翻訳を通じて台湾に回帰した西川満の文学 王恵珍(国立清華

天理台湾学会 2016 年第 26 回研究大会 報告要旨(王恵珍)
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翻訳を通じて台湾に回帰した西川満の文学
王恵珍(国立清華大学)
戦前、台湾に滞在していた作家西川満(1908-1999)の作品は、戦後、台湾文学の領域では、
作家の政治的な立場や皇民文学の観点から論議され、厳しい非難を浴びてきた。しかし、
1987 年に戒厳令が解除され、民族主義の意識が高まり、台湾文化の多元性が強調されるよ
うになると、彼の作品は「翻訳」によって、再び台湾の読者に読まれるようになった。
本論は、帰国後の西川満の作品を翻訳した陳千武(1922-2012)の訳本を考察し、帰国後
の西川文学の創作の特徴を解明する。また、訳者は如何にしてこれらの台湾描写を翻訳対
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象に選んだのか、90 年代の台湾の主体性確立の過程で、台湾の民族文化論者はこれらの作
品をどのように扱ったのかも考察する。さらに、これらの翻訳作品の内容が、台湾の読者
にどのような文化的な経験と情緒構造の連結をもたらしたのかも考察する。最後に、翻訳
を通じて台湾に回帰した西川満の文学によって、台湾人の日本コンプレックスと湾生(台
会
湾生まれの日本人)の郷愁が働きあって作りあげた台湾の帝国記憶を明らかにしたい。
学
キーワード:翻訳、引揚者、台湾民族文化、情緒構造、西川満
湾
台
天
理