研究のプロセス(仮説検証) • リサーチ・クエッションを持つ • 例: 「反社会的行動はその年齢の頃に増加するのか、もし 増加するとしたら、その原因は何か」 実証研究と統計のための 事例の導入 • 仮説を立てる • 例: 「男女とも、小学校高学年から中学校にかけて平均的 に反社会的行動が増加するだろう。そして、その増加は、思 春期の生理的変化によって生じる心理的葛藤が有力な原因 のひとつであろう」 • 仮説からデータに現れる傾向を予測する • 例: 「思春期の生理的変化は、11歳ぐらいから13歳ぐらい にかけては、男子よりも女子のほうに早く、顕著に現れるこ とが知られている。もし仮説が正しいのだとしたら、この年齢 にかけての反社会的行動の増加は、女子のほうにより顕著 に見られるだろう」 慶應義塾大学 非常勤講師 八賀 洋介 65 66 研究のアプローチとデザイン 仮説検証の論理 • 仮説検証研究では目的に応じて方法が変わる。 • もし予測どおりの傾向が明らかになったならば、仮説 が 「支持される」。予測と異なっていたならば、仮説は 「支持されない」。 • もし予測どおりの結果が得られたとしても、仮説を「証 明」したことにはならない。別解釈も否定できない。 例: 「この時期には受験プレッシャーの高まりから心理的不 安が増大し、それが反社会的行動を引き起こす原因となる。そ してこうした不安は女子において特に顕著である」 前提1 前提2 結論 真偽 X ならば Y である Xである したがって、Yである ○ × 逆 X ならば Y である Yである したがって、Xである X ならば Y である Xではない したがって、Yではない × 裏 X ならば Y である Yではない したがって、Xではない ○ 対偶 日本のある年代の子供たち一般 (あるいは世界のその年代の子供たち一般) 実験 (experiment) 意図的に条件を操作してその操作の効果を調べる。その時 操作する条件以外はできるだけ統制して、主眼となる条件 の効果が見やすくなるように工夫する 実践 (practice) 対象者の現実を改善するために、現実に介入しながら進め ていく 研究例では、小学校6年の学年初め(11歳)と中学校2年の学年初め(13歳)の2 つの時点での比較とする 67 68 構成概念の測定 • 研究上の目的のために定義され使用される概念。 • 「小学校高学年から中学校にかけての男女」 母集団 現実に対して特に手を加えることなく、そのまま把握しようと する 調査のデザイン 1. [横断的研究] 対象者として11歳の集団と13歳の集団を選んで比較する。 2. [縦断的研究] 対象者として11歳の集団を選び、その集団が13歳になった時点で再度調 査する。 対象者の選定 該当者は不特定多数いる! 調査 (survey) 対象を特定しないとデータが集 められない。 サンプル (標本) • 窃盗や傷害のような犯罪行為? • 学校の無断欠席や遅刻? • 親に対して反抗的な態度をとったとか? 実際にデータを収集する対象者集団 (被験者・調査対象者) 研究例ではある地域の一つの小学校と、その小学校の卒業生が進学する中学校 を選んで調査協力を依頼し、小6男女20人をサンプルとしてデータを収集したとする。 • 「反社会的行動」とは社会の秩序に反する様々な行動 を抽象した概念。直接測定できるものではない。しかし、 概念を与えることで、さまざまな行動に対して1つのまと まりが与えられ、議論や研究を進めるための枠組みが できる。 • 何が「反社会的行動」? 69 70 研究例では、 「反社会的行動」を、学校、家庭、および社会における比較的軽微な秩序逸脱 行動と定義したとし、その定義に当てはまると思われる具体的な行動を「最近1カ月の間にし たことがあるか」を尋ね、「したことがある」なら1点、「したことがない」なら0点を与えて、その合 計点を「逸脱行動得点」とし、これによって反社会的行動の程度をあらわすことにしたとする。 データ 尺度 例にでてきたような、「逸脱行動得点」算出の際の得 点化のルールを尺度と呼ぶ。一定の尺度にした がって、被験者に数値を割り振るプロセスが測定。 名義尺度 順序尺度 間隔尺度 例 支持政党 大学の成績 摂氏と華氏 株価 性質 質的 量的 量的 量的 必要条件 順序性 等間隔性 絶対的原点 可能な計算 大小比較 加・減 加・減・乗・除 代表値 最頻値 分散と標準偏差 不可 最頻値・中央 最頻値・中央 ⽐例尺度 最頻値・中央 値 値・平均値 値・平均値 不可 可 可 71 関数 FREQUENCY を利用して作成する。 表1-1 男女20人ずつの被験者の小6と中2のときの逸脱行動得点 性別 小6 中2 変化量 番号 性別 小6 中2 男 4 8 4 21 女 3 12 男 9 12 3 22 女 9 9 男 14 11 -3 23 女 4 10 男 16 20 4 24 女 8 13 男 15 16 1 25 女 8 13 男 14 18 4 26 女 5 10 男 7 7 0 27 女 5 7 男 13 19 6 28 女 7 18 男 18 20 2 29 女 12 17 男 20 14 -6 30 女 11 14 男 12 14 2 31 女 8 12 男 6 12 6 32 女 11 18 男 10 16 6 33 女 13 17 男 16 14 -2 34 女 10 20 男 12 13 1 35 女 15 13 男 16 17 1 36 女 10 16 男 13 19 6 37 女 12 13 男 12 10 -2 38 女 10 12 男 12 19 7 39 女 8 12 男 15 14 -1 40 女 9 13 変化量 9 0 6 5 5 5 2 11 5 3 4 7 4 10 -2 6 1 2 4 4 72 折れ線グラフと散布図 度数分布表 表2 逸脱行動得点の度数分布 男子 女子 得点 小6 中2 小6 中2 2 0 0 0 0 4 1 0 2 0 6 1 0 2 0 8 1 2 5 1 10 2 1 5 3 12 4 3 4 4 14 4 5 1 6 16 5 2 1 1 18 1 2 0 4 20 1 5 0 1 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 表3 逸脱行動得点の 変化量の度数分布 変化量 男子 女子 -6 1 0 -4 0 0 -2 3 1 0 2 1 2 5 3 4 4 5 6 4 6 8 1 1 10 0 2 12 0 1 73 74
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