熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title Fibroblast growth factor-2による腱板修復促進に関す る研究 Author(s) 徳永, 琢也 Citation Issue date 2015-03-25 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/34541 Right 徳永 琢也 氏の学位論文審査の要旨 論文題 目 Fibroblast growth factor-2に よ る腱 板 修 復 促 進 に関 す る研 究 (The enhancement of rotator cuff tendon-to-bone healing by treatment with fibroblast growth factor-2) 保 存 療 法 抵 抗 性 の腱 板 断 裂 に は 、腱 板 修 復 術 が 行 わ れ るが 、術 後 再 断裂 の 問 題 が あ り、修 復 を生 物 学 的 に促 進 す る 治療 法 が 求 め られ て い る 。Fibroblastgrowthfactor-2(FGF-2)の 局 所 投 与 が腱 板 修 復 を促 進 す る可 能 性 が 報 告 され て い る が 、 これ ま で 腱 板 付 着 部 を構 成 す る細 胞 の マー カー が 不 明 で あ っ た た め 、 修 復 に 関与 す る細 胞 成 分 やFGF-2投 与 の これ ら細 胞 へ の 影 響 は十 分 解 明 され て こなか った 。本 研 究 の 目的 は 、腱 板付 着 部 の 軟 骨 細 胞 の マ ー カ ー で あ る転 写 因子SRY-boxcontaininggene9(Sox9)、 ー カ ー で あ る転 写 因子Scleraxis(Scx) 、 皿型 膜 貫 通 型 タ ンパ クTenomodulin(Tnmd)の 腱細胞 のマ 腱 板修 復 過 程 の 修 復 部 に お け る発 現 と組 織 学 的 所 見 お よび 力 学 強 度 を評 価 し、腱 板 修 復 過 程 に お け るSox9、Scx、Tnmd発 現 細 胞 の 関与 、 お よ びFGF-2の これ らの 細 胞 へ の 影 響 を解 析 し、FGF-2の 腱 板修 復 促進 作 用 を明 らか に す る こ とで あ る 。 20週 齢 雄 性Sprague-DawIeyラ ッ トの 左 肩 棘 上 筋 腱 修 復 モ デ ル にFGF-2(5μ9)を ドロゲル 担 体 を腱 骨 間 に 留置 したFGF群 6、8、12週 含 ん だ ゼ ラチ ンハ イ と、PBS含 浸 担 体 を留 置 した 対 照 群 を作 製 し比 較 した 。術 後2、4、 に 組 織 を採 取 し、修 復 部 の 組 織 学 的所 見 は ス コ ア を 用 い て 、 力 学 強 度 は張 力測 定器 を 用 い て 評 価 した 。 ま た 、修 復 組 織 に お け る軟 骨 細 胞 と腱 細 胞 の マ ー カー と してSox9、Scxお real-timeRT-PCR、insituhybridizationお よ び 免疫 染色 で評 価 した 。 さ らに 、修 復 部 に お ける増 殖 期 細 胞 をproliferatingcellnuclearantigen(PCNA)の CD90、CD105)の よ びTrendの 発 現 を 免 疫 染 色 、ま た 、間 葉 系 幹 細 胞 を マー カー(CD73、 免疫 染色 に よ り評 価 した 。 FGF-2の 投 与 に よ り、腱 骨 間の 血 管豊 富 な 疎 性 線維 性 組織 が 減 少 し、 腱 様 組 織 に よ り修 復 され 、 術 後4 週 以 降 の組 織 学 的 ス コ ア お よ び6週 以 降 の 修 復 部 の 力 学 的 強 度 が 有 意 に上 昇 した 。 さ らに 、FGF群 の 修 復 部 に お け る術 後4週 のSox9、4-8週 面 に お い てFGF群 に のみScxの のScx、 お よ び4-12週 のTnmdの 発現 が 上 昇 し、 同 時 期 の結 合 部 骨 表 発 現 を認 め た 。 一 方 、Trendは 両 群 と もに腱 骨結 合 部 の修 復組 織 に 発 現 は 認 め られ な か った 。 さ らに 、FGF群 の術 後2-4週 の修 復 部 に お ける 増 殖期 細 胞 の 割 合 が 増 加 し、 対 照 よ り 多 くの 間葉 系 幹細 胞 マ ー カ ー 陽 性細 胞 が 認 め られ た 。FGF群 に お い て 、ScxとTrendの 発現 上 昇 の 時期 と一 致 して組 織 学 的 所 見 の 改 善 や修 復 部 の 力 学 的 強 度 の 上 昇 が 観 察 され た こ とか ら、ScxやTnmdを 発現 す る 腱 系 譜細 胞 は 、腱 骨 結 合 部 の 修 復 過 程 に お い て重 要 な役 割 を担 って いる こ とが 示 唆 され た 。しか し、FGF-2 の 担 体 か らの 放 出 は2週 間 以 内 で あ る た め 、術 後 中後 期 のScxとTnmdの 上 昇 は 、FGF-2の 直接 的 な 腱 細 胞 分 化誘 導 で は な く、初 期 の 修 復 部 で の 未 分 化 前 駆 細 胞 の 増 加 を介 した作 用 で あ る こ とが 示唆 され た 。ラ ッ ト腱 板 修 復 モ デ ル に 対 す るFGF-2の 投 与 は 、修 復 早 期 に お い て 腱 板 修 復 に 参 画 す る 未 分 化 前 駆 細 胞 の 増 殖 刺 激 を 介 して 組 織 学 的 、 生 体 力 学 的 に 腱 板 修 復 を 促 進 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 発 表 に 対 して 、1)ヒ 序 、4)FGF-2の トで の 術 後再 断 裂 の 好 発 部 位 、2)再 断 裂 予 後 予測 因子 、3)内 因性FGF-2の 放 出機 担 体 の意 義 、5)ヒ トと マ ウ スFGF-2の 相 同性 、6)膠 原 線 維 の 配 列 の 定 量 化 の 方 法 、7)FGF-2 に よ る骨 化 生 、8)PCNA陽 性 細 胞 と未 分 化 細 胞 との 関係 、9)Sox9の 陽 性 細 胞 誘 導機 序 、11)Tnmdと 腱 板 修 復 へ の 意 義 、10)FGF-2に よ るScx 膠 原 線 維 産 生 との 関 連 性 、 な ど に つ い ての 質 疑 が あ り、 申請 者 は適 切 に解 答 した 。 本 研 究 は 、 腱 板 修 復 に関 わ る細 胞 の動 態 を新 しい腱 板 付 着 部 細 胞 の マ ー カー を用 いて 解 析 す る と とも に 、FGF-2の 腱 板 修 復 促 進 作 用 に つ い て 明 らか に し、腱 板 断 裂 の 治 療 法 の 基 礎 的 な研 究 と して,学 位 に相 応 しい研 究 と評 価 され た 。 審査委員長 機能病理学担当教授 ゲ 諄 勘 月
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