豚流行性下痢発生農場で流行した豚丹毒の鎮静化に向けて

豚流行性下痢発生農場で流行した豚丹毒の鎮静化に向けて
○池田稔 1)、志村英明 2)、伊東成巳 1)
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大分県食肉衛検、2 大分県農水研センター
【はじめに】健康な家畜の生産は安全で衛生的な食肉の供給につながることから、当所では月ごとにデータフィ
ードバック(FB)を実施しており、年数回、家畜保健衛生所(家保)と FB 検討会を開催し情報交換を実施してい
る。2014 年 6 月に一養豚場(A 農場)から搬入された豚に豚丹毒の発生が著しく増加した。そこで、当所は FB 検
討会を通じて情報共有を密にし、疾病対策に協力したところ若干の知見が得られたのでその概要を報告する。
【経緯と対策】2014 年 3 月、A 農場において豚流行性下痢(PED)が発生した。4 月、豚丹毒が原因と思われる肉
豚の死亡が増加したため、同農場では豚丹毒不活化ワクチンに変更した。5 月、PED は鎮静化したものの、6 月か
ら搬入豚に豚丹毒が著しく増加したため、当所と家保は FB 検討会において協議し、情報提供の範囲を広げ頻度を
増やした。8~10 月、家保は同農場の肉豚の異常確認と抗菌剤の飼料添加等の衛生指導を実施し、10 月、一時的
な発生減少が認められたが、抗体検査を行ったところ子豚の抗体価が低いことが判明し、11 月以降、再度発生が
増加した。2015 年 1 月から 2 種類のワクチン効果の検証実験を開始し、3~4 月、ワクチンの種類変更と投与回数
や時期の調整を実施したが、4~5 カ月周期で発生の増減を繰り返し、2015 年 7 月現在、鎮静化には至っていない。
【まとめと考察】A 農場での今回の流行は発生率の著しい増加と病型の構成の点で当所におけるこれまでの傾向と
は異なる。発生率に関して、豚丹毒の予防には飼養管理とワクチン接種が有効であるため、A 農場での流行は呼吸
器疾患による免疫力低下等何らかの原因でワクチンが有効でなかった可能性がある。また、豚丹毒発生の引き金
にその他伝染病の発生が要因となり得るとの知見がある。現に、A 農場ではPEDの発生時期と出現時期が重なっ
ていた。病型に関して、A 農場では、流行後の経過とともに亜急性の蕁麻疹型から慢性の心内膜炎型、関節炎型に
病型が移り変わりこれまでとは異なる傾向を示した。なお、A 農場での豚丹毒菌は新型豚丹毒菌(SpaA-60
9G769A)であることが確認されている。今後は、A 農場豚の基礎疾患を調査し病性把握に努めるとともに、
現状を「迅速」に FB し豚丹毒の鎮静化をめざしたい。