台湾の日本語学科における自国文化に関する科目のコース

天理台湾学会 2016 年第 26 回研究大会 報告要旨(林長河)
*報告要旨のため、報告者の許可なく引用・転載することを禁じます。
台湾の日本語学科における自国文化に関する科目のコースデザイン
―現状と課題―
林長河(銘傳大学)
台湾の高等教育では、グローバル化による英語シフト、少子化が原因で 18 歳入学者数の減少といっ
た課題に直面し、日本語学科の発展に逆風が吹き始めたと同時に、日台の間に経済文化及び観光方面
が未曾有の成長を見せている光も見えている。日本語学科は、差し迫った脅威を如何に乗り越え、恵
まれた機会を活かし、誇りに思う日本語教育を実現できるかどうか、分岐点に立っている。
従来、日本語学科の学生が、日本語を勉強すると共に、日本文化を身に付けることを目標として課
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されているのが普通であるが、しかし、コミュニケーション教育が重要視されるようになってきてい
る現在では、目標言語の言葉と文化を片方に学ぶのみでは教育目標を果たせるだろうか。おそらく自
国文化も同時に学ばねば、意思疎通がうまく果たせないことに気付いたであろう。本名信行(2004)
によると、日本語教育は、日本語学習、日本文化を知る、自国文化を説明するといった 3 要素が必要
であると述べ、自国文化の大切さを裏付けている。
会
近年台湾では、自国文化に関する教育は、その働きの重要さに気づきがあり、その趣旨に合致した
学
教育実践が進まれ、発足したばかりではあるが、林(2014)
、林(2015)などのような前向きな試みが
ある。
その故、自国文化教育は、改めてその重要性が見直され、カリキュラムの改革に踏み切った日本語
湾
科が増えつつあるという傾向が呈してきた。ただし、斬新なチャレンジのコースだけあって、コース
デザインはままならぬ暗中模索をしながら、一歩ずつ歩みだすような試みせざるを得ないのが実情で
ある。
台
一方、台湾政府では、大卒者の失業率が高く、高等教育と企業のミスマッチが批判された故、教育
部の方も昨今学用の落差を埋めるため、予算の編成をし、高等教育にインセンティブを与え、社会の
理
ニーズに応じる教育を確実にするように誘導しているプログラムが設けられている。このような政策
の下で、自国文化教育に関する火付けの役割にも資している。
明かりの見えた自国文化の教育が如何に進まれたら、よいか、現況と課題の把握は第一歩である。
天
したがって、本発表は、台湾の日本語学科において、自国文化に関する授業が行われる幾つかの学科
を調べ、授業に携わっている教員に直接にインタビューをし、そのコースデザインなどを聞き取り調
査を行うことにした。
高雄、台中、桃園、台北の大学で教えている教師に一名ずつインタビューの依頼をし、その承諾を
得れば、訪問に出かけ、調査を行った。コースデザインにおけるシラバス、教授法を中心に伺うこと
にした。
調査を通して、自国文化におけるコースデザインの難しさなどを実感し、改めて学際的な挑戦の困
難さを感じた。とはいえ、人間万事は始まりが最も困難で、実践的な試みが積み重ねることにより、
課題を見つけ出して改善に移っていけば、いつしか、よりよい方法は生まれるだろうと思われる。本
発表は日本語学科が分岐点に立っている現在において、日本語教育の質の向上を図るため、自国文化
に関係する授業の調査を行い、その結果を報告し、課題を検討するのが目的で、それをバネに本格的
な JOP の教育実践が一日もはやく到来を望んでいる。
天理台湾学会 2016 年第 26 回研究大会 報告要旨(林長河)
*報告要旨のため、報告者の許可なく引用・転載することを禁じます。
参考文献
林長河(2014)
「龍山寺を例にした自国文化を説明する日本語教育の模索-語学教育理論の応用と課題
-」
『台灣日本語文學報』第 35 號 pp.351-374
林長河(2015)
「自国文化紹介のシラバス作成のためのニーズ調査-艋舺龍山寺を例に-」
『天理台湾
学報』第 24 号天理台湾学会 pp.73-90
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台
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