メモ 統計学への誘い 第3回:統計学の歴史 統計学がどのように発展して来たかを概観する 竹村彰通 東京大学 大学院情報理工学系研究科 1 統計学の歴史 メモ 統計学の歴史を知ることで 統計学が果たしている役割がわかる 統計学の最近の発展を知ることで 統計学の今後がわかる 2 統計学の歴史 メモ 大まかな流れ 歴史的には、統計学は国家の状況の数量的な把握か らはじまり、社会経済的な分野で発展してきた • 統計学は英語では statistics とよばれる。State は国家を意味している 20世紀に入る頃から、遺伝法則の発見などに ともない理系的な分野にもひろがってきた コンピュータの発展とともに、統計学の応用 はほとんどの分野に広がってきた 3 統計学の歴史:いくつかの歴史的エピソード メモ いくつかの歴史的エピソード ローマ帝国: 初代皇帝アウグストゥスの治世の頃に、 人口や土地を調べる調査(Census)が行われた。 今日、国勢調査のことを「人口センサス」と呼ぶのはその名残。 生命表、生命保険 グラントの死亡表(1662): ロンドンの教会の過去帳に基づいて、寿命の分布について はじめて客観的な記述をおこなった。 出生時における男女比は 14:13 人口動態統計による日本の出生性比 4 統計学の歴史:いくつかの歴史的エピソード メモ ナイチンゲール 近代看護教育の母 イギリス軍の戦死者・傷病者に関するデータを 詳しく分析し、彼らの多くが戦闘で受けた傷そ のものではなく、傷を負った後の治療や病院の 衛生状態が十分でないことが原因で死亡したこ とを明らかにした。 「統計」という訳語の起源 「統計」という言葉は英語の statistics の訳語として、 明治年間を通じて次第に定着するようになった。 「統計」を冠した最初の政府組織は明治4年に 大蔵省に置かれた「統計司」と「統計寮」 当時他にも「政表」「表記」「表紀」「形勢」などが提案された。 5 統計学の歴史:応用分野の拡大 メモ 遺伝法則と生物測定 • メンデル、ゴルトン、カール・ピアソン 相関,回帰分析 • 遺伝が本質的に確率的だと理解されたことが重要 メンデル (1865)の仕事はしばらく忘れられた。 1900年に3人の別々の研究者(ド・フリース、コレンス、チェルマック) によって再発見され、同じ雑誌に前後して掲載。 メンデルのデータは「きれいすぎる」ことが、後に指摘されている。 • 農業試験の分野で始まった 実験計画法 • 戦後になり工業への応用: 統計的品質管理 • 日本の製造業の品質向上に大きな役割を果たした 6 統計学の歴史:数理統計学の確立とその後の発展 メモ 20世紀になって、確率論と結びつき、統計学の理論が確立した カール・ピアソン 「科学の文法」としての統計学 R.A. フィッシャー(1890-1962): 数理統計学の創始者 大標本から小標本へ、推測統計学 実験計画法、最尤法 本講義では、確率論を用いた推測統計学については 時間の都合から、扱わない。 計算機の発展にともなう統計学の変化 計算機の発達により,実際に複雑な計算ができるようになった。 計算機を多用する手法が発展してきた。 7
© Copyright 2025 ExpyDoc