N O皇
め=C.occfI3
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-> c H 2< 0.
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〇
N
(Ⅲ
)
こ こに合成 された d l-Stephanine はその m ethiodide を天然の A IStePhan ine m ethiodide と比較の結果,
全 く同一 の構造 を有す ることを確認。 か くて Stephanine の構造 は 1, 2-m ethylenedioxy-8-m ethoxyapor-
phine ( Ⅰ) であ ることを積極 的に証 明確認す ることがで きた。 なお, この際 P schorr 反応 の副生物 と して
benzylisoquinoline 型塩基 d l-1-(2-m ethoxybenzyl)12-m ethyト6, 7-m ethylenedioxy- 1,2, 3, 4-tetrahydroisoquinoline (Ⅲ) を も単離 した。
なお著者 よ りややお くれて H ey もまた d l-Stephanine の合成 に成 功 し著者 と全 く同一 の結論 に達 して
い る。
〔2 〕 dトC rebanine の合成
種 々の基礎実験 を吟味の結果, A rndトE istert 反応 を利用 して合成 した (2,3-dim ethoxy-6-nitropheny lう
acetic acid と 3, 4-m ethylenedioxyphenethylam
i ne を原料 と して dl-crebanine を合成 した。 ここに得た
dl-crebanine は天然の l-crebanine と比較の結果, その構造が全 く一 致す ることを認めた. か くて crebanine の従来の推定構造式 1, 2-m ethylenedioxy-8,9-dim ethoxyaporphine (H ) の正 しい ことを ここに積極
的に証 明確 認す ることがで きた。
なお, 著者 とほ とん ど同時 に G ovindachari もまた別個 の 立場 よ り d l-Crebarline を合成 し著者 と全 く同
- 136 -
ー の結論 に到達 して いる。
すなわち Stephanine ( Ⅰ), crebanine (Ⅱ) の構造 は従来の生合成 の立場 よ りみ る時 は, M anske も指
摘 の とお り確 かに異常型式ではあ るが, 天然に もかか る型式のアル カロイ ドが存在す ることが ここに確認
された ことは植物生体 内におけるアポル フ ィン型塩基の生成 を考察す る上 において大 いに興味 ある事実で
あ る。
〔3 〕 d il l, 2, 8-T rim ethoxyaporphine の合成
Stephan ine ( Ⅰ) の 、m ethylenedioxy 基の代 りに dim ethoxyl 基を有す るアポル フ ィン型塩基, すなわち
1, 2, 8-trim ethoxyaporphine (Ⅳ) の合成 を行な った。 合成 中間体 と して必要 な (2-m ethoxy-6-nitrophenyl)-acetic acid は Stephanine 合成 の場合 とは異 な り benzylalcohol, chloride , つ いで nitrile を経て これ
を合成 した。 つ いで (2-m ethoxy-6-m itrophenyl) acetic acid および 3, 4-dim ethoxyphenethylam ine を原
料 と して d l11, 2, 8-trim ethoxyaporphine (Ⅳ) を合成 した。 その紫外部 吸収 スペ ク トルは Stephanine と
同様特異 な吸収 を示す。
また,
最後の P schorr 反応 において d l-1-(2-m ethoxybenzyl)-2一
m ethy1-6, 7-
dim ethoxy- 1, 2, 3, 4-tetrahydroisoquinoline (Ⅴ) を も単離 した。
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C H 30 -
I
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C H 30 - ◎
〕
(Ⅳ)
〔4 〕 d l- 1, 2, 8, 9-T etram ethoxyaporphine の合成
C rebanine ( Ⅲ) の m ethty lenedioxy 基の 代 りに dim ethoxyl 基 を有す るアポル フ ィン型塩基,
すなわ
ち d ト1,2 ,8,9-tetram ethoxyaporphine (Ⅵ) の合成 を試み, 3, 41dim ethoxyphenethylam ine と (2,3-dim e-
thoxy-6-nitropheny l) acetic acid よ りその合成 を完成 した
異 な吸収を示す ことを明 らかに した。
。
紫外郡吸収 スペ ク トルは crebanine 同様特
3
H
C
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。。
-
C H 30 C H 30
◎ ( ) 二。 H B
(Ⅵ)
〔5 〕 d li l, 2-M ethylenedioxy-8, 9, 10-trim ethoxyaporphine の合成
8 , 9 , 10 位 に置換基を 有す るアポル フィン型塩基 dl- 1, 2-m ethylenedioxy-8, 9, 10-trim ethoxyaporphine (Ⅶ) の合成 を試みた。
合成 中間体 と して 必要な (2, 3, 4-trim ethoxy-6-nitrophenyl) acetic acid
は ピロガ ロール よ り出発 し途 中 benzyl alcohol, chloride, つ いで nitrile を経て これを合成,
つ ぎに これ
と 3, 4-m ethylenedioxyphenethylam ine を原料 と して 目的の aporphine (Ⅶ) を誘導合成 した。 なお最後
の Pschorr 反応 に際 し副生物 と して d l-ト(2, 3, 4-trim ethoxybenzyl)-2-m ethy1-6, 7-m ethylenedioxy- 1,
2, 3, 4-tetrahydroisoquinoline (Ⅷ) を も単離 した。
- 137 -
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C H 2<
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八
川
… 払
一 =
ノ
・
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.=J
(Ⅶ)
〔6 〕 d ト1, 2, 8, 9, 101Pentam ethoxyaporphine の合成
本合成 において は 3 ,4-dim ethoxyph en ethylam ine および (2 ,3 ,4-trim ethoxy-6-nitrophenyl) acetic acid
を原料 と して , d ll l, 2,8 ,9 ,10-Pertam ethoxyaporphine (Ⅸ) を合成 した。 また, その紫外部 吸収 スペ ク
トルは d l1 1, 2-m eshylenedioxy-8 , 9 , 10-trim ethoxyaporphine (Ⅶ) と同様 に特徴的な吸収 を示 す. なお
\
本合成 において も P schorr 反応 に際 L d l-ll (2, 3 , 4-trim ethoxybenzyl)-2lm ethy1-6, 7-dim ethoxy- 1, 2,
C H 30 C H 80 -
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/ \ ~/
人
目 /
3 , 4-tetrahydroisoquinoline (Ⅹ) を も単離 した。
3
H
C\
H aO - ◎ - O C
O CH8
(Ⅸ)
〔7 〕 紫外部吸収 スペ ク トルの考察
著者 の合成 した これ らのアポル フ ィン型塩基 の紫外部 吸収 スペ ク トルは, いずれ もStephan ine,crebanine
と同型で あ り, しか も他 の一般 アポル フ ィン型 アルカ ロイ ドと異 な り特異 な型式の吸収 を示 す ことを明 ら
か にす ることがで きた。 結局 これ ら紫外部 吸収 スペ ク トルの特異性 はアポル フ ィン核 におけ る置換基の置
換位置の特異性 に原 因す るもの と思われ るが, これはアポル フ ィン型塩基 の置換基の位 置を定性的に判定
す る上 において有力な手 がか りとな るもの と思 われ る。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文 は, 従来 その化学構造式が 推定 にす ぎなか った ツゾ ラフジ科 の アル カ ロイ ド Stephan ine および
crebanine につ いて, 著者 は これを合成 的 に確証 をあたえ, その上, この二種 の アル カ ロイ ドが これ まで発
見 されてい る aporphine 型 アル カ ロイ ドと しては類例をみない新 しい型式 で あ り, しか もこれが天然 に植
物体 に存在す ることを明 らかに した もので あ る。 さ らに著者 は Stephanine お よび crebanine 類似の構造
を有す る数種 の この型 の アル カ ロイ ドを合成 し, これ ら特異 の型式を有す る一連 の この型 の アル カ ロイ ド
の紫外部 吸収 スペ ク トルその他 の性状 を吟味 した。 したが って, 本論文 内容 は新 しい型式 の aporphine 型
アル カ ロイ ドの分野 を開拓 した もの と して アル カ ロイ ド化学 の領域 に貢献す るところ大 き く, 薬学博士 の
学位論文 と して価値 あ るもの と認 め る。
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〔
主 論 文 公 表 誌〕
報
薬 学雑 誌
第 77巻 (昭.32) 第 3 号
第 2, 3報
薬学雑 誌
第 78巻 (昭.33) 第 7 号
第
4
報
薬 学雑 誌
第 79 巻 (昭.34) 第 6 号
第
5
報
薬 学雑 誌
第 80 巻 (昭.35) 近刊号 予定
第
1
〔
参
1.
考 論 文〕
D iphenylene D ioxide の合成
(富 田真堆 ほか 1 名 と共 著)
公表 誌
薬 学雑 誌
第 74 巻 (昭 .29) 第 9 号
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