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1. アデノウイルス性筋胃びらん(Adenoviral gizzard
erosion)
誌名
鶏病研究会報
ISSN
0285709X
著者
中村, 菊保
巻/号
37巻2号
掲載ページ
p. 128-128
発行年月
2001年8月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
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病 九 二J
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. アデノウイルス性筋胃びらん CAdenoviralgizzarde
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キーワード:アデ ノウイルス,核内封入体,筋胃びらん
写真 l 筋胃を開いたところで,内部には黒褐色の液
性物質がみられる 。 これらの液性物質を水洗すると,
筋胃角質の i
裳死,びらんが確認される。
動物 :1
6日齢ブロイラー
写真 2 写真左の角質は変性,消失し, 粘膜上皮細胞
も変性剥離している 。粘膜固有層の角質分泌腺も変
性,消失している 。間質にはマクロファージの増殖が
みられる。 HE染色。 角質分 J
必腺上皮細胞には 好塩基
性核内封入体がみ られる(挿入写真:HE染色)。
発生状況およ び症状 :ブロイラー農場において死亡が増
加した。鶏群は 7,
5
0
0羽から成り ,鶏は 1
5日齢から明か
胞における核内封入体はグル ープ I ト
リ アデノウ イルス
な臨床症状なしに死亡 した。死亡は 2週間続いた。鶏群
(
GI
AAV)抗原に対して陽性で あ った。 なお,電顕的に
の損耗は 1
.83% であった。
は変性した筋胃腺上皮細胞における核内封入体 は多数の
肉眼所見 。筋胃は肉眼的に血様液体で・拡張していた(写
ウイルス粒子(直径約 70nm)から成っていた。
真1
)
。角質層では黒色のびらん巣がみられた。そ裂と腺
病原検査 .筋胃より GI
AAV(
血清型 1
)が分離された。
胃も黒色の液体で拡張していたが,病変はなかった。
この分離株を SPF鶏に経 口接種すると筋胃角質壊死,
組織所見 ・筋胃粘膜の表層上皮細胞を被覆する角質層は
びらんが再現された。
偽好酸 fj~ 浸潤を伴う限局性液化壊死を示した (写真 2) 。
解説 :かつて魚粉飼料によるブロイラーの筋胃びらんの
粘膜固有層では広範な角質物質を分泌する筋胃腺の変
発生が多かったが,製造方法の改良によりこれはなく
性,消失, 重度のマクロファ ージの増加がみられた。好
な った。 しかし ,最近我が国の食鳥処理場でブロイラ ー
塩基性(写真 2挿入写真)およびまれに好酸性核内封入
のアデ ノウイル ス性筋胃ひ、ら んがい くつか報告されてい
体は筋胃腺消失部周囲の腺上皮細胞にみられた。 まれ
る。 処理鶏の 2.
8%に認めたという報告もある。通常は
に,角質層ばかりでなく,粘膜上皮層から粘膜下組織を
本病は育成中 での発生を確認することはまれであるが,
越えて,筋層に及ぶ欠損(すなわち漬蕩)がみられた。
今回のように育成中のブ ロイラー にも集団発生すること
重度病変では,角質層 の限局性壊死,消失により ,完全
もある 。血清型 lのアデノウイルスが分離されることが
な粘膜の露出がみらることもある。また,筋胃腺もほ と
多い。
んと、消失した。免疫組織染色で,変性した 筋胃腺上皮細
著 者 中 村菊保 (KikuyasuNakamura),動物衛生研究所, 干3
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