黎明期の日本のワンダーフォーゲルに関する研究

黎明期の日本のワンダーフォーゲルに関する研究
~大学のワンダーフォーゲルと勤労者のワンダーフォーゲルに着目して~
上村
悠 (生涯スポーツ学科 地域スポーツコース)
指導教員 菅井京子
キーワード:ワンダーフォーゲル,自然,人
はじめに
本研究の目的は,黎明期の日本のワンダーフ
ォーゲル,大学生と勤労者のワンダーフォーゲ
ルの違いを明らかにし,そこから本来のワンダ
ーフォーゲルの特性とそれらを比較すること
である.用いる主な資料は, 村上和雄の「ワンダ
ーフォーゲル運動の歴史的考察」,富松京一の
「ドイツワンダーフォーゲルの活動形態にお
ける継承性について」,富松京一の「回想にみ
るドイツワンダーフォーゲルの性格について」,
富松京一の「日本におけるワンダーフォーゲル
の成立過程について」である.
Ⅰ.ドイツワンダーフォーゲル
ドイツワンダーフォーゲルは,カール・フィ
ッシャーによって始められ,1901 年 11 月 4 日
「Wandervogel」と命名され,自然発生的に集
まり,校則に基づいて設立された.
活動の目的と内容は,自然の中で仲間との友
情や協力,地方の文化や伝統などを根底にして,
歩くことを主体として登山や旅行,野営,演劇,
唱歌,民謡・民話・民踊の収集などを行った.
Ⅱ.日本のワンダーフォーゲル(大学のワンダ
ーフォーゲル)
大学のワンダーフォーゲルは,1936 年春日
井薫によって普及された.それは,人や自然との
つながりの活動自体を目的としており,その活
動を通して,大学生の社会性や人間性を養い,大
学生の人格形成に役立つと考えられ,主に登山
やキャンプなどを行った.
Ⅲ.日本のワンダーフォーゲル(勤労者のワン
ダーフォーゲル)
勤労者のワンダーフォーゲルは,1933 年出
口林次郎によって普及された.それは,勤労者の
体力の増強や促進,健康の保持増進を目的とし
ており,主に旅行や登山,キャンプ,スキーなど
を行った.
Ⅳ.2 つのワンダーフォーゲル
大学のワンダーフォーゲルの目的は,活動自
体を目的としており,ドイツのワンダーフォー
ゲルの目的と同じだと考えられる.しかし,勤労
者のワンダーフォーゲルは、人や自然とのふれ
あいなどの活動を行うが,目的としては,体力増
強や身体の鍛錬といったことが強調されてい
る. このように,2 つのワンダーフォーゲルの
違いが明らかとなった.
おわりに
ドイツワンダーフォーゲルは, カール・フィ
ッシャーによって始められ,人とのふれあい,各
地方の文化や伝統を知る,仲間との友情や協力,
そこでしか味わえない自然と人のつながりを
大切にする.これが,ワンダーフォーゲルがもつ
本来の特性だと考えられる.
日本の大学と勤労者のワンダーフォーゲルの
違いは,目的にある.活動自体を目的としている
大学のワンダーフォーゲルに対して,勤労者の
ワンダーフォーゲルは,体力・健康の保持増進
を目的としている.
大学のワンダーフォーゲルは,本来のワンダ
ーフォーゲルが一番大切していることを生か
している.これが,現在行われている日本の大学
のワンダーフォーゲルの土台となっている.一
方,勤労者のワンダーフォーゲルは,1970 年代
頃から盛んになった,健康スポーツに取り込ま
れていったと考えられる.
引用・参考文献
城島紀夫(2009 年),日本ワンダーフォーゲル
の起源と歴史,日本山岳文化学会,登山史分科会,
日本山岳化学会論集,第 7 号,20-30 頁